AIのPMF、新指標は「支出の持続性」

スタートアップ

AI時代のPMF新常識

急速に変化し続けるAI技術
過去の成功法則は通用せず
実験予算からコア予算への移行が鍵
最重要指標は支出の持続性

定着度を見極める方法

DAUなどエンゲージメント頻度
定性インタビューによる補完
技術スタック内での重要度
PMFは強化し続ける連続体
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サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptで、著名ベンチャーキャピタリストがAIスタートアップのPMF(プロダクトマーケットフィット)に関する新たな指針を示しました。急速に進化するAI技術の世界では従来の成功法則は通用しないと指摘。顧客の支出が実験段階から本格導入へ移行しているかを示す「支出の持続性」こそが、PMF達成を測る新たな試金石になると提言しています。

なぜAI分野では、これまでのPMFの考え方を見直す必要があるのでしょうか。New Enterprise Associatesのアン・ボーデツキー氏は「過去に教わってきた全てのプレイブックとは全く異なる」と断言します。その最大の理由は、AI技術自体が静的ではなく、常に変化し続けているためです。前提条件が覆り続ける市場では、新たな評価軸が求められます。

そこで新たな最重要指標として提唱されたのが、Iconiqのムラリ・ジョシ氏が語る「支出の持続性」です。多くの企業は現在、AIを「実験的予算」で試しています。その支出が、経営層が管轄する「コア予算」へと移行しているかどうかが重要です。これは、製品が一時的な試用で終わらず、事業に不可欠なツールとして定着した証となります。

新しい指標が重要である一方、従来の指標も依然として有効です。DAU(デイリーアクティブユーザー)やWAU(ウィークリーアクティブユーザー)といったエンゲージメント指標は、顧客が製品をどれだけ頻繁に利用しているかを示す基本的なデータです。これらの数値は、顧客の熱量を測る上で欠かせない判断材料であり続けるでしょう。

定量的な指標だけでは見えない顧客の真意を探るため、定性的なデータの収集も不可欠です。顧客へのインタビューを通じて、製品が彼らの技術スタックの中でどのような役割を担っているかを尋ねることが有効です。製品をより「粘着性」の高い、つまり代替困難なものにするためのヒントがそこに隠されています。

最後に、PMFは一度達成して終わるゴールではないと理解することが重要です。ボーデツキー氏はPMFを「連続体」と表現し、常に強化し続けるべきものだと説きます。最初は小さなPMFから始め、市場の変化や顧客のフィードバックに適応しながら、製品と市場の適合性を高め続ける姿勢が成功の鍵を握ります。