MIT研究:AIと人間の「思考コスト」は驚くほど類似

推論モデルに見る人間との共通点

AIと人間は思考コストが類似
難問ほどAIも処理量が増加
設計でなく自然発生的な収束

実験結果と今後のAI開発

解答時間とトークン数が相関
算術は軽く抽象推論は重い
言語でなく抽象空間で思考
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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、最新のAI推論モデルが人間と同様の「思考コスト」を要することを学術誌『PNAS』で発表しました。人間が複雑な問題に時間をかけるのと同様に、AIも難問に対しては内部処理を増やす傾向があることが明らかになりました。

従来のChatGPTのような大規模言語モデルは即答を得意としていましたが、複雑な推論は苦手でした。一方、新たな推論モデルは問題を段階的に処理することで、数学やプログラミングなどの難問解決能力を劇的に向上させています。

研究では人間とAIに同じ課題を与え、人間の「思考時間」とAIの「内部トークン数」を比較しました。その結果、算術問題は比較的負荷が低く、抽象的な推論問題は負荷が高いという傾向が、人間とAI双方で驚くほど一致しました。

この類似性は意図的な設計によるものではなく、正答率を追求した結果としての自然発生的な収束です。AI開発者が人間模倣を目指さずとも、高度な知能システムは似たような処理プロセスに行き着く可能性を示唆しています。

興味深いことに、AIは思考過程で言語のようなトークンを生成しますが、実際の計算は人間と同様に非言語的な抽象空間で行われているようです。この発見は、AIの進化だけでなく人間の脳の理解にも新たな視点を提供します。