AI自動運転、ロンドンの難路を「人間らしく」走破

ロンドンの厳しい環境

狭く曲がりくねった道路網
予測不能な歩行者や自転車
天候と複雑な交通事情
自動運転への懐疑的な国民性

WayveのAIアプローチ

人間のように学ぶAIモデル
詳細な地図に依存しない汎用性
未知の状況への高い適応力
控えめだが人間的な運転挙動
詳細を読む

英国スタートアップWayveが、世界で最も運転が難しい都市の一つ、ロンドンで自動運転車の公道試験を実施しました。同社が開発した「人間のように学ぶ」AIは、複雑な交通状況下でも安全な走行を披露。2026年にもUberと提携し、完全自動運転のロボタクシーサービスを開始する計画で、巨大市場攻略への試金石となりそうです。

ロンドンは自動運転車にとって悪夢のような環境です。馬車時代から続く狭く曲がりくねった道、頻繁な路上駐車、予測不能な歩行者や自転車、そして複雑な環状交差点(ラウンドアバウト)。既存のルールベースの自動運転技術では対応が困難なシナリオが、日常的に発生します。

この難題に対し、WayveはエンドツーエンドのAIモデルで挑みます。これは、膨大な運転データから人間のドライバーのように運転方法を直接学習するアプローチです。競合のWaymoなどが用いる詳細な3Dマップや厳密なルール設定を必要とせず、初めての場所でも柔軟に対応できる汎用性の高さが最大の強みです。

実際の試乗では、その特徴が明確に表れました。運転は熟練ドライバーのような俊敏さではなく、免許取り立てのドライバーのように少し内気で慎重。しかし、急な割り込みや道路工事、杖をついて車道に出ようとする歩行者など、予期せぬ事態には人間らしい自然な反応で、減速や回避を的確に行いました。

このアプローチは、異なる交通文化を持つ世界中の都市へ技術を展開する上で大きな利点となります。同社はすでに世界500都市で実証実験を行う「AIロードショー」を実施。ロンドンのタクシー運転手が習得する膨大な地理知識「ナレッジ」をAIが代替する可能性を示唆しています。

Wayveの「完璧より人間らしい」運転スタイルは、技術的なブレークスルーであると同時に、自動運転への不信感が根強い市場で、社会受容性を得るための鍵となるかもしれません。今後のサービス展開が、業界の新たな標準を築くか注目されます。