ニューヨーク州、AI家賃操作を全米初禁止
AI利用の価格協定を禁止
全米初の州法を制定
家主による価格設定ソフトを違法化
アルゴリズム利用は価格共謀とみなす
消費者保護と市場の歪み
アルゴリズムによる市場の歪みを是正
2024年の被害額は約38億ドル
独占禁止法をAI時代に更新
規制の背景と広がり
大手ソフトRealPageは政府が提訴
法律は60日後に施行
出典:The Verge
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ニューヨーク州のホークル知事は16日、家主がAIソフトウェアを利用して家賃を設定することを禁止する法案に署名しました。これはアルゴリズムによる価格操作を禁じる全米初の州法です。AIが住宅市場を歪め、不当に家賃をつり上げているとの批判に対応し、消費者保護を目的としています。同様の規制は一部都市で先行していましたが、州レベルでの導入は初めてとなります。
新法は、単に価格設定ソフトの使用を禁じるだけではありません。複数の家主や管理者がアルゴリズムを用いて家賃を決めた場合、たとえ直接的な意思疎通がなくても、事実上の価格共謀とみなされます。法律では「故意または無謀な無視」による場合も違反とされ、AIを介した暗黙のカルテル形成に踏み込んだ内容となっています。
問題の背景には、RealPage社などが提供する家賃最適化ソフトの存在があります。これらのソフトは、非公開データを用いて競合物件の価格を分析し、利益を最大化する家賃を家主に提案します。ホークル知事は、これが「歴史的な住宅供給・価格危機の中で市場の歪みを引き起こしている」と厳しく指摘しています。
知事室の発表によれば、こうしたソフトウェアが原因で2024年に米国の賃借人が被った損害は約38億ドル(約5800億円)に上ると試算されています。この問題は2022年の報道で広く知られるようになり、米国司法省は今年、RealPage社を独占禁止法違反の疑いで提訴する事態に発展しました。
専門家は、今回の法制化を「独占禁止法をAI時代に適応させる画期的な一歩」と評価しています。AIの能力が悪用され、競争を阻害する行為にどう対処すべきか。ニューヨーク州の新法は、テクノロジーと規制のあり方を問う重要な試金石となりそうです。法律は60日後に施行されます。