ESPNのポーカー中継にAI、プロは精度に疑問

ツールの仕組み

中継にしぐさ解析AI
視線や瞬き、姿勢を数値化
米国空軍のAI技術者が開発

プロが指摘する限界

学習データは3卓分の映像
呼吸や脈拍はカメラ外
意図の推定は不可能

今後の広がり

決勝卓では不使用
スマートグラス規制を予想
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アメリカのスポーツ専門局ESPNが、2026年7月に生中継したポーカー世界大会「World Series of Poker」メインイベントで、選手のしぐさから手札を推定するAIテル検出ツールを試験的に使いました。開発したのはアメリカ空軍のAI技術者ルーク・ギール氏で、視線や瞬きの回数、姿勢、チップの扱い方などを解析し、強い完成手かドローかブラフかを確率として画面に示す仕組みです。

ポーカーでは相手の無意識のくせ、いわゆるテルを読む力が、カードそのものと並ぶ勝敗の分かれ目とされてきました。中継では選手の動きの各指標と手札の強さを示すグラフがテキストで重ねて表示され、ポーカー界からは精度や是非を問う声が上がりました。

取材に応じたプロが最も問題視するのは、学習データの少なさです。今年のメインイベントには9000を超えるエントリーがありましたが、カメラが入っていたのは3卓のみで、同じ選手が繰り返し映る機会は限られていました。決勝卓に進んだプロ歴17年のマイケル・ガリアーノ氏も、中継映像を見返して対戦相手を研究したものの、実際に使える情報は多くないと語ります。

WSOP年間最優秀選手に2度輝いたショーン・ディーブ氏は、テルの幅の広さを指摘します。脚の動き、チェックの仕方、発話、呼吸、脈拍まで含まれ、その多くはカメラでは捉えられないといいます。AIは映像や音声のパターンを追えても、その裏にある意図までは読み取れません。

開発者のギール氏自身も、サンプル数が多いほうが望ましいと認め、他の大会で実施した盲検テストの結果はまちまちだったと明かしています。ESPNから中継制作を請け負うオマハ・プロダクションズは、決勝卓ではツールを使わないと回答し、その理由の説明は避けました。

参加費が6桁ドルに達するハイローラー大会では、常連プロの映像が大量に蓄積されており、AIによる分析が実利に結び付く余地は残ります。ただし対局中の電子機器は禁じられており、ディーブ氏はスマートグラスも遠からず規制されると見ています。自分のチームとAIが勝負するなら迷わずチームに賭ける、というのが同氏の見立てです。