米ユタ州、AIチャットボットによる精神科薬の処方更新を許可
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米ユタ州は、サンフランシスコのスタートアップLegion HealthのAIチャットボットが精神科の維持薬を処方更新できる1年間のパイロットプログラムを承認しました。AIに臨床的権限を委譲するのは同州で2例目であり、全米でも極めて異例の試みです。
対象となるのはフルオキセチン(プロザック)やセルトラリン(ゾロフト)など15種類の低リスク維持薬に限定されます。利用者は既に医師から処方を受けた安定した患者である必要があり、直近の処方変更や精神科入院歴がある場合は除外されます。月額19ドルのサブスクリプション形式で、4月中に開始予定です。
患者は本人確認と既存処方の証明を行った上で、症状や副作用に関するAIの質問に回答します。自殺念慮や重篤な反応などのリスク要因が検出された場合は、臨床医へのエスカレーションが求められます。最初の1,250件は医師による詳細レビューが義務付けられています。
しかし精神科医からは強い懸念が示されています。ユタ大学のBrent Kious教授は、AIによる処方更新の利点は「過大評価されている」と指摘し、最もケアを必要とする患者へのアクセス改善にはつながらないと述べました。安定した既存患者は通常、予約なしでも処方更新が可能だからです。
ハーバード大学のJohn Torous教授は、処方には薬物相互作用の確認以上の判断が必要であり、現在のAIが患者固有の文脈を理解できるか疑問を呈しました。また、チャットボットでは患者が望む回答を意図的に入力する可能性があり、対面診療で得られる非言語的情報を見逃すリスクがあると警告しています。
さらに深刻な懸念として、先行するDoctronic社のAI処方パイロットでは、セキュリティ研究者がシステムを操作し、ワクチン陰謀論の流布やオピオイド投与量の3倍増加といった危険な挙動を引き出すことに成功しています。Legion社は厳格なガードレールを設けていると主張していますが、透明性の不足が批判されています。
Legion社は全米展開を2026年中に実現する意向を示しており、共同創業者は「処方更新をはるかに超える大きな動きの始まり」と位置づけています。一方、専門家からは「より多くの科学的根拠と厳格な検証が必要」との声が上がっており、AI医療の規制と安全性を巡る議論が今後さらに活発化する見通しです。