Thiel出資の新興企業、AIで報道の正確性を審査
Objectionの仕組みと狙い
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Peter Thiel氏とBalaji Srinivasan氏が出資するスタートアップObjectionが、AIを使って報道記事の正確性を審査するプラットフォームをローンチしました。創業者のAron D'Souza氏はGawker訴訟を主導した人物で、2,000ドルの料金を支払えば誰でも特定の記事に対して異議を申し立て、公開調査を開始できる仕組みです。シード資金として「数百万ドル」を調達しています。
ObjectionはOpenAI、Anthropic、xAI、Mistral、Googleの各社LLMを陪審員のように使い、証拠を一つずつ評価します。元法執行機関や調査報道記者のフリーランスチームが証拠を収集し、最終的に記者の正確性と実績を数値化した「Honor Index」を算出します。規制文書や公式メールなどの一次資料が最も高く評価される一方、匿名の内部告発者の証言は最低ランクに位置づけられます。
メディア法の専門家からは強い懸念の声が上がっています。ミネソタ大学のJane Kirtley教授は「報道機関が嘘をついているという主張をさらに一つ積み重ねるもの」と批判し、有料制である点が一般市民のためではなく権力者に有利に働くと指摘しました。名誉毀損訴訟の専門弁護士Chris Mattei氏も「富裕層と権力者のための高度な保護収奪だ」と断じています。
記者にとっては事実上の二重拘束が生じます。情報源の詳細をObjectionの暗号ハッシュシステムに提出するか、保護を選んで低い評価を受け入れるかの二択を迫られるためです。参加しなければ「判定不能」の結果が返され、正確な報道であっても疑念を生む可能性があります。さらに、X上で係争中の記事に警告を表示する「Fire Blanket」機能も、審査完了前から報道の信頼性を損なうおそれがあります。
D'Souza氏はObjectionを「Xのコミュニティノートと同様の事実検証の仕組み」と位置づけ、内部告発者を黙らせる意図はないと主張しています。しかし、AI自体がバイアスやハルシネーションの問題を抱えるなか、LLMを真実の裁定者として使うことへの疑問は根強く、Kirtley教授は「なぜAIが取材した記者より信頼できると思うのか」と問いかけています。