既設光ファイバーで鉄道の安全を常時監視する新技術
分散音響センシング
AIによる異常検知
実用化への展望
詳細を読む
中国の東南大学のSasha Dong氏らの研究チームは、鉄道の線路沿いに埋設されている既存の光ファイバーケーブルを活用し、列車の安全状態を常時監視する技術を開発しました。この研究は2026年3月5日にIEEE Journal of Optical Communications and Networkingに掲載され、分散音響センシング(DAS)と呼ばれる手法により、車輪の故障や防音壁の破損など複数の安全問題を高精度で検出できることが実証されています。
DASは光ファイバーにパルス光を送り、散乱光の伝搬を解析することでケーブル沿いの振動を検出する技術です。従来の監視手法であるカメラ・レーダー・超音波センサーは、路線上の特定地点しかカバーできず、天候や電源の制約も受けやすいという課題がありました。DASなら既設の通信用光ファイバーをそのままセンサーとして転用でき、追加のインフラ整備が不要です。
研究チームは機械学習モデルを訓練し、DASデータから各種の安全問題を識別しました。列車の走行軌跡の検出では98.75%の精度を達成しています。正常な車輪の振動が60Hz以下に集中するのに対し、故障車輪は100Hzまで周波数が上昇することを発見し、車輪異常の判別に成功しました。防音壁の損傷検出では99.6%、フェンスの不法侵入や落石などの異常事象の検出でも97.03%の精度を記録しています。
Dong氏は「1本の既存光ファイバーが、適切なモデル設計により多数の監視タスクを同時にこなせることが最も驚きだった」と述べています。今回の実験は管理された環境下で行われたものであり、高速列車の実運用条件でのデータ収集が今後の課題です。しかし鉄道には既に広範な光ファイバー網が敷設されており、低コストで広域の安全監視を実現できる可能性があるとしています。