MIT発スタートアップEkaがロボットの器用さを飛躍的に向上
前例のない物体操作能力
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MIT教授のPulkit Agrawal氏と元Google DeepMind研究者のTuomas Haarnoja氏が共同設立したスタートアップEkaが、ロボットの物体操作能力で注目を集めています。マサチューセッツ州ケンブリッジに拠点を置く同社のロボットは、電球をソケットにねじ込む、鍵の束をつまみ上げるといった繊細な動作を、人間のような自然さでこなします。Wired誌の記者は「10年以上ロボットを取材してきたが、これほど自然に動くものは見たことがない」と評しました。
Ekaのアプローチは、人間のデモンストレーションデータに頼る他社とは一線を画しています。同社のロボットはシミュレーション環境の中で数千時間にわたり自律的に練習し、独自の解決策を編み出します。これはGoogle DeepMindのAlphaZeroがチェスで超人的な戦略を自ら発見したのと同じ原理です。かつてOpenAIがDactylプロジェクトで試みたシミュレーション学習は「行き止まり」とされましたが、Ekaはそのギャップを埋めることに成功しつつあります。
技術的な鍵は、触覚を組み込んだ独自のグリッパーと、vision-force-actionモデルと呼ばれる新しいAIアルゴリズムにあります。このモデルは関節やモーターだけでなく、質量や慣性といった物理法則もシミュレーションに取り込み、物体の重さや動きの速度が操作に与える影響を学習します。その結果、物体が滑り落ちそうになっても自律的に回復する能力を獲得しました。
特に印象的なデモは食品ハンドリングです。テーブルに散らばったチキンナゲットをベルトコンベア上の容器に素早く詰める作業で、容器が遠ざかるとナゲットを短い距離から投げ入れるという即興的な判断も見せました。食品は形状が不均一で繊細な扱いが求められるため、自動化が特に困難な領域です。
Agrawal氏は「人間と同等ではなく、超人的な操作能力が目標だ」と語っています。同じアプローチをiPhoneの組み立てのような精密作業にも適用できるとの見方を示しました。ロボット工学における「ChatGPTの瞬間」が訪れるかどうかはまだ不透明ですが、Ekaが実現しつつある触覚的・身体的知能は、汎用ロボットの実用化に向けた重要な一歩と言えるでしょう。