Otter.aiが法人向けAPI公開、会議記録を「企業知識基盤」へ進化
Otter.aiの新戦略
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会議記録AIを提供するOtter.aiは今週、法人向けの新製品スイートとAPIを発表しました。同社は、単なる会議の書き起こしツールという地位から脱却し、会議データを一元管理する「企業向け知識基盤(Corporate Knowledge Base)」へと戦略を転換します。CEOのサム・リアン氏は、この進化が企業の成長を加速させ、測定可能なビジネス価値を生み出すための「会話のシステム・オブ・レコード」になると強調しています。
この転換の核となるのがAPIの提供です。これにより、ユーザーはJiraやHubSpotといった外部プラットフォームとOtterのデータをカスタム連携できるようになります。会議で生まれた重要な情報を他の業務フローに自動的に組み込み、会議の記録を単なる文書として終わらせず、実務上の資産として活用することが可能になります。
新スイートには、さらに二つの主要機能が加わります。一つは、ユーザーのOtterデータを外部のAIモデルと連携させるMCPサーバー。もう一つは、企業の会議メモやプレゼンテーション全体を検索し、必要な情報を取り出すAIエージェントです。これらは、社内に点在する「会議知」を集約・活用しやすく設計されています。
背景には、AIブームにより会議記録ツールの市場競争が激化していることがあります。2022年以降、GranolaやCirclebackといった競合他社が台頭し、既存プレイヤーも注目を集めています。Otterは、こうしたレッドオーシャンから脱却し、知識管理というより高付加価値な領域にシフトすることで、ビジネスの拡大を目指しています。
リアン氏は、企業の非効率性の多くは「情報サイロ」から生じると指摘します。会議に存在する膨大な知識を一元化して広範に共有することで、チーム間の連携不足を解消できると期待されています。ただし、機密情報に関する会議については、ユーザーがアクセスを制限できるパーミッションシステムが用意されています。
一方で、AIによる広範な記録・共有はプライバシー上の懸念も伴います。同社は過去に無許可録音に関する集団訴訟の対象となっています。リアンCEOは、プライバシー懸念は業界全体の問題であるとしつつも、「我々は歴史の正しい側にいる」と主張。AIによるイノベーション推進には、会議にAIを導入し、情報へのアクセスを最大化することが不可欠であるとの見解を示しています。