QuoraのPoe、AWS BedrockでAIモデル統合を96倍高速化

運用導入事例Amazon/AWS

開発生産性の劇的向上

デプロイ時間を96倍高速化(数日→15分)。
必須コード変更を95%削減
テスト時間を87%短縮。
開発リソースを機能開発へ集中

統一アクセスレイヤーの構築

異なるAPI間のプロトコル変換を実現。
設定駆動型による迅速なモデル追加。
認証(JWTとSigV4)のブリッジング機能

マルチモデル戦略の強化

30以上のテキスト/画像モデル統合。
設定変更でモデル能力を拡張可能に。
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QuoraのAIプラットフォーム「Poe」は、Amazon Web Services(AWS)と協業し、基盤モデル(FM)のデプロイ効率を劇的に改善しました。統一ラッパーAPIフレームワークを導入した結果、新規モデルのデプロイ時間が数日からわずか15分に短縮され、その速度は従来の96倍に達しています。この成功事例は、複数のAIモデルを大規模に運用する際のボトルネック解消法を示しています。

Poeは多様なAIモデルへのアクセスを提供していますが、以前はBedrock経由の各モデルを統合するたびに、独自のAPIやプロトコルに対応する必要がありました。Poeはイベント駆動型(SSE)、BedrockはRESTベースであり、この違いが膨大なエンジニアリングリソースを消費し、新しいモデルの迅速な提供が課題となっていました。

AWSのGenerative AI Innovation Centerとの連携により、PoeとBedrockの間に「統一ラッパーAPIフレームワーク」を構築しました。この抽象化レイヤーが、異なる通信プロトコルのギャップを埋め、認証や応答フォーマットの違いを吸収します。これにより、「一度構築すれば、複数のモデルを展開可能」な体制が確立されました。

この戦略の結果、新規モデルを統合する際の必須コード変更量は最大95%削減されました。エンジニアの作業内容は、以前の65%がAPI統合だったのに対し、導入後は60%が新機能開発に集中できるようになりました。この生産性向上により、Poeはテキスト、画像、動画を含む30以上のBedrockモデルを短期間で統合しています。

高速デプロイの鍵は、「設定駆動型アーキテクチャ」です。新しいモデルの追加には統合コードの記述は不要で、設定ファイルへの入力のみで完結します。さらに、Bedrockが導入した統一インターフェース「Converse API」を柔軟に活用することで、チャット履歴管理やパラメーター正規化が容易になり、統合作業がさらに簡素化されました。

本フレームワークは、マルチモーダル機能の拡張にも貢献しています。例えば、本来テキスト専用のモデルに対しても、Poe側が画像を分析しテキスト化することで、擬似的な画像理解能力を付与できます。これにより、基盤モデルのネイティブな能力によらず、一貫性のあるユーザーエクスペリエンスを提供可能になりました。

本事例は、AIモデル活用の競争優位性を得るには、個別のモデル連携に時間を使うのではなく、柔軟な統合フレームワークへの初期投資が極めて重要であることを示唆しています。抽象化、設定駆動、堅牢なエラー処理といったベストプラクティスは、AIを大規模展開し、市場価値を高めたい組織にとって必須の戦略となるでしょう。