Microsoft、量子コンピュータでAI化学シミュレーションを革新へ

量子×AIの融合戦略

量子計算で高精度な電子挙動データを生成
AIが古典計算機上で高速予測を実行
ヤコブの梯子」の精度壁を突破する構想

実証済みの材料探索成果

PNNLと3200万種の電池材料を評価
従来20年の探索を1週間未満に短縮
リチウム70%削減の固体電解質を試作

今後の課題と展望

実用化には100万物理量子ビットが必要
高忠実度量子計算機は10年以内に実現可能性
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Microsoftは、量子コンピュータで生成した高精度な電子挙動データをAIの学習に活用し、化学シミュレーションの精度と速度を飛躍的に向上させるハイブリッド手法を提案しました。従来の古典計算では近似に頼らざるを得なかった電子相関の問題を根本的に解決する狙いです。

この構想は物理学者パーデュー氏が提唱した計算複雑性の階層「ヤコブの梯子」を拡張したものです。梯子の下段は高速だが低精度、上段は高精度だが計算コストが膨大という従来の制約を、量子計算で上段の精度を現実的なコストで実現し、AIで高速化するという二段階で克服します。

実績として、Microsoft太平洋北西国立研究所(PNNL)と共同で3200万種以上の電池材料候補をAIで評価しました。従来手法では約20年かかる探索を1週間未満で完了し、最終的にナトリウムを使用しリチウムを70%削減した固体電解質のプロトタイプ電池を製作・試験しています。

将来的には、量子精度のAIモデルが触媒設計創薬、大気中の炭素固定、永久化学物質の除去など幅広い分野で活用される見通しです。反応経路のエネルギー障壁を正確に計算することで、有望な候補物質を初回で正しく特定する「ファーストタイムライト」の実現が期待されます。

ただし実用化には約100万個の物理量子ビットと1000兆分の1という極めて低いエラー率が必要です。DARPAの見通しでは高忠実度量子計算機は10年以内に実現可能とされており、化学者・量子計算・AI研究者の分野横断的な協力が不可欠だとMicrosoftは強調しています。