AI電力需要予測は過大か、不要な化石燃料投資リスクを指摘
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米国のNPOなどが今月発表した報告書で、AIの急成長に伴う電力需要の予測が過大である可能性が指摘されました。この予測に基づき電力会社が不要なガス発電所を建設すれば、消費者の負担増や環境汚染につながるリスクがあると警告。テック企業や電力会社に対し、透明性の高い需要予測と再生可能エネルギーへの移行を求めています。
生成AIの登場以降、エネルギー効率の向上で十数年横ばいだった米国の電力需要は増加に転じました。AI向けのデータセンターは、従来のサーバーラックが家庭3軒分程度の電力を使うのに対し、80〜100軒分に相当する電力を消費します。これはまさに「小さな町」ほどの電力規模に相当します。
なぜ予測が実態以上に膨らむのでしょうか。報告書は、データセンター開発業者の投機的な動きを指摘します。彼らは資金や顧客が未確保のまま、複数の電力会社に重複して電力供給を申請するケースがあり、これが需要予測を水増ししている一因と見られています。
実際、全米の電力会社はハイテク業界の予測より50%も高い需要増を計画しています。ある大手電力会社のCEOは、電力網への接続申請は、実際に具体化するプロジェクトの「3〜5倍」に達する可能性があると認め、予測の不確実性を指摘しています。
不確実な需要予測にもかかわらず、電力会社はガス火力発電所の新設を進めています。これは電力会社の収益構造上、インフラ投資が利益に直結しやすいためです。結果として、不要な設備投資のコストが消費者の電気料金に転嫁されたり、化石燃料への依存が高まったりする恐れがあります。
こうしたリスクを避けるため、報告書は解決策も提示しています。電力会社には、開発業者への審査強化や契約条件の厳格化を提言。テック企業には、技術の省エネ化をさらに進め、再生可能エネルギーへの投資を加速させるよう強く求めています。AIの持続的な発展には、エネルギー問題への慎重な対応が不可欠です。