MIT、対話型AI「MultiverSeg」開発 医療研究を加速
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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、医療画像のセグメンテーション(領域分割)作業を劇的に効率化する新しい対話型AIシステム「MultiverSeg」を開発しました。このシステムは、ユーザーが画像上で行うクリックや走り書きなどの簡単な操作から学習します。作業を繰り返すほどAIの精度が向上し、最終的にはユーザーの操作なしで高精度なセグメンテーションが可能になり、臨床研究の加速やコスト削減が期待されます。
MultiverSegの最大の特徴は、ユーザーの操作を学習し続ける点にあります。従来の対話型ツールでは画像ごとに同じ操作を繰り返す必要がありましたが、本システムは過去の作業結果を「コンテキストセット」として記憶・参照します。これにより、新しい画像を処理する際のユーザーの負担が徐々に軽減され、作業効率が飛躍的に向上します。この仕組みは、これまでのアプローチの長所を組み合わせたものです。
性能比較実験では、他の最先端ツールを上回る結果を示しました。例えば、9枚目の画像を処理する頃には、わずか2回のクリックでタスク特化型モデルより高い精度を達成しました。X線画像のような特定のケースでは、1〜2枚の画像を手動で処理するだけで、AIが自律的に高精度な予測を行えるようになります。これは、手作業に比べ圧倒的な時間短縮です。
このツールのもう一つの利点は、機械学習の専門知識や事前のデータセット準備が不要なことです。研究者や医師は、セグメンテーションしたい新しい画像をアップロードし、直感的に操作を始めるだけですぐに利用できます。AIモデルの再トレーニングも不要なため、導入のハードルが低く、幅広い臨床現場や研究での活用が見込まれます。
研究チームは今後、臨床現場での実証実験を通じてフィードバックを収集し、システムの改善を進める計画です。また、現在は2D画像のみに対応していますが、将来的には3D医用画像への応用も目指しています。この技術が普及すれば、新しい治療法の研究が加速し、臨床試験や医療研究全体のコスト削減に大きく貢献する可能性があります。