EU AI法の透明性義務が発効、AI利用の表示が必須に
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欧州連合(EU)は8月2日、AI規制法(EU AI法)の透明性義務を施行しました。域内の市民は、AIと対話するときや、AIが生成・改変したコンテンツを見るときに、その事実を知らされる権利を得ます。広告や音楽レコメンド、苦情受付ホットラインまで一律の開示が必要となり、違反企業には最大1500万ユーロまたは全世界年間売上高の3%のいずれか高い方の制裁金が科されます。
対象は驚くほど広く、ディープフェイクを使った広告や企業のSNS投稿には、AI生成であることを示すラベルが付きます。苦情対応のチャットボットや電話窓口はAIベースだと明示する必要があり、機械学習で発信者の感情や不満を検知するコールセンターは、通話の冒頭でその旨を告げなければなりません。企業同士の商用利用も例外ではなく、予定調整や書簡対応、契約交渉に至るまで申告が求められます。
規制はモデル開発企業にも及び、欧州委員会が新設したAI事務局が監督にあたります。法律事務所Stibbeでテクノロジーとデータを専門とするデュカン弁護士は、OpenAIやAnthropic、Google DeepMindといった代表格にとどまらず、AIレコメンドを使うSpotifyや、Photoshopに生成編集機能を備えるAdobeも視野に入ると指摘します。「探し始めると、AIはあらゆる場所にあります」と同氏は語ります。
一方で、表示の乱発が情報過多を招くとの懸念も出ています。業界団体CCIAでAI政策を率いる担当者は昨年12月、過剰なラベル表示は終わりのない通知によるバナー・ブラインドネスを招くと警告し、スペルチェックした電子メールやフィルターをかけた写真まで対象になれば、AI表示は意味を失うと述べました。
今回の法律は、2018年に施行されクッキー疲れという言葉を生んだEUの個人データ保護規則(GDPR)を想起させます。EUはAIモデル提供者が合成音声や画像、動画、テキストを機械可読な形式で示すまでに12月までの移行期間を設けており、27の加盟国は監督体制の整備状況もまちまちです。ノートン・ローズ・フルブライトのロージー・ナンス弁護士は「初日から一律に執行されるとは限らない」と慎重に見ています。
それでも規制の射程の広さは、いずれ企業にとって大きな転換点になるとデュカン弁護士は見ています。AI活用を堂々と開示するのか、それとも表示を避けてAIを使わない仕組みや手作業に戻るのか。透明性のコストと利便性をどう天秤にかけるかが、欧州で事業を営むすべての企業に突きつけられます。