ソフト失敗20年記録、IEEE Spectrum寄稿者引退
20年の連載と実績
問い直した常識
詳細を読む
米国電気電子学会(IEEE)の技術誌IEEE Spectrumは8月1日、20年以上にわたってソフトウェア開発の失敗を追い続けた寄稿編集者、ロバート・N・シャレット氏の引退を伝えました。同氏は1750本を超えるブログ記事で数百件のIT失敗事例を記録した人物です。今後は自然写真と小説の執筆に専念します。
きっかけは2005年の企業向けソフトウェア開発特集でした。リスク管理とソフトウェア工学の権威である同氏が寄稿した「Why Software Fails」は、今も大学の工学系授業で読まれる定番になっています。2007年には同誌のブログ「Risk Factor」を任され、10年以上の連載が続きました。
連載の集大成である「Lessons From a Decade of IT Failures」は、優れたインフォグラフィックスとして2016年にジェシー・H・ニール賞を受賞しました。皮肉なことに、その図表を作った制作ソフトはすでにサポートが終了し、成果物は失われています。ソフトの寿命が記録の寿命を決めるという、同氏が書き続けた主題そのものを示す結末です。
仕事はブログにとどまりません。電子カルテの実態を掘り下げた記事、全12回の連載「The EV Transition Explained」、自動化のわなが航空機や鉄道、自動車にもたらす危険を描いた「Automated to Death」など、取材に基づく長編も数多く残しました。最も影響が大きかった記事として本人が挙げたのは、2013年の「The STEM Crisis Is a Myth」です。
一貫した目的は、見えないソフトウェアを見えるようにすることでした。「ソフトウェアは身の回りにあふれているのに、私たちはそれを認識していない。失敗の影響は感じても、原因そのものは見えない」と同氏は語っています。「置いた仮定は、受け入れたリスクである」という持論は、AIを含む複雑なシステムを導入する経営層にも重い問いを投げかけるのではないでしょうか。