AIが切り拓くディープテックの最前線:自動運転と核廃棄物処理
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HyprLabsは、元Zoox共同創業者ティム・ケントリー=クレイ氏が率いるサンフランシスコとパリを拠点とする17人のスタートアップです。同社は改造したTesla Model 3を使ってサンフランシスコ市内で約1年半にわたり自動運転ソフトのテストを重ねてきました。
同社の核心技術は「ランタイム学習」と呼ばれる独自アプローチです。トランスフォーマーモデルをベースに、人間の監視のもとで走行しながらリアルタイムに学習し、新規なデータのみをクラウドの「マザーシップ」に送信して継続的に更新します。
HyprLabsの強みはデータ効率にあります。Waymoが1億マイル以上の完全自動走行データを持つのに対し、同社はわずか4000時間(約10万キロ相当)の走行データだけでシステムを動作させています。これは機械学習の効率化が進んだ時代ならではのアプローチです。
同社はHyprdrive製品を他のロボティクス企業へのライセンス提供で収益化を目指しており、将来的にはR2-D2とソニックの掛け合わせと表現する独自のロボットの製造・運用も計画しています。ただし現段階では生産・安全基準への適合は宣言していません。
MITの核科学・工学科に在籍するダウレン・サルセンバエフ氏は、高レベル放射性廃棄物(HLW)の処理という核エネルギー最大の課題に取り組んでいます。カザフスタン出身で幼少期から大気汚染に悩まされてきた同氏は、脱炭素化への強い動機を持っています。
サルセンバエフ氏の主要研究は、使用済み核燃料の崩壊熱をバイナリサイクルシステムで地熱エネルギーとして取り出すコンセプトの開発です。使用済み燃料キャニスターは保守的な試算でも約150度に達しており、この熱エネルギーを二次流体で回収してタービンを駆動します。
同氏はさらに、放射性核種の地層中での輸送を予測するシミュレーションの高速化にもAIを活用しています。従来は高性能クラスターで数日から数週間かかる計算を、AIサロゲートモデルで大幅に短縮することに成功しています。
2つの研究は一見異なりますが、どちらもAI・機械学習技術を活用して社会インフラの根本的な課題を解決しようとする点で共通しています。自動運転の民主化と核廃棄物の無害化という二つのフロンティアで、少人数チームや個人研究者がディープテックの可能性を示しています。