LinkedIn、AI人物検索導入 13億人から自然言語で探す
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ビジネス特化型SNSのLinkedInは2025年11月13日、自然言語で人物を検索できるAI搭載の新機能を発表しました。これによりユーザーは、従来のキーワード検索では難しかった「米国の就労ビザ制度に詳しい人」といった曖昧な質問形式でも、13億人以上の会員の中から最適な人材を探し出せるようになります。
新機能は、大規模言語モデル(LLM)がユーザーの入力した文章の意味や意図を深く理解することで実現します。例えば「がん治療の専門家」と検索すると、AIは「腫瘍学」や「ゲノム研究」といった関連分野の専門家も候補として提示。利用者のネットワーク内でより繋がりやすい人物を優先表示するなど、実用性も考慮されています。
しかし、この機能の実現は容易ではありませんでした。13億人という膨大なユーザーデータを処理し、瞬時に的確な結果を返すには、既存のシステムでは限界があったのです。特に、検索の関連性と応答速度の両立が大きな課題となり、開発チームは数ヶ月にわたり試行錯誤を重ねました。
課題解決の鍵となったのが、「クックブック」と称されるLinkedIn独自の開発手法です。まず、非常に高精度な巨大AIモデルを「教師」として育成。その教師モデルが持つ知識を、より軽量で高速な「生徒」モデルに教え込む「蒸留」というプロセスを採用しました。これにより、性能をほぼ維持したまま、実用的な速度を達成したのです。
さらに、検索速度を抜本的に改善するため、データ処理の基盤を従来のCPUからGPUベースのインフラに移行。入力データをAIが要約して処理量を20分の1に削減するなどの工夫も凝らし、最終的に検索スループットを10倍に向上させました。こうした地道な最適化が、大規模サービスを支えています。
LinkedInの幹部は、流行の「AIエージェント」を追うのではなく、まずは推薦システムのような実用的な「ツール」を磨き上げることが重要だと語ります。今回の成功体験を「クックブック」として体系化し、今後は他のサービスにも応用していく方針です。企業におけるAI活用の現実的なロードマップとして、注目すべき事例と言えるでしょう。