AI開発、主戦場は「独自データ」の内製化へ

データ・プライバシー市場動向マルチモーダル

データ収集の新潮流

ウェブ収集から独自収集への転換
専門家や職人を直接雇用
AI性能を左右するデータの品質
「量より質」を徹底的に追求

データが築く参入障壁

独自データが競争優位性の源泉
専門家の知見をモデルに反映
模倣困難な「堀」を構築
合成データの元となる質が重要
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AIスタートアップのデータ戦略が転換期を迎えています。ウェブからの大規模収集に代わり、専門家を直接雇用して高品質な独自データを内製化する動きが加速。AIの性能はデータの「量より質」で決まり、独自データが競争優位の源泉になるとの認識が広がっています。

ビジョンモデルを開発するTuring Labs社は、アーティストやシェフにGoProを装着させ、手作業の映像を収集。ウェブ上のデータでは得られない多様で質の高い一次情報を集め、AIに抽象的な問題解決能力を学習させています。

メール管理AIのFyxer社も、経験豊富な秘書を雇用。彼らの専門知識を基に「返信すべきメールか」といった判断基準をAIに学習させました。創業者は「AIの性能を定義するのはデータの質」と断言し、専門家の知見を事業の核に据えています。

なぜ今、データを内製化するのでしょうか。AIの基礎モデルがコモディティ化し、差別化の源泉が「データ」そのものに移行したからです。誰でも使えるデータでは平均的なAIしか作れず、独自の課題解決には独自の高品質データが不可欠なのです。

この潮流は、AIを活用する企業に重要な示唆を与えます。自社のビジネスに特化した高品質なデータをいかに構築するか。その戦略こそが、競合を突き放す最も強固な「堀(moat)」、つまり参入障壁となるでしょう。