Salesforce(企業)に関するニュース一覧

生成AIコーディング、企業導入の鍵は領域見極め

生成AIコーディングの課題

迅速なプロトタイプ開発
本番利用時のセキュリティ脆弱性
保守困難なコードの生成
増大する技術的負債

安全な導入への2つの領域

UI層はグリーンゾーンで高速開発
基幹部分はレッドゾーンで慎重に
開発者をAIで強化する発想
ガバナンスを組込んだツール

生成AIでコードを自動生成する「バイブコーディング」が注目を集めています。しかし、プロトタイプ開発で威力を発揮する一方、企業の本番環境ではセキュリティや保守性のリスクが指摘されています。セールスフォース社の専門家は、UIなどリスクの低い「グリーンゾーン」と、基幹ロジックである「レッドゾーン」でAIの適用法を分けるべきだと提言。ガバナンスの効いたツールで開発者を支援する、新たなアプローチが企業導入の鍵となりそうです。

バイブコーディングの魅力は、アイデアを数時間で形にできる圧倒的なスピードです。しかし、その手軽さの裏には大きなリスクが潜んでいます。AIは企業のセキュリティポリシーを考慮せず、脆弱性のあるコードを生成する可能性があります。また、一貫した設計思想を欠く「スパゲッティコード」を生み出し、将来の保守・改修を困難にする技術的負債を蓄積しかねません。

この課題に対し、専門家はアプリケーションの構成要素を2つの領域に分けて考えることを推奨しています。一つは、UI/UXなど変更が頻繁でリスクの低い「グリーンゾーン」。ここはバイブコーディングで迅速な開発を進めるのに最適です。もう一つが、ビジネスロジックやデータ層といったシステムの根幹をなす「レッドゾーン」であり、より慎重なアプローチが求められます。

では、レッドゾーンでAIは無力なのでしょうか。答えは否です。重要なのは、汎用AIに全てを任せるのではなく、企業の固有事情を理解したツールで人間の開発者を支援することです。AIを優秀な「ペアプログラマー」と位置づけることで、専門家はより複雑なロジックの実装やデータモデリングを、速度と正確性を両立させながら進められるようになります。

このハイブリッドアプローチを具現化するのが、セールスフォースが提供する「Agentforce Vibes」です。このツールは、グリーンゾーンでの高速開発と、レッドゾーンで開発者を安全に支援する機能を両立させています。プラットフォームにセキュリティとガバナンスが組み込まれているため、開発者は安心してイノベーションに集中できるのです。

すでにCoinbaseやGrupo Globoといったグローバル企業がこの仕組みを導入し、目覚ましい成果を上げています。ある大手銀行では新規コードの20-25%を生成AIで開発。また、顧客維持率を3ヶ月で22%向上させた事例も報告されており、生産性と収益性の両面で効果が実証されつつあります。

バイブコーディングは魔法の杖ではなく、規律あるソフトウェア開発を不要にするものではありません。人間の専門性とAIエージェントの支援能力を融合させるハイブリッドな開発体制こそが、これからの企業に抜本的な革新と揺るぎない安定性の両方をもたらすでしょう。

Anthropic、法人需要で'28年売上10兆円超予測

驚異的な成長予測

'28年売上700億ドル(約10兆円)
'28年キャッシュフロー170億ドル
来年のARR目標は最大260億ドル
粗利益率は77%に改善('28年予測)

B2B戦略が成長を牽引

Microsoft等との戦略的提携を強化
Deloitteなど大企業へ大規模導入
低コストモデルで企業ニーズに対応
API売上はOpenAI2倍超を予測

AIスタートアップAnthropicが、法人向け(B2B)製品の需要急増を背景に、2028年までに売上高700億ドル(約10.5兆円)、キャッシュフロー170億ドルという驚異的な財務予測を立てていることが報じられました。MicrosoftSalesforceといった大手企業との提携強化が、この急成長を支える中核となっています。

同社の成長速度は目覚ましく、2025年末には年間経常収益(ARR)90億ドルを達成し、2026年には最大260億ドルに達する目標を掲げています。特に、AIモデルへのアクセスを販売するAPI事業の今年の売上は38億ドルを見込み、これは競合のOpenAIの予測額の2倍以上に相当します。

成長の原動力は、徹底した法人向け戦略です。Microsoftは自社の「Microsoft 365」や「Copilot」にAnthropicのモデルを統合。さらに、コンサルティング大手のDeloitteやCognizantでは、数十万人の従業員がAIアシスタントClaude」を利用する計画が進んでいます。

製品面でも企業の大量導入を後押しします。最近では「Claude Sonnet 4.5」など、より小型でコスト効率の高いモデルを相次いで投入。これにより、企業はAIを大規模に展開しやすくなります。金融サービス特化版や社内検索機能の提供も、顧客基盤の拡大に貢献しています。

財務面では、2028年に77%という高い粗利益率を見込んでいます。これは、巨額のインフラ投資で赤字が続くOpenAIとは対照的です。Anthropicはすでに1700億ドルの評価額を得ており、次回の資金調達では最大4000億ドルを目指す可能性も報じられており、市場の期待は高まるばかりです。

LangChain、誰でもAIエージェントを開発できる新ツール

ノーコードで誰でも開発

開発者でも対話形式で構築
従来のワークフロービルダーと一線
LLMの判断力で動的に応答
複雑なタスクをサブエージェントに分割

連携と自動化を加速

Gmail等と連携するツール機能
イベントで起動するトリガー機能
ユーザーの修正を学習する記憶機能
社内アシスタントとして活用可能

AI開発フレームワーク大手のLangChainは10月29日、開発者以外のビジネスユーザーでもAIエージェントを構築できる新ツール「LangSmith Agent Builder」を発表しました。このツールは、プログラミング知識を必要としないノーコード環境を提供し、対話形式で簡単にエージェントを作成できるのが特徴です。組織全体の生産性向上を目的としています。

新ツールの最大の特徴は、従来の視覚的なワークフロービルダーとは一線を画す点にあります。あらかじめ決められた経路をたどるのではなく、大規模言語モデル(LLM)の判断能力を最大限に活用し、より動的で複雑なタスクに対応します。これにより、単純な自動化を超えた高度なエージェントの構築が可能になります。

エージェントは主に4つの要素で構成されます。エージェントの論理を担う「プロンプト」、GmailやSlackなど外部サービスと連携する「ツール」、メール受信などをきっかけに自動起動する「トリガー」、そして複雑なタスクを分割処理する「サブエージェント」です。これらを組み合わせ、目的に応じたエージェントを柔軟に設計できます。

開発のハードルを大きく下げているのが、対話形式のプロンプト生成機能です。ユーザーが自然言語で目的を伝えると、システムが質問を重ねながら最適なプロンプトを自動で作成します。さらに、エージェント記憶機能を備えており、ユーザーによる修正を学習し、次回以降の応答に反映させることができます。

具体的な活用例として、メールやチャットのアシスタントSalesforceとの連携などが挙げられます。例えば、毎日のスケジュールと会議の準備資料を要約して通知するエージェントや、受信メールの内容に応じてタスク管理ツールにチケットを作成し、返信案を起草するエージェントなどが考えられます。

「LangSmith Agent Builder」は現在、プライベートプレビュー版として提供されており、公式サイトからウェイトリストに登録できます。同社は、オープンソースのLangChainやLangGraphで培った知見を活かしており、今後もコミュニティの意見を取り入れながら機能を拡張していく方針です。

Veeam、Securiti AIを17億ドルで買収、AIデータ統制を強化

17億ドル規模の大型買収

データ保護大手のVeeamが発表
買収企業はSecuriti AI
買収額は17.25億ドル
2025年12月に買収完了予定

AI時代のデータ戦略

AI活用のためのデータ統制を支援
Securitiの技術を製品に統合
加速するデータ業界の再編
断片化したデータ基盤の解消へ

データレジリエンス(障害復旧力)大手のVeeamは2025年10月21日、データセキュリティとAIガバナンスを手がけるスタートアップ、Securiti AIを17.25億ドル(約2500億円)で買収すると発表しました。現金と株式交換を組み合わせ、買収は12月第1週に完了する見込みです。AIの導入が加速する中、企業が持つデータのセキュリティと統制を強化する狙いがあります。

VeeamのAnand Eswaran最高経営責任者(CEO)は、「データの新たな時代に入った」と述べ、今回の買収の意義を強調しました。従来のサイバー脅威や災害からのデータ保護に加え、AIを透過的に活用するためには「すべてのデータを特定し、統制され、信頼できる状態に保つこと」が不可欠だと指摘。Securiti AIの技術統合により、この課題に対応します。

買収されるSecuriti AIは2019年設立。企業の全データを一元管理する「データコマンドセンター」を提供し、MayfieldやGeneral Catalyst、Cisco Investmentsなどから1億5600万ドル以上を調達していました。買収完了後、創業者のRehan Jalil氏はVeeamのセキュリティ・AI担当プレジデントに就任する予定です。

この動きは、AI活用を背景としたデータ業界の統合・再編の流れを象徴しています。2025年には、DatabricksがNeonを10億ドルで、SalesforceがInformaticaを80億ドルで買収するなど、大型案件が相次ぎました。企業がAI導入を進める上で、自社のデータ基盤を強化・統合する必要性が高まっています。

業界再編の背景には、多くの企業が課題としてきた「データスタックの断片化」があります。様々なデータ関連ツールを個別に利用することに多くの顧客が疲弊しており、AI導入によってその問題が一層顕在化しました。AIを効果的に活用するには、サイロ化されたデータを統合し、信頼できる基盤を構築することが急務となっており、ワンストップでサービスを提供する企業の価値が高まっています。

Salesforce、AWS活用でLLM運用コスト40%削減

カスタムLLM運用の課題

数ヶ月かかるデプロイ作業
ピーク時を見越したGPU予約コスト
頻繁なリリースに伴う保守の複雑化

Bedrock導入による成果

デプロイ時間を30%短縮
運用コストを最大40%削減
サーバーレスによる自動スケール実現

導入成功のポイント

既存APIを維持するハイブリッド構成
コールドスタートへの対策実施

クラウド大手のセールスフォースは、AWSのAIサービス「Amazon Bedrock」を導入し、自社でカスタマイズした大規模言語モデル(LLM)の運用を効率化しました。これにより、モデルのデプロイにかかる時間を30%短縮し、インフラコストを最大40%削減することに成功。AI開発の生産性向上とコスト最適化を両立した事例として注目されます。

同社はこれまで、ファインチューニングしたLLMを自社で運用していましたが、インフラの最適化や設定に数ヶ月を要し、運用負荷の高さが課題でした。また、ピーク時の需要に備えてGPUリソースを常に確保する必要があり、コストが嵩む一因となっていました。

そこで採用したのが、Bedrockの「カスタムモデルインポート」機能です。これにより、インフラ管理の大部分をAWSに任せ、チームはモデル開発やビジネスロジックに集中できるようになりました。既存の運用フローへの影響を最小限に抑え、スムーズな移行を実現しています。

移行の鍵は、既存システムとの後方互換性を保つハイブリッド構成です。アプリケーションからのリクエストをまずSageMakerのCPUコンテナで受け、前処理を行った後、GPUを要する推論処理のみをBedrockに転送。これにより、既存のAPIや監視ツールを変更することなく、サーバーレスの利点を享受できました。

導入後の効果は顕著です。インフラ選定などの複雑な作業が不要になり、モデルのデプロイ時間は30%短縮されました。コスト面では、従量課金制への移行により、特に開発・テスト環境など利用頻度に波がある場面で効果を発揮し、最大40%のコスト削減を達成しました。

一方で、大規模モデルでは「コールドスタート」と呼ばれる初回起動時の遅延が発生する点は注意が必要です。同社は、遅延が許容できない本番環境では、定期的にエンドポイントにアクセスして「ウォーム」状態を維持する対策を講じています。自社モデルがサポート対象かも事前に確認すべきです。

Salesforceの事例は、サーバーレスAIが本番環境のワークロードにも十分対応できることを示しています。特にトラフィックが変動するAIアプリケーションにおいて、コストと運用の両面で大きなメリットをもたらすでしょう。LLMの自社運用に課題を抱える企業にとって、有力な選択肢となりそうです。

Salesforce、規制業界向けにAI『Claude』を本格導入

提携で実現する3つの柱

AgentforceでClaude優先モデル
金融など業界特化AIを共同開発
SlackClaude統合を深化

安全なAI利用と生産性向上

Salesforce信頼境界内で完結
機密データを外部に出さず保護
Salesforce開発にClaude活用
Anthropic業務にSlack活用

AI企業のAnthropicと顧客管理(CRM)大手のSalesforceは2025年10月14日、パートナーシップの拡大を発表しました。SalesforceのAIプラットフォーム『Agentforce』において、AnthropicのAIモデル『Claude』を優先的に提供します。これにより、金融や医療など規制が厳しい業界の顧客が、機密データを安全に保ちながら、信頼性の高いAIを活用できる環境を整備します。提携は業界特化ソリューションの開発やSlackとの統合深化も含まれます。

今回の提携の核心は、規制産業が抱える「AIを活用したいが、データセキュリティが懸念」というジレンマを解消する点にあります。Claudeの処理はすべてSalesforceの仮想プライベートクラウドで完結。これにより、顧客はSalesforceが保証する高い信頼性とセキュリティの下で、生成AIの恩恵を最大限に享受できるようになります。

具体的な取り組みの第一弾として、ClaudeSalesforceのAgentforceプラットフォームで優先基盤モデルとなります。Amazon Bedrock経由で提供され、金融、医療、サイバーセキュリティなどの業界で活用が見込まれます。米RBC Wealth Managementなどの企業は既に導入し、アドバイザーの会議準備時間を大幅に削減するなど、具体的な成果を上げています。

さらに両社は、金融サービスを皮切りに業界に特化したAIソリューションを共同開発します。また、ビジネスチャットツールSlackClaudeの連携も深化。Slack上の会話やファイルから文脈を理解し、CRMデータと連携して意思決定を支援するなど、日常業務へのAI浸透を加速させる計画です。

パートナーシップは製品連携に留まりません。Salesforceは自社のエンジニア組織に『Claude Code』を導入し、開発者生産性向上を図ります。一方、Anthropicも社内業務でSlackを全面的に活用。両社が互いの製品を深く利用することで、より実践的なソリューション開発を目指すとしています。

SlackbotがAIアシスタントに進化

新機能の概要

ワークスペース情報を検索
自然言語でのファイル検索
カスタムプランの作成支援

導入とセキュリティ

会議の自動調整・設定
年末に全ユーザーへ提供
企業単位での利用選択可能
データは社内に保持

ビジネスチャットツールSlackが、SlackbotをAIアシスタントへと進化させるアップデートをテスト中です。従来の通知・リマインダー機能に加え、ワークスペース内の情報検索や会議調整など、より高度な業務支援が可能になります。本機能は年末に全ユーザー向けに提供される予定です。

Slackbotは、個人の会話やファイル、ワークスペース全体の情報を基に、パーソナライズされた支援を提供します。「先週の会議でジェイが共有した書類を探して」のような自然な言葉で情報検索が可能です。

さらに、複数のチャンネル情報を集約して製品の発売計画を作成したり、ブランドのトーンに合わせてSNSキャンペーンを立案したりといった、より複雑なタスクも支援します。

Microsoft OutlookやGoogle Calendarとも連携し、会議の調整・設定を自動化。既存のリマインダー機能なども引き続き利用可能です。

セキュリティ面では、AWSの仮想プライベートクラウド上で動作。データはファイアウォール外に出ず、モデル学習にも利用されないため、企業の情報漏洩リスクを低減します。

現在は親会社であるSalesforceの従業員7万人と一部顧客にてテスト中。年末には全ユーザー向けに本格展開される見込みです。

セールスフォース、AIエージェントで企業の課題解決へ

Agentforce 360の強み

柔軟な指示が可能なAgent Script
エージェント構築・テストツール
Slackを主要インターフェースに
音声対応で顧客体験向上

市場競争と効果

95%のAI導入失敗という課題
12,000社が導入済みと公表
GoogleAnthropicと激しく競争
対応時間を最大84%短縮

セールスフォースは10月13日、年次カンファレンス「Dreamforce」の冒頭で、新たなAIエージェントプラットフォーム「Agentforce 360」を発表しました。企業のAI導入の95%が失敗する「パイロット・パーガトリー」からの脱却を目指し、競争が激化する市場での地位確保を図ります。

新プラットフォームの目玉は、AIエージェントに柔軟な指示を出せる「Agent Script」と、エージェントの一貫した構築・テストを可能にする「Agentforce Builder」です。さらに、Slackを主要な操作インターフェースと位置づけ、業務プロセスを対話的に進める戦略です。

なぜAI導入は難しいのでしょうか。同社は、AIツールが企業のワークフローやデータから分離していることが原因と指摘。Agentforce 360は、データ、業務ロジック、対話インターフェースを統合することで、この課題の解決を目指します。

早期導入企業では既に効果が出ています。例えばRedditは、AIエージェントの導入により平均対応時間を84%短縮。OpenTableも70%の問い合わせをAIが自律的に解決したと報告しています。

企業AI市場では、GoogleAnthropicMicrosoftなども同様のエージェント機能を提供しています。セールスフォースは、AIモデル自体ではなく、自社のCRMや業務プロセスと深く統合できる点に差別化があると主張します。

同社はAgentforceを70億ドル規模の事業と位置づけています。今後の顧客導入の広がりが、AI時代におけるセールスフォースの競争力を左右する鍵となるでしょう。

Google、業務AI基盤「Gemini Enterprise」発表

Gemini Enterpriseの特長

AIエージェントをノーコードで構築
社内データやアプリを横断連携
ワークフロー全体の自動化を実現
既存ツールとシームレスに統合

価格と導入事例

月額21ドルから利用可能
看護師の引継ぎ時間を大幅削減
顧客の自己解決率が200%向上

Googleは10月9日、企業向けの新AIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を発表しました。これは企業内のデータやツールを統合し、専門知識を持つAIアシスタントエージェント)をノーコードで構築・展開できる包括的な基盤です。OpenAIAnthropicなどが先行する法人AI市場において、ワークフロー全体の自動化を切り口に競争力を高める狙いです。

Gemini Enterpriseの最大の特徴は、単なるチャットボットを超え、組織全体のワークフローを変革する点にあります。マーケティングから財務、人事まで、あらゆる部門の従業員が、プログラム知識なしで自部門の課題を解決するカスタムAIエージェントを作成できます。これにより、従業員は定型業務から解放され、より付加価値の高い戦略的な業務に集中できるようになります。

このプラットフォームの強みは、既存システムとの高度な連携能力です。Google WorkspaceやMicrosoft 365はもちろん、SalesforceやSAPといった主要な業務アプリケーションとも安全に接続。社内に散在する文書やデータを横断的に活用し、深い文脈を理解した上で、精度の高い回答や提案を行うAIエージェントの構築を可能にします。

すでに複数の企業が導入し、具体的な成果を上げています。例えば、米国の小売大手Best Buyでは顧客の自己解決率が200%向上。医療法人HCA Healthcareでは、看護師の引き継ぎ業務の自動化により、年間数百万時間もの時間削減が見込まれています。企業の生産性向上に直結する事例が報告され始めています。

料金プランも発表されました。中小企業や部門向けの「Business」プランが月額21ドル/席、セキュリティや管理機能を強化した大企業向けの「Enterprise」プランが月額30ドル/席から提供されます。急成長する法人向けAI市場において、包括的なプラットフォームとしての機能と競争力のある価格設定で、顧客獲得を目指します。

今回の発表は、インフラ、研究、モデル、製品というGoogle「フルスタックAI戦略」を象徴するものです。最新のGeminiモデルを基盤とし、企業がGoogleの持つAI技術の恩恵を最大限に受けられる「新しい入り口」として、Gemini Enterpriseは位置付けられています。今後の企業のAI活用を大きく左右する一手となりそうです。

統合AIプラットフォーム競争激化、GoogleとAWSが新サービス

Googleの新統合AI基盤

Google AIを単一プラットフォームに集約
ノーコードエージェントを構築・管理
Microsoft 365など外部データと連携
月額30ドル/人から利用可能

AWSのブラウザ拡張AI

ブラウザ拡張機能で提供
OutlookやSlack上で直接利用
多様な企業データソースに接続
既存のBedrockエージェントを活用

GoogleAmazon Web Services (AWS)が、企業向けに新たな統合AIプラットフォームを相次いで発表しました。Googleは「Gemini Enterprise」を、AWSは「Quick Suite」を投入し、従業員が業務で使うアプリケーションから離れることなく、シームレスにAI機能を呼び出せる環境を目指します。この動きは、作業の文脈(コンテキスト)を維持し、生産性を劇的に向上させることを狙ったものです。

これまでAIチャットボットを利用するには、作業中のアプリとは別に専用画面を開く必要があり、手間や思考の中断が課題でした。この「摩擦」を解消し、作業の文脈を失うことなくAIを活用できるフルスタックな環境が求められています。従業員のワークフローにAIを自然に組み込むことが、生産性向上の鍵となるのです。

Googleの「Gemini Enterprise」は、同社のAIサービスを一つのプラットフォームに統合します。Google Workspaceに加え、Microsoft 365やSalesforceといった外部データソースにも接続可能です。専門知識がなくても、ノーコードで情報検索や業務自動化のためのエージェントを構築・管理できる点が大きな特徴と言えるでしょう。

一方のAWSが発表した「Quick Suite」は、ブラウザ拡張機能として提供されます。これにより、ChromeやOutlook、Slackといった日常的に使うツール上で直接AIエージェントを呼び出せます。バックエンドではAWSのAI基盤「Bedrock」で構築したエージェントを活用でき、企業ごとの独自データに基づいた応答が可能です。

両社の新サービスが目指すのは、従業員を一つのエコシステム内に留め、作業を中断させないシームレスなAI体験の提供です。企業向けAI市場の覇権を巡る戦いは、いかに既存の業務フローに溶け込めるかという「利便性」の競争へと移行し始めています。今後、各社はさらなる差別化を迫られることになるでしょう。

AIがSIを自動化、コンサルモデルに挑戦状

AIによるSIの自動化

ServiceNow導入をAIが自動化
6ヶ月の作業を6週間に短縮
要件分析から文書化まで一気通貫
専門家の知見を学習したAIエージェント

変わるコンサル業界

アクセンチュア等の労働集約型モデルに対抗
1.5兆ドル市場の構造変革を狙う
人的リソース不足の解消に貢献

今後の展開と課題

SAPなど他プラットフォームへ拡大予定
大企業の高い信頼性要求が課題

カリフォルニア州のAIスタートアップEchelonが、475万ドルのシード資金調達を完了し、エンタープライズソフトウェア導入を自動化するAIエージェントを発表しました。ServiceNowの導入作業をAIで代替し、従来数ヶ月を要したプロジェクトを数週間に短縮。アクセンチュアなどが主導してきた労働集約型のコンサルティングモデルに、根本的な変革を迫ります。

ServiceNowのような強力なプラットフォームの導入やカスタマイズは、なぜこれほど時間とコストがかかるのでしょうか。その背景には、数百にも及ぶ業務フローの設定や既存システムとの連携など、専門知識を要する複雑な作業があります。多くの場合、企業は高価な外部コンサルタントやオフショアチームに依存せざるを得ませんでした。

Echelonのアプローチは、このプロセスをAIエージェントで置き換えるものです。トップコンサルタントの知見を学習したAIが、事業部門の担当者と直接対話し、要件の曖昧な点を質問で解消。設定、ワークフロー、テスト、文書化までを自動で生成します。ある金融機関の事例では、6ヶ月と見積もられたプロジェクトをわずか6週間で完了させました。

このAIエージェントは、単なるコーディング支援ツールではありません。GitHub Copilotのような汎用AIと異なり、ServiceNow特有のデータ構造やセキュリティ、アップグレード時の注意点といったドメイン知識を深く理解しています。これにより、経験豊富なコンサルタントが行うような高品質な実装を、驚異的なスピードで実現できるのです。

この動きは、1.5兆ドル(約225兆円)規模の巨大なITサービス市場に大きな波紋を広げる可能性があります。アクセンチュアやデロイトといった大手ファームが築いてきた、人のスキルと時間に基づくビジネスモデルは、AIによる自動化の波に直面しています。顧客からのコスト削減圧力も高まる中、業界の構造転換は避けられないでしょう。

Echelonは今後、ServiceNowに留まらず、SAPやSalesforceといった他の主要な企業向けプラットフォームへの展開も視野に入れています。エンタープライズ領域で求められる極めて高い信頼性を証明できるかが、今後の成長を左右する重要な鍵となります。AIによるプロフェッショナルサービスの自動化は、まだ始まったばかりです。

自律型AIが人的限界を突破、1兆ドル市場を創出へ

自律型PSAの仕組みと効果

AIと人間の協働ワークフォース
中央エンジンによる全体最適化
案件獲得率が10%から70%超
納品高速化と利益率の向上

導入に向けた3つの要点

ワークフォースモデルの再設計
CRMネイティブな統合エンジンへの投資
スモールスタートからの段階的拡大

プロフェッショナルサービス業界が、AIエージェントを活用した「自律型プロフェッショナルサービスオートメーション(Autonomous PSA)」により、長年の課題である人的リソースの制約を打破しようとしています。これは人間とAIが協働する新モデルで、従来は取りこぼしていた膨大なビジネス機会を獲得し、1兆ドル規模の市場を創出する可能性を秘めています。

なぜ、プロフェッショナルサービス業界で変革の機運が高まっているのでしょうか。同業界の業務は、単なる定型作業ではなく、複雑な問題を解決する戦略そのものです。従来の自動化が「ルール通り動く」ことだとすれば、自律型AIは「ゴール達成のために自ら戦略を立て実行する」ことができます。この特性が、業界の複雑な課題解決と極めて高い親和性を持つのです。

この変革の心臓部となるのが、「オーケストレーションエンジン」と呼ばれる司令塔です。これは、人間とAIエージェントからなるハイブリッドチームを最適に采配するシステムです。例えばSalesforceプラットフォームのように、顧客データ基盤、AIエンジン、PSAソフトウェアが三位一体で連携することで、プロジェクト全体を俯瞰し、最適なリソース配分をリアルタイムで決定します。

自律型PSAの導入効果は絶大です。従来、人的制約から潜在需要の10〜20%しか獲得できなかった案件が、70〜90%まで捕捉可能になると試算されています。これは、ある大企業では約36億ドルもの増収に繋がる計算です。さらに、反復的なタスクをAIに任せることで、納期の短縮や利益率の向上も同時に実現します。

では、企業はこの変革の波にどう乗るべきでしょうか。専門家は3つのステップを推奨しています。第一に、AIとの協働を前提としたワークフォースモデルの再設計。第二に、CRMと一体化したネイティブな統合エンジンへの投資。そして最後に、リスクを抑えながら小規模な実証実験から始め、成功体験を積み重ねながら段階的に拡大していくアプローチが重要です。

自律型プロフェッショナルサービスの時代は、既に幕を開けています。これは一世代に一度の構造変革であり、この変化を迅速に捉え、自社のサービス提供モデルを進化させた企業が、次の時代の勝者となるでしょう。

OpenAI内製ツール発表でSaaS株急落:AI時代の市場動向

市場を揺るがすAIの脅威

OpenAIDocuGPTなど内製AIツールを発表
Docusign株が発表後12%急落を記録
HubSpotやSalesforceなど他SaaS株も下落

企業の戦略的見解

Docusignは「競争上の脅威ではない」と反論
SalesforceはLLM制御に強み、「競争ではなく提携」を主張
市場はファンダメンタルズよりナラティブで動く

連携による株価上昇例

OpenAI連携が言及されたFigma株は7%上昇

OpenAIが内部で使用するAIツール(DocuGPTなど)を公開した直後、SaaS企業の株価が急落しました。Docusign株は12%安、HubSpot株も大幅に下落し、AIの存在がエンタープライズ市場に与える影響力の大きさが浮き彫りとなりました。これは、AI技術の進歩だけでなく、市場の「ナラティブ」が株価を支配する新たな状況を示しています。

市場は、OpenAIのブログ投稿を既存のエンタープライズソフトウェア提供者への「宣戦布告」と解釈しました。発表されたツール自体はAPIを基にした基本的なデモに過ぎなかったにもかかわらず、OpenAIブランド力と潜在的な脅威が投資家の懸念を増幅させた形です。これにより、既存SaaS企業は競争優位性の再構築を迫られています。

これに対し、影響を受けた企業は冷静な姿勢を見せています。DocusignのCEOは、自社のサービスが契約プロセス全体を管理するAIプラットフォームに進化しており、DocuGPTのようなデモは競争上の脅威ではないと強調しました。基礎的なAI機能と、複雑なエンタープライズ向けソリューションとの違いを訴求しています。

Salesforceも「競争ではなく提携関係だ」との見解を示しています。大規模言語モデル(LLM)は本質的に非決定論的(Non-deterministic)であり、複雑なビジネス用途には、ガードレールや構造化のためのフレームワークが不可欠だと主張。この制御能力こそがエンタープライズパートナーとしての自社の強みです。

RBCキャピタル・マーケッツのアナリストが指摘するように、現在の市場はファンダメンタルズ(基礎収益力)よりもナラティブ(物語)によって動かされています。OpenAIに関するポジティブな言及は逆に株価を押し上げます。例えば、OpenAIのデベロッパーカンファレンスで連携が言及されたFigma株は、一時7%高となりました。

しかし、こうした市場の過敏な反応は一時的な可能性があります。過去にはSalesforceがデータ可視化ツールを発表した際も市場で動揺がありましたが、後に同社はTableauを買収しています。最終的に投資家の信頼を取り戻すには、具体的な収益性や顧客への価値提供を示す「良い数字」が必要となるでしょう。

Salesforce、自然言語で開発する新AIツール発表

新ツール「Agentforce Vibes」

自然言語で開発するバイブコーディング
AIエージェント「Vibe Codey」が自動実装
アプリのアイデア出しから構築まで支援
既存Salesforceアカウントと連携

企業導入の利点と市場背景

既存コードを再利用しセキュリティを確保
開発環境のセットアップが不要
過熱するバイブコーディング市場に参入
既存ユーザーには当面無料で提供

企業向けソフトウェア大手のセールスフォースは10月1日、新たなAI搭載開発者ツール「Agentforce Vibes」を発表しました。このツールは、開発者が自然言語で要件を記述するとAIが自動でコードを生成する「バイブコーディング」を企業向けに提供します。既存のSalesforce環境と連携し、セキュリティを確保しながら開発プロセスを大幅に自動化することで、企業のアプリケーション開発の生産性向上を目指します。

新ツールの核となるのは、自律型AIコーディングエージェント「Vibe Codey」です。このエージェントは、アプリケーションのアイデア出しから設計、構築、さらには運用監視に至るまで、開発ライフサイクル全体を支援します。開発者は複雑な技術的実装から解放され、より創造的な業務に集中できるようになるでしょう。

「Agentforce Vibes」の大きな特徴は、企業の既存Salesforceアカウントと直接連携する点です。これにより、組織が既に保有するコード資産を再利用したり、独自のコーディングガイドラインをAIに遵守させたりすることが可能になります。ゼロから開発を始める必要がなく、エンタープライズレベルのセキュリティとガバナンスを維持したまま、AI開発の恩恵を享受できます。

近年、バイブコーディング分野ではスタートアップが巨額の資金調達に成功するなど市場が過熱しています。一方で、AIモデルの運用コストの高さが収益性を圧迫するという課題も指摘されています。セールスフォースは、巨大な製品スイートの一部として提供することでコスト圧力を軽減し、安定したサービス提供で差別化を図る戦略です。

同社は現在、既存ユーザーに対して「Agentforce Vibes」を無料で提供しており、将来的に有料プランの導入を予定しています。利用するAIモデルは、OpenAI社のGPT-5と自社ホストのQwen 3.0を組み合わせることで、コストと性能のバランスを取っています。開発の参入障壁を下げるこの取り組みが、市場にどのような影響を与えるか注目されます。

AI Claude、大企業の生産性を劇的改善

主要企業の導入事例

製薬大手ノボノルディスク
サイバーセキュリティ大手
Salesforce、Cox Automotive

驚異的な業務効率化

文書作成時間を90%削減
ソフトウェア開発速度が最大30%向上
わずか3ヶ月で投資を回収

成功への鍵

具体的な事業課題から着手
重要指標を計測しROIを証明

AI開発企業Anthropicは、同社のAIモデル「Claude」が、製薬大手ノボノルディスクやSalesforceといったグローバル企業で導入され、事業変革を推進していると発表しました。各社はClaudeを活用し、開発速度の向上や文書作成時間の大幅な短縮、顧客対応の強化など、具体的な成果を上げています。これは、AIが単なる実験段階を越え、企業の中核業務に不可欠な存在となりつつあることを示しています。

特に顕著なのが、デンマークの製薬大手ノボノルディスクの事例です。同社は創薬開発のボトルネックとなっていた臨床試験報告書の作成にClaudeを導入。従来10週間以上かかっていた作業がわずか10分に短縮され、90%もの時間削減を達成しました。これにより、新薬を待つ患者へより迅速に治療を届けられる可能性が広がります。

他の業界でも成果は目覚ましいものがあります。世界最大のサイバーセキュリティ企業パロアルトネットワークは、Claudeを用いてソフトウェア開発の速度を20〜30%向上。自動車サービス大手のコックス・オートモーティブでは、顧客からの問い合わせ対応や試乗予約が2倍以上に増加するなど、顧客体験の向上に直結しています。

さらに、AIの活用はより高度な領域へと進んでいます。Salesforceは、人間の介入なしに業務を遂行する「自律型AIエージェント」の動力としてClaudeを統合。オンライントレーディング大手のIGグループは、分析業務の自動化などでわずか3ヶ月で投資回収(ROI)を達成したと報告しています。

Anthropicは、これらの成功事例に共通する特徴として、①具体的な事業課題から始めること、②技術だけでなく人材への投資を行うこと、③生産性向上などの重要指標を計測すること、の3点を挙げています。AI導入を成功に導くための重要な示唆と言えるでしょう。

SlackでClaudeが利用可能に、生産性向上を加速

Slackで完結するAI活用

Slack内で直接Claudeを起動
DMやスレッドでAIが応答支援
Web検索や接続済み文書も参照
AIの応答は下書き確認後にチーム共有

過去の情報をAIが瞬時に探索

Slack内の会話やファイルを横断検索
会議準備やプロジェクト進捗を要約
新規メンバーの情報把握を支援
チームの議論を公式文書化

AI開発企業Anthropicは、同社のAIアシスタントClaude」をビジネスコミュニケーションツール「Slack」と統合したと発表しました。この連携により、ユーザーはSlack内で直接Claudeの支援を受けたり、ClaudeからSlackの過去の情報を検索したりすることが可能になり、チームの生産性を飛躍的に向上させることを目指します。

SlackClaudeアプリを追加すると、使い慣れた画面でAIの能力を最大限に活用できます。ダイレクトメッセージや特定のスレッド内で「@Claude」とメンションするだけで、会話の文脈を踏まえた応答案の作成や、Web検索、接続済みのドキュメント分析などを依頼できます。これにより、作業を中断することなく、必要なサポートを即座に得られます。

特筆すべきは、ユーザーが常に主導権を握れる設計です。Claudeがスレッド内で生成した応答は、まずユーザーにのみ非公開で提示されます。ユーザーは内容を確認、編集した上でチームに共有するかを決定できるため、意図しない情報共有のリスクを避け、AIとの協業を円滑に進めることが可能です。

もう一つの強力な機能が、SlackClaudeに接続する連携です。これにより、Claudeはユーザーがアクセス権を持つチャンネル、ダイレクトメッセージ、共有ファイルを横断的に検索し、コンテキストとして参照できます。社内に蓄積された膨大な知識の中から、必要な情報を瞬時に探し出すことが可能になります。

この検索機能は、多様なビジネスシーンで効果を発揮します。例えば、会議前に複数のチャンネルに散らばった関連議論を要約させたり、新規プロジェクトに参加したメンバーが過去の経緯を素早く把握したりする際に役立ちます。埋もれがちな「暗黙知」を形式知に変え、チーム全体の意思決定を加速させるでしょう。

Slackの親会社であるSalesforceの最高製品責任者、ロブ・シーマン氏は、「AIエージェントと人間が協働する『エージェント型企業』への移行を加速させるものだ」とコメント。この統合が、より生産的でインテリジェントな働き方を実現することへの強い期待を表明しました。

本機能はSlackの有料プランを利用しているチームが対象で、Slack Marketplaceから導入できます。セキュリティ面では、Claudeはユーザーが持つ既存のSlack権限を尊重するため、アクセスできない情報には触れません。企業のセキュリティポリシーを遵守しつつ、安全にAIの利便性を享受できる仕組みです。

廃棄物業界に特化、AI営業CRMが5百万ドル調達

旧態依然の業界課題

ペンと紙に頼るアナログな営業
既存CRMは複雑で業界に不向き
新規顧客のオンライン情報不足

AIが可能にする営業DX

業界特化のCRMプラットフォーム
AIで見込み客データを自動抽出
医療・有害廃棄物分野で既に成功
シードで500万ドルを調達し事業拡大へ

廃棄物管理業界に特化したCRM(顧客関係管理)を開発するスタートアップCommanderAIが、シードラウンドで500万ドルを調達しました。同社は、AIを活用して、従来のアナログな営業手法が主流だった巨大市場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指します。既存の汎用ツールでは対応しきれなかった業界特有の課題を解決し、営業の効率化を支援します。

米国の廃棄物管理業界は、2024年に1000億ドルを超える巨大市場ですが、その営業活動は今なおペンと紙、戸別訪問といった旧来の手法に大きく依存しています。セールスフォースのような汎用CRMは、業界特有の複雑な契約形態やデータ要件に対応できず、広く普及するには至っていませんでした。

CommanderAIは、AIを活用してこの課題に挑みます。ウェブ上に公開されていても見つけにくい新規建設プロジェクトやオンライン情報のない小規模事業者のデータをAIが自動で収集・分析。営業担当者が見込み客を効率的に発見できる、業界に最適化されたプラットフォームを提供します。

この独自のアプローチが評価され、同社は11 Tribes Venturesが主導するシードラウンドで500万ドル資金調達に成功しました。調達した資金は、営業チームの増強と、マッピングやルート最適化といった新機能の開発に充当し、事業拡大を加速させる計画です。

CEOのデビッド・バーグ氏は「廃棄物管理業界の30%にCommanderAIを導入してもらうことが目標」と語ります。将来的には、ごみ収集だけでなく、コンテナレンタルや産業リサイクルといった隣接分野への展開も視野に入れています。巨大ながらもテクノロジーの活用が遅れていた市場での挑戦が始まりました。

Anthropic、世界展開を加速 新リーダーで攻略

驚異的な事業成長

ランレート収益が50億ドルを突破
企業価値は1830億ドルに到達
法人顧客数は2年で300倍以上に増加
消費者利用の約8割は米国から

グローバル展開と新体制

Google幹部を国際部門トップに任命
欧州・アジアに新オフィスを正式開設
日本法人トップに東條英俊氏が就任
エンタープライズ向け販売体制を強化

AI開発企業Anthropicは、元Google幹部を国際部門責任者に任命し、グローバル展開を本格化します。AIモデル「Claude」への国際的な需要増を受け、欧州やアジアに新オフィスを開設。世界中の企業へのサポート体制を強化する構えです。

同社の成長は驚異的です。ランレート収益は2024年初頭の8700万ドルから2025年8月には50億ドルを超え、企業価値は1830億ドルに達しました。法人顧客数も過去2年で300倍以上に増加し、エンタープライズAI市場でトップシェアを誇ります。

新たに国際部門のマネージングディレクターに就任したクリス・チャウリ氏は、Google CloudやSalesforceでグローバル事業を拡大させた実績を持ちます。最高商務責任者や日本法人責任者の東條英俊氏らと共に、世界市場での販売戦略を推進します。

具体的な展開として、アイルランドのダブリンとロンドンで100名以上の新規雇用を計画し、アジア初となるオフィスを東京に正式開設します。これにより、各地域の顧客ニーズに迅速に対応できる体制を構築する狙いです。今後の数ヶ月で、欧州の追加拠点も発表される予定です。

すでに世界中の企業がClaudeを導入し、大きな成果を上げています。例えば、ノルウェー政府年金基金は生産性を約20%向上させ、楽天は機能開発時間を79%削減しました。これらの成功事例が、さらなる国際的な需要を牽引しています。

企業がAnthropicを選ぶ理由は、その高い性能に加え、事業の根幹を支える上で不可欠な安全性と信頼性にあります。同社は今後も信頼できるAIシステムの開発を続け、世界中の企業の成功に貢献していく方針です。

インド発AIアプリ開発Rocket.new、23億円調達で急成長

インドのAIスタートアップRocket.newは、Salesforce Venturesが主導するシードラウンドで1500万ドル(約23億円)を調達しました。同社は自然言語の指示だけで、プロトタイプではなく本番環境で動作する本格的なアプリを開発できるプラットフォームを提供します。 今年6月のベータ版公開からわずか3ヶ月で、ユーザー数は180カ国40万人を突破。有料契約者も1万人を超え、ARR(年間経常収益)は450万ドルに達しました。同社は来年6月までにARRを6000万〜7000万ドルに引き上げるという野心的な目標を掲げています。 「Vibe-coding」と呼ばれるこの分野では、LovableやCursorなどの競合が存在します。しかし、多くが迅速なプロトタイプ作成に留まるのに対し、Rocket.newは保守や拡張も可能な「本番品質」のコード生成に注力している点が大きな違いです。 同社のプラットフォームは、AnthropicOpenAIGoogleのLLM(大規模言語モデル)と、前身事業で蓄積した独自データで訓練した深層学習システムを組み合わせています。これにより、他のツールより時間はかかるものの、より包括的なアプリを生成できるとしています。 料金体系はトークン消費量に応じた月額課金制(25ドル〜)で、すでに50〜55%という高い粗利益率を確保しています。売上の最大市場は米国(26%)で、今後はパロアルトに米国本社を設立し、事業を本格化させる計画です。 今後は単なるコード生成にとどまらず、競合調査や製品開発戦略の立案までAIが担う「エージェントシステム」の構築を目指します。これにより、将来的にはプロダクトマネージャーの役割さえも代替可能になると同社は考えています。 リード投資家Salesforce Venturesは「AIによるコード生成の魔法と、それを本番環境で使えるようにする現実との間のギャップを埋める存在だ」と評価。企業の規模で求められる反復開発や保守、展開といった課題を解決する能力に期待を寄せています。

Salesforce、国家安全保障特化のAI部門「Missionforce」設立

AI導入に特化

新ビジネスユニット「Missionforce」発足
国家安全保障分野に重点を置く
政府・軍隊のワークフローをAIで近代化
運用をよりスマートかつ迅速に

注力する三領域

人事、ロジスティクス、意思決定へのAI統合
CEOはGovernment CloudのKendall Collins氏

テック企業の動向

OpenAIAnthropicGoogleも政府向けサービスを強化
$1/年など破格でAI提供する動きが顕著

CRM(顧客関係管理)の巨大企業であるセールスフォースは、国家安全保障に特化した新事業部門「Missionforce」の設立を発表しました。これは、AI、クラウド、プラットフォーム技術を国防分野のワークフローに統合し、政府機関や軍の業務効率を劇的に向上させることを目的としています。

新部門は、特に米国防総省や連邦政府機関を対象に、AIを活用した近代化を推進します。Missionforceを率いるのは、Government CloudのCEOを務めるケンドール・コリンズ氏であり、「奉仕する人々を支援する上で、今ほど重要な時はない」と、この分野へのコミットメントを強調しています。

Missionforceが注力する核心領域は三つです。具体的には、人員管理(Personnel)、ロジスティクス(Logistics)、および意思決定(Decision-making)へのAI導入を通じて、戦闘員や支援組織がよりスマートかつ迅速に、効率的に活動できるよう支援します。

セールスフォースはこれまでも米陸軍、海軍、空軍を含む連邦政府機関と長年にわたり契約を結んできました。今回の新部門設立は、既存の強固な政府向け事業基盤を活かし、AIブームの中で新たな収益源を確保するための戦略的な一歩と見られます。

国家安全保障向けAI市場は競争が激化しています。OpenAIAnthropicGoogleといった主要テック企業も、政府機関専用のAIサービスを相次いで展開中です。特にOpenAIは、政府機関向けにエンタープライズ版ChatGPTを年間わずか1ドルで提供するなど、シェア獲得に向けた動きが顕著です。