Alibaba動画AIが世界2位、SoraとSeedance撤退

モデルの実力

Video Arena3部門で世界2位
Veoを69点上回るスコア
150億パラメータの統合型設計
音声まで一括生成

市場と戦略

Sora終了とSeedance凍結で空白
API先行で企業導入を狙う
投資527億ドルインフラ
米国防総省の中国軍企業リスク
詳細を読む

Alibaba Cloudは6月21日、AI動画生成モデル「HappyHorse 1.1」を公開しました。企業向けにAPIを全面開放し、最初の2週間は全機能で40%割引を提供します。OpenAISoraが採算難で終了し、ByteDanceのSeedance 2.0も著作権問題で国際展開を凍結するなか、世界2位の実力を武器に企業市場の主役を狙う動きです。

同モデルは4月に匿名でベンチマークに登場し、独立評価サイト「Artificial Analysis Video Arena」で即座に首位を獲得しました。現在は3つのリーダーボード全てで2位につけ、テキスト動画ではGoogleVeo-3.1を69点上回ります。人間の評価者による比較に基づくEloスコアでの差であり、一時的なぶれではない品質差を示しています。

技術面の強みは、テキスト・画像動画音声を単一の150億パラメータTransformerで処理する統合設計です。動画音声を別々のモデルでつなぐ競合と異なり、一度の生成ですべてを扱うため、外部の吹き替えや後処理が不要になります。導入箇所や依存ベンダーが減り、企業にとって総保有コストの削減につながります。

1.1版では商用制作の課題を狙って改良しました。複数の参照画像人物の一貫性を保つR2V機能を新搭載し、広告やシリーズ動画で問題となる被写体のブレを抑えます。動作の滑らかさや、機械生成と分かる「肌のテカリ」「過剰な先鋭化」といった不自然な質感も改善されました。

競争環境はAlibabaに有利です。Soraは1日約100万ドルの運用費に対し総収益が約210万ドルにとどまり、4月26日に終了しました。Seedance 2.0はNetflixやDisneyなど大手スタジオの法的警告を受け、国際展開を無期限延期しています。残るはGoogle Veoのみですが、Arenaの評価ではHappyHorseが上回ります。

一方で地政学リスクも残ります。米国防総省は6月8日、AlibabaをBYDやBaiduとともに中国軍企業リストに加えました。即座の制裁ではないものの、企業の調達判断には複雑さを加えます。欧州ではフランスなど現地データセンターを開設し、主権対応のインフラで信頼を得られるかが今後の鍵となります。