暗号資産(産業・業界)に関するニュース一覧

CoreWeaveの大型買収破談、AI開発ツール企業買収へ転換

Core Scientific買収の破談

90億ドル規模の買収提案を株主が否決
AIインフラ市場の過熱が背景
筆頭株主が「安すぎる」と反対を推奨
否決の報道後、株価は逆に上昇

CoreWeaveの次なる一手

買収破談の直後に方針転換
Pythonノートブック「Marimo」を買収
AIアプリ開発への事業領域拡大が狙い
インフラから開発ツールへと事業を多角化

AIデータセンター大手のCoreWeaveは10月31日、同業のCore Scientificに対する90億ドル規模の買収提案が、Core Scientificの株主投票で否決されたと発表しました。背景にはAIインフラ市場の過熱があります。買収破談の直後、CoreWeaveは戦略を転換し、Python開発ツールを手がけるMarimoの買収を発表。AI市場での主導権争いが新たな局面を迎えています。

買収否決の決定打は、Core Scientificの筆頭株主であるTwo Seas Capitalの反対推奨でした。同社は「AIインフラへの投資は加速しており、提示された買収額は企業価値を過小評価している」と主張。Core Scientificが単独で成長し、より大きな価値を生み出せるとの強気な見方を示しました。この動きは、市場のAI関連企業への期待の高さを物語っています。

両社は共に暗号資産のマイニング事業から出発しましたが、その後の戦略で明暗が分かれました。CoreWeaveはNVIDIAとの提携をてこに、いち早くAIワークロード向けのデータセンター事業へ転換。企業価値はIPO時の約5倍である660億ドルにまで急騰しました。この成功が、今回の株主の判断に影響を与えたことは間違いありません。

Core Scientificの買収に失敗したCoreWeaveですが、その動きは迅速でした。同日、オープンソースのPythonノートブック「Marimo」を買収したと発表。買収額は非公開です。これは単なる代替投資ではなく、同社の事業戦略における重要な方針転換を示唆している可能性があります。

Marimoは、データ分析やAIアプリ開発で広く使われる開発ツールです。CoreWeaveがMarimoを手に入れることで、単なるインフラ提供者(ホスティング)から、開発者向けのツールも提供するプラットフォーマーへと、事業のスタックを上げることを狙っています。これにより、AIエコシステム内での影響力を一層高める戦略です。

今回の一連の出来事は、現在のAI市場の熱狂ぶりを象徴しています。株主は短期的な買収益よりも将来の大きな成長に賭け、企業はインフラからアプリケーションレイヤーへと覇権争いを拡大しています。AIをめぐる企業の合従連衡と競争は、今後さらに激化することが予想されます。

TC Disrupt最終日、BoxやSolanaのCEOら登壇

豪華登壇者が語る技術トレンド

BoxのCEOが語るクラウドの未来
Solana共同創業者が描く暗号資産の次章
著名投資家Elad Gilによる最新トレンド解説
NBA選手が語るAIとスポーツ

スタートアップ注目のAIセッション

Character.AIのCEOが登壇
Hugging Faceが語るAIスタック
Google Cloudが解説するAIエージェント
ピッチコンテスト優勝者発表

10月29日、米サンフランシスコで世界最大級のスタートアップイベント「TechCrunch Disrupt 2025」が最終日を迎えました。BoxやSolana、Character.AIといった有力企業のCEOらが登壇し、AIやクラウド暗号資産の未来について議論。最終日も熱気に包まれ、多くの経営者投資家が次世代技術の動向に注目しました。

中心的な「Disrupt Stage」では、Boxのアーロン・レヴィCEOがクラウド企業の生存と再発明について語りました。また、Solana共同創設者のアナトリー・ヤコヴェンコ氏は暗号資産の次章と題して講演。著名投資家Elad Gil氏やNBA選手のトリスタン・トンプソン氏など、多彩な顔ぶれが登壇し、会場を沸かせました。

特に注目を集めたのが「AI Stage」です。対話型AIで急成長するCharacter.AIのCEOが登壇したほか、Hugging Faceの共同創業者兼CSOが最新のAIスタックについて解説。Google CloudのCTOは、今後のクラウドにおけるAIエージェントの役割についてビジョンを示し、多くの聴衆を引きつけました。

イベントの目玉であるピッチコンテスト「Startup Battlefield」もついに決勝を迎え、優勝者が発表されました。世界中から集まった革新的なスタートアップの中から選ばれた一社が、賞金と栄誉を手にします。このコンテストは、未来のユニコーン企業が生まれる登竜門として知られています。

3日間にわたるイベントは、AIを筆頭とする最先端技術のショーケースとなりました。250以上のセッション、300社以上のスタートアップ展示に加え、投資家起業家同士の活発なネットワーキングが行われ、新たなイノベーションの種が蒔かれました。技術トレンドの最前線を体感できる貴重な機会と言えるでしょう。

AI安全派への圧力激化、シリコンバレーで対立先鋭化

有力者による公然たる批判

OpenAI幹部が批判者を召喚
「規制獲得のための恐怖煽動」と非難
ホワイトハウス顧問も「現実離れ」と指摘

AI安全派の反発と懸念

批判者を黙らせるための脅迫行為と主張
報復を恐れ匿名で取材応じる団体も
競合Anthropic州法案を支持

規制と成長のジレンマ

加速するAI開発と安全性の対立
「慎重さはクールではない」との風潮

シリコンバレーの有力者たちが、AIの安全性確保を訴える非営利団体や競合他社に対し、SNSでの批判や召喚状の送付といった強硬な手段に乗り出しています。OpenAIやホワイトハウス顧問らが、安全性を主張する動きを「自己の利益のための規制獲得戦略」と非難。これに対し安全推進派は「批判者を黙らせるための脅迫だ」と反発しており、AIの規制と成長を巡る対立が激化しています。

対立を象徴するのが、OpenAIの法的措置です。同社は、自社の非営利組織からの再編に反対した複数の非営利団体に対し、召喚状を送付しました。最高戦略責任者のジェイソン・クウォン氏は、イーロン・マスク氏による訴訟との関連を背景に「資金源や連携について透明性の疑問があった」と説明。批判者をけん制する狙いが透けて見えます。

ホワイトハウスのAI・暗号資産顧問デビッド・サックス氏も、SNS上で厳しい批判を展開しました。同氏は、競合のAnthropicがAIの社会的リスクを強調するのは「小規模スタートアップを排除し、自社に有利な規制を導入するための巧妙な規制獲得戦略だ」と主張。技術開発のリーダーによる公然とした非難は、業界内の亀裂を浮き彫りにしています。

一連の圧力に対し、AI安全派は強く反発しています。ある団体の代表は「これは批判者を黙らせ、脅迫するための行為だ」とTechCrunchの取材に語りました。実際に、多くの非営利団体のリーダーは報復を恐れ、匿名を条件に取材に応じており、シリコンバレー内で自由な議論が阻害されかねない状況が生まれています。

この対立の背景には、カリフォルニア州で成立したAI安全法案「SB 53」の存在があります。この法案は、大規模AI企業に安全報告を義務付けるもので、Anthropicが支持する一方、OpenAIは「連邦レベルでの統一規則を望む」として反対の立場を取りました。規制を巡る各社の戦略の違いが、対立を一層根深いものにしています。

シリコンバレーでは今、「安全性に慎重であることはクールではない」という風潮が強まっています。急速な技術革新と巨大な消費者市場の創出を優先するあまり、責任ある開発を求める声が圧殺されかねないとの懸念も。AIが経済を支える中、過度な規制への恐怖と、野放図な開発がもたらすリスクとの間で、業界は大きな岐路に立たされています。

OpenAI、金融アプリRoi買収でパーソナルAI強化

人材獲得でパーソナルAI加速

金融アプリRoiのCEOを獲得
Roiのサービスは10月15日に終了
今年4件目となるアクイハイヤー

生活密着型AIへの布石

金融分野のパーソナライズ知見を吸収
既存の消費者向けアプリ強化が狙い
ユーザーに適応・進化するAIを目指す

OpenAIは10月3日、AIを活用した個人向け金融アプリ「Roi」を買収したと発表しました。今回の買収は、人材獲得を主目的とする「アクイハイヤー」です。RoiのCEO兼共同創業者であるSujith Vishwajith氏のみがOpenAIに加わり、パーソナライズされた消費者向けAIの開発を加速させます。Roiのサービスは10月15日に終了します。

なぜ今、パーソナライゼーションなのでしょうか。OpenAIは、個々のユーザーに深く寄り添う生活管理をAI製品の次のステージと見据えています。Roiが金融という複雑な領域で培ったパーソナライゼーションの知見は、ニュース配信やショッピングなど、他の消費者向けサービスへも応用可能と判断した模様です。

Roiは、株式や暗号資産などを一元管理するだけでなく、ユーザーの個性に合わせた対話が可能なAIコンパニオン機能で注目されました。例えば、Z世代の若者のような口調で応答するなど、ソフトウェアが「個人的な伴侶」になるというビジョンを追求。これがOpenAIの目指す方向性と合致しました。

今回の買収は、OpenAIがAPI提供者にとどまらず、エンドユーザー向けアプリの構築に本腰を入れていることの表れです。同社は、パーソナライズされたニュース要約「Pulse」やAI動画アプリ「Sora」などを展開。元インスタカートCEOを責任者に迎えるなど、消費者向け事業の強化を急いでいます。

OpenAIにとって、消費者向けアプリによる収益化は急務です。同社はAIモデルの開発と運用に巨額のインフラ投資を続けています。Airbnb出身でユーザー行動の最適化に長けたVishwajith氏の加入は、アプリのエンゲージメントと収益性を高める上で、重要な役割を果たすことが期待されます。

テック業界、トランプ氏に急接近 規制緩和期待と長期リスクの狭間

シリコンバレーのテック業界で、政治的な地殻変動が起きています。WIRED誌が報じたところによると、メタ社のザッカーバーグ氏やX社のマスク氏をはじめとする多くのリーダーが、トランプ前大統領への接近を強めています。背景には、バイデン政権による反トラスト法やAI、暗号資産への厳しい規制への強い不満があります。短期的な利益や規制緩和を期待する一方、この動きは長期的に米国の技術革新の基盤を損なうリスクをはらんでいると指摘されています。 なぜテックリーダーはトランプ氏に惹かれるのでしょうか。最大の理由はバイデン政権への反発です。同政権は反トラスト法を武器に巨大テック企業への訴訟を連発し、M&A;を阻止。さらに暗号資産やAI分野でも規制強化の動きを見せました。こうした動きが、業界リーダーたちに「ビジネスの足かせ」と映り、規制緩和を約束するトランプ氏への期待につながったと分析されています。 トランプ氏への接近は、期待だけでなく恐怖心も動機となっています。報復的な姿勢で知られる同氏の機嫌を損ねれば、アップルのティム・クックCEOが経験したように、突然の関税などの脅しにさらされかねません。WIRED誌は、多くのリーダーが「保護料を払う」かのように政権に協力し、自社へのリスクを避けようとする危険なダンスを演じていると指摘します。 かつてシリコンバレーは、従業員が経営陣の倫理観を問う文化がありました。しかし、イーロン・マスク氏によるX社での大量解雇以降、その力は弱まっています。社内で多様性や社会正義を訴える声は抑えられ、「政治を職場に持ち込むな」という風潮が強まりました。経営陣は、社内からの突き上げを気にすることなく、政治的な判断を下しやすくなっているのです。 しかし、この政治的転換は大きなリスクを伴います。トランプ政権は移民規制の強化や、科学技術分野の研究予算削減を進める可能性があります。これらは、世界中から優秀な人材を集め、自由な研究開発を行うことで成長してきたシリコンバレーのイノベーションの源泉そのものを脅かすものです。短期的な利益追求が、業界の未来を危うくするかもしれません。 記事の筆者は、テックリーダーたちがトランプ氏と結ぶ関係を「自殺協定」になりかねないと警鐘を鳴らします。目先の規制緩和やビジネス上の便宜と引き換えに、自由な市場や法の支配といった、米国経済の成功を支えてきた基盤が損なわれる危険があるからです。多くのリーダーは他国への「出口戦略」を持つ一方で、業界全体の長期的な健全性が失われつつあると結んでいます。

Google、AIエージェント決済の国際標準「AP2」公開

プロトコル「AP2」の核

AIエージェント駆動型購入のためのオープン標準
60社超の金融機関・小売業者が支持
AIプラットフォーム間の相互運用性を確保
全てのトランザクションに追跡可能な証跡を提供

安全性と承認プロセス

詐欺対策のための監査可能な記録生成
原則、意図(Intent)カート(Cart)の2段階承認制
価格制限など詳細設定で完全自動購入も可能
MastercardやPayPalなどが即座に採用を表明

Googleは9月16日、AIエージェントがユーザーに代わって行う購入を対象としたオープンプロトコル「Agent Payments Protocol (AP2)」を発表しました。この新規格は、AIプラットフォーム、決済システム、小売業者の間で高い相互運用性を確立し、全ての取引履歴に監査可能な追跡記録を提供することを目的としています。既にMastercard、American Express、PayPalを含む60以上の主要金融機関や小売業者が支持を表明しており、AI駆動型コマースの基盤となることが期待されます。

AP2は、AIエージェントがリアルタイムで複雑な取引や交渉を行う未来を想定して設計されました。例えば、ユーザーの要望に応じてエージェントが航空会社やホテルのエージェントと同時に連携し、予算内に収まるパッケージを自動で予約するといったケースです。GoogleGitHubで仕様を公開しており、オープンな共同プロセスを通じて、決済・テクノロジーコミュニティ全体での普及を目指しています。

AIエージェントが自律的に購入を遂行する際の最大の懸念は、意図しない取引や詐欺リスクです。AP2はこのリスクに対処するため、購入前に二段階の承認プロセスを要求します。まず「Intent Mandate(意図の委任)」検索・交渉権限を与え、次に特定のオファーが見つかった際に「Cart Mandate(カートの委任)」で最終購入を承認します。

特に重要なのは、全てのプロセスで監査可能な追跡記録(オーディット・トレイル)が保持される点です。これにより、不正が発生した場合でも経緯を再調査できます。また、より詳細な意図を設定することで、価格上限などを指定した完全自動購入も可能です。さらに、暗号資産ウォレットからの購入を可能にする拡張機能も協力企業と共に提供されています。