Liquid AI、エッジAI開発の「設計図」を全公開
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MIT発のスタートアップLiquid AIは2025年12月1日、最新AIモデル「LFM2」の技術レポートを公開しました。これは単なるモデル提供にとどまらず、企業が独自のハードウェア制約に合わせて高性能な小規模モデルを構築するための「設計図」を提供するものです。巨大なGPUクラスターを前提としないこのアプローチは、コストやプライバシーを重視する企業のAI戦略に、オンデバイスでの実用化という新たな選択肢をもたらします。
LFM2の最大の特徴は、一般的なCPUやモバイルSoC上での動作に最適化されている点です。独自開発されたハイブリッドアーキテクチャにより、同規模の競合モデルであるLlama 3.2やGemma 3と比較して、推論速度と品質の両面で高いパフォーマンスを発揮します。これにより、スマートフォンやノートPC、産業機器など、通信環境や電力に制約のあるエッジ環境でも、遅延の少ない高度なAI処理が可能になります。
今回公開された51ページのレポートでは、アーキテクチャ探索プロセスやトレーニングデータの混合比率、知識蒸留の手法など、モデル開発の詳細なレシピが明かされました。企業はこの情報を参照することで、ブラックボックス化した外部APIに依存することなく、自社のデータセンターやデバイス上で完結するAIシステムを構築・運用できるようになります。これは、セキュリティ要件の厳しい産業分野において大きなアドバンテージです。
さらにLFM2は、テキストだけでなく画像や音声にも対応するマルチモーダル機能を、トークン効率を極限まで高めた形で実装しています。現場でのドキュメント理解や音声操作といったタスクを、データを外部に送信することなくローカルで完結させることが現実的になります。Liquid AIの提示するこのモデルは、エッジとクラウドが適材適所で連携する「ハイブリッドAI」時代の標準的な構成要素となるでしょう。