著名VCが断言「AGIより量子コンピュータが未来を拓く」

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著名ベンチャーキャピタリストのアレクサ・フォン・トーベル氏が、次の技術革新の波として量子コンピューティングに大きな期待を寄せています。同氏が率いるInspired Capitalは最近、量子コンピュータ開発を手がけるスタートアップ「Logiqal」社に投資しました。AIの計算需要がインフラを再定義する中で、量子コンピュータこそがAGI(汎用人工知能)以上に科学的発見を解き放つと、同氏は考えています。

なぜ今、量子コンピュータなのでしょうか。フォン・トーベル氏は、AIの急速な進化が背景にあると指摘します。AIが必要とする膨大な計算能力は、既存のインフラを根本から変えつつあります。この大きな変化が、量子コンピュータのような次世代技術の成功確率を高める土壌になっていると分析しています。同氏は量子を「AIの次の革新の波」と位置づけています。

投資先として、同氏はソフトウェアではなくハードウェア開発に焦点を当てました。特に、数あるアプローチの中でも「中性原子」方式に高い将来性を見出しています。そして、この分野の第一人者であるプリンストン大学のジェフリー・トンプソン教授が率いるLogiqal社への出資を決めました。まずは実用的な量子コンピュータを構築することが最優先だと考えています。

量子コンピュータが実現すれば、社会に計り知れない価値をもたらす可能性があります。フォン・トーベル氏は、製薬、材料科学、物流、金融市場など、あらゆる分野で革新が起こると予測します。人間の寿命を20〜30年延ばす新薬の開発や、火星探査を可能にする新素材の発明も夢ではないと語っており、「地球を動かす」ほどのイノベーションになるとしています。

量子分野は、AI分野と大きく異なると同氏は指摘します。世界の量子専門家は数百人程度と非常に限られており、才能の真贋を見極めやすいといいます。一方、AI分野では専門家を自称することが容易で、多くの企業がブランドやスピード以外の持続的な競争優位性、つまり「堀」を築けていないのが現状です。巨大IT企業が優位な市場で、スタートアップが生き残るのは容易ではありません。