AIが衛星画像で氷河後退を自動追跡
北極圏の氷河監視を拡大
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ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク校(FAU)の研究チームは、深層学習モデルを用いて世界各地の氷河の後退を衛星画像から自動追跡する手法を開発しました。この研究はIEEE国際画像処理会議(ICIP)に採択され、従来は人手に頼っていた氷河のカービング前線(氷山が海に崩落する境界線)の特定作業を大幅に効率化するものです。
従来の深層学習モデルは、訓練データに含まれない地域の氷河に適用すると精度が大きく低下する課題がありました。研究チームはこの問題に対し、氷河1つあたり手動ラベル付き画像1枚、氷混合物のない夏季の参照画像、そして岩盤の地図という3種類の情報を追加することで、平均誤差を1,131.6mからわずか68.7mまで削減しました。この精度は人間の手動アノテーションと同等の水準です。
特に効果的だったのは、夏季の参照画像を用いる手法です。氷河の末端部には氷山や海氷が混在する「氷混合物」が堆積し、境界線の判定を困難にします。氷混合物のない夏季画像を参照点として提供することで、モデルの誤差は445.3mから204.6mに改善されました。さらにOpenStreetMap由来の岩盤地図を加え、5モデルのアンサンブルで最終精度を達成しています。
この手法はすでに実用に移されています。共同研究者のDakota Pyles氏は、ノルウェー領スバールバル諸島の全145氷河について、2015年から2024年の9年間にわたる月次のカービング前線位置を抽出しました。合計20万3,294件以上のアノテーションが自動生成され、従来の年次・10年単位の研究と比べて格段に細かい時間解像度での氷河動態の把握が可能になりました。
研究チームは今後、この手法を北極圏の約1,500の氷河に拡大する計画です。共同筆頭著者のNora Gourmelon氏は「特定の地域や衛星に合わせた少量のラベル付きデータで訓練すれば、撮影条件と対象地域が一定である限り再調整は不要」と述べており、世界規模での氷河の長期モニタリングの部分的自動化が視野に入っています。