音楽メジャー3社がAI新興と提携、対立から収益化へ転換

AIを敵から収益源へ

メジャー3社がKlayと包括契約
訴訟相手のUdioとも和解成立

リミックス経済圏の幕開け

ユーザー主導の楽曲改変を商品化
マイクロペイメントで対価回収

混沌とする権利と市場

公式とブラックマーケットが混在
収益分配の計算は複雑化
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2025年11月、音楽業界の巨人たちが動きました。ユニバーサル、ソニー、ワーナーのメジャー3社は、AI音楽スタートアップ「Klay」との提携を発表。かつて著作権侵害で訴えたAI技術をパートナーとして迎え入れ、AI生成楽曲を新たな収益源とする戦略へ大きく舵を切っています。

提携の中核となるKlayは、「倫理的AI」を標榜するプラットフォームです。ユーザーはライセンスされた数千曲をもとに、独自のスタイルで楽曲をリミックス可能になります。ワーナーはこれを「アーティストの代替ではなく、創造性を拡張するツール」と位置づけ、ファンによる二次創作をビジネスに取り込む構えです。

法廷闘争も収束に向かっています。ユニバーサルとワーナーは、以前訴訟を起こしていた生成AI企業「Udio」と相次いで和解し、ライセンス契約を締結しました。業界はAIを排除するのではなく、ストリーミングと同様のマイクロペイメントモデルで管理し、対価を得る道を選んだのです。

しかし、課題は残ります。Spotifyが数千万のスパム楽曲を削除したように、許諾を得ない「ブラックマーケット」のAI楽曲は依然として氾濫しています。正規のAIリミックスと非正規の模倣曲が混在する中で、複雑極まる権利処理と収益分配をどう適正化するか、実務的な混乱は避けられないでしょう。

結局のところ、レーベル側のメッセージは明確です。「我々の管理下で、我々に利益が入るならAIも許容する」。音楽業界は今、AIとの共存を図りつつ、その果実を独占しようとする囲い込みのフェーズに突入しました。