AI咽頭カメラでインフル判定、鼻の綿棒検査が不要に
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日本のAIスタートアップ、アイリスが開発した医療機器「ノドカ」が、のどの奥を撮影した画像から10秒あまりでインフルエンザを判定します。小型カメラで咽頭を撮り、問診情報などと合わせてAIが解析する仕組みで、鼻の奥に綿棒を差し込む従来の検査を置き換えます。2022年に日本初のAI搭載「新医療機器」として承認と保険適用を受け、すでに国内2000を超える医療機関に導入されています。
のどの診察は体温測定や聴診と並ぶ基本の手技ですが、そのやり方は古代からほとんど変わっていません。病原体ごとに咽頭に現れる所見は異なり、そこには膨大な情報が眠っている、というのが同社の見立てです。ノドカは発症から早い段階でも使える点も、患者の負担が大きい鼻腔検査との違いです。
創業は2017年。当時はのどに特化した学習データが存在せず、同社は約100の医療機関に専用カメラを貸し出し、患者の同意を得ながら約3年かけてデータを収集しました。ハードウェア開発、学習データの確保、AIによる診断支援が本当に成立するのかという三つの不確実性を同時に越えたことが、実用化への道を開いています。
実用化後は精度の向上が加速しました。臨床で使われるたびに匿名加工されたデータが蓄積され、発売前は数十万枚だった咽頭画像は数百万枚規模に達しています。このネットワーク効果が参入障壁となり、同じ領域に後発企業は現れていません。
同社の視野は感染症にとどまりません。咽頭画像には粘膜や血管のパターンが写るため、糖尿病や高血圧といった生活習慣病を検知するAIの研究開発も進めています。元救急医である同社CEOは、10年ほどで「のどの写真1枚で幅広い検査ができる時代が来る」と語り、AI推論のコストが極めて低いため検査項目を増やしても提供コストはほとんど変わらないと説明します。
AIを医療の各段階に組み込む「再設計」に向け、CEOは規制改革の提言や省庁への働きかけも続けています。体の粘膜は共通性が高いとされ、日本で蓄積したデータとアルゴリズムは海外にも移せる見通しです。海外展開の準備はすでに始まっており、米国での治験も検討されています。