AWS、AIエージェントの長期記憶術を詳解

エージェントRAG/ナレッジ運用

AgentCore長期記憶の仕組み

会話から重要情報を自動抽出
関連情報を統合し矛盾を解消
独自ロジックでのカスタマイズも可能

高い性能と実用性

最大95%のデータ圧縮率
約200ミリ秒の高速な情報検索
ベンチマークで実用的な正答率を証明

導入に向けたベストプラクティス

ユースケースに合う記憶戦略を選択
非同期処理を前提としたシステム設計が鍵
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Amazon Web Services (AWS) が、AIサービス「Amazon Bedrock」のエージェント機能「AgentCore」に搭載された長期記憶システムの詳細を公開しました。この技術は、AIエージェントがユーザーとの複数回にわたる対話内容を記憶・統合し、文脈に応じた、より人間らしい応答を生成することを可能にします。これにより、一過性のやり取りを超えた、継続的な関係構築の実現が期待されます。

AIエージェントが真に賢くなるには、単なる会話ログの保存では不十分です。人間のように、雑談から重要な情報(「私はベジタリアンです」など)を見極めて抽出し、矛盾なく知識を更新し続ける必要があります。AgentCoreの長期記憶は、こうした複雑な課題を解決するために設計された、高度な認知プロセスを模倣するシステムです。

記憶システムの核となるのが「抽出」と「統合」です。まず、大規模言語モデル(LLM)が会話を分析し、事実や知識、ユーザーの好みといった意味のある情報を自動で抽出します。開発者は、用途に応じて「セマンティック記憶」「要約記憶」「嗜好記憶」といった複数の戦略を選択、あるいは独自にカスタマイズすることが可能です。

次に「統合」プロセスでは、抽出された新しい情報が既存の記憶と照合されます。LLMが関連情報を評価し、情報の追加、更新、あるいは重複と判断した場合は何もしない(NO-OP)といったアクションを決定。これにより、記憶の一貫性を保ち、矛盾を解消しながら、常に最新の情報を維持します。

このシステムは性能面でも優れています。ベンチマークテストでは、会話履歴の元データと比較して最大95%という驚異的な圧縮率を達成。ストレージコストと処理負荷を大幅に削減します。また、記憶の検索応答時間は約200ミリ秒と高速で、大規模な運用でも応答性の高いユーザー体験を提供できます。

AgentCoreの長期記憶は、AIエージェント開発における大きな一歩と言えるでしょう。単に「覚える」だけでなく、文脈を「理解」し、時間と共に成長するエージェントの構築を可能にします。この技術は、顧客サポートからパーソナルアシスタントまで、あらゆる対話型AIの価値を飛躍的に高める可能性を秘めています。