MIT研究:企業は生産性でなく賃金抑制のため自動化を導入
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MITのダロン・アセモグル教授とイェール大学のパスカル・レストレポ准教授は、1980年から2016年にかけての米国における自動化が、生産性向上よりも特定労働者の賃金抑制を目的に導入されてきたとする研究をQuarterly Journal of Economics5月号に発表しました。研究によれば、自動化は同期間の所得格差拡大の52%を説明し、うち約10ポイントは賃金プレミアムを得ていた労働者の置き換えに起因します。
企業が自動化のターゲットとしたのは、同等の資格を持つ他の労働者よりも高い給与を得ていた非大卒労働者です。給与分布の70〜95パーセンタイルに位置する労働者が最も大きな影響を受けており、企業が最大限の効率化ではなく賃金コストの削減を優先してきた構図が浮かび上がります。
この賃金抑制型の自動化は、生産性向上効果の60〜90%を相殺していたと推計されています。アセモグル教授は、米国で多数の特許や新技術が生まれているにもかかわらず生産性統計が低迷している理由の一つがここにあると指摘します。企業にとっては生産性が1%下がっても利益が増えれば合理的な選択となり得るためです。
ただし研究は自動化そのものを否定するものではありません。適切に設計された自動化は生産性を高め、雇用増加につながる好循環を生み出す可能性があります。アセモグル教授は、自動化の種類と規模をより慎重に調整することで、さらに大きな生産性向上が実現できると強調しています。
2024年ノーベル経済学賞を受賞したアセモグル教授は、経営者・労働者・技術者がこの歴史的パターンを認識し、自動化のトレードオフを総合的に評価することが重要だと訴えています。「すべては選択だ」という同教授の言葉は、AI時代の自動化戦略を考える上で示唆に富む指摘です。