AIデータセンター、フラッキングガスで稼働の現実
AIの巨大な電力需要
環境と地域社会への影響
推進される化石燃料利用
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AIの爆発的な成長を支える巨大データセンターが、環境負荷の高いフラッキングガス(水圧破砕法による天然ガス)で稼働している実態が明らかになりました。PoolsideやOpenAIなどのAI企業が、米テキサス州などで化石燃料を直接利用する発電所を併設した施設を次々と建設。その背景には、中国との技術覇権争いがあります。
AIコーディング支援のPoolsideは、西テキサスにニューヨークのセントラルパークの3分の2に及ぶ広大なデータセンターを建設中です。ここではフーバーダムに匹敵する2ギガワットの電力を、近隣のパーミアン盆地で採掘された天然ガスを燃やして賄います。OpenAIの巨大プロジェクト「スターゲイト」も同様の戦略をとっています。
こうした開発は、地域社会に深刻な影響を及ぼしています。建設のために広大な自然がブルドーザーで破壊され、干ばつの続く地域では貴重な水資源の消費が懸念されています。建設に伴う騒音や夜間の照明は、静かな生活を求めてきた住民の暮らしを一変させているのです。
なぜ化石燃料への依存が進むのでしょうか。OpenAI幹部は、中国のエネルギーインフラ増強に対抗し、国家の再工業化を進める必要性を主張します。米政府も2025年7月の大統領令で、ガス火力AIデータセンターの許認可を迅速化し、再生可能エネルギーを除外する形でプロジェクトを後押ししています。
一方で、こうした大規模なガス発電所の新設は必ずしも必要ないとの指摘もあります。デューク大学の研究によれば、電力会社は年間を通じて利用可能な容量の約半分しか使っていません。データセンターがピーク時の電力消費を少し抑えるだけで、既存の電力網で需要を吸収できる可能性があるのです。
将来的には小型モジュール炉や太陽光、核融合への期待も高まっていますが、実用化には数十年を要する可能性があります。それまでの間、AIの発展は化石燃料への依存と環境負荷という不都合な真実を抱え続けることになります。そのコストを誰が負担するのか、という重い問いが突きつけられています。