米地方に押し寄せるデータセンター、雇用創出の実態
雇用ゼロの現実
地方自治体の構造的弱さ
詳細を読む
米国の地方都市にAI向けデータセンター建設の波が押し寄せています。メイン州ジェイでは、2020年に閉鎖した製紙工場の跡地に5億5000万ドル規模のネオクラウド型データセンターが計画されており、開発者は125〜150人の常勤雇用を約束しています。州知事は雇用創出を理由にデータセンター建設の一時停止法案を拒否しましたが、研究者らはその見通しに強い疑問を呈しています。
ボール州立大学のマイケル・ヒックス教授がテキサス州254郡を対象に行った因果分析では、データセンター開設による純雇用創出効果は事実上ゼロでした。建設期間中はホテルが満室になるほどの経済効果が見られるものの、作業員は数週間で去り、運用段階で残る常勤職は30〜50人程度です。マイクロソフトのワシントン州クインシー施設では、建設時500人が稼働後はわずか50人に減少しました。
全米規模でみても、データセンターへの公的補助金は常勤1雇用あたり200万ドル超に達しています。ニューヨーク州では7700万ドルの税優遇で生まれた常勤職がわずか1人という事例も報告されています。調査団体Good Jobs Firstのアンソニー・エルモ氏は、地方自治体が交渉力や法的専門知識を欠いたまま大手開発企業と契約を結んでいる構造的問題を指摘しています。
ヒックス教授は、データセンターが地方にもたらし得る真の恩恵は雇用ではなく固定資産税収だと主張します。ジェイの場合、5億5000万ドルの施設は町内の全住宅・全事業所の評価額合計を上回り、適正に課税すれば学校や公共インフラへの長期投資が可能になります。しかし多くの州は税優遇策を競って整備しており、35州以上がデータセンター誘致のインセンティブを提供している状況です。
根本的な矛盾も浮き彫りになっています。データセンターは雇用創出の名目で公的支援を受けながら、そこで稼働するAIは人間の労働を自動化・代替するために設計されています。Meta、Amazon、OpenAI、Oracleはデータセンターに数十億ドルを投じる一方で人員削減を進めており、専門家は地方が過去50年間繰り返されてきた産業誘致の失敗パターンを再び辿っていると警告しています。