音波シナプスでAIを高速・省電力化
研究の核心
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アリゾナ大学のシャオドン・ヤン助教らは2026年6月12日、音波を使う人工シナプスを開発したと科学誌サイエンス・アドバンシズで発表しました。脳の動作を模倣する次世代計算技術「ニューロモルフィック・コンピューティング」で、従来の電子素子より速く、かつ省電力で動くことを実験で示したものです。AIの計算基盤を一新する可能性を持つ成果です。
従来の電子的なニューロモルフィック素子は、人間の神経細胞が持つ膨大な接続のごく一部しか再現できませんでした。研究チームは音波の位相に複数の値を載せる「ファイビット」という仕組みに着目し、1つの素子で複数の計算を同時に処理できるようにしました。これにより配線や消費電力、設計の複雑さを抑えられます。
開発した装置は、長さ約60センチのアルミ棒3本をエポキシ接着剤でつなぎ、両端に超音波の送受信機を取り付けた構造です。音波で画像とラベルのデータを符号化し、棒の中を伝わる音波の相互作用を通じて情報を変換・整理します。生物のシナプスのように結合の強さを変える「可塑性」も再現でき、学習させて多様な課題に対応させられました。
実際に150個のアヤメを3品種に分類する課題では、従来型の多層パーセプトロンを上回る結果を出しました。わずか39個のパラメータで最終精度96.7%を達成し、ピーク精度に20%速く到達したのです。消費電力は最新の電子的ニューロモルフィック機器の最大10分の1にとどまると見積もられています。
さらに棒を1本足すだけで、ドーパミンなど脳内物質「神経修飾物質」の働きも模倣できました。これは1つの回路で文脈に応じて異なる機能を持たせられることを意味します。サンディア国立研究所のブラッド・エイモン氏は、巨大な単一ネットワークの代わりに、自己調整できる小さなネットワークを使える可能性に期待を示しています。