MIT、AIに物理を教えるGeoPTで学習データ6割削減
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MITコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)と清華大学の研究チームは、AIに物理の感覚を持たせる事前学習手法GeoPTを開発しました。3D形状に微小な粒子がぶつかって静止する動きを再現した合成データ130万件を学ばせ、車や航空機、ロボットの挙動をより正確に模擬できるようにするのが狙いです。最高性能への到達は従来手法の2倍速く、必要な教師データは最大6割少なくて済むといいます。
従来のシミュレーションは「数値ソルバー」と呼ばれる計算手法に頼り、3D形状の各点で物理量を求めてきました。丁寧な手順ですが時間がかかり、機体の安全性や空力を検証するのに十分なデータをそろえられないことが課題でした。GeoPTはこのボトルネックを、ラベルの付いていない合成データで埋めます。
鍵となるのが合成ダイナミクスです。小さな球体がさまざまな速度と角度で3D形状に向かい、接触した地点で貼り付く仕組みを、130万サンプル分観察させます。ビー玉と人形で物理を体で覚えるように、モデルは教師データを見る前に物理の勘所をつかむわけです。
効果は産業向けのベンチマークで確認されました。複雑な3D形状が風や表面圧力にどう反応するかを予測する課題では既存の最先端モデルを上回り、船体が空気と波を受ける実験では教師データ6割減で最高精度に4倍速く到達しています。学習していない光の物理でも、おもちゃのウサギを通る光の振る舞いを正しく再現したといいます。
「産業ベンチマークで高い性能を出せるなら、最も難しい物理課題を解けるということです」。共同筆頭著者でMITポスドクのHaixu Wu氏はこう語り、1億点を超えるメッシュの高精細シミュレーションを数秒で処理できると説明します。実機での試験回数を減らして設計図を検証したい技術者にとって、検証コストに直結する話です。
チームは今回の成果を物理基盤モデルへの前段階と位置づけ、扱う形状と物理現象の拡大を目指します。共同筆頭著者でMIT博士課程学生のMinghao Guo氏は「物理はテキストと画像に続くAIの第3のモダリティだ」と述べました。天候パターンの再現や材料試験、リアルな動画生成まで射程に入れば、AIが担える領域はさらに広がりそうです。