軌道データセンター構想、実現は困難

壮大な計画

SpaceXが最大100万基申請
2、3年で宇宙が最安と主張
IPO直前にAI1設計公表

立ちはだかる壁

100万基へ約1.7万回の打ち上げ
製造能力では最大25年
GPU冷却の放熱
天文観測への悪影響
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SpaceX創業者イーロン・マスク氏が2026年1月、ダボス会議で「2、3年以内にAI計算の最安の場所は宇宙になる」と述べ、低軌道に最大100万基の衛星から成る軌道データセンター構想を米連邦通信委員会(FCC)に申請しました。IPO直前には新型のAI1衛星データセンターの初期設計仕様も公表しています。しかしIEEE Spectrumは、この壮大な構想が実現にはほど遠いと分析しました。

最大の壁は規模の非現実性です。現在軌道上で稼働する衛星は約1万4500基で、その3分の2をStarlinkが占めます。100万基を打ち上げるには、60基積載可能なStarshipでも約1万6666回の打ち上げが必要で、2025年の記録である年165回の10倍でも10年かかる計算です。製造面でも年約4000基のペースを10倍にしても25年を要します。

技術面では宇宙での冷却が難関です。新興企業Starcloudが打ち上げたNvidiaのH100を1基動かすだけでも、放熱器の能力不足でチップをフル稼働できませんでした。700ワットのH100には60度で1.4平方メートルの放熱器が必要で、100メガワット級のデータセンターには巨大な放熱翼が2500枚必要となり、天文学者は星空が覆い隠されると懸念しています。

ではなぜハイパースケーラーは軌道データセンターを喧伝するのでしょうか。同誌の編集者は、マスク氏がxAIデータセンターを建設し、SpaceXで宇宙へ運び、Tesla太陽光パネルを作る構図を指摘し、「自分自身に支払っているようなもの」と述べました。地上のグリッド電力の逼迫を背景に、構想が理論から資本配分の段階へ移りつつあると評価するアナリストもいますが、打ち上げ費用や保守、採算性など根本的な課題は未解決のままです。