Google対メディア、AI検索巡る対立激化 補償要求と「ユーザー需要」の溝
AI検索を巡るGoogleの論理
パブリッシャーの危機感と反発
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米国ニューヨークで開催されたWIRED AI Power Summitにて、Googleの幹部が検索結果に表示されるAI要約機能「AI Overviews」を強く擁護しました。一方で、大手パブリッシャーのトップらは、AI要約によるサイトトラフィックの激減と収益への打撃を主張し、Googleとの対立が明確になっています。
Googleの政府渉外・広報担当バイスプレジデントであるマーカム・エリクソン氏は、AIサマリーの提供は「ユーザー嗜好の変化」に対応したものだと説明しています。利用者は事実だけではなく文脈的な要約を求めるようになっており、AI Overviews導入後も従来の「10個の青いリンク」モデルを維持し、健全なエコシステムを目指す方針です。
しかし、GannettのCEOであるマイク・リード氏らは、この主張を全面的に否定しています。AI Overviewsの存在により、コンテンツ制作者やパブリッシャーへのトラフィック流入が著しく減少しているという明確なデータがあると指摘し、Googleの説明は事実と反すると強く反発しました。
特に焦点となっているのは、AIモデルの学習における著作物の利用に対する補償問題です。Condé NastのCEOであるロジャー・リンチ氏は、AIの最も重要なインプットであるコンテンツに対し、メディア業界全体で数十億ドル規模の補償が必要になると主張。ストリーミング時代の音楽業界との類似点を指摘しました。
AI Overviewsによる収益減を巡っては、すでにRolling Stoneの親会社であるペンスキー・メディアなどがGoogleに対し訴訟を提起するなど、法的な動きも活発化しています。また、Gannettは外部AIに依存せず、読者に答えを提供する独自チャットボット「DeeperDive」を開発し、対抗戦略を始めています。
このメディア対AIプラットフォームの構図は、政治的な規制議論も加速させています。リチャード・ブルーメンソール上院議員(民主党)は、AIによる著作権侵害などの「防護柵」を社会的な被害が拡大する前に確立すべきだと提言。AIを巡る法整備の必要性が高まっています。