スタンフォード大のAI群が設計した薬をMerckも独自開発
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スタンフォード大学のジェームズ・ゾウ准教授は8月7日、VB Transform 2026で、数万体のAIエージェントを企業のように組織化した仮想バイオテックを公開しました。2025年1月以前の公開データだけを用い、肺がんの標的CD276向け抗体薬物複合体を自律設計。数カ月後、製薬大手Merckが同じ治療設計へ独自に到達しました。
出発点は、ゾウ氏が自身の研究室を模して作った5〜8体規模の仮想ラボでした。AIの教授役が主任研究者を務め、専門の異なるAI学生役が定例会議で議論する構成で、エージェント向けにスタンフォードを再現した学校まで用意し追加学習を行わせています。この仮想ラボは新型コロナ変異株向けのナノボディを設計し、実験では人間が設計した既存品より高い結合性能を示しました。
なぜ単一の高性能モデルに計算資源を集中させず、数万体に分けるのでしょうか。同じ課題で比較したところ、複数エージェント側は議論や意見の対立を通じて誤りの連鎖に強い解を導いたといいます。互いを説得する過程が、単独のモデルより創造的で頑健な推論を引き出すという説明です。
規模を広げるほど、隘路になるのは情報を束ねる基盤です。既存のデータベースにMCPをかぶせても、人間や旧来のアルゴリズム向けのAPIはエージェントには扱いにくく、論文PDFの図表を読み違えて誤情報を生みます。同チームは複数のデータベースをAI向けの仮想ファイルシステムに写し取るPaperclipを開発し、精度を高めつつ時間と費用を一桁以上減らせたと説明しました。
実証では3.7万体の治験エージェントが分断された臨床試験データを統合し、市場到達の確率が約5割高い創薬標的の特徴を突き止めました。ゾウ氏は今後の焦点を、手順を細かく指示するワークフローから、基盤と誘因と防護柵を与える環境の設計へ移すべきだと述べています。最適化の対象は個々のモデルではなく、協働を支える環境そのものだという主張です。