AI創薬が新境地、抗生物質の作用機序を高速解明
AIが解明した新抗生物質
新化合物enterololinを発見
クローン病関連の悪玉菌のみを標的
腸内フローラへの影響を最小化
創薬プロセスを劇的に変革
AIが作用機序を数分で予測
開発期間を数年から数ヶ月に短縮
従来手法比で大幅なコスト削減
精密医療と薬剤耐性問題への貢献
出典:MIT News
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マサチューセッツ工科大学(MIT)とマクマスター大学の研究チームが、生成AIを活用し、クローン病に関連する特定の腸内細菌のみを標的とする新しい抗生物質の作用機序を解明しました。このAI技術により、通常は数年を要する研究がわずか数ヶ月に短縮され、精密な創薬開発の新たな可能性が示されています。
従来の広域抗生物質は、善玉菌まで殺してしまい、かえって症状を悪化させる課題がありました。原因菌だけを叩く「精密抗生物質」が求められていましたが、その薬が体内でどう働くか、作用機序の解明が開発の大きな障壁となっていました。
そこで研究チームは、MITが開発した生成AIモデル「DiffDock」を使用。このAIは、新化合物「enterololin」が細菌内の特定のタンパク質複合体に結合することをわずか数分で予測しました。この正確な予測が、その後の実験の「GPS」となり、研究を大幅に加速させました。
AIによる予測と実験室での検証を組み合わせることで、作用機序の解明にかかる期間を数年からわずか6ヶ月へと劇的に短縮。コストも大幅に削減できたといいます。これは、AIが単に候補物質を見つけるだけでなく、その働きを説明する段階にまで進化したことを示しています。
今回の成功は、クローン病治療に光明を灯すだけでなく、創薬プロセス全体の変革を予感させます。AIによる作用機序の迅速な解明は、治療が難しい他の病気や、深刻化する薬剤耐性菌問題に対する新たな武器となり得ます。臨床試験は数年以内に開始される見込みです。