米H-1Bビザ新手数料、欧州が技術者獲得の好機に
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欧州のテック企業が、米国トランプ政権によるH-1Bビザへの高額手数料導入を機に、高度技術人材の獲得に乗り出しています。英国のユニコーン企業などがSNSで積極的に求人を発信し、ビザ支援や安定した雇用環境をアピール。米国の政策がもたらす不確実性を、自国の技術力強化と国際競争力向上につなげる好機と捉えており、人材獲得競争が激化する見通しです。
英国のフィンテック企業CleoやAIスタートアップSynthesiaなどのユニコーン企業が、この動きを主導しています。創業者らはSNS上で「H-1Bビザで将来が不透明なら我々が助ける」と表明。ビザや移転費用の支援、競争力のある給与を約束し、米国で働く技術者に積極的にアプローチしています。
この動きはユニコーン企業に限りません。スコットランドのAI企業など、多くの中小テック企業もビザ支援を掲げて人材獲得に参入。さらに英国政府もこの状況を好機と見ており、世界トップクラスの人材に対するビザ手数料の撤廃を検討するキャンペーンを強化していると報じられています。
米国政府は、10万ドルの新手数料は既存ビザ保有者には適用されないと説明し、混乱の鎮静化を図っています。しかし、これまでの政策変更の経緯から企業側の不信感は根強く、多くのテック企業は従業員に海外渡航の中止を指示するなど、現場の混乱は収束していません。
今回の政策変更は、特に米国のスタートアップに深刻な打撃を与える可能性があります。大手テック企業は高額な手数料を吸収できますが、資金力に乏しい新興企業にとっては致命的です。有力インキュベーターY CombinatorのCEOは「初期段階のチームには負担できない」と警鐘を鳴らします。
Y CombinatorのCEO、ギャリー・タン氏は、今回の政策を「AI開発競争の最中に、海外の技術拠点へ巨大な贈り物をしているようなものだ」と痛烈に批判。優秀な人材が国外に流出することで、米国の技術革新のリーダーとしての地位が揺らぎかねないと、強い懸念を示しています。