ミリ波レーダーとMLで花粉媒介昆虫を非侵襲的に識別

機械学習

ミリ波レーダーの仕組み

羽ばたきのマイクロドップラー信号を解析
ミリ波が昆虫サイズに最適な波長
70以上の特徴量を機械学習で分類

識別精度と今後の展望

5種の花粉媒介昆虫を85%の精度で種レベル識別
ハチとスズメバチの科レベル識別は96%達成
携帯型の現場投入モデルを開発予定
害虫・侵略的外来種の追跡にも応用可能
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デンマーク工科大学のAdam Narbudowicz准教授らの研究チームが、ミリ波レーダー機械学習を組み合わせて花粉媒介昆虫を非侵襲的に識別・追跡する手法を開発しました。従来の昆虫モニタリングでは捕獲・殺処分が必要でしたが、この技術により昆虫を傷つけずに種レベルの分類が可能になります。研究成果は2026年4月28日付でPNAS Nexus誌に発表されました。

この手法は、昆虫の羽ばたきが生み出すマイクロドップラー信号に着目しています。単一時点のレーダー反射では昆虫の検出は困難ですが、長時間にわたり信号を積分することで検出を実現しました。ミリ波は昆虫のサイズに適した波長であり、5G通信などでも利用される技術です。

研究チームはトリニティ・カレッジ・ダブリンのキャンパスで捕獲したミツバチやスズメバチなど5種の花粉媒介昆虫を対象に実験を行いました。個体をミリ波アンテナ上の小型円筒に入れてレーダー信号を記録し、その後放虫しています。機械学習モデルは羽ばたき周波数や反射強度など70以上の特徴量を解析します。

その結果、5種の昆虫を種レベルで85%の精度で分類でき、ハチ科とスズメバチ科の区別では96%の精度を達成しました。検出時間が長いほど精度は向上し、0.1秒の75%から1秒で84%へと改善しています。使用する電波の出力は昆虫に害を与えないレベルです。

今後、研究チームは携帯型で現場に設置可能な装置の開発を目指しています。さらに、世界中の昆虫のレーダー信号データベースを構築し、温度や湿度などの環境データと組み合わせることで、花粉媒介昆虫の行動変化の監視にも活用する構想です。害虫や侵略的外来種の追跡への応用も期待されています。