パーソナライズ健康テック、慢性疾患の壁に直面
理想と現実の乖離
技術成熟への長い道のり
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ウェアラブルやAIコーチによる「パーソナライズドヘルス」が健康テック業界の次なる聖杯として注目を集めています。各社は個人の生体データに基づく運動・栄養・サプリメントの最適提案を目指していますが、慢性疾患を抱える人々にとっては現状のアルゴリズムが大きな限界を露呈しています。The Vergeのレビュアーが自身の経験を通じ、その理想と現実のギャップを指摘しました。
具体例として挙げられたのが、今週「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」から「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」へ改名された疾患です。全世界で約1.7億人、女性の8人に1人が罹患するこの疾患は、インスリン抵抗性・肥満・心血管疾患など複数の臓器に影響を及ぼしますが、同じ診断名でも症状や有効な治療法が個人ごとに大きく異なります。
現行の健康テック製品は、こうした複雑な疾患への対応が不十分です。フィットネストラッカーのカロリー消費推定にはPMOS患者の基礎代謝低下が反映されず、生理周期予測機能はホルモン避妊薬による体温変動を考慮できないケースが多いと報告されています。結果として「パーソナライズ」を謳いながら、標準的な健康状態を前提としたアルゴリズムに依存している現状があります。
背景には構造的な問題もあります。PMOSは1935年に初めて特定されましたが、疾患の本質を正確に反映する名称への変更には14年の議論と50以上の医療専門団体の合意が必要でした。医学的理解の進展速度とテック企業の製品投入スピードの間に根本的な不一致が存在します。
筆者は「パーソナライズドヘルス」の将来には慎重ながら楽観的な姿勢を示しつつも、現時点では利用者自身が独自に調査し、複数の医師に相談し、試行錯誤を重ねる必要があると強調しています。テック企業が今後、診断名・服薬・個別の健康特性に応じた「アルゴリズムモード」を開発することへの期待が述べられました。