Zillow、AI投資効果は事前の測定基準で裏付け

難所は文脈の保持

データ基盤より文脈維持が難所
顧客体験を横断する持続的文脈層
汎用より特化型モデルを自社構築

Gleanで効率化

本番稼働の数千のGleanエージェント
MCPゲートウェイ連携を一元化
モデルルーティングでトークン半減

企業への示唆

AI導入前の測定基準整備
規制データには追加の統制
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不動産テック大手のZillowは20日、AIカンファレンス「VB Transform 2026」で、同社エンジニアリング担当SVPのトビー・ロバーツ氏とGlean共同創業者兼CEOのアービンド・ジェイン氏が登壇し、顧客の長い取引体験全体で文脈を引き継ぐAIアーキテクチャの設計思想を語りました。Zillowは米国不動産取引の約8割に関わり、ChatGPT登場以前からAIを活用してきた企業です。

ロバーツ氏によると、AIの取り組みは多くの企業と同様にデータ基盤の整備から始まりました。データメッシュの採用や明確なデータリネージ、権限とID管理を伴うガバナンス構造を整えたといいます。しかし本当の難所はデータではなく、顧客が取引のどの段階にいるかを記憶し、どの接点に現れても文脈を引き継ぐ仕組みの構築でした。

そのためZillowは、単一のモデルAPIに顧客を通すのではなく、自社独自のアーキテクチャを構築しました。Zestimateなど20年に及ぶ機械学習の蓄積を生かし、汎用の大規模モデル一つに頼るのではなく、タスクごとに微調整した小型モデルを組み合わせる方針を採用しています。この仕組みは社内でGleanと並行して稼働します。

ジェイン氏によれば、Zillowでは現在数千のGleanエージェントが本番稼働し、社内で数万回の実行を通じて反復作業を処理しています。Gleanの価値は、財務・法務・マーケティングの各部門が同じシステムへの接続を個別に作り直す手間を、MCPゲートウェイで一度に集約する点にあります。これはコスト削減の手段でもあり、ほとんどのタスクを安価な小型モデルへ振り分けるモデルルーティングと、事前計算した文脈の活用によってトークン消費を最大で半減できるといいます。

セッションでは企業向けの実践的な示唆も示されました。ロバーツ氏は、AIによってコード出荷が40%増加したと信頼性をもって説明できるのは、数年前に整備したDORA指標のベースラインがあるからだと指摘し、測定基準はAI導入の後ではなく前に整えるべきだと強調しました。加えて、規制対象の機密データには権限の継承だけに頼らず、独自の厳格なルールと常設のコンプライアンスチェックを重ねる必要があるとしています。

ジェイン氏は「モデルだけでは企業内のAI自動化を実現できない。企業の文脈と結びつける必要がある」と語りました。文脈を単なる機能ではなくコストを左右する要素として捉える視点が、これからのエンタープライズAI構築の鍵になりそうです。