評価額(経済・金融・投資)に関するニュース一覧

Portが1億ドル調達、AIエージェント管理でSpotifyに対抗

評価額8億ドルへの躍進

シリーズCで1億ドルを調達
評価額8億ドルに到達
LGやGitHubなど大手顧客を獲得

AIエージェント管理の課題

開発現場でのエージェント利用が急増
統制なき導入によるカオス化が懸念
データ分散やセキュリティが課題

Port独自の解決策

エージェントオーケストレーション機能
人間による承認プロセスを統合
コンテキストガードレールを一元管理

イスラエルのスタートアップPortは12月11日、シリーズCラウンドで1億ドルを調達したと発表しました。評価額は8億ドルに達し、Spotifyの「Backstage」に対抗する社内開発者ポータルとして、AIエージェント管理機能を強化します。

開発現場ではコーディングだけでなく、インシデント解決やリリースマネジメントなど多岐にわたる業務でAIエージェントの活用が進んでいます。しかし、ツールやデータが分散し、企業としての統制がないまま導入が進み、現場が混乱するリスクが高まっています。

Portはこの課題に対し、単なるツールカタログに留まらないオーケストレーション層を提供します。「Context Lake」機能により、エージェントが必要とするデータソースやガードレールを定義し、安全で正確な業務遂行を支援することが可能です。

また、エージェントのパフォーマンス測定や、必要に応じて人間が承認を行う「ヒューマン・イン・ザ・ループ」のプロセスも統合されています。同社のCEOは、エンジニアの業務の90%を占めるコーディング以外のタスクを効率化すると強調します。

今回の調達資金を活用し、PortはAIエージェント管理市場での地位確立を急ぎます。LangChainやUiPath、大手テック企業など多くの競合がひしめく中、開発者体験とガバナンスを両立させるプラットフォームとしての真価が問われます。

開発工程の7割を自動化へ、Harnessが大型調達

評価額55億ドルに急伸

ゴールドマン主導で2.4億ドル調達
評価額は前回比49%増の55億ドル
2025年のARR2.5億ドル超へ

アフターコードの自動化

エンジニア時間の70%を占める作業
テストやデプロイAIエージェント
急増するAIコード量に対応

独自技術とIPOへの展望

独自の知識グラフで文脈を理解
ユナイテッド航空など1000社導入

米国のAI DevOpsツール企業Harnessは2025年12月11日、シリーズEラウンドで2億4000万ドル(約360億円)を調達し、評価額55億ドルに達したと発表しました。AIによるコーディング加速で生じた「アフターコード」のボトルネックを解消し、企業のソフトウェア生産性を劇的に向上させる狙いです。

現在、エンジニアの時間の約70%は、コードを書いた後のテスト、セキュリティチェック、デプロイといった作業に費やされています。生成AIの普及によりコードの生産量は急増していますが、それを受け止める後工程の自動化が追いつかず、開発現場における最大のボトルネックとなっています。

Harnessはこの課題に対し、AIエージェントと独自の「ソフトウェアデリバリー知識グラフ」で挑みます。企業の開発プロセスやアーキテクチャを深く理解したAIが、パイプライン構築や検証を自動化し、人為的ミスを防ぎながらリリース速度を加速させます。

連続起業家ジョティ・バンサル氏が率いる同社は、ユナイテッド航空やモーニングスターなど1000社以上の顧客を抱え、急成長を遂げています。年間経常収益(ARR)は2025年に2億5000万ドルを超える見込みで、将来的なIPOを見据えた堅実な事業基盤を築いています。

今回の調達資金は研究開発の拡大とエンジニア採用に充てられます。特にインドのバンガロール拠点では数百名規模の採用を計画しており、自動化技術の精度向上と国際的な市場展開をさらに加速させる方針です。

Cursor、デザイナー向けAIエディタ発表 コードと意匠を統合

プロ仕様の「Visual Editor」

自然言語と手動操作でUI変更が可能
デザイン実際のCSSコードに直接変換
ピクセルとコードの分断を解消

開発プロセス全体の覇権へ

ARR10億ドル突破の急成長企業
プロの大規模開発に特化し差別化
AdobeやFigmaに対抗する市場開拓

AIコーディングで急成長する米Cursorは2025年12月11日、デザイナー向け新機能「Visual Editor」を発表しました。自然言語によるAIへの指示とプロ仕様のGUI操作を組み合わせ、Webアプリの外観を直接コードベースに反映させることで、開発とデザインの分断を解消します。

新機能の核心は、デザインツール上の操作を「実際のCSS」として出力する点です。従来の画像ベースのツールとは異なり、デザイナーは本番環境と同じコードを操作できます。チャットでの「背景を赤にして」といった指示と、フォントや余白の微調整を行うGUIパネルを併用し、直感的かつ精密な実装を可能にしました。

この機能は、開発者デザイナー間の「ハンドオフ(受け渡し)」に伴う摩擦をなくすことを目的としています。CursorのRyo Luデザイン責任者は、ピクセルを扱うデザイナーとコードを扱う開発者を単一のインターフェースとAIエージェントで統合し、ソフトウェア構築プロセス全体を効率化すると説明しています。

競合優位性として、プロフェッショナルな大規模開発への対応を掲げています。Replitなどの簡易ツールとは一線を画し、Shopifyなどの大企業ですでに導入が進んでいます。ブランド独自の「デザイン言語」や美学を尊重し、既存の複雑なコードベース上でも破綻なく高度な編集を行える点が強みです。

また、ブラウザベースの検証機能も強力です。自社サイトだけでなく、あらゆる公開サイトを読み込み、そのフォントファミリーや色定義などのデザインシステムを即座に解析できます。ユーザーはライブサイト上でスタイルの変更をシミュレーションし、開発へのフィードバックループを加速させることが可能です。

Cursorは創業から短期間でARR(年間経常収益)10億ドルを突破し、評価額は約300億ドルに達しています。OpenAIAnthropicなどの巨大テック企業との競争が激化する中、開発者だけでなくデザイナーやPM層をも取り込むプラットフォーム戦略を加速させ、AdobeやFigmaといった既存ツールへの対抗軸を打ち出しています。

ElevenLabs評価66億ドル 音声AIから対話PFへ

評価額倍増と市場での躍進

評価額は9ヶ月で倍増し66億ドル
Sequoiaらが1億ドル規模を出資
創業から短期間で黒字化を達成

音声技術のコモディティ化と転換

音声モデルは数年でコモディティ化
会話型AIエージェントへ戦略転換

AI音声生成のElevenLabsが、評価額66億ドルに到達しました。米Sequoiaなどが主導する投資ラウンドで、わずか9ヶ月で企業価値を倍増させています。注目すべきは、CEOが「音声モデル自体は数年でコモディティ化する」と予測し、次なる成長戦略へ舵を切っている点です。

ポーランド出身のエンジニアが創業した同社は、映画の吹き替え品質への不満から始まりました。現在では黒字化を達成し、Fortniteのキャラクターボイスや企業のカスタマーサポートに技術を提供。OpenAIと競合しながらも、AI音声のデフォルトスタンダードとしての地位を確立しつつあります。

Staniszewski CEOは、音声生成技術の優位性は長く続かないと分析しています。競合が追いつく未来を見据え、単なる音声モデルの提供から、会話型AIエージェントの構築プラットフォームへと事業をピボット。対話機能そのものを包括的に提供する戦略です。

さらに、ディープフェイク対策としての電子透かしや、音楽生成動画モデルとの融合も推進しています。「人間よりもAI生成コンテンツの方が多くなる」という未来予測のもと、音声を超えたマルチモーダルな展開を加速させています。

米新興Unconventional AI、シードで評価額45億ドル

異例の巨額シード調達

調達額4.75億ドル、評価額45億ドル
a16zとLightspeedが主導

「生物並み」の効率目指す

AI向け高効率コンピュータを開発
生物学のようなエネルギー効率追求

創業者は連続起業家

過去にDatabricksへ事業売却
Intelへも売却経験ある実力者

元DatabricksのAI責任者Naveen Rao氏が率いる新興企業Unconventional AIは2025年12月9日、シードラウンドにおいて4億7500万ドル(約710億円相当)の資金調達を完了したと発表しました。評価額はシード段階としては異例の45億ドル(約6750億円相当)に達しており、AIハードウェア分野への市場の期待値の高さが浮き彫りとなっています。

本ラウンドはAndreessen Horowitz (a16z) とLightspeed Venturesが主導し、Lux CapitalやDCVCも参画しました。今回の調達は、最大10億ドルを目指す資金調達計画の第一弾と位置付けられています。テック業界では以前からRao氏の新会社が50億ドル規模評価額を目指していると報じられており、今回の発表でその巨額構想が現実のものとなりました。

同社が目指すのは、AIに特化した新しいエネルギー効率の高いコンピュータの開発です。Rao氏は以前、「生物学と同じくらい効率的な」コンピュータを創るというビジョンを掲げていました。現在のAIモデル開発における膨大な電力消費課題を解決するため、根本的なハードウェアアーキテクチャの刷新を狙っていると見られます。

Rao氏は、これまでにAI関連スタートアップ2社を巨額で売却した実績を持つ「シリアルアントレプレナー」です。2016年にNervana SystemsをIntelへ4億ドル超で、2023年にはMosaicMLをDatabricksへ13億ドルで売却しました。この卓越した実績が、シードラウンドでの記録的な評価額投資家からの厚い信頼につながっています。

米インテル、AI半導体SambaNova買収へ合意書署名

買収合意の現状

タームシートに署名済み
法的拘束力のない予備的合意
最終決定まで数ヶ月かかる可能性

狙いと背景

AI推論チップの技術獲得
評価額は50億ドル未満の観測
インテルCEOが同社会長を兼務

米インテルがAIチップスタートアップ、SambaNova Systemsの買収に向けたタームシートに署名したと報じられました。AI開発競争で後れを取る中、推論向け半導体の技術基盤を強化し、市場での巻き返しを図る狙いがあります。

今回の合意は法的拘束力を持たず、正式な契約締結には規制当局の承認や資産査定など数週間から数カ月を要する見通しです。買収額の詳細は不明ですが、SambaNovaが2021年時点で記録した評価額50億ドルを下回る可能性が高いとされています。

インテルのリップ・ブー・タンCEOはSambaNovaの会長を兼務しており、資本関係も含め両社の結びつきは深いです。インテルはAIファースト戦略を掲げ、米国政府からの資金支援も活用しながら、事業再編と先端技術の獲得を加速させています。

AI会話コーチYoodliが4千万ドル調達、評価額は3倍に

評価額3倍増の急成長

シリーズBで4,000万ドルを調達
評価額は半年前の3倍以上に到達
年間経常収益が900%成長

人間を「支援」するAI

GoogleSnowflake等が導入
代替ではなく能力向上に特化
主要言語に対応しAPACへ拡大

シアトル発のAIスタートアップYoodliは2025年12月5日、シリーズBラウンドで4,000万ドルを調達し、評価額が3億ドルを超えたと発表しました。元Google社員らが創業した同社は、AIによる「人間の代替」ではなく、コミュニケーション能力の「支援」に特化することで急成長を遂げています。GoogleやSnowflakeなど大手企業が相次いで導入を進めており、職場のスキル開発に変革をもたらしています。

今回の資金調達はWestBridge Capitalが主導し、創業からわずか4年で評価額は半年前の3倍以上に達しました。特筆すべきは、過去12ヶ月で年間経常収益(ARR)が900%成長した点です。当初は個人のスピーチ練習用として始まりましたが、現在は企業のセールストークや管理職のコーチングなど、エンタープライズ向けのトレーニングプラットフォームとして需要が急増しています。

Yoodliの最大の特徴は、AIを脅威ではなく「パートナー」と位置付ける哲学にあります。共同創業者のVarun Puri氏は「AIは0から8までのレベルアップを助けるが、人間特有の真正性や人間味は代替できない」と語ります。この方針のもと、既存のコーチング企業とも競合せず、彼らのメソッドをシステムに組み込む形で協業を進めており、静的な動画研修に代わる実践的なロールプレイ環境を提供しています。

調達した資金は、AIによる分析・パーソナライズ機能の強化や、アジア太平洋(APAC)地域への市場拡大に充てられる予定です。また、TableauやSalesforce出身の幹部を迎え入れるなど経営体制も強化しており、多言語対応を含めたグローバルな展開が加速すると見られます。

AI市場調査Aaru、評価額10億ドルでシリーズA調達

特殊な評価額構造

Redpoint主導でシリーズAを実施
一部条件で評価額10億ドルを適用
実質的な評価額は10億ドル未満
AI投資多層的評価が増加傾向

AIによる市場調査変革

数千のAIエージェントが行動予測
従来のアンケートや調査を代替
選挙結果も正確に予測する精度

米AIスタートアップのAaruは2025年12月5日までに、Redpoint Ventures主導によるシリーズAラウンドを実施しました。本調達において一部の投資枠で評価額10億ドルが適用され、調達額は5000万ドルを超えると見られています。

Aaruは、数千のAIエージェントを用いて人間の行動をシミュレーションする技術を開発しました。公開データや独自データをもとに、特定の人口統計グループが将来のイベントにどう反応するかを予測し、従来の市場調査を高速化します。

今回の調達では、投資家ごとに異なる評価額を設定する多層的な評価構造が採用されました。高い「ヘッドライン評価額」を対外的に示しつつ、特定の投資家には有利な条件を提示する手法で、人気のあるAI企業の資金調達で増加傾向にあります。

同社は2024年3月の創業から急速に成長しており、顧客にはAccentureやEYなどの大手が名を連ねています。昨年の選挙予備選の結果を正確に予測するなど高い精度を実証しており、ARR(年間経常収益)は1000万ドル未満ながら需要が拡大しています。

米VC、初期AI企業へ巨額投資し勝者を決める戦略が加速

圧倒的資金で勝者を決める

初期段階で巨額資金を集中投下
競合を圧倒し市場支配を演出

収益実績より期待値を重視

売上規模に関わらず評価額で出資
シリーズA直後に追加調達を実施

顧客獲得と投資家の論理

資金力で大企業の導入不安を払拭
将来の巨大化狙うパワーローの法則

2025年12月現在、米国の有力ベンチャーキャピタルVC)の間で、初期段階のAIスタートアップに巨額の資金を集中投下する「キングメイキング」戦略が加速しています。これは、設立間もない企業へ圧倒的な資金力を与えることで競合を排除し、市場の勝者を早期に確定させる手法です。かつてUberなどで見られた「資本の武器化」が、シリーズAやBといった極めて早いフェーズで実行されているのが特徴です。

象徴的な事例がAI ERPのDualEntryです。同社は設立1年で売上実績が少ないにもかかわらず、Lightspeedなどから9000万ドルを調達し、評価額は約4億ドルに達しました。競合他社も数ヶ月間隔で巨額調達を繰り返しており、AI分野での資金競争は過熱の一途を辿っています。

この戦略の意図は、市場支配の演出と顧客への安心感の提供にあります。大企業にとってスタートアップの倒産は懸念材料ですが、潤沢な資金を持つ企業は「生き残る勝者」と認識されます。実際、法務AIのHarveyはこの信頼感を武器に、大企業顧客の獲得に成功しました。

VCリスクを取る背景には、過去の教訓から「勝者への早期投資」を最優先する心理があります。カテゴリー覇者になれば初期の過大評価も正当化されるという判断です。しかし、過去には巨額資金を得て破綻した事例も存在し、資金力が必ずしも成功を保証するわけではありません。

Anthropicが26年IPOへ始動、評価額3000億ドル超か

上場に向けた具体的始動

早ければ2026年IPO実施へ
法律事務所Wilson Sonsiniを起用
投資銀行とも協議を開始
主幹事証券会社は未定

企業価値と市場動向

評価額3000億ドル超での調達検討
史上最大規模のIPOになる可能性
競合OpenAIも上場を模索中

生成AI大手のAnthropicが、2026年のIPO(新規株式公開)を見据えて具体的な準備を開始しました。法律事務所Wilson Sonsiniを起用して手続きを進めるほか、複数の投資銀行と協議を行っています。実現すれば、テック業界でも過去最大規模の上場となる見通しです。

同社は上場に先立ち、新たな資金調達ラウンドも検討しています。このラウンドでの企業価値は3000億ドル(約45兆円)を超えると試算されており、2025年9月時点の1830億ドルから大幅な上昇が見込まれます。市場からの高い期待と、AI開発に必要な巨額資金の需要が背景にあります。

一方、競合のOpenAI評価額5000億ドル規模でのIPOを模索中と報じられています。生成AI市場を牽引する二大巨頭が相次いで上場準備に入ったことは、AIビジネスが投資フェーズから本格的な収益化と市場拡大のフェーズへ移行しつつあることを示唆しています。

Anthropicは2022年からWilson Sonsiniを顧問としており、今回の起用は既定路線と言えます。主幹事証券会社は未定ですが、今後の選定プロセスや市場環境の変化が、AI業界全体の株価や投資トレンドに大きな影響を与えることは間違いありません。

独画像生成AIが3億ドル調達、評価額32.5億ドルへ

大型調達と豪華な投資家陣

シリーズBで3億ドルを調達
評価額32.5億ドルに到達
SalesforceNVIDIAが参加
CanvaやFigmaも出資

技術力と急速な普及

マスク氏のGrokが技術採用
最新モデルFlux 2を発表
4K解像度画像生成に対応
Stable Diffusion開発陣が創業

ドイツを拠点とする画像生成AI企業Black Forest Labsは12月1日、シリーズBラウンドで3億ドルを調達したと発表しました。今回の大型調達により、同社の企業評価額32.5億ドルへと急伸しています。

本ラウンドはSalesforce Venturesなどが主導し、a16zやNVIDIAといった有力VC・テク企業に加え、CanvaやFigmaなどのデザインプラットフォームも出資しました。調達資金は、さらなる研究開発(R&D;)に充てられます。

2024年8月の設立以来、同社は急速に市場シェアを拡大してきました。イーロン・マスク氏のAI「Grok」が同社モデルを採用したことで注目を集め、現在ではAdobeやPicsartなど、クリエイティブ領域の主要企業が技術を導入しています。

直近では最新モデル「Flux 2」を発表し、テキスト描画やレンダリング品質を向上させました。最大10枚の画像を参照してトーンを維持する機能や、4K解像度での生成を実現するなど、プロフェッショナル用途への対応を強化しています。

同社の共同創業者であるRobin Rombach氏らは、かつてStability AIでStable Diffusionの開発を主導した研究者たちです。その確かな技術的背景と実績が、短期間での巨額調達と市場からの高い信頼を支えています。

Supabase50億ドル評価、大型契約拒否の成長戦略

評価額50億ドルへの急騰

数ヶ月で評価額20億から50億ドル
AI開発トレンドVibe codingの基盤
LovableやReplit等の裏側で採用

「No」と言える経営哲学

100万ドルの大型契約も拒否する判断
顧客要望より製品ビジョンを優先
資金はPostgresの拡張へ投資
Oracleの市場代替を加速と予測

オープンソースDBプラットフォームのSupabaseは2025年11月、1億ドルを調達し、評価額50億ドルに達したと明らかにしました。AIによる開発手法「Vibe coding」の普及を背景に、わずか数ヶ月で評価額を2.5倍に伸ばす急成長を遂げています。

特筆すべきは、CEOのポール・コップルストーン氏がとる「断る経営」です。同氏は、100万ドル規模のエンタープライズ契約であっても、顧客の要求が自社のプロダクトビジョンから逸脱する場合は契約を拒否しています。目先の収益よりも製品の一貫性を優先する戦略です。

この「苦渋の決断」は、結果として市場からの信頼獲得に繋がりました。独自のビジョンを貫くことで、LovableやReplitといった有力スタートアップインフラとして選ばれ続けています。世界が自社製品に追いつくことを待つ、大胆な賭けが奏功しているのです。

調達した資金は、中核技術であるPostgresのスケーラビリティ向上に投じられます。コップルストーン氏は「Oracleの死は一世代もかからない」と述べ、データベース市場の覇権交代が予想以上の速さで進むとの見通しを示しました。

Sierraが創業2年で年商150億円、AIエージェント実需急増

異例のスピード成長と実用化

創業21ヶ月でARR1億ドルを達成
評価額は既に100億ドルに到達
テック以外の大手企業も導入加速

人材獲得への戦略的シグナル

収益公開を採用の武器に活用
契約ベースの質の高い売上を強調
SF市内で大規模なオフィス拡張

Salesforce共同CEOのブレット・テイラー氏率いるAI新興「Sierra」は21日、創業21ヶ月でARR(年間経常収益)が1億ドルに到達したと発表しました。この異例の急成長は、企業向けAIエージェントの実用化が急速に進んでいることを示しています。

今回の数値公表には、激化するAI人材獲得競争を勝ち抜く戦略的な狙いがあります。テイラー氏は、同社の収益が堅実な年間契約に基づくと強調。業界の「勝者」であることを示し、優秀なエンジニアを惹きつける強力な武器として活用しています。

特筆すべきは、顧客層がテック企業だけでなく、ADTやCignaといった伝統的大企業に広がっている点です。同社のAIは単なる対話に留まらず、返品処理や認証などの業務プロセスを完遂可能で、成果報酬型モデルも導入を後押ししています。

拡大を見据え、同社はサンフランシスコに大規模オフィスを確保し、約300名の人員を来年には倍増させる計画です。AI市場が将来的な「統合」フェーズに向かう中、確かな収益基盤と技術力でプラットフォーム覇権の確立を着実に進めています。

Nvidia売上570億ドル、AIインフラ投資が支える急成長

圧倒的決算とCEOのビジョン

売上高は前年比62%増の570億ドル
データセンター事業が500億ドル規模に
AIエージェント普及が投資正当化の鍵

過熱する周辺領域への投資

ベゾス氏が新AIスタートアップに参画
音楽生成Sunoが25億ドル評価で調達
Waymoなど自動運転の実用化が加速

Nvidiaは2025年11月、前年比62%増となる売上高570億ドルを記録したと発表しました。世界的なAIインフラへの旺盛な投資需要が続き、特にデータセンター事業が収益の柱として、同社の急成長を牽引しています。

市場では「AIバブル」を懸念する声もありますが、データセンター事業だけで約500億ドルを稼ぎ出す現状は、実需の強さを証明しています。ジェンスン・フアンCEOは、AIエージェントが日常業務を担う未来を見据え、現在の巨額投資は正当であると強調します。

AIエコシステム全体への資金流入も続いています。ジェフ・ベゾス氏による新興AI企業「Project Prometheus」への参画や、音楽生成AI「Suno」が訴訟リスクを抱えながらも評価額25億ドル資金調達に成功するなど、投資家の期待は依然として高い水準です。

実社会でのAI活用として、自動運転分野も進展を見せています。Waymoが提供エリアを拡大し高速道路での走行承認を得たほか、ZooxやTeslaもサービス展開を加速させており、AI技術が社会インフラとして定着しつつある現状が浮き彫りになっています。

AI音楽Suno評価24億ドル超も「能動的」発言に波紋

巨額調達とCEOの主張

2.5億ドル調達、評価額24.5億ドルに到達
プロンプト入力は能動的創造」と発言

クリエイティブ定義の対立

テキスト入力は「能動的」か疑問視の声
スキル習得のプロセス省略への懸念

市場価値への影響とリスク

大量生成による希少性低下リスク
Spotify等はAI楽曲の価値を疑問視

AI音楽生成スタートアップのSunoが2.5億ドルを調達し、評価額が24.5億ドルに達しました。しかし、同社CEOの「プロンプト入力は能動的な音楽制作である」という発言が、クリエイターや業界関係者から強い反発を招いています。AIによる自動生成と人間の創造性の境界線を巡る議論が再燃しています。

SunoのCEOマイキー・シュルマン氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、将来的にはより多くの人々が「本当に能動的」な方法で音楽に関わると述べました。Sunoはテキスト指示だけで楽曲を生成するサービスですが、新たにDAWに近い編集機能「Studio」も提供し、関与度を高めようとしています。

この発言に対し、テックメディアのThe Vergeは「侮辱的だ」と厳しく批判しています。テキストで「ジャズラップを作って」と指示することは、スキルを磨き楽器を演奏する行為とは異なり、創造プロセスそのものではなく単なる「発注」に近いという指摘です。

経済的な観点からも懸念が示されています。スキルや努力を必要とせずに大量の楽曲が生成されれば、供給過多により音楽の価値が希薄化する恐れがあります。実際、SpotifyなどのプラットフォームはAI生成楽曲の価値を低く見積もり、視認性を下げる対策を講じ始めています。

Sunoは音楽制作の民主化を掲げますが、PCや楽器の低価格化により環境はすでに整っています。Sunoが提供しているのはツールの民主化ではなく、スキル習得という「プロセスのバイパス」である可能性があります。AI時代の創造性とは何か、技術と芸術のバランスが改めて問われています。

スウェーデン発AIがARR2億ドル突破、欧州拠点で成功

欧州に留まる逆張り戦略

4ヶ月でARRが倍増し2億ドルへ
周囲の反対を押し切り欧州残留
米国から優秀な人材を逆輸入

加熱するAI開発市場

競合Cursorも巨額調達を実施
コミュニティの声が開発を主導
設立1年でユニコーンの仲間入り

スウェーデンのAI企業Lovableが、わずか4ヶ月で年間経常収益を倍増させ、2億ドルに到達しました。同社CEOはヘルシンキでの講演で、この急成長の主因はシリコンバレーに移転せず、あえて欧州に拠点を置き続けた「逆張り戦略」にあると明かしました。

一般的にAI企業は米国を目指しますが、Lovableは常識を覆しました。「欧州でも勝てる」という信念のもと、Notionなどのシリコンバレー企業から人材をストックホルムへ呼び寄せています。現地の結束力と強い使命感を武器に、独自の地位を築きました。

AIによるコーディング市場は過熱しており、競合のCursorも評価額293億ドルで資金調達するなど競争が激化しています。Lovableは活発なユーザーコミュニティの声を開発に生かし、設立1年でのユニコーン入りに続くさらなる飛躍を狙います。

医療AIの米Function Health、2.98億ドル調達

大型調達でAI開発加速

シリーズBで2.98億ドル調達
評価額25億ドルに到達
a16zなどが投資に参加

医師主導の医療特化AI

医師が訓練する生成AIモデル
個人データに基づく個別指導
デバイス非依存のプラットフォーム
HIPAA準拠でデータ保護

米Function HealthはシリーズBで2.98億ドルを調達し、評価額25億ドルに達しました。Redpoint Ventures主導のもとa16z等も参加し、個人の健康データを統合分析する医療特化型AIの開発を加速させます。

同社は「Medical Intelligence Lab」を設立し、医師が訓練する生成AIモデルを構築します。ユーザーは検査結果や医師のメモを統合したAIチャットボットを通じ、個別最適化された健康上の洞察を得ることが可能です。

競合と異なり、特定のデバイスに依存しないアプローチが特徴です。HIPAA準拠やデータの暗号化、個人情報の販売禁止を徹底しており、高度なAI活用と同時にプライバシー保護への強いコミットメントを示しています。

米国内の拠点を年内に約200カ所へ拡大する計画です。2023年以降5000万回以上のラボテストを実施済みで、急速に蓄積されるデータをAIで実用的な価値へと変換する取り組みが、市場から高く評価されています。

AdobeがSemrushを19億ドルで買収、AI検索対策へ

買収の概要と評価額

買収総額は約19億ドルの現金取引
1株12ドル、直近終値の約2倍を提示
マーケティング製品群の機能拡充が目的

狙いは「GEO」市場

SEOに加え生成AI検索最適化に注力
AI経由のサイト流入が1200%増
次世代の成長チャネルとして期待

Adobeは19日、SEOプラットフォーム大手のSemrushを約19億ドルで買収すると発表しました。生成AIの普及により急速に変化する検索行動に対応し、同社のデジタルマーケティング分野での競争力を高める狙いがあります。

買収は全額現金で行われ、1株あたり12ドルが支払われます。これは発表前の株価6.89ドルの約2倍にあたるプレミアム価格です。Semrushは従来のSEOに加え、生成AI検索向けの最適化(GEO)にも強みを持ちます。

消費者が情報収集にAIチャットボットを利用するケースが急増しています。Adobeのデータによれば、生成AI経由の小売サイトへの流入は前年比で1200%増加しており、企業にとって無視できない市場となっています。

Semrushはすでに、ChatGPTClaudeなどのAIエンジンに対する可視性を高めるツールを提供しています。Adobeはこの技術を取り込み、SEOとGEOの両面から企業のマーケティング支援を強化します。

Lambdaが15億ドル調達、MSとの巨額契約後にAI基盤強化

マイクロソフトとの連携加速

AI基盤Lambdaが15億ドル調達
MSと数十億ドル規模の契約締結直後
数万基のNvidia GPUを供給予定

有力投資家と市場評価

リード投資家TWG Global
Nvidiaも出資する戦略的企業
市場予想を上回る大規模な資本注入

米AIデータセンター大手のLambdaは18日、総額15億ドルの資金調達を実施したと発表しました。リード投資家はTWG Globalが務めます。今月初旬にマイクロソフトと数十億ドル規模のインフラ供給契約を締結したばかりであり、AIインフラ市場での拡大を加速させる狙いです。

今回のラウンドを主導したTWG Globalは、運用資産400億ドルの投資会社であり、アブダビのMubadala Capitalとも提携しています。この強力な資金基盤を背景に、Lambdaは競合であるCoreWeaveに対抗し、AIデータセンター領域でのシェア拡大を図ります。

Lambdaはマイクロソフトに対し、数万基のNvidiaGPUを用いたインフラを供給する契約を結んでいます。以前はCoreWeaveが主要パートナーでしたが、Lambdaも「AIファクトリー」の供給元として、ハイパースケーラーにとって不可欠な存在となりつつあります。

今年2月の調達時には評価額が25億ドルとされていましたが、今回の調達規模は市場の予想を大きく上回りました。IPOの可能性も取り沙汰される中、LambdaはAIインフラの主要プレイヤーとしての地位を確固たるものにしています。

データブリックス、評価額1300億ドルで追加調達を協議か

短期間で企業価値が急上昇

評価額1300億ドル以上で交渉中
9月の前回調達時から30%超の増加
正式な契約署名はまだの模様

AIエージェント戦略を加速

AI向けデータベース開発に注力
5月にNeonを10億ドルで買収済み
AIによるDB作成が8割に急増

米国発の報道によると、データインテリジェンス大手のデータブリックスが、評価額1300億ドル(約20兆円)以上での資金調達に向けて協議を進めています。同社は9月に資金調達を完了したばかりですが、AIエージェント時代のデータ基盤としての地位を確立すべく、さらなる資本増強を目指している模様です。

今回の協議が成立すれば、2025年9月に完了したばかりの資金調達時の評価額1000億ドルから、わずか数ヶ月で30%以上の企業価値向上となります。現時点で条件概要書への署名は行われていませんが、市場からの期待値は依然として高い水準にあります。

急成長の背景には、AIエージェントの台頭という市場変化があります。同社CEOは以前、データベースの80%が人間ではなくAIによって作成されるようになったと指摘しており、この潮流に対応するためのAI向けデータベース開発やプラットフォーム強化が急務です。

同社は2025年5月にもオープンソースデータベースのNeonを10億ドルで買収するなど、積極的な投資を続けています。AIがデータ産業の再編を促す中、圧倒的な資金力を背景に市場シェアの拡大と技術統合を加速させる構えです。

税務AIのBlue J、生成AIへの転換で評価額3億ドル突破

全事業モデルの刷新と成果

従来技術を捨て生成AIへ完全移行
評価額3億ドル超、収益は12倍
顧客数は200社から3500社へ急増

信頼性を担保する3つの柱

世界的権威の税務データを独占学習
元IRS幹部ら専門家による常時検証
年300万件のクエリで精度改善

圧倒的な生産性向上

15時間の調査業務を15秒に短縮
深刻な会計士不足の切り札に

カナダの税務AI企業「Blue J」が、事業モデルを生成AIへ完全移行し、評価額3億ドル超の急成長を遂げました。従来の予測AIを捨てChatGPT基盤へ再構築したこの決断は、深刻な人材不足に悩む税務業界に劇的な生産性革命をもたらしています。

トロント大教授でもあるCEOのアラリー氏は、初期の生成AIが抱える不正確さを理解しつつも、その可能性に全社運を賭けました。従来の技術では到達不能だった「あらゆる税務質問への回答」を実現するため、既存資産を放棄しゼロからの再構築を断行したのです。

最大の障壁である「嘘(ハルシネーション)」は、三つの独自戦略で克服しました。世界的な税務データベースとの独占的な提携、元IRS幹部を含む専門家チームによる常時検証、そして年間300万件超のクエリを用いたフィードバックループです。

この品質向上により、顧客満足度を示すNPSは20から80台へ急上昇しました。KPMGなど3,500以上の組織が導入し、従来15時間要した専門的な調査業務をわずか15秒で完了させています。週次利用率は競合を大きく上回る75%超を記録しました。

Blue Jの事例は、技術的な洗練さ以上に「顧客の課題解決」への執念が成功の鍵であることを示唆しています。過去の成功体験や資産に固執せず、リスクを恐れずに破壊的技術を取り入れる姿勢こそが、市場のルールを変える原動力となるのです。

Sakana AI、200億円調達で日本特化型AI開発加速

大型調達の概要

シリーズBで200億円を調達
評価額26.5億ドルに到達
三菱UFJや米VCなどが出資

事業戦略と今後の展望

日本特化型AIモデルを開発
小規模データで効率的に機能
金融から製造・政府分野へ拡大
ソブリンAIの需要に対応

東京を拠点とするAIスタートアップのSakana AIが、シリーズBラウンドで200億円(約1億3500万ドル)の資金調達を実施したことを発表しました。今回の調達により、企業の評価額は26.5億ドルに達します。同社は、日本の言語や文化に最適化された特化型AIモデルの開発を加速させ、事業拡大を目指します。

今回のラウンドには、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)といった国内金融大手に加え、米国のKhosla VenturesやNEAなど、国内外の著名な投資家が参加しました。新旧の投資家が入り混じり、同社の技術と成長性への高い期待が示された形です。

調達資金は、AIモデル開発を含む研究開発に充当されます。さらに、日本国内でのエンジニアリング、営業、販売チームの人材採用を強化し、事業基盤を固める計画です。CEOのデビッド・ハ氏は国内主要企業との連携深化も示唆しています。

Sakana AIの強みは、巨大テック企業とは異なる戦略です。大規模なモデル開発競争を避け、小規模データで効率的に機能するモデルに注力。これにより、日本市場に特化した、安価で高性能なAIソリューションの提供を目指します。

同社は現在注力する金融分野に加え、2026年以降は産業、製造、政府セクターへの事業拡大を計画しています。長期的には防衛や諜報分野も視野に入れており、「ソブリンAI」として各国の文化や価値観を反映したAIへの需要に応える考えです。

OpenAI、株価高騰受け従業員の株式寄付を許可

寄付再開の背景

数年にわたる中断からの再開
従業員からの高まる不満
株価上昇で数百万ドル規模の寄付
人材獲得競争での約束履行

新制度の課題と企業統治

意思決定までの短い期限
急な通知で参加への障壁
営利企業への構造転換が完了
AGI開発における統制権が焦点に

OpenAIが、現在および過去の従業員に対し、保有株式の慈善団体への寄付を許可したことが明らかになりました。これは数年ぶりの措置で、同社の評価額が急騰し、従業員からの不満が高まっていたことが背景にあります。この決定により、従業員は保有資産を社会貢献に活用できる道が開かれましたが、一方で新たな課題も浮上しています。

今回の措置は、従業員にとって大きな意味を持ちます。同社の株価は大幅に上昇しており、例えば2019年に数万ドルの株式を取得した従業員の場合、数百万ドル規模の寄付が可能になる可能性があります。AI分野での人材獲得競争が激化する中、約束を履行することは企業の魅力を維持する上で不可欠です。

この制度は過去2021年と2022年に実施されましたが、その後中断していました。特に昨年、ソフトバンクへの株式公開買い付けで従業員が株式を売却できた後、約束されていた慈善寄付の機会が無期限に延期され、従業員の不満が高まっていました。社内の会議などでも、この問題に対する懸念が公然と表明されるようになっていたのです。

しかし、再開された制度にも課題はあります。参加者が寄付額や詳細を決定するための期限が非常に短いのです。これは米国証券取引委員会(SEC)が定める株式売却の最低期間より大幅に短く、多くの従業員にとって参加の障壁となっています。同社は税務・財務アドバイザーとの相談を強く推奨しており、急な通知が参加をさらに困難にしています。

寄付再開の背景には、同社の株価の急騰があります。関係者によると、1株あたりの公正市場価値は先月の約430ドルから約483ドルに上昇しました。この株価上昇は、同社が営利目的の企業構造へ再編を完了し、非営利の親団体への将来的な利益分配義務が軽減されたことが一因と見られています。

OpenAIは、2015年に非営利の研究ラボとして設立されましたが、先月、営利企業への再編を完了しました。この再編は1年以上にわたる交渉の末に実現したものです。今後、人類を超える能力を持つ可能性のあるAGI(汎用人工知能)の開発において、非営利団体が統制権を維持できるかどうかが、最大の焦点の一つとなっています。

OpenAI、推論コストが収益を上回る可能性

Microsoftとの収益分配

MSへの支払い、'25年9月迄で8.6億ドル
MSからもOpenAIへ収益還元
支払額は差引後の純額である可能性

収益を圧迫するコスト構造

'25年収益(9月迄)は43億ドル超と推計
同期間の推論コストは約86億ドル
収益を推論コストが上回る可能性
推論コストは主に現金での支払い
AIビジネスの収益モデルに疑問符

流出した内部文書が、AI開発の巨人OpenAIの財務状況の一端を明らかにしました。最大のパートナーであるMicrosoftへの支払いと、それを上回る可能性のある推論コストの実態が浮上。AIビジネスの収益性に大きな疑問を投げかけています。

文書によると、OpenAIは2025年の最初の9カ月間でMicrosoftに対し8億6580万ドルを支払いました。これは両社間の契約に基づくレベニューシェア(収益分配)とみられますが、その関係は一方的な支払いだけではないようです。

関係者の話では、Microsoftも自社の検索エンジンBingやAzure OpenAI Serviceの収益の一部をOpenAIに還元しています。そのため、流出した支払額は、これらの還元額を差し引いた後の「純額」である可能性が指摘されています。

深刻なのはコスト構造です。同期間の収益が約43億ドルと試算される一方、AIモデルを動かす推論コスト」は約86.5億ドルに達する可能性があります。稼ぐ以上にコストがかかっているという、厳しい現実を示唆しています。

この推論コストは主に現金で支払われている点が重要です。モデル開発の「訓練コスト」が投資クレジットで賄われるのとは対照的です。事業を継続するほどキャッシュが流出する構造は、経営上の大きな課題と言えるでしょう。

AIのトップを走るOpenAIでさえ、持続可能なビジネスモデルを確立できていないのかもしれません。今回の情報は、過熱するAI投資や企業の評価額に一石を投じるものです。業界全体の収益性について、より冷静な議論を促すことになりそうです。

リーガルAIのHarvey、評価額80億ドルへの飛躍

驚異的な成長スピード

評価額が1年足らずで80億ドル
年間経常収益(ARR)は1億ドルを突破
世界63カ国で700社の顧客を獲得

独自のプラットフォーム戦略

法律事務所と企業を繋ぐ共同作業基盤
複雑な権限を管理するマルチプレイヤー機能
M&A;や訴訟分野のワークフローデータを蓄積

法務業界の未来

成果報酬型の価格モデルへ移行も視野に
若手弁護士の教育ツールとしての可能性

サンフランシスコを拠点とするリーガルAIスタートアップのHarveyが、企業評価額80億ドル(約1.2兆円)に達しました。2025年8月には年間経常収益(ARR)が1億ドルを突破するなど急成長を遂げています。同社の強みは、法律事務所とその顧客である企業が共同で作業できる「マルチプレイヤー・プラットフォーム」という独自戦略にあり、法務業界の生産性向上に大きなインパクトを与えようとしています。

Harveyの成長は驚異的です。2025年2月に30億ドルだった評価額は、10月には80億ドルへと高騰。顧客は世界63カ国で700社にのぼり、米国のトップ10法律事務所の多くが導入済みです。OpenAIスタートアップファンドやアンドリーセン・ホロウィッツなど、シリコンバレートップVCがこぞって出資しており、その注目度の高さがうかがえます。

同社の核心は、単なる文書作成・調査ツールにとどまらない点にあります。法律事務所と企業法務部が安全に連携できる共同作業基盤(マルチプレイヤー・プラットフォーム)の構築を目指しています。これにより、案件に関わる全ての関係者が一つのシステム上で協業し、生産性を飛躍的に高めることが可能になります。これは業界の構造を変えうる野心的な試みです。

この構想の実現には、法務業界特有の「倫理の壁」と呼ばれる情報隔壁の維持が不可欠です。例えば、ある法律事務所が競合する2社をクライアントに持つ場合、情報が誤って共有されれば大問題に発展しかねません。Harveyは、こうした複雑な内部・外部の権限管理を技術的に解決することに多大なリソースを投じています。

「単なるChatGPTのラッパーではないか」との見方に対し、同社は明確な差別化要因を主張します。一つは、契約書評価など法務特有のワークフローデータの蓄積。もう一つが、競合他社には見られない前述のマルチプレイヤー機能です。これらが同社の強力な競争優位性、つまり参入障壁になっているのです。

現在のビジネスモデルはライセンス(シート)販売が主ですが、将来的にはより複雑なワークフローに対応した成果報酬型の価格体系への移行も視野に入れています。デューデリジェンスの一次レビューをAIが担い、弁護士が最終確認を行うなど、人とAIの協業モデルを具体的に描いています。

法務業界におけるAIの浸透率はまだ低いものの、その潜在能力は計り知れません。CEOは、AIが若手弁護士の仕事を奪うのではなく、むしろ実践的なトレーニングツールとして機能し、次世代の優秀な弁護士を早期に育成する一助になるとの未来像を描いています。

因果AIのアレンビック、評価額13倍で220億円調達

因果AIで独自価値を創出

相関ではなく因果関係を分析
企業の独自データで競争優位を確立

巨額調達とスパコン導入

シリーズBで1.45億ドルを調達
世界最速級スパコンを自社で運用
データ主権とコスト効率を両立

大企業の導入成果

デルタ航空の広告効果を売上と直結
Mars社の販促効果を正確に測定
売上への真の貢献要因を特定

サンフランシスコのAIスタートアップAlembicが、シリーズBで1億4500万ドル(約220億円)の資金調達を発表しました。同社は単なる相関関係ではなく、ビジネスにおける「因果関係」を解明する独自のAIを開発。調達資金を活用し、Nvidia製の最新スーパーコンピュータを導入して、大企業のデータに基づいた高精度な意思決定支援を加速させます。

なぜ「因果AI」が注目されるのでしょうか。生成AIの性能が均一化する中、企業の競争優位性は独自データの活用に移行しています。しかし、汎用AIに「どうすれば売上が伸びるか」と尋ねても、競合と同じ答えしか返ってきません。AlembicのAIは、どの施策が本当に売上増を引き起こしたのかという因果関係を特定し、他社には真似できない独自の戦略立案を可能にします。

同社はクラウドに頼らず、世界最速級のスーパーコンピュータ「Nvidia NVL72」を自社で導入する異例の戦略をとります。これは、顧客データの機密性を守る「データ主権」の確保が最大の目的です。特に金融や消費財メーカーなど、データを外部クラウドに置くことを禁じている企業にとって、この選択は強力な信頼の証となります。同時に、クラウド利用の数分の一のコストで膨大な計算処理を実現します。

Alembicの躍進を支えるのが、半導体大手Nvidiaとの強固なパートナーシップです。Nvidia投資家ではなく、最初の顧客であり、技術協力者でもあります。創業当初、計算資源に窮していたAlembicに対し、NvidiaはCEOのジェンスン・フアン氏自らが関心を示し、GPUインフラの確保を直接支援。この協力関係が、Alembicの技術的優位性の基盤となっています。

導入企業は既に目覚ましい成果を上げています。例えば、デルタ航空はオリンピック協賛の効果を数日で売上増に結びつけて定量化することに成功。従来は測定不可能だったブランド活動の財務インパクトを可視化しました。また、食品大手Mars社は、商品の形状変更といった細かな販促活動が売上に与える影響を正確に把握し、マーケティングROIを最大化しています。

Alembicは、マーケティング分析に留まらず、サプライチェーンや財務など、企業のあらゆる部門で因果関係を解明する「ビジネスの中枢神経系」になることを目指しています。独自の数学モデル、巨大な計算インフラ、そしてデータ主権への対応という深い堀を築き、汎用AIとは一線を画す価値を提供します。企業の独自データを真の競争力に変える、新たな潮流の到来です。

ROIを生むAI導入、業務プロセスの可視化が必須に

実験から実行への移行

企業AIが実験段階から成果追求へ
AI投資における測定可能な成果が課題
多くの企業がAIから利益を得られていない現状

鍵はプロセスの理解

業務がどう行われているかを正確に把握
プロセスデータを基にAIの適用箇所を特定
CelonisやScribeが新ツールを提供

具体的な導入効果

メルセデス・ベンツでのサプライチェーン最適化
ユーザー企業での生産性向上と教育高速化

多くの企業で、AI活用が実験段階を終え、投資対効果(ROI)を重視する実行段階へと移行しています。その成功の鍵として、独Celonisや米Scribeなどが提供する、業務プロセスを可視化・分析する「プロセスインテリジェンス」技術が注目を集めています。実際の業務の流れを正確に把握することで、AIを最も効果的な場所に導入し、測定可能な成果を生み出すことが可能になるのです。

しかし、AIプロジェクトから測定可能な利益を得ている企業はわずか11%との指摘もあります。これは技術の問題ではなく、AIを業務のどこに適用すべきかという「コンテキスト(文脈)」の問題です。業務プロセスを理解せずに自動化を進めても、期待した効果は得られません。まず現状を正確に把握することが成功の第一歩と言えるでしょう。

プロセスインテリジェンスの先進企業Celonisは、業務データから「プロセスのデジタルツインを生成します。これにより、業務のボトルネックや非効率な部分を特定。AIをどこに、どのように組み込めば最大の効果を発揮するかをデータに基づき設計し、人間とAIが協調して働く仕組みの構築を支援しています。

一方、スタートアップのScribeは、評価額13億ドル(約2000億円)の資金調達に成功しました。同社の新製品「Scribe Optimize」は、従業員の作業内容を自動で記録・分析し、自動化によって最もROIが高まる業務を特定します。「何を自動化すべきか」という企業の根源的な問いに、明確な答えを提示しようとしています。

既に具体的な成果も出ています。メルセデス・ベンツは半導体危機において、Celonisの技術でサプライチェーンを可視化し、迅速な意思決定を実現しました。また、Scribeの顧客は月間35時間以上の業務時間削減や、新人教育の40%高速化といった生産性向上を報告しており、その価値を証明しています。

今後の企業AIは、単一のツールに閉じるのではなく、プロセスという共通言語を通じて様々なシステムやAIエージェントが連携する「コンポーザブル(組み合わせ可能)なAI」へと進化していくでしょう。AIを真の競争力とするためには、まず自社の業務プロセスを深く理解することから始める必要がありそうです。

Anthropic、法人需要で'28年売上10兆円超予測

驚異的な成長予測

'28年売上700億ドル(約10兆円)
'28年キャッシュフロー170億ドル
来年のARR目標は最大260億ドル
粗利益率は77%に改善('28年予測)

B2B戦略が成長を牽引

Microsoft等との戦略的提携を強化
Deloitteなど大企業へ大規模導入
低コストモデルで企業ニーズに対応
API売上はOpenAI2倍超を予測

AIスタートアップAnthropicが、法人向け(B2B)製品の需要急増を背景に、2028年までに売上高700億ドル(約10.5兆円)、キャッシュフロー170億ドルという驚異的な財務予測を立てていることが報じられました。MicrosoftSalesforceといった大手企業との提携強化が、この急成長を支える中核となっています。

同社の成長速度は目覚ましく、2025年末には年間経常収益(ARR)90億ドルを達成し、2026年には最大260億ドルに達する目標を掲げています。特に、AIモデルへのアクセスを販売するAPI事業の今年の売上は38億ドルを見込み、これは競合のOpenAIの予測額の2倍以上に相当します。

成長の原動力は、徹底した法人向け戦略です。Microsoftは自社の「Microsoft 365」や「Copilot」にAnthropicのモデルを統合。さらに、コンサルティング大手のDeloitteやCognizantでは、数十万人の従業員がAIアシスタントClaude」を利用する計画が進んでいます。

製品面でも企業の大量導入を後押しします。最近では「Claude Sonnet 4.5」など、より小型でコスト効率の高いモデルを相次いで投入。これにより、企業はAIを大規模に展開しやすくなります。金融サービス特化版や社内検索機能の提供も、顧客基盤の拡大に貢献しています。

財務面では、2028年に77%という高い粗利益率を見込んでいます。これは、巨額のインフラ投資で赤字が続くOpenAIとは対照的です。Anthropicはすでに1700億ドルの評価額を得ており、次回の資金調達では最大4000億ドルを目指す可能性も報じられており、市場の期待は高まるばかりです。

確実性でLLM超え狙うAI、30億円調達

ポストTransformer技術

LLMの言語能力と記号AIの論理推論を融合
ニューロシンボリック方式を採用
確率的なLLMの予測不能性を克服
タスク指向の対話に特化した設計

企業AUIと新モデル

NYの新興企業、評価額1125億円
基盤モデル「Apollo-1」を開発
総調達額は約90億円に到達
2025年末に一般提供を予定

ニューヨークのAIスタートアップ、Augmented Intelligence Inc (AUI)は2025年11月3日、2000万ドル(約30億円)の資金調達を発表しました。これにより企業評価額は7億5000万ドル(約1125億円)に達します。同社は、ChatGPTなどが用いるTransformerアーキテクチャの課題である予測不可能性を克服するため、ニューロシンボリックAI技術を開発。企業が求める確実で信頼性の高い対話AIの実現を目指します。

AUIが開発する基盤モデル「Apollo-1」の核心は、そのハイブリッドな構造にあります。ユーザーの言葉を理解する「ニューラルモジュール」と、タスクの論理構造を解釈し、次に取るべき行動を決定論的に判断する「シンボリック推論エンジン」を分離。これにより、LLMの持つ言語の流暢さと、従来型AIの持つ厳密な論理実行能力を両立させています。

なぜ今、この技術が注目されるのでしょうか。既存のLLMは確率的に応答を生成するため、常に同じ結果を保証できません。これは、金融やヘルスケア顧客サービスなど、厳格なルール遵守が求められる業界では大きな障壁となります。Apollo-1は、組織のポリシーを確実に適用し、タスクを最後まで間違いなく遂行する能力でこの課題を解決します。

Apollo-1の強みは、その汎用性と導入のしやすさにもあります。特定の業界に特化せず、ヘルスケアから小売まで幅広い分野で応用可能です。また、特別なインフラを必要とせず、標準的なクラウド環境で動作するため、導入コストを抑えられる点も企業にとっては魅力的です。開発者は使い慣れたAPI経由で簡単に統合できます。

今回の調達は、より大規模な資金調達の前段階と位置付けられており、同社への期待の高さをうかがわせます。Fortune 500企業の一部では既にベータ版が利用されており、2025年末までの一般公開が予定されています。LLM一強の時代から、用途に応じた多様なAIが選択される新時代への転換点となるかもしれません。

OpenAI、1兆ドルIPO観測も巨額損失の課題

1兆ドルIPOの観測

1兆ドル規模のIPO準備との報道
非公開市場での評価額5000億ドル
会社側は「IPOは焦点でない」と否定

深刻化する財務状況

年末までの収益見込みは200億ドル
四半期損失は115億ドルと推定
年間収益見込みの半分超の赤字

マイクロソフトとの関係

組織再編で依存度を低減
マイクロソフトの出資比率は約27%

生成AI「ChatGPT」を開発するOpenAIが、企業価値1兆ドル(約150兆円)規模の新規株式公開(IPO)を視野に入れていると報じられました。しかしその裏で、同社の四半期損失が約115億ドル(約1.7兆円)に達する可能性が浮上。急成長を支える巨額の先行投資が財務を圧迫しており、AIビジネスの持続可能性が問われています。

損失の規模は、大株主であるマイクロソフトが29日に発表した決算報告から明らかになりました。同社はOpenAIの損失により純利益が31億ドル押し下げられたと報告。マイクロソフトの出資比率(約27%)から逆算すると、OpenAIの7-9月期の損失は約115億ドルに上ると推定されます。これは年間収益見込み200億ドルの半分を超える衝撃的な赤字額です。

一部報道では、OpenAIが大型IPOの準備を進めているとされています。非公開市場での評価額は約5000億ドルとされており、IPOが実現すればその価値は倍増する可能性があります。しかし、OpenAIの広報担当者は「IPOは我々の焦点ではない」とコメントしており、公式には慎重な姿勢を崩していません。

同社は10月28日、マイクロソフトへの依存度を減らすための組織再編を完了したと発表しました。新体制では、非営利団体「OpenAI Foundation」が経営を監督します。マイクロソフトは依然として約27%を保有する筆頭株主であり、両社の協力関係は今後も事業の鍵を握ることになりそうです。

今回の報道は、生成AI開発における莫大なコストと収益化の難しさを改めて浮き彫りにしました。OpenAIは、マイクロソフトソフトバンクなど多くの投資家から期待を集めています。同社が巨額の赤字を乗り越え、持続的な成長軌道に乗れるのか。その動向は、AI業界全体の未来を占う試金石となるでしょう。

Nvidia、AI開発基盤に最大10億ドル投資か

Nvidiaの巨額投資

投資先はAI開発基盤Poolside
投資額は最大10億ドル(約1500億円)
評価額120億ドルでの資金調達
2024年10月に続く追加投資

加速するAI投資戦略

自動運転や競合にも投資実績
AIエコシステムでの覇権強化

半導体大手のNvidiaが、AIソフトウェア開発プラットフォームを手がけるPoolsideに対し、最大10億ドル(約1500億円)の巨額投資を検討していると報じられました。この動きは、AIチップで市場を席巻するNvidiaが、ソフトウェア開発の領域でも影響力を強化し、自社のエコシステムを拡大する戦略の一環とみられます。急成長するAI開発ツール市場の主導権争いが、さらに激化する可能性があります。

米ブルームバーグの報道によると、今回の投資はPoolsideが実施中の総額20億ドル資金調達ラウンドの一部です。同社の評価額120億ドルに達するとされ、Nvidiaは最低でも5億ドルを出資する見込みです。Poolsideが資金調達を成功裏に完了した場合、Nvidiaの出資額は最大で10億ドルに膨らむ可能性があると伝えられています。

NvidiaがPoolsideに出資するのは、今回が初めてではありません。同社は2024年10月に行われたPoolsideのシリーズBラウンド(総額5億ドル)にも参加しており、以前からその技術力を高く評価していました。今回の追加投資は、両社の関係をさらに深め、ソフトウェア開発におけるAIモデルの活用を加速させる狙いがあると考えられます。

Nvidia投資先は多岐にわたります。最近では、英国の自動運転技術企業Wayveへの5億ドルの投資検討や、競合であるIntelへの50億ドル規模の出資も明らかになっています。ハードウェアの強みを活かしつつ、多様なAI関連企業へ投資することで、業界全体にまたがる巨大な経済圏を築こうとする戦略が鮮明になっています。

半導体という「インフラ」で圧倒的な地位を築いたNvidia。その次の一手は、AIが実際に使われる「アプリケーション」層への進出です。今回の投資は、開発者コミュニティを押さえ、ソフトウェアレイヤーでも覇権を握ろうとする野心の表れと言えるでしょう。AI業界のリーダーやエンジニアにとって、Nvidiaの動向はますます見逃せないものとなっています。

AI開発、元社員から「頭脳」を買う新潮流

Mercorの事業モデル

AI企業と業界専門家をマッチング
元上級社員の知識をデータ化
専門家時給最大200ドル支払い
企業が非公開の業務知見を入手

市場へのインパクト

設立3年で評価額100億ドル
OpenAIMeta主要顧客
既存企業の情報流出リスク
新たなギグエコノミーの創出

AI開発の最前線で、新たなデータ収集手法が注目されています。スタートアップMercor社は、OpenAIMetaなどの大手AI企業に対し、投資銀行や法律事務所といった企業の元上級社員を仲介。彼らの頭脳にある専門知識や業務フローをAIの訓練データとして提供するビジネスで急成長を遂げています。これは企業が共有したがらない貴重な情報を得るための画期的な手法です。

Mercorが運営するのは、業界の専門家とAI開発企業を繋ぐマーケットプレイスです。元社員はMercorに登録し、AIモデルの訓練用に特定のフォーム入力やレポート作成を行うことで、時給最大200ドルの報酬を得ます。これによりAI企業は、通常アクセスできない、特定業界のリアルな業務知識に基づいた高品質なデータを手に入れることができるのです。

なぜこのモデルは成功しているのでしょうか。多くの企業は、自社の競争力の源泉である業務プロセスやデータを、それを自動化しうるAI企業に渡すことをためらいます。Mercorはこの「データのジレンマ」を解決しました。企業から直接ではなく、その組織で働いていた個人の知識を活用することで、AI開発に必要な情報を引き出しているのです。

設立からわずか3年弱で、Mercorの年間経常収益は約5億ドル(約750億円)に達し、企業評価額は100億ドル(約1.5兆円)にまで急騰しました。顧客にはOpenAIAnthropicMetaといった名だたるAI企業が名を連ねており、同社がAI開発競争においていかに重要な役割を担っているかがうかがえます。

この手法には、企業秘密の流出という大きなリスクも伴います。元従業員が機密情報を漏らす「企業スパイ」行為にあたる可能性が指摘されていますが、同社のブレンダン・フーディCEOは「従業員の頭の中の知識は、企業ではなく個人のもの」と主張。ただし、情報管理の難しさは認めており、議論を呼んでいます。

Mercorは今後、金融や法律だけでなく、医療など他の専門分野へも事業を拡大する計画です。フーディCEOは「いずれAIは最高のコンサルタントや弁護士を超える」と語り、自社のサービスが経済を根本から変革し、社会全体に豊かさをもたらす力になるとの自信を示しています。専門知識のあり方が問われる時代の到来です。

AI訓練のMercor、評価額5倍の100億ドルに

驚異的な企業価値

評価額100億ドルに到達
前回の評価額から5倍に急増
シリーズCで3.5億ドルを調達

独自のビジネスモデル

AI訓練向けドメイン専門家を提供

今後の成長戦略

人材ネットワークのさらなる拡大
マッチングシステムの高度化

AIモデルの訓練に専門家を提供するMercor社が、シリーズCラウンドで3.5億ドルの資金調達を実施し、企業評価額が100億ドルに達したことを発表しました。この評価額は2月の前回ラウンドからわずか8ヶ月で5倍に急増しており、AI業界の旺盛な需要を象徴しています。今回のラウンドも、既存投資家のFelicis Venturesが主導しました。

同社の強みは、科学者や医師、弁護士といった高度な専門知識を持つ人材をAI開発企業に繋ぐ独自のビジネスモデルにあります。これらの専門家が、人間のフィードバックを反映させる強化学習(RLHF)などを担うことで、AIモデルの精度と信頼性を飛躍的に向上させています。

この急成長の背景には、OpenAIなどの大手AIラボが、データラベリングで競合するScale AIとの関係を縮小したことがあります。Mercor社はこの市場機会を捉え、代替サービスとして急速にシェアを拡大。年間経常収益(ARR)は5億ドル達成が目前に迫る勢いです。

現在、Mercor社のプラットフォームには3万人を超える専門家が登録しており、その平均時給は85ドル以上にのぼります。同社は契約する専門家に対し、1日あたり総額150万ドル以上を支払っていると公表しており、その事業規模の大きさがうかがえます。

今回調達した資金は、主に3つの分野に投じられます。①人材ネットワークのさらなる拡大、②クライアントと専門家を繋ぐマッチングシステムの改善、そして③社内プロセスを自動化する新製品の開発です。AI開発の高度化に伴い、同社の役割はますます重要になるでしょう。

AI基盤Fal.ai、企業価値40億ドル超で大型調達

企業価値が爆発的に増大

企業価値は40億ドルを突破
わずか3ヶ月で評価額2.7倍
調達額は約2億5000万ドル
著名VCが大型出資を主導

マルチモーダルAI特化

600以上のメディア生成モデルを提供
開発者数は200万人を突破
AdobeやCanvaなどが顧客
動画AIなど高まる需要が追い風

マルチモーダルAIのインフラを提供するスタートアップのFal.aiが、企業価値40億ドル(約6000億円)超で新たな資金調達ラウンドを完了しました。関係者によると、調達額は約2億5000万ドルに上ります。今回のラウンドはKleiner PerkinsSequoia Capitalという著名ベンチャーキャピタルが主導しており、AIインフラ市場の過熱ぶりを象徴しています。

驚くべきはその成長速度です。同社はわずか3ヶ月前に評価額15億ドルでシリーズCを終えたばかりでした。当時、売上高は9500万ドルを超え、プラットフォームを利用する開発者は200万人を突破。1年前の年間経常収益(ARR)1000万ドル、開発者数50万人から爆発的な成長を遂げています。

この急成長の背景には、マルチモーダルAIへの旺盛な需要があります。特に、OpenAIの「Sora」に代表される動画生成AIが消費者の間で絶大な人気を博していることが、Fal.aiのようなインフラ提供企業への追い風となっています。アプリケーションの需要が、それを支える基盤技術の価値を直接押し上げているのです。

Fal.aiは開発者向けに、画像動画音声、3Dなど600種類以上のAIモデルを提供しています。数千基のNVIDIA製H100およびH200 GPUを保有し、高速な推論処理に最適化されたクラウド基盤が強みです。API経由のアクセスやサーバーレスでの提供など、柔軟な利用形態も支持されています。

MicrosoftGoogleなど巨大IT企業もAIホスティングサービスを提供していますが、Fal.aiはメディアとマルチモーダルに特化している点が競争優位性です。顧客にはAdobe、Canva、Perplexity、Shopifyといった大手企業が名を連ね、広告、Eコマース、ゲームなどのコンテンツ制作で広く活用されています。

同社は2021年、Coinbaseで機械学習を率いたBurkay Gur氏と、Amazon出身のGorkem Yurtseven氏によって共同設立されました。多くの技術者が大規模言語モデル(LLM)開発に走る中、彼らはマルチメディア生成の高速化と大規模化にいち早く着目し、今日の成功を収めました。

LangChain、評価額1900億円でユニコーン入り

驚異的な成長スピード

2022年にOSSとして始動
23年4月にシードで1000万ドル調達
1週間後にシリーズAで2500万ドル調達
評価額1年半で6倍以上

AIエージェント開発基盤

LLMアプリ開発の課題を解決
Web検索やDB連携を容易に
GitHubスターは11.8万超
エージェント構築基盤へと進化

AIエージェント開発のオープンソース(OSS)フレームワークを提供するLangChainが10月21日、1億2500万ドル(約187億円)の資金調達を発表しました。これにより、同社の評価額は12億5000万ドル(約1900億円)に達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たしました。今回のラウンドはIVPが主導し、新たにCapitalGやSapphire Venturesも参加。AIエージェント構築プラットフォームとしての進化を加速させます。

同社の成長は驚異的です。2022年にOSSプロジェクトとして始まった後、2023年4月にBenchmark主導で1000万ドルのシードラウンドを、そのわずか1週間後にはSequoia主導で2500万ドルのシリーズAラウンドを完了。当時2億ドルと報じられた評価額は、わずか1年半余りで6倍以上に跳ね上がったことになります。

LangChainは、初期の大規模言語モデル(LLM)を用いたアプリ開発における課題を解決し、一躍注目を集めました。Web検索、API呼び出し、データベースとの対話といった、LLMが単体では不得手な処理を容易にするフレームワークを提供。開発者から絶大な支持を得ており、GitHubでのスター数は11.8万を超えています。

最先端のモデルメーカーがインフラ機能を強化する中で、LangChainも単なるツールからプラットフォームへと進化を遂げています。今回の発表に合わせ、エージェントビルダーの「LangChain」やオーケストレーションツール「LangGraph」など主要製品のアップデートも公開。AIエージェント開発のハブとしての地位を確固たるものにしています。

医療AI「OpenEvidence」評価額9000億円で2億ドル調達

急成長する医療AI

評価額9000億円で2億ドル調達
わずか3ヶ月で評価額が倍増
月間臨床相談件数は1500万件
認証済み医療従事者は無料利用

仕組みと有力投資家

有名医学雑誌でAIを訓練
医師の迅速な情報検索を支援
リード投資家Google Ventures
Sequoiaなど有力VCも参加

「医師向けChatGPT」として知られる医療AIスタートアップのOpenEvidenceが、新たに2億ドル(約300億円)の資金調達を実施したことが報じられました。企業評価額60億ドル(約9000億円)に達し、わずか3ヶ月前のラウンドから倍増。Google Venturesが主導したこの調達は、医療など特定分野に特化したAIへの市場の強い期待を浮き彫りにしています。

OpenEvidenceの成長速度は驚異的です。前回、7月に2.1億ドルを調達した際の評価額は35億ドルでした。そこからわずか3ヶ月で評価額を1.7倍以上に引き上げたことになります。背景にはユーザー数の急増があり、月間の臨床相談件数は7月の約2倍となる1500万件に達しています。急速なスケールが投資家の高い評価につながりました。

同社のプラットフォームは、権威ある医学雑誌の膨大なデータで訓練されたAIを活用しています。医師や看護師が患者の治療方針を検討する際、関連する医学知識を瞬時に検索し、信頼性の高い回答を得ることを支援します。特筆すべきは、認証された医療専門家であれば、広告モデルにより無料で利用できる点です。これにより、導入のハードルを下げ、普及を加速させています。

今回の資金調達は、Google投資部門であるGoogle Venturesが主導しました。さらに、セコイア・キャピタルやクライナー・パーキンスといったシリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルも参加。この豪華な投資家陣は、OpenEvidenceが持つ技術力と、医療業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引する将来性を高く評価している証左と言えるでしょう。

OpenEvidenceの事例は、汎用的な大規模言語モデルから、特定の業界課題を解決する「特化型AI」へと市場の関心が移っていることを示唆しています。自社のビジネス領域で、どのようにAIを活用し生産性や付加価値を高めるか。経営者エンジニアにとって、そのヒントがこの急成長企業の戦略に隠されているのではないでしょうか。

保険業務をAIで刷新、Liberateが75億円調達

AIエージェントの提供価値

売上15%増、コスト23%削減を実現
請求対応時間を30時間から30秒に短縮
24時間365日の販売・顧客対応
既存システムと連携し業務を自動化

大型資金調達の概要

シリーズBで5000万ドルを調達
企業評価額3億ドル(約450億円)
AIの推論能力向上と事業拡大に投資
Battery Venturesがラウンドを主導

AIスタートアップのLiberate社が、シリーズBラウンドで5000万ドル(約75億円)を調達したと発表しました。企業評価額は3億ドル(約450億円)に達します。同社は音声AIと推論ベースのAIエージェントを組み合わせ、保険の販売から請求処理までのバックオフィス業務を自動化するシステムを開発。運営コストの増大や旧式システムに悩む保険業界の課題解決を目指します。

Liberateの技術の核心は、エンドツーエンドで業務を完遂するAIエージェントです。顧客対応の最前線では音声AIアシスタント「Nicole」が電話応対し、その裏でAIエージェント群が既存の保険システムと連携。見積もり作成、契約更新、保険金請求処理といった定型業務を人の介在なしに実行します。

導入効果は既に数字で示されています。顧客企業は平均で売上が15%増加し、運用コストを23%削減することに成功。ある事例では、ハリケーン関連の保険金請求対応にかかる時間が従来の30時間からわずか30秒へと劇的に短縮されました。人間の担当者が不在の時間帯でも販売機会を逃しません。

高い性能と信頼性を両立させる仕組みも特徴です。AIは規制の厳しい保険業界の対話に特化した強化学習で訓練されています。さらに「Supervisor」と呼ばれる独自ツールがAIと顧客の全やり取りを監視。AIの応答が不適切と判断された場合は、即座に人間の担当者にエスカレーションする安全装置も備えています。

今回の資金調達は、著名VCのBattery Venturesが主導しました。投資家は、Liberateの技術を「単に対話するだけでなく、システムと連携してタスクを最後までやり遂げる能力」と高く評価。多くの保険会社が本格的なDXへと舵を切る中、同社の存在感はますます高まっています。

Liberateは調達した資金を、AIの推論能力のさらなる向上と、グローバルな事業展開の加速に充てる計画です。創業3年の急成長企業が、伝統的な保険業界の生産性と収益性をいかに変革していくか、市場の注目が集まります。

ヒューマノイド投資に警鐘、実用化への高い壁

立ちはだかる技術的な壁

人間の手のような器用さの習得
60自由度を超える複雑なシステム制御
デモはまだ遠隔操作の段階も

市場と安全性の現実

人間と共存する際の安全確保が課題
宇宙など限定的なユースケース
VCが懸念する不透明な開発計画

iRobot創業者のロドニー・ブルックス氏をはじめとする複数の専門家が、ヒューマノイドロボット分野への過熱投資に警鐘を鳴らしています。巨額の資金が投じられる一方、人間の手のような「器用さ」の欠如や安全性の懸念から、実用化はまだ遠いとの見方が大勢です。広範な普及には、少なくとも数年から10年以上かかると予測されています。

最大の課題は、人間の手のような繊細な動き、すなわち「器用さ」の習得です。ブルックス氏は、現在の技術ではロボットがこの能力を学習することは極めて困難であり、これができなければ実質的に役に立たないと指摘します。多くのデモは華やかに見えますが、実用レベルには達していないのが現状です。

人間と共存する上での安全性も大きな障壁です。ロボティクス専門のベンチャーキャピタルは、工場や家庭内でヒューマノイドが人に危害を加えるリスクを懸念しています。ロボットの転倒による事故や、ハッキングされて予期せぬ行動を取る危険性など、解決すべき課題は山積しています。

開発のタイムラインも不透明です。Nvidiaの研究者は、ヒューマノイド開発の現状をかつての自動運転車の熱狂になぞらえています。実用化までには想定以上に長い年月を要する可能性があり、これは投資家の回収サイクルとも合致しにくく、ビジネスとしての持続可能性に疑問を投げかけています。

期待の大きいテスラの「Optimus」でさえ、開発は遅れ、最近のデモでは人間が遠隔操作していたことが明らかになりました。高い評価額を受けるスタートアップFigureも、実際の配備数については懐疑的な目が向けられており、期待と現実のギャップが浮き彫りになっています。

もちろん、専門家ヒューマノイドの未来を完全に否定しているわけではありません。しかし、その登場は10年以上先であり、形状も人型ではなく車輪を持つなど、より実用的な形になる可能性が指摘されています。現在の投資ブームは、技術の成熟度を見誤っているのかもしれません。

Supabase、評価額7500億円到達。AI開発で急成長

驚異的な成長スピード

シリーズEで1億ドルを調達
企業評価額50億ドルに到達
わずか4ヶ月で評価額2.5倍
過去1年で3.8億ドルを調達

AI開発を支える基盤

FirebaseのOSS代替として誕生
自然言語開発で人気が沸騰
FigmaやReplitなど大手も採用
400万人開発者コミュニティ

オープンソースのデータベースサービスを提供するSupabaseは10月3日、シリーズEラウンドで1億ドル(約150億円)を調達したと発表しました。これにより企業評価額は50億ドル(約7500億円)に達しました。本ラウンドはAccelとPeak XVが主導。自然言語でアプリを開発する「vibe-coding」の流行を背景に、AI開発基盤としての需要が急拡大しています。

同社の成長ペースは驚異的です。わずか4ヶ月前に評価額20億ドルでシリーズDを完了したばかりで、評価額2.5倍に急増しました。過去1年間で調達した資金は3億8000万ドルに上り、企業評価額は推定で500%以上も上昇。累計調達額は5億ドルに達しています。

Supabaseは2020年創業のスタートアップで、元々はGoogleのFirebaseに代わるPostgreSQLベースのオープンソース代替サービスとして開発されました。データベース設定の複雑な部分を数クリックに簡略化し、認証やAPI自動生成、ファイルストレージなどの機能も提供します。

急成長の背景には、AIアプリ開発、特に「vibe-coding」と呼ばれる自然言語プログラミングの隆盛があります。Figma、Replit、Cursorといった最先端のAIコーディングツールが相次いで同社のデータベースを採用しており、開発者の間で確固たる地位を築きつつあります。

Supabaseの強みは、400万人の開発者が参加する活発なオープンソースコミュニティです。同社はこのコミュニティとの連携を重視しており、今回の資金調達では、コミュニティメンバーにも株式を購入する機会を提供するという異例の取り組みも発表しました。

AIの雄ナヴィーン・ラオ氏、新会社でNvidiaに挑戦

新会社の野心的な構想

社名はUnconventional社
AI向け新型コンピュータ開発
カスタム半導体とサーバー基盤
目標は生物学レベルの効率性

異例の巨額資金調達

評価額50億ドル目標
調達目標額は10億ドル
a16zがリード投資家
古巣Databricksも出資

米Databricksの元AI責任者ナヴィーン・ラオ氏が、新会社「Unconventional」を設立し、AIハードウェア市場の巨人Nvidiaに挑みます。同社は、50億ドル(約7500億円)の評価額で10億ドル(約1500億円)の資金調達を目指しており、著名VCのAndreessen Horowitz (a16z)が投資を主導すると報じられました。AIの計算基盤そのものを再定義する壮大な挑戦が始まります。

ラオ氏が目指すのは、単なる半導体開発ではありません。彼がX(旧Twitter)で語ったビジョンは「知性のための新しい基盤」。生物学と同等の効率性を持つコンピュータを、カスタム半導体とサーバーインフラを統合して作り上げる計画です。これは、現在のAI開発における計算コストとエネルギー消費の課題に対する根本的な解決策となり得るでしょうか。

この挑戦を支えるため、シリコンバレーのトップ投資家が集結しています。リード投資家a16zに加え、Lightspeed、Lux Capitalといった有力VCが参加。さらに、ラオ氏の古巣であるDatabricksも出資者に名を連ねており、業界からの高い期待が伺えます。すでに数億ドルを確保し、10億ドルの調達完了を待たずに開発に着手するとのことです。

ラオ氏は、これまでにも2社のスタートアップを成功に導いた実績を持つ連続起業家です。AIモデル開発の「MosaicML」は2023年にDatabricksが13億ドルで買収。それ以前に創業した「Nervana Systems」は2016年にIntelが4億ドル超で買収しました。彼の持つ技術力と事業構想力が、今回も大きな成功を生むのか注目が集まります。

生成AIの爆発的な普及により、その頭脳であるAI半導体の需要は急増しています。市場をほぼ独占するNvidia一強体制に対し、Unconventional社の挑戦が風穴を開けることができるのか。AIインフラの未来を占う上で、同社の動向から目が離せません。

OpenAI、評価額5000億ドルで世界首位の未公開企業に

驚異的な企業価値

従業員保有株の売却で価値急騰
評価額5000億ドル(約75兆円)
未公開企業として史上最高額を記録

人材獲得競争と資金力

Metaなどへの人材流出に対抗
従業員への強力なリテンション策
ソフトバンクなど大手投資家が購入

巨額投資と事業拡大

インフラ投資計画を資金力で支える
最新動画モデル「Sora 2」も発表

AI開発のOpenAIが10月2日、従業員らが保有する株式の売却を完了し、企業評価額が5000億ドル(約75兆円)に達したことが明らかになりました。これは未公開企業として史上最高額であり、同社が世界で最も価値のあるスタートアップになったことを意味します。この株式売却は、大手テック企業との熾烈な人材獲得競争が背景にあります。

今回の株式売却は、OpenAI本体への資金調達ではなく、従業員や元従業員が保有する66億ドル相当の株式を現金化する機会を提供するものです。Meta社などが高額な報酬でOpenAIのトップエンジニアを引き抜く中、この動きは優秀な人材を維持するための強力なリテンション策として機能します。

株式の購入者には、ソフトバンクやThrive Capital、T. Rowe Priceといった著名な投資家が名を連ねています。同社は8月にも評価額3000億ドルで資金調達を完了したばかりであり、投資家からの絶大な信頼と期待が、その驚異的な成長を支えていると言えるでしょう。

OpenAIは、今後5年間でOracleクラウドサービスに3000億ドルを投じるなど、野心的なインフラ計画を進めています。今回の評価額の高騰は、こうした巨額投資を正当化し、Nvidiaからの1000億ドル投資計画など、さらなる戦略的提携を加速させる要因となりそうです。

同社は最新の動画生成モデル「Sora 2」を発表するなど、製品開発の手を緩めていません。マイクロソフトとの合意による営利企業への転換も視野に入れており、その圧倒的な資金力と開発力で、AI業界の覇権をさらに強固なものにしていくと見られます。

元OpenAIムラティ氏、AI調整ツールTinker公開

元OpenAI幹部の新挑戦

ミラ・ムラティ氏が新会社を設立
初製品はAIモデル調整ツールTinker
評価額120億ドルの大型スタートアップ

TinkerでAI開発を民主化

専門的な調整作業をAPIで自動化
強化学習でモデルの新たな能力を開拓
調整済みモデルはダウンロードして自由に利用可

OpenAIの最高技術責任者(CTO)であったミラ・ムラティ氏が共同設立した新興企業「Thinking Machines Lab」は2025年10月1日、初の製品となるAIモデル調整ツール「Tinker」を発表しました。このツールは、最先端AIモデルのカスタマイズ(ファインチューニング)を自動化し、より多くの開発者や研究者が高度なAI技術を利用できるようにすることを目的としています。

「Tinker」は、これまで専門知識と多大な計算資源を要したモデルのファインチューニング作業を大幅に簡略化します。GPUクラスタの管理や大規模な学習プロセスの安定化といった複雑な作業を自動化し、ユーザーはAPIを通じて数行のコードを記述するだけで、独自のAIモデルを作成できるようになります。

特に注目されるのが、強化学習(RL)の活用です。共同創業者ChatGPT開発にも関わったジョン・シュルマン氏が主導するこの技術により、人間のフィードバックを通じてモデルの対話能力や問題解決能力を飛躍的に向上させることが可能です。Tinkerは、この「秘伝のタレ」とも言える技術を開発者に提供します。

Thinking Machines Labには、ムラティ氏をはじめOpenAIの元共同創業者や研究担当副社長など、トップレベルの人材が集結しています。同社は製品発表前にすでに20億ドルのシード資金を調達し、評価額は120億ドルに達するなど、業界から極めて高い期待が寄せられています。

現在、TinkerはMeta社の「Llama」やAlibaba社の「Qwen」といったオープンソースモデルに対応しています。大手テック企業がモデルを非公開にする傾向が強まる中、同社はオープンなアプローチを推進することで、AI研究のさらなる発展と民主化を目指す考えです。これにより、イノベーションの加速が期待されます。

AIチップCerebras、IPO計画遅延も11億ドル調達

大型資金調達の概要

Nvidiaのライバルが11億ドルを調達
企業評価額81億ドルに到達
Fidelityなどがラウンドを主導
累計調達額は約20億ドル

成長戦略とIPOの行方

AI推論サービスの需要が急拡大
資金使途はデータセンター拡張
米国製造拠点の強化も推進
規制審査でIPOは遅延、時期未定

NVIDIAの競合である米Cerebras Systemsは9月30日、11億ドルの資金調達を発表しました。IPO計画が遅延する中、急拡大するAI推論サービスの需要に対応するため、データセンター拡張などに資金を充当します。

今回のラウンドはFidelityなどが主導し、企業評価額81億ドルと評価されました。2021年の前回ラウンドから倍増です。2015年設立の同社は、累計調達額が約20億ドルに達し、AIハードウェア市場での存在感を一層高めています。

資金調達の背景は「推論」市場の爆発的成長です。2024年に開始したAI推論クラウドは需要が殺到。アンドリュー・フェルドマンCEOは「AIが実用的になる転換点を越え、推論需要が爆発すると確信した」と語り、事業拡大を急ぎます。

調達資金の主な使途はインフラ増強です。2025年だけで米国内に5つの新データセンターを開設。今後はカナダや欧州にも拠点を広げる計画です。米国内の製造ハブ強化と合わせ、急増する需要に対応する供給体制を構築します。

一方で、同社のIPO計画は足踏み状態が続いています。1年前にIPOを申請したものの、アブダビのAI企業G42からの投資米国外国投資委員会(CFIUS)の審査対象となり、手続きが遅延。フェルドマンCEOは「我々の目標は公開企業になることだ」と述べ、IPOへの意欲は変わらないことを強調しています。

今回の大型調達は、公開市場の投資家が主導する「プレIPOラウンド」の性格を帯びており、市場環境を見極めながら最適なタイミングで上場を目指す戦略とみられます。AIインフラ競争が激化する中、Cerebrasの今後の動向が注目されます。

Vibe-codingのAnything、評価額150億円で資金調達

驚異的な初期成長

ローンチ後2週間でARR200万ドル達成
シリーズAで1100万ドルを調達
企業評価額1億ドル(約150億円)

勝因は「オールインワン」

プロトタイプを超えた本番用アプリ開発
DBや決済などインフラも内製で提供
非技術者でも収益化可能なアプリ構築
目標は「アプリ開発界のShopify

AIでアプリを開発する「Vibe-coding」分野のスタートアップAnything社は29日、1100万ドル(約16.5億円)の資金調達を発表しました。企業評価額は1億ドル(約150億円)に達します。同社はローンチ後わずか2週間で年間経常収益(ARR)200万ドルを達成。インフラまで内包する「オールインワン」戦略投資家から高く評価された形です。

自然言語でアプリを構築するVibe-coding市場は、驚異的な速さで成長しています。しかし、先行する多くのツールはプロトタイプの作成には優れているものの、実際にビジネスとして通用する本番環境向けのソフトウェア開発には課題がありました。データベースや決済機能といったインフラを別途用意する必要があり、非技術者にとって大きな障壁となっていたのです。

この課題に対し、Anythingは根本的な解決策を提示します。元Googleエンジニアが創業した同社は、データベース、ストレージ、決済機能といったアプリの運用に必要な全てのツールを内製し、一括で提供します。これによりユーザーは、インフラの複雑な設定に悩むことなく、アイデアの実現と収益化に集中できます。

Anythingの共同創業者であるDhruv Amin氏は「我々は、人々が我々のプラットフォーム上でお金を稼ぐアプリを作る、『アプリ開発界のShopify』になりたい」と語ります。実際に、同社のツールを使って開発されたアプリがApp Storeで公開され、すでに収益を上げ始めています。この実績が、同社の急成長を裏付けていると言えるでしょう。

もちろん、Anythingが唯一のプレイヤーではありません。同様にインフラの内製化を進める競合も存在し、市場の競争は激化しています。しかし、投資家は「多様なアプリ開発製品に対する需要は十分にある」と見ており、市場全体の拡大が期待されます。非技術者によるアプリ開発の民主化は、まだ始まったばかりなのかもしれません。

AIエージェント性能向上へ、強化学習『環境』に投資が集中

シリコンバレーで、自律的にタスクをこなすAIエージェントの性能向上を目指し、強化学習(RL)で用いるシミュレーション「環境」への投資が急増しています。大手AIラボから新興企業までが開発に注力しており、次世代AI開発の鍵を握る重要技術と見なされています。従来の静的データセットによる学習手法の限界が背景にあります。 では、RL環境とは何でしょうか。これはAIがソフトウェア操作などを模擬した仮想空間で訓練を行うためのものです。例えばブラウザで商品を購入するタスクをシミュレートし、成功すると報酬を与えます。これにより、エージェントは試行錯誤を通じて実践的な能力を高めるのです。 この分野への需要は急拡大しており、大手AIラボはこぞって社内でRL環境を構築しています。The Informationによれば、Anthropicは来年RL環境に10億ドル以上を費やすことを検討しており、業界全体の投資熱の高さを示しています。AI開発競争の新たな主戦場となりつつあります。 この好機を捉え、RL環境に特化した新興企業も登場しています。Mechanize社はAIコーディングエージェント向けの高度な環境を提供。Prime Intellect社はオープンソース開発者向けのハブを立ち上げ、より幅広い開発者が利用できるインフラ構築を目指しています。 データラベリング大手もこの市場シフトに対応しています。Surge社は需要増を受け、RL環境構築専門の組織を設立。評価額100億ドルとされるMercor社も同様に投資を強化し、既存の顧客基盤を活かして市場での地位を固めようとしています。 ただし、この手法の有効性には懐疑的な見方もあります。専門家は、AIが目的を達成せずに報酬だけを得ようとする「報酬ハッキング」のリスクを指摘。AI研究の進化は速く、開発した環境がすぐに陳腐化する懸念もあります。スケーラビリティへの課題も残り、今後の進展が注目されます。

Nvidia追撃のGroqが7.5億ドル調達 AI推論特化LPUで69億ドル評価へ

資金調達と企業価値

新規調達額は7.5億ドルを達成
ポストマネー評価額69億ドルに到達
1年間で評価額2.8倍に急伸
累計調達額は30億ドル超と推定

技術的優位性

NvidiaGPUに挑む独自チップLPUを採用
AIモデル実行(推論)特化の高性能エンジン
迅速性、効率性、低コストを実現
開発者200万人超が利用、市場浸透が加速

AIチップベンチャーのGroqは先日、7億5000万ドルの新規資金調達を完了し、ポストマネー評価額69億ドル(約1兆円)に到達したと発表しました。これは当初予想されていた額を上回る結果です。同社は、AIチップ市場を支配するNvidiaGPUに対抗する存在として、推論特化の高性能なLPU(言語処理ユニット)を提供しており、投資家の高い関心を集めています。

Groqの核となるのは、従来のGPUとは異なる独自アーキテクチャのLPUです。これは、AIモデルを実際に実行する「推論(Inference)」に特化して最適化されており、推論エンジンと呼ばれます。この設計により、Groqは競合製品と比較して、AIパフォーマンスを維持または向上させつつ、大幅な低コストと高効率を実現しています。

Groqの技術は開発者や企業向けに急速に浸透しています。利用する開発者の数は、わずか1年で35万6000人から200万人以上へと急増しました。製品はクラウドサービスとして利用できるほか、オンプレミスのハードウェアクラスターとしても提供され、企業の多様なニーズに対応できる柔軟性も強みです。

今回の調達額は7.5億ドルですが、注目すべきはその評価額の伸びです。Groq評価額は、2024年8月の前回の資金調達時(28億ドル)からわずか約1年で2.8倍以上に膨らみました。累計調達額は30億ドルを超えると推定されており、AIインフラ市場における同社の将来性に、DisruptiveやBlackRockなどの大手が確信を示しています。

創業者のジョナサン・ロス氏は、GoogleTensor Processing Unit(TPU)の開発に携わっていた経歴を持ちます。TPUGoogle CloudのAIサービスを支える専門プロセッサであり、ロス氏のディープラーニング向けチップ設計における豊富な経験が、Groq独自のLPU開発の基盤となっています。

最先端AIセキュリティのIrregular、8000万ドル調達しリスク評価強化

巨額調達と評価額

調達額は8,000万ドルに到達
評価額4.5億ドルに急伸
Sequoia CapitalやRedpoint Venturesが主導

事業の核心と評価手法

対象は最先端(フロンティア)AIモデル
AI間の攻撃・防御シミュレーションを実施
未発見の潜在的リスクを事前に検出
独自の脆弱性評価フレームワーク「SOLVE」を活用
OpenAIClaudeの評価実績を保有

AIセキュリティ企業Irregular(旧Pattern Labs)は、Sequoia Capitalなどが主導するラウンドで8,000万ドルの資金調達を発表しました。企業価値は4.5億ドルに達し、最先端AIモデルが持つ潜在的なリスクと挙動を事前に検出・評価する事業を強化します。

共同創業者は、今後の経済活動は人間対AI、さらにはAI対AIの相互作用が主流になり、従来のセキュリティ対策では対応できなくなると指摘しています。これにより、モデルリリース前に新たな脅威を見つける必要性が高まっています。

Irregularが重視するのは、複雑なシミュレーション環境を構築した集中的なストレス試験です。ここではAIが攻撃者と防御者の両方の役割を担い、防御が崩壊する箇所を徹底的に洗い出します。これにより、予期せぬ挙動を事前に発見します。

同社はすでにAI評価分野で実績を築いています。OpenAIのo3やo4-mini、Claude 3.7 Sonnetなどの主要モデルのセキュリティ評価に採用されています。また、脆弱性検出能力を測る評価フレームワーク「SOLVE」は業界標準として広く活用されています。

AIモデル自体がソフトウェアの脆弱性を見つける能力を急速に高めており、これは攻撃者と防御者の双方にとって重大な意味を持ちます。フロンティアAIの進化に伴い、潜在的な企業スパイ活動など、セキュリティへの注目はますます集中しています。

Nothing社、AI特化OSで市場刷新へ 2億ドル調達し来年デバイス投入

事業拡大と資金調達

2億ドルの資金調達を完了
企業評価額13億ドルに到達
流通網拡大とイノベーション加速
初の「AIネイティブデバイス」を来年投入

AI特化OSの戦略

従来と異なるAI特化のOSを開発
スマートフォンからEV、人型ロボットに対応
ユーザーに合わせた超パーソナライズ体験を実現
コンテキストとユーザー知識の活用を重視

ロンドン発の消費者テック企業Nothing社は、2億ドル(約310億円)の資金調達を発表し、評価額を13億ドルに引き上げました。同社は来年、既存の概念を覆す「AIネイティブデバイス」を市場に投入します。これは、従来のOSとは大きく異なる、AIに特化した新しいオペレーティングシステム(AI OS)を基盤とする戦略です。

このAI OSは、スマートフォンやヘッドホンといった既存の製品群に加え、スマートグラス、電気自動車(EV)、さらには人型ロボットまで、将来登場するあらゆるデバイスの頭脳となることを目指しています。ペイCEOは、この特化型OSを通じて、ユーザー一人ひとりに合わせた「超パーソナライズされた体験」を提供できると強調しています。

ペイCEOは、OS開発における独自の強みとして、コンテキストやユーザー知識を持つ「最後の流通接点(ラストマイル)」を握っている点を挙げます。これにより、単なるツールではない、ユーザーの日常生活に深く入り込み、真に役立つAI体験をハードウェアに統合できると説明しています。

Nothing社の挑戦は、過去に大衆市場の支持を得られなかったAIネイティブデバイスという未開拓の領域です。Appleのような大手企業でさえ成功を収めていない上、OpenAIと元Appleデザイナーのジョニー・アイヴ氏が共同開発する競合製品も存在します。Nothing社にとって、需要を創出し、この新たなカテゴリーを確立できるかが最大の試練となります。

卓上ロボット工場が1.5億円調達、人間実演で精密製造を高速学習

超小型・汎用ロボット工場

犬小屋サイズの卓上製造キット
2本のアームを持つ汎用ロボットシステム
回路基板組立など精密製造タスクに特化

革新的な学習アプローチ

人間の実演によるトレーニングを採用
従来のAIプログラミングより迅速に学習
複雑なシーケンスを数時間で習得可能

資金調達と事業目標

プレシードで150万ドルを調達
創業間もないが3000万ドル評価を獲得

サンフランシスコ拠点のスタートアップ、MicroFactoryが、犬小屋サイズの卓上ロボット工場を開発し、プレシードラウンドで150万ドル(約2.3億円)を調達しました。同社は設立間もないながら、ポストマネー評価額3000万ドル(約46億円)を獲得。このロボットシステムは、人間が物理的に動きを教えることで複雑な精密製造タスクを迅速に学習できる点が革新的です。

MicroFactoryのシステムは、従来の人型や工場全体の自動化を目指すロボットとは一線を画します。製品は透明な筐体に収められた卓上型の製造キットで、2本のアームを持つ汎用ロボットを搭載。CEOのイゴール・クラコフ氏は、人間型である必要はなく、設計をシンプルにすることで、ハードウェアとAIの両面で汎用性を高められると説明しています。

このシステムの最大の特徴は、ユーザーが直接ロボットアームをガイドして動作を教える、「人間による実演(Demonstration)」学習です。従来のAIプログラミングに比べ、複雑な製造シーケンスを数時間で正確に理解させることが可能となります。これは、熟練工を雇用し指導する際に費やす時間とリソースを大幅に削減できることを意味します。

このコンパクトなロボット工場は、特に高い精度が要求されるタスク向けに設計されています。具体的には、回路基板の組立、部品のはんだ付け、ケーブルの配線などです。また、エレクトロニクス製造だけでなく、食用カタツムリの加工など、ニッチな分野での多様な事前予約も獲得しており、その汎用性の高さを示しています。

今回調達した資金は、商業製品への移行とユニットの出荷、そしてAIモデルの継続的な改善に充てられます。MicroFactoryは、ハードウェア製造に焦点を当てた成長目標を掲げており、初年度に1,000台のロボット(1日あたり約3台)を生産する能力があると述べています。今後も毎年10倍の成長を目指す計画です。

AIコードレビュー市場急拡大、CodeRabbitが評価額800億円超で6000万ドル調達

驚異的な成長と評価

シリーズBで6000万ドルを調達
企業評価額5億5000万ドル
ARR1500万ドル超、月次20%成長
NvidiaVC含む有力投資家が参画

サービスと価値

AIコード生成のバグボトルネック解消
コードベース理解に基づく高精度なフィードバック
レビュー担当者を最大半減生産性向上
Grouponなど8,000社以上が採用

AIコードレビュープラットフォームを提供するCodeRabbitは、シリーズBラウンドで6000万ドル(約90億円)を調達し、企業評価額5億5000万ドル(約825億円)としました。設立からわずか2年でこの評価額に達した背景には、GitHub Copilotなどに代表されるAIによるコード生成の普及で、レビュー工程が新たなボトルネックとなっている現状があります。この資金調達はScale Venture Partnersが主導し、NvidiaVC部門も参加しています。

CodeRabbitは、増加するAI生成コードのバグに対処し、開発チームの生産性向上に貢献しています。同社の年間経常収益(ARR)は1500万ドルを超え、月次20%という驚異的な成長率を維持しています。Chegg、Grouponなど8,000社以上の企業が既に導入しており、急速に市場のニーズを取り込んでいることがわかります。

AIによるコード生成は効率を高める一方、その出力はしばしばバグを含み、シニア開発者がその修正に時間を費やす「AIのベビーシッター」状態を生み出しています。CodeRabbitは、企業の既存のコードベース全体を深く理解することで、潜在的なバグを的確に特定し、人間のように具体的なフィードバックを提供します。

創業者であるハージョット・ギル氏によると、CodeRabbitの導入により、企業はコードレビューに携わる人員を最大で半減できる効果が見込めるとしています。これは、開発サイクルにおける最も時間のかかる作業の一つであるコードレビューの効率化をAIが担うことで実現されます。

AIコードレビュー市場では、Graphite(5200万ドル調達)やGreptileなど、有力な競合が存在します。しかし、CodeRabbitAnthropicClaude Codeなどのバンドルソリューションと比較して、より包括的かつ技術的な深みがあると主張し、スタンドアローン製品としての優位性を強調しています。

開発者がAI生成コードに依存する度合いが高まるにつれ、その信頼性を担保するためのAIコードレビューの需要はさらに拡大する見通しです。CodeRabbitが提示する高精度なレビュー機能が、今後のソフトウェア開発における必須インフラとなる可能性を示唆しています。