自主規制(政策・規制)に関するニュース一覧

大手AI、制裁対象のロシア偽情報を拡散か

主要AIの脆弱性

ChatGPTなど4大AIをISDが調査
ウクライナ関連質問への回答の18%
制裁対象のロシア国営メディアを引用
「データボイド」を悪用した偽情報

悪意ある質問で汚染

悪意のある質問ほど引用率が上昇
ChatGPT最多の引用数を記録
Gemini比較的良好な結果
EUの規制強化が今後の焦点

戦略対話研究所(ISD)の最新調査で、OpenAIChatGPTGoogleGeminiなど主要AIチャットボットが、ウクライナ戦争に関する質問に対し、EUで制裁対象となっているロシア国営メディアの情報を引用していることが判明しました。この調査は、AIが検索エンジンに代わる情報収集ツールとして利用者を増やす中、その情報選別能力と信頼性に深刻な警鐘を鳴らすものです。

ISDは4つのチャットボットに対し、5言語で300の質問を実施。その結果、全回答の約18%にロシア国家関連の情報源が含まれていました。特に、既存の意見を裏付けるよう求める「悪意のある」質問では、引用率が4分の1に上昇チャットボットがユーザーの意図を汲み、偏った情報を提示する「確証バイアス」の傾向が浮き彫りになりました。

チャットボット別の比較では、OpenAIChatGPTが最も多くロシアの情報源を引用しました。イーロン・マスク氏率いるxAIGrokは、親ロシア的なSNSアカウントを引用する傾向が見られました。一方、GoogleGemini頻繁に安全警告を表示し、4つの中では最も優れた結果を示したと報告されています。

この問題の背景には、信頼できる情報が少ない「データボイド」の存在があります。専門家は、ロシアの偽情報ネットワークがこの情報の空白地帯を意図的に狙い、大量の偽記事を生成することでAIモデルを「汚染」していると指摘します。一度AIに学習された偽情報は、権威ある情報として再生産される危険性をはらんでいます。

OpenAIは対策を認めつつも、これはモデル操作ではなく「検索機能の問題」だと説明。欧州委員会は事業者に対応を求めており、今後ChatGPTなどが巨大オンラインプラットフォームに指定されれば、より厳しい規制対象となる可能性があります。企業の自主規制法整備の両輪が求められます。

AI動画Sora、ディープフェイク検出標準の形骸化示す

検出標準C2PAの現状

OpenAIも推進する来歴証明技術
大手SNSが導入も表示は不十分
ユーザーによる確認は極めて困難
メタデータは容易に除去可能

求められる多層的対策

来歴証明と推論ベース検出の併用
プラットフォームの自主規制には限界
高まる法規制の必要性
OpenAI矛盾した立ち位置

OpenAI動画生成AI「Sora」は、驚くほどリアルな映像を作り出す一方、ディープフェイク検出技術の脆弱性を浮き彫りにしています。Soraが生成した動画には、その来歴を示すC2PA標準のメタデータが埋め込まれているにもかかわらず、主要SNSプラットフォーム上ではほとんど機能していません。この現状は、AI生成コンテンツがもたらす偽情報リスクへの対策が、技術の進化に追いついていないことを示唆しています。

C2PAは、アドビなどが主導しOpenAIも運営委員を務める、コンテンツの来歴を証明する業界標準です。しかしSoraで生成された動画がSNSに転載されても、その来歴情報はユーザーに明示されません。AI製か否かを見分けるのは極めて困難なのが実情です。

問題の根源は大手プラットフォーム側の対応にあります。MetaTikTok、YouTubeなどはC2PAを導入済みですが、AI生成を示すラベルは非常に小さく、簡単に見逃せます。投稿者がメタデータを削除するケースも後を絶たず、制度が形骸化しているのです。

AIコンテンツの真偽を確かめる負担は、現状ではユーザー側にあります。ファイルを保存し検証サイトにアップロードする手間は非現実的です。「検出の責任はプラットフォーム側が負うべきだ」と専門家は指摘しており、一般ユーザーが偽情報から身を守ることは極めて難しい状況です。

解決策として、C2PAのような来歴証明と、AI特有の痕跡を見つける推論ベース技術の併用が提唱されています。メタデータが除去されやすい弱点を補うためです。しかし、いずれの技術も完璧ではなく、悪意ある利用者とのいたちごっこが続くのが現状です。

技術企業の自主規制には限界があり、米国では個人の肖像権などを保護する法整備の動きが活発化しています。強力なツールを提供しながら対策が不十分なOpenAIの姿勢は「偽善的」との批判も免れません。企業には、より積極的で実効性のある対策が社会から求められています。

OpenAI方針転換、AIセクスティング市場が過熱

市場を牽引する主要プレイヤー

xAI恋愛コンパニオンGrok
成人向けに方針転換したOpenAI
月間2千万人超のCharacter.ai
恋愛AIの草分け的存在Replika

拡大がもたらす深刻なリスク

未成年者への精神的悪影響
ユーザーの自殺との関連性を指摘
ディープフェイクポルノの拡散
犯罪ロールプレイングへの悪用

OpenAIが2025年12月から、年齢認証済みの成人向けにエロティカを含むAI生成コンテンツを許可する方針を打ち出しました。イーロン・マスク氏率いるxAIが「Grok」で先行する中、この動きはAIと人間の関係性を新たな段階に進め、巨大テクノロジー企業がAIセクスティング市場へ本格参入する号砲となりそうです。背景には、AI開発に必要な莫大なコストを賄うための収益化圧力があります。

この市場を牽引するのが、イーロン・マスク氏のAIスタートアップxAIです。同社はAIチャットボットGrok」に、アニメ風のアバターと対話できる「コンパニオン」機能を追加。ユーザーに恋人のように振る舞い、性的な会話にも応じるこの機能は、月額30ドルからの有料プランで提供され、新たな収益源として注目されています。

対するOpenAIサム・アルトマンCEOは「成人ユーザーを成人として扱う」原則を掲げ、方針転換を表明しました。かつてAI恋愛ボットを短期的な利益追求と批判していましたが、姿勢を転換。背景には、AGI(汎用人工知能)という目標達成に向けた、莫大な計算コストと収益化への強い圧力があるとみられています。

しかし、AIとの親密な関係性の拡大は、深刻なリスクを伴います。特に未成年者への精神的な悪影響が懸念されており、AIチャットボットとのやり取りの末に少年が自殺したとされる訴訟も起きています。また、犯罪者が性的虐待のロールプレイングに悪用したり、ディープフェイクポルノが拡散したりする事例も後を絶ちません。

こうした問題に対し、規制の動きも始まっています。例えばカリフォルニア州では、AIチャットボットが人間でないことを明示するよう義務付ける法律が成立しました。しかし、テクノロジーの進化の速さに法整備が追いついていないのが現状です。企業側の自主規制努力も一部で見られますが、実効性のある対策が急務となっています。

巨大AI企業が収益性を求めアダルト市場へ舵を切る中、私たちはAIとどう向き合うべきでしょうか。利便性の裏に潜むリスクを直視し、倫理的なガイドライン法整備を急ぐ必要があります。ユーザーと開発者の双方が、この新技術の社会的影響に責任を持つ時代が訪れています。

世界のリーダーら、AI開発に「越えてはならない一線」を要求

元国家元首やノーベル賞受賞者、AI企業のリーダーら200名以上が9月22日、AI開発において越えてはならない「レッドライン」を設ける国際協定を求める共同声明を発表しました。国連総会に合わせて発表されたこの声明は、AIがもたらす潜在的なリスクを未然に防ぐため、2026年末までの国際的な政治合意を各国政府に強く促すものです。 この「AIレッドラインに関するグローバルな呼びかけ」は、AIによる人間へのなりすましや、制御不能な自己複製などを禁止事項の例として挙げています。AIが人類に何をしてはならないか、最低限のルールで国際社会が合意することが急務だと訴えています。AI開発の方向性で各国が合意できなくとも、禁止事項では一致すべきだという考えです。 署名者には、AI研究の権威ジェフリー・ヒントン氏、OpenAI共同創業者ヴォイチェフ・ザレンバ氏、AnthropicのCISOなど業界を牽引する人物が名を連ねています。AIの能力を最もよく知る専門家たちが、そのリスクに警鐘を鳴らしている形と言えるでしょう。 企業の自主的な取り組みだけでは不十分だという危機感も示されました。専門家は、AI企業が定める責任あるスケーリング方針は「真の強制力に欠ける」と指摘します。将来的には、レッドラインを定義・監視し、強制力を持つ独立した国際機関が必要になるとの見解が示されています。 現在、EUのAI法など地域的な規制は存在しますが、世界共通の合意はありません。米中間では核兵器の制御をAIに委ねないという限定的な合意があるのみです。今回の呼びかけは、こうした断片的なルールではなく、より広範で普遍的なグローバル基準の必要性を浮き彫りにしています。 AI規制が経済発展やイノベーションを阻害するとの批判もあります。しかし、専門家はこれを否定します。「安全性を確保する方法がわかるまでAGI(汎用人工知能)を開発しないことで両立できる」と主張。安全性を組み込んだ技術開発こそが、持続的な発展につながるのではないでしょうか。