安全保障(政策・規制)に関するニュース一覧

MITが米海軍と連携、AI時代の指揮官育成プログラム始動

実践的AIリーダー育成「2N6」

米海軍士官向けに2年間の修士課程を提供
機械工学とAI証明書を統合した学位

意思決定と自律システムへの応用

AIを戦力乗数として活用する能力養成
意思決定支援や自律型船舶制御を習得
海軍の実務課題に即した研究を実施

国家安全保障と教育の革新

インド太平洋軍司令官の提案により創設
次世代リーダーへの高度AI教育モデル

米マサチューセッツ工科大学(MIT)は2025年12月12日、米海軍士官向けに特化した新たなAI応用プログラム「2N6」の開設を発表しました。機械工学科と電気工学・コンピュータ科学科が共同で提供するこのプログラムは、AIを「戦力乗数」として活用できる軍事リーダーの育成を目的としており、参加者は2年間で機械工学修士号とAI証明書の両方を取得します。

本プログラムは、AI活用による意思決定の迅速化と精度向上に主眼を置いています。カリキュラムには、計算演習における意思決定支援や、水上・水中航行体の自律制御などが含まれ、海軍の実務課題に直結した研究を行うのが特徴です。

プログラム創設の契機は、米インド太平洋軍司令官パパロ提督によるMIT訪問でした。提督は、MITの既存の造船教育プログラム「2N」と同様に、AI分野でも実践的なリーダー育成が必要であると提案し、今回の連携が実現しました。

「2N6」は、まずは米海軍士官を対象としたパイロット版として開始されますが、将来的には対象の拡大も計画されています。MITと米海軍の1世紀以上にわたる連携を基盤に、国家安全保障を支える次世代リーダーを育成する新たなモデルとなります。

AMD CEO「AIバブル懸念は過剰」計算資源不足が好機

AI市場の現状と展望

AIは最も変革的な技術でありバブル懸念は時期尚早
モデル訓練から実利用・エージェントへ需要が移行中
世界的な計算能力不足が続き、巨額投資は正当化
今後1年でAIは日常生活に劇的に浸透すると予測

激化する競争と勝算

Nvidiaだけでなく巨大テックの独自チップとも競合
単一の勝者ではなく適材適所のチップが共存する未来
技術革新のスピードが全てであり「最速」を目指す
米国の技術覇権維持には国家安全保障が最優先事項

米AMDのリサ・スーCEOは12日、サンフランシスコで開催されたイベントに登壇し、「AIバブル懸念は過剰だ」と市場の悲観論を一蹴しました。AIはキャリアの中で最も変革的な技術であり、まだ初期段階にあると強調しています。

スー氏は、現在の巨額投資について「需要に対し計算能力が圧倒的に不足している」と説明しました。モデルの訓練だけでなく、実際の業務利用やエージェント機能への需要が急増しており、設備投資は合理的であるとの見解です。

競争環境については、Nvidiaとの二強対決という単純な構図を否定しました。GoogleAmazonなどが独自チップ開発を進める中、CPUやGPUASICなど多様な半導体が適材適所で求められる「共存の時代」を予測しています。

半導体業界で最も重要なのは「技術革新のスピード」です。過去の市場とは異なり、AI分野では常に技術の跳躍(リープフロッグ)が起きており、アイデアを競合より早く市場に投入することが唯一の勝機となります。

米中関係に関しては、米国国家安全保障が最優先であると明言しました。その上で、米国の技術覇権を維持するためには、中国の優秀な人材や市場へのアクセスも戦略的に重要であるという現実的な姿勢を示しています。

スー氏は、AIが今後1年でさらに日常生活に浸透すると予測します。「AIがまだ十分に正確ではない」という課題を認めつつも、生産性向上への貢献は計り知れず、今後の進化に強い期待を寄せました。

DeepMind、英政府と提携拡大 科学・教育でAI実装加速

科学発見と新材料開発の加速

英国科学者に先端AIモデルへの優先アクセス権
2026年に材料科学特化の自動化ラボ英国内に設立

教育・公共部門の生産性革命

Gemini活用で教師の業務時間を週10時間削減
都市計画文書処理を2時間から40秒に短縮
AI家庭教師の導入で生徒の問題解決能力が向上

国家安全保障とリスク管理

英AI安全研究所と連携しAIリスクの評価を強化
サイバー脆弱性自動修正するAIツールの導入

Google DeepMindは2025年12月10日、英国政府とのパートナーシップを大幅に拡大し、科学、教育、公共サービス分野でのAI実装を加速させると発表しました。この提携は、先端AI技術を国家基盤に組み込むことで、経済的繁栄と安全保障を強化することを目的としています。特に、科学的発見のスピードアップや公共部門の生産性向上に焦点を当てており、AIを国家戦略の中核に据える英国の姿勢は、企業経営者にとっても組織へのAI導入の青写真となるでしょう。

科学技術分野では、英国の研究者に対し「AI for Science」モデル群への優先アクセスを提供します。これには、アルゴリズム設計を行う「AlphaEvolve」や気象予測モデル「WeatherNext」などが含まれます。特筆すべきは、2026年に英国内に設立予定の自動化ラボです。この施設では、Geminiと統合されたロボティクスが新材料の合成と特性評価を自律的に行い、超伝導体や次世代バッテリーなどの発見プロセスを劇的に短縮することを目指します。

教育と公共サービスの現場でも、具体的な成果実証が進んでいます。北アイルランドでの試験運用では、生成AI「Gemini」を活用することで教師の事務作業時間を週平均10時間削減することに成功しました。また、AI家庭教師システムを用いた生徒は、人間のみの指導を受けた生徒に比べ、新規問題への対応力が5.5ポイント向上しています。公共サービスでは、都市計画文書のデータ化処理時間を従来の2時間からわずか40秒へと短縮するツール「Extract」を導入し、行政の意思決定速度を飛躍的に高めています。

安全保障面では、英国のAI安全研究所(AISI)との連携を深め、モデルの説明可能性や社会的影響の研究を推進します。さらに、サイバーセキュリティ分野では、脆弱性の特定とコード修正を自動化する「Big Sleep」や「CodeMender」といったAIツールを活用し、国家レベルのサイバーレジリエンス強化を図ります。DeepMind英国政府の取り組みは、AIが単なるツールを超え、社会インフラとしての地位を確立しつつあることを示しています。

米BTC採掘業者がAIへ転換、高収益データセンターへ

AI特需と収益構造の激変

米大手マイナーが相次いでAIデータセンターへ転換
ビットコイン価格下落と報酬半減が収益を圧迫
AI計算需要に対し電力インフラの価値が急騰

インフラ転用と今後の課題

テック大手との契約で安定収益と高利益率を確保
AI向けには常時稼働と高度な電源管理が必須
採掘能力低下によるセキュリティリスクの懸念
採掘拠点はエネルギーの海外や国家管理へ移行

2025年12月、米国の主要ビットコイン採掘業者(マイナー)たちが、事業の軸足をAIデータセンター運営へと急速に移しています。かつて暗号資産の採掘拠点だった巨大施設は、今やAmazonMicrosoftといったテック企業のAIモデル学習を支える計算基盤へと変貌しつつあります。背景には、マイニング収益の悪化と、AI開発競争による電力インフラ需要の爆発的な増加があります。この構造転換は、エネルギー産業の勢力図と金融システムの双方に新たな潮流を生み出しています。

Riot PlatformsやBitfarmsなど、米国の上場マイニング企業の多くがAIやHPC(高性能計算)分野への参入を表明しました。過去18ヶ月で少なくとも8社が方針転換を行い、総額430億ドル(約6兆円超)規模のAI関連契約が発表されています。AI企業はモデル学習に必要な膨大な電力とスペースに飢えており、マイナーが保有する大規模な電力インフラと「ハコ(データセンターの外郭)」は、即座にGPUを稼働させるための貴重な資産として再評価されています。

転換の最大の動機は明確な経済合理性です。2024年の半減期を経て採掘報酬が減少し、さらに足元でビットコイン価格が8万5000ドル付近まで調整したことで、マイニング事業の採算性は厳しさを増しています。対照的に、AIデータセンター事業は大手テック企業との長期契約により、安定的かつ高い利益率が見込めます。株式市場もこの動きを好感しており、AIへのピボットは株価上昇の強力な触媒として機能しています。

もっとも、このインフラ転用は技術的に容易ではありません。ビットコインマイニングは電力需給に応じて稼働を停止できる柔軟性がありますが、AIの学習処理には「99.999%以上」の稼働率と極めて安定した電力供給が求められます。既存施設の改装には発電機の追加など多額の投資が必要となりますが、テックジャイアントからの旺盛な需要と巨額の契約金が、そのハードルを越える原動力となっています。

この潮流はビットコインネットワーク自体に長期的なリスクをもたらす可能性があります。米国の計算能力(ハッシュレート)がAIへ流出すれば、ネットワークセキュリティ強度が低下しかねないからです。結果として、純粋なマイニング事業はエネルギーコストの安いパラグアイなどの海外地域や、国家安全保障の一環としてビットコインを戦略的に保有・採掘する主権国家の事業へと変質していく可能性があります。

米230団体がデータセンター新設停止を要求、規制強化へ

建設停止と規制強化の要求

米230超の団体が議会に書簡送付
新規建設のモラトリアムを要求
規制なき無秩序な拡大を懸念

AI普及による環境負荷と反発

AI需要で電気料金が高騰する恐れ
ガス依存による大気汚染リスク
地域住民による建設阻止の動きが拡大

米国の230を超える環境・市民団体が、連邦議会に対してデータセンターの新規建設を一時停止するよう求める書簡を送付しました。強力な規制が導入されるまで、電力料金の高騰や環境汚染を防ぐための措置が不可欠だと強く訴えています。

書簡では、AIや暗号資産ブームによるデータセンターの急増が、事実上の野放し状態であると警鐘を鳴らしています。これらの施設拡大は地域社会を混乱させ、経済や環境、さらには気候変動や水の安全保障に対する重大な脅威になっていると指摘されました。

特に懸念されるのが電力需要増に伴う電気料金の値上がりです。エネルギー企業によるガスインフラ拡張計画は、気候変動を加速させ、地域住民の健康を害する大気汚染をさらに悪化させる可能性があると警告されています。

水資源への負荷も甚大で、AIデータセンターの消費水量は2028年までに米国の1850万世帯分に達すると試算されています。こうした懸念から地域住民による反対運動も活発化しており、今年は推定20件の計画が阻止または停滞に追い込まれました。

米、エヌビディアH200の対中輸出を条件付き承認

売上の25%を政府が徴収

商務省がH200チップの対中輸出を許可
輸出先は政府が審査した承認顧客に限定
米政府が売上の25%を手数料として徴収
対象は製造から約18ヶ月経過した製品のみ

議会は安保懸念から反発

エヌビディアは米国の雇用支援として歓迎
議会はAI技術流出を懸念し輸出阻止法案を提出
トランプ氏は習近平主席も好意的に反応と言及

米商務省は12月8日、米半導体大手エヌビディアに対し、AI向け高性能半導体「H200」の中国への輸出を条件付きで承認しました。トランプ政権によるこの決定は、米企業の競争力維持と政府の新たな歳入源確保を狙ったもので、米政府は売上の25%を手数料として徴収する方針です。

輸出承認には厳格な条件が付されています。対象となるのは商務省が審査・承認した中国の民間顧客に限られ、軍事転用リスクを抑制します。また、許可されるチップは最新鋭ではなく、市場投入から約18ヶ月が経過したモデルに限定されると報じられています。

エヌビディアはこの決定を強く支持しています。同社広報担当者は「米国半導体産業が競争力を持ち、国内の高賃金雇用と製造業を支えるための判断だ」と歓迎の意を表明しました。承認された顧客への販売は、国益と経済成長のバランスをとる措置であると強調しています。

一方で、米議会からは国家安全保障上の懸念が噴出しています。共和党と民主党の超党派議員グループは12月4日、高度なAIチップの対中輸出を30ヶ月間阻止する法案を提出したばかりであり、政権の決定は議会の意向と真っ向から対立する形となりました。

トランプ大統領は、この決定に対し中国の習近平国家主席が前向きに反応したと述べています。中国当局は以前、国内企業に対しエヌビディア製品の購入を禁じていましたが、今回の米側の輸出解禁が両国の技術貿易や外交関係にどのような変化をもたらすか注目されます。

Palantir「国家奉仕AI」独走、国防回帰するシリコンバレー

国家奉仕型AIの独走

ICEやCIAとの契約を正当化
競合は企業でなく「政治的敵」
S&P500;入りの歴史的好業績
データ統合を担うインフラ企業

シリコンバレーの変容

軍事忌避から国防シフトへ転換
Anduril等防衛テックの台頭
西側諸国の優位性維持を重視

WIRED編集長がPalantir CEO Alex Karp氏を直撃しました。Karp氏は自社を「アウトサイダー」と位置づけ、ICEやイスラエル政府との契約を擁護しつつ、「愛国的技術」の必要性を強調。かつて軍事利用を忌避した米テック業界が、AIブームと共に再び国家安全保障へと急速に接近する現状と、同社の好調な業績の背景を浮き彫りにしています。

同社は監視企業と誤解されがちですが、実際は組織のデータを統合・運用するインフラ企業です。AIプラットフォーム「AIP」の導入が進み、民間・政府双方で需要が急増。S&P; 500入りを果たし、約10億ドルの収益を上げるなど、ソフトウェア企業として歴史的な成長を遂げています。

Karp氏はビジネス上の競合存在を否定し、真の敵は「Woke(意識高い系)な左右の政治勢力」だと断言しました。倫理的批判を一蹴し、西側諸国の優位性を支えるためには、強力なテクノロジーが不可欠だという「技術国家主義」の信念を貫き、独自のポジションを築いています。

かつてGoogleが国防総省のAI計画から撤退したように、テック業界は軍事利用に慎重でした。しかし現在はAmazonMetaが国防系スタートアップと連携するなど、国防シフトが鮮明です。Karp氏はこの変化を「自分たちの文化的勝利」と捉え、国家と技術の融合をさらに推進しています。

AI不倫訴訟と詐欺SaaS化、米データ監視問題の教訓

AIの法的リスクと犯罪の産業化

AIへの感情依存が離婚や親権争いの`法的火種`に
OpenAIは対話ログの秘匿特権を主張も議論は平行線
Googleが詐欺ツール販売網`Lighthouse`を提訴
犯罪もサブスク型へ、技術不要で参入障壁が低下

インフラ戦略と監視社会の死角

データセンター適地は再エネと水資源豊富な`中西部`
DHSが不正確な警察データを違法収集し監視テストに利用
データ連携の加速が招く`プライバシー侵害`の懸念

WIREDの報道から、経営者が今押さえるべきテック業界の重要トピックを解説します。AIとの関係がもたらす新たな法的リスク、サイバー犯罪のエコシステム化、そして政府によるデータ活用の暴走など、技術進化が引き起こす社会的な摩擦とビジネスへの影響について、その核心を紐解きます。

「AI不倫」が現実的な法的リスクとして浮上してきました。チャットボットへの過度な感情的依存や性的な対話が、離婚訴訟における`不貞行為`に準ずる扱いを受ける事例が出ています。AIへの課金が家計への背信行為とみなされたり、親権争いで親としての判断能力を問う材料にされたりする可能性があります。

これに関連し、OpenAIはユーザーの会話ログ開示を拒む姿勢を見せています。同社は弁護士・依頼人間のような「秘匿特権」を主張しますが、Google検索履歴と同様に企業へ預けたデータであるとの反論もあり、議論は紛糾しています。企業内利用においても、ログの`監査とプライバシー`の境界線は曖昧なままです。

サイバーセキュリティ分野では、犯罪の「SaaS化」が脅威です。Googleは詐欺ツール販売網「Lighthouse」を提訴しましたが、彼らは月額サブスクリプションで攻撃キットを提供し、技術力のない犯罪者の参入を容易にしています。攻撃の産業化・組織化を前提とした、より強固な`防御態勢`が不可欠です。

インフラ投資の視点では、米国内のデータセンター建設地としてテキサス州や中西部が有望視されています。AI基盤の維持には膨大な電力と冷却水が必要であり、再生可能エネルギーの供給力と水資源の確保が、今後のインフラ戦略における決定的な`競争優位性`となる見通しです。

データガバナンスの課題も露呈しました。国土安全保障省(DHS)がシカゴ警察の不正確なギャング情報を違法に収集し、監視リストのテストに利用していたことが発覚しました。組織間の安易なデータ統合は、誤った情報に基づく不当な監視や排除を招く恐れがあり、厳格な`コンプライアンス管理`が求められます。

Google、アフリカのAIデータ基盤に225万ドル拠出

Googleの狙い

アフリカの公共データを近代化
AI時代に対応したデータ基盤構築
断片的な情報を実用的な洞察

具体的な支援内容

総額225万ドルの資金提供
国連と連携しData Commonsを導入
各国統計局へのAI研修と技術支援

期待される効果

食糧安全保障など課題解決の促進
政策立案者へのデータ提供と意思決定支援

Googleは2025年11月17日、アフリカの公共データシステムを近代化し、AI時代に対応させるため、225万ドルを拠出すると発表しました。同社のオープンナレッジ基盤「Data Commons」を活用し、国連などと連携。断片的なデータを政策決定に役立つ実用的な洞察へと変え、大陸のAI駆動の未来を支援します。

この取り組みの核心は、国連アフリカ経済委員会(UNECA)との連携です。共同でアフリカ向けの地域版「Data Commons」を立ち上げ、大陸全体の公共データを一つの信頼できる情報源に統合。これにより、これまで分断されていた情報が横断的に利用可能となり、より高度な分析が実現します。

資金提供はインフラ整備に留まりません。「21世紀の統計開発パートナーシップ(PARIS21)」とも協力し、アフリカ各国の国家統計局にAI研修や技術支援を提供。現場のデータ活用能力を引き上げることで、持続可能なデータエコシステムの構築を目指します。

データ基盤の整備は、どのような変化をもたらすのでしょうか。食糧安全保障、経済開発、公衆衛生など、アフリカが直面する喫緊の課題解決に貢献することが期待されます。政策立案者は、信頼性の高いデータに基づき、より的確な意思決定を下せるようになるでしょう。

Googleにとってこの投資は、成長著しいアフリカ市場を見据えた戦略的な一手です。AI時代において、質の高いデータは最も重要な資源となります。アフリカのデータインフラを支援することは、将来のAIサービス展開や新たなビジネス機会の創出に繋がる可能性があります。

パランティアCEO激白、国防AIとシリコンバレー

国防・諜報を支えるAI

テロリストや犯罪組織の発見
戦場での部隊の位置把握
ウクライナ戦争で致死性兵器の運用支援
米政府・同盟国にのみ技術提供

シリコンバレーへのアンチテーゼ

大手テック企業の愛国心欠如を批判
本社をデンバーに移転し西側価値観を重視
技術的競合は不在と断言
真の競合は政治的な反対勢力

データ分析大手パランティア(Palantir)のアレックス・カープCEOが米WIRED誌のインタビューに応じ、ウクライナ戦争における自社製品の役割や、シリコンバレーの文化に対する批判、そして物議を醸す政府との契約について自身の哲学を語りました。同氏は、西側諸国の価値観と安全保障を守ることが使命であると強調し、テクノロジー企業が果たすべき愛国的な役割を強く訴えています。

パランティアの事業は、政府機関と民間企業という二つの柱で成り立っています。政府向けでは、諜報機関によるテロリスト追跡や、軍による戦場での情報分析を支援。特にウクライナ戦争では、同社のソフトウェアが戦況をリアルタイムで把握し、致死性兵器の運用にまで貢献しているとカープ氏は明言します。これは、AIが現代の戦争をどう変えているかを示す象徴的な事例と言えるでしょう。

一方でカープ氏は、シリコンバレーの文化に真っ向から異を唱えます。「私たちは創業以来、アメリカと西側諸国を支持し、政府の機能向上に貢献してきた」と述べ、反体制的な文化を「罪」とまで断じます。この哲学の違いは、2020年に本社をカリフォルニア州パロアルトからコロラド州デンバーへ移転した行動にも表れています。利益追求だけでなく、国家への貢献を重視する姿勢は、多くのテック企業と一線を画しています。

技術的な競合はいるのでしょうか。この問いにカープ氏は「いない」と断言します。彼が真の競争相手と見なすのは、技術を持つ企業ではなく、政治的な反対勢力です。「我々の製品は悪用が世界で最も難しいソフトウェアだ」と主張し、自社の活動に反対するイデオロギーこそが事業の障壁だと考えています。これは、自社の技術力に対する絶対的な自信の表れです。

同社は米移民・関税執行局(ICE)やイスラエル軍との契約で、常に批判の的となってきました。しかしカープ氏は「市民が投票で移民政策を決めるべきだ」と述べ、民主的なプロセスによって選ばれた政府を支援することは正当だと反論します。物議を醸す事業であっても、西側民主主義の防衛という大義があればためらわない。その強硬な姿勢が、パランティアの独自性と成長を支える源泉となっているのです。

Google、豪州離島に軍事AI拠点を極秘計画

AIと地政学の融合

豪州軍とのクラウド契約が背景
インド洋の戦略的要衝クリスマス島
中国海軍の活動監視が主目的
AIによる最先端の軍事指揮統制を実現

計画の概要と影響

施設の規模や費用は非公開
ダーウィンへの海底ケーブル敷設を申請
日米豪の防衛協力の拠点に
島の経済活性化への期待と懸念

Googleが、オーストラリア軍とのクラウド契約の一環として、インド洋に浮かぶ豪州領クリスマス島に大規模なAIデータセンターを建設する秘密計画を進めていることが明らかになりました。2025年11月6日に報じられたこの計画は、中国の海洋活動を監視する上で極めて重要な戦略的拠点となる可能性を秘めています。

クリスマス島は、インドネシアから南へわずか約350キロに位置し、軍事戦略家が「極めて重要」とみなす場所です。この立地は、世界の海運と潜水艦の主要航路であるスンダ、ロンボク、マラッカ海峡の監視を可能にします。元米海軍戦略家は、この施設がAIを活用した最先端の軍事指揮統制を実現すると指摘しています。

このプロジェクトは、Googleが2025年7月にオーストラリア国防省と締結した3年間のクラウド契約に続くものです。しかし、計画の詳細は厚いベールに包まれており、施設の規模、費用、具体的な能力の多くは非公開とされています。Googleと豪国防省はいずれもコメントを控えています。

計画には、米海兵隊が半年ごとに駐留する北部準州のダーウィンと島を結ぶ海底ケーブルの敷設も含まれています。最近の日米豪合同軍事演習では、クリスマス島が無人兵器システムの発射拠点としての価値を証明しており、三国間の防衛協力におけるハブとなる可能性があります。

これまで通信インフラが脆弱で、経済的機会に乏しかったクリスマス島。約1600人の住民の一部は、この巨大プロジェクトがもたらす経済効果に期待を寄せる一方、アカガニの大移動で知られる島の貴重な自然環境への影響を懸念する声も上がっており、慎重な見方が広がっています。

大手テック企業が国家安全保障に深く関与する事例は増えています。Googleのこの動きは、AI技術が地政学的なパワーバランスを左右する新たな時代の到来を象徴していると言えるでしょう。この秘密のAI拠点がインド太平洋地域の安全保障にどのような影響を与えるか、今後の動向が注目されます。

AGI命名の起源、兵器化への警鐘にあり

AGI命名の起源

1997年にマーク・ガブルッド氏が初使用
ナノテク兵器化に警鐘を鳴らす論文で定義
特化型AIと区別することが本来の目的

言葉の「再発明」と普及

2000年代にシェーン・レッグ氏らが再提案
DeepMind共同創業者が言葉を普及させる
オンラインでの議論を経て研究界に定着

名付け親の現在

ガブルッド氏は経済的成功とは無縁の生活
今も自律型兵器の禁止を一貫して主張

今や世界のIT業界を席巻する「AGI人工汎用知能)」。この言葉は1997年、当時大学院生だったマーク・ガブルッド氏が、先端技術の兵器化に警鐘を鳴らす論文で初めて使用したものです。WIRED誌が報じた彼の物語は、今日のAGI開発競争の原点に、安全保障への強い懸念があったことを示しています。

ガブルッド氏が「人工汎用知能」という言葉を生んだのは、メリーランド大学の博士課程に在籍していた時でした。彼はナノテクノロジーがもたらす軍事的脅威を研究する中で、従来の専門分野に特化したAIと、人間のように汎用的な知能を持つAIを区別する必要性を感じ、この新たな言葉を定義したのです。

彼の論文におけるAGIの定義は「人間の脳に匹敵または凌駕する複雑性と速度を持ち、一般的な知識を習得、操作、推論できるAIシステム」。これは、現在私たちがAGIと呼ぶものの概念と驚くほど一致しています。しかし、この論文は当時ほとんど注目されませんでした。

一方、AGIという言葉が広く知られるようになったのは2000年代初頭のことです。Google DeepMindの共同創業者となるシェーン・レッグ氏や研究者のベン・ゲーツェル氏らが、特化型AIと区別する言葉としてAGI「再発明」し、オンラインフォーラムなどを通じて普及させました。

後にガブルッド氏が自らの先行使用を指摘し、レッグ氏らもそれを認めました。レッグ氏は「我々は彼を発見し、彼が論文でその言葉を使っていたことを確認した。だから私は発明者ではなく、再発明者だ」と語っています。ガブルッド氏の先見性は、歴史の陰に埋もれていたのです。

今日のAGI開発競争は、数兆ドル規模の市場を生み出しています。しかし、その名付け親であるガブルッド氏は経済的な成功とは無縁の生活を送りながら、今もなお、自律型殺傷兵器の禁止など、テクノロジーの倫理的な利用を訴え続けています。

AGIという言葉の起源は、技術がもたらす光と影を象徴しています。ビジネスリーダーやエンジニアは、技術開発の先に何を見据えるべきでしょうか。ガブルッド氏の警告は、30年近い時を経て、その重要性を一層増していると言えるでしょう。

OpenAI、AI覇権の鍵は電力と米政府に提言

AI覇権を脅かす電力不足

米国のAIリーダーシップに黄信号
電力不足が最大のボトルネック
中国との深刻な「電子の格差
電子は新たな石油、戦略資産に

政府への4つの緊急提言

年間100GWの新規電力容量を構築
規制を近代化しエネルギー投資を促進
AI教育で次世代の労働者を育成
国家安全保障のためのAI活用拡大

OpenAIは2025年10月27日、米国のAI覇権確保に向け、年間100ギガワット(GW)の新規エネルギー容量構築を米政府に提言しました。急成長する中国との「電子の格差」に強い危機感を示し、電力を国家の戦略的資産と位置付けるよう訴えています。

なぜ今、電力なのでしょうか。AIは基盤技術ですが、その稼働には膨大な電力を消費します。OpenAIの分析では、AIインフラへの最初の1兆ドル投資が3年間でGDPを5%以上押し上げる一方、現在の電力供給ではこの成長を支えきれないと警告しています。

最大の脅威は中国の存在です。中国は2024年だけで429GWもの新規電力容量を追加しました。これは同年の米国の増加分(51GW)の8倍以上に相当します。OpenAIはこの状況を「電子の格差」と呼び、AI覇権競争における米国の弱点になりかねないと警鐘を鳴らしています。

OpenAIは提言だけでなく、自らも行動で示しています。同社はテキサス州やウィスコンシン州などで大規模データセンタースターゲイト」を建設中で、今後3年間で4000億ドル以上を投じ、約7GWの計算能力を追加する計画です。これは地域経済の活性化にも繋がります。

しかし、インフラ構築には大きな壁も存在します。それは熟練労働者の不足です。分析によると、今後5年間で米国のAI関連インフラを支えるには、現在の熟練労働者総数の約20%に相当する人材が新たに必要になるといいます。AI教育と職業訓練プログラムの拡充が急務です。

OpenAIは、かつての高速道路網整備やアポロ計画のように、米国には国家的な大事業を成し遂げてきた歴史があると強調します。AIという一世紀に一度の好機を掴むため、国を挙げた大胆な投資と行動が今こそ求められている、という強いメッセージを発信しているのです。

米政府、AMDと組み国家主権AIスパコン開発へ

10億ドルの大型プロジェクト

エネルギー省とAMDが提携
総額10億ドルの契約を締結
2基のAIスパコンを開発
オークリッジ国立研究所に設置

2基の新スパコンの役割

Lux:国家初のAIファクトリー
Luxは2026年初頭に稼働
Discovery:科学研究を加速
Discoveryは2029年稼働予定

半導体大手AMDは10月27日、米エネルギー省と10億ドル規模の契約を締結したと発表しました。この提携に基づき、テネシー州のオークリッジ国立研究所に2基のAIスーパーコンピュータ「Lux」と「Discovery」を開発します。「Lux」は2026年初頭、「Discovery」は2029年の稼働を目指しており、米国の科学技術と国家安全保障の強化が目的です。

「Lux」は、米国初となる科学、エネルギー、国家安全保障に特化した「AIファクトリー」と位置づけられています。AI基盤モデルの訓練や微調整、展開に特化しており、データ集約的なワークロードに最適化された設計です。これにより、発見や技術革新を加速させることが期待されます。

一方の「Discovery」は、エネルギー、生物学、先端材料、製造業など、幅広い分野での画期的な研究を推進します。次世代原子炉やバッテリー、半導体などの設計支援が主な用途です。「Bandwidth Everywhere」設計により、既存のスパコン「Frontier」を上回る性能とエネルギー効率を実現します。

AMDと米政府の協力は今回が初めてではありません。同研究所に設置されている世界最速級のスパコン「Frontier」の開発にもAMDは関与しています。今回のプロジェクトは、これまでの協力関係を基盤とし、米国のAI覇権と科学技術力をさらに強化する戦略的な一手と言えるでしょう。

米ICE、AIでSNS監視強化 8.5億円で契約

AI監視システムの概要

Zignal Labs社と8.5億円契約
AIで1日80億件の投稿を分析
100以上の言語に対応
位置情報や画像から個人特定

監視強化への懸念

言論の自由への「攻撃」との批判
移民や活動家も標的に
プライバシー侵害と萎縮効果
政府による大規模な意見監視

米国の移民・税関執行局(ICE)が、AIを活用したソーシャルメディア監視システムを開発するZignal Labs社と、570万ドル(約8.5億円)の契約を締結したことが明らかになりました。この動きは、ウェブ上の数百万人のユーザーを追跡し、法執行任務を強化する目的がありますが、専門家からは「民主主義と言論の自由への攻撃だ」と強い懸念の声が上がっています。

Zignal Labs社のシステムは、1日に80億件以上のSNS投稿を100以上の言語で分析できる「リアルタイム情報プラットフォーム」です。機械学習画像認識技術を駆使し、投稿された写真や動画の位置情報、写り込んだ紋章などから個人の特定や所在地の割り出しが可能だとされています。

ICEはこの技術を用いて、国家安全保障上の脅威となる人物や国外追放対象者を特定する「選別された検知フィード」を作成する可能性があります。実際に、ICEはSNS上のコンテンツを24時間体制で監視し、対象者の家族や友人、同僚のデータまで調査する計画も報じられています。

この大規模な監視に対し、監視技術監督プロジェクト(STOP)や電子フロンティア財団(EFF)などの団体は強く反発しています。彼らは「AIによる自動監視は、政府が気に入らない意見を弾圧するために使われかねず、社会に深刻な萎縮効果をもたらす」と警鐘を鳴らしています。

ICEの監視手法はSNSに留まりません。すでに全米のナンバープレートスキャン網や、数億台の携帯電話の位置情報を追跡するツールにもアクセスしていると報じられています。政府による監視は拡大の一途をたどっており、その透明性が問われています。

強力なAI監視ツールが法執行機関の手に渡ることで、個人のプライバシーと言論の自由は新たな脅威にさらされています。納税者の資金で賄われるこの監視システムが、移民だけでなく政府に批判的な活動家を標的にする可能性も指摘されており、その運用には厳しい目が向けられるべきでしょう。

Anthropic CEO、批判に反論 AI安全と国益を両立

「恐怖煽動」批判に反論

AIの恐怖を煽っているとの批判に声明
規制を利用したスタートアップ阻害を否定
AIは人類の進歩のためとの基本理念

米国益への貢献を強調

国防総省との2億ドル契約など政府連携
中国企業へのAIサービス提供を自主制限
州法より統一的な連邦基準を支持

AI開発大手Anthropicのダリオ・アモデイCEOは21日、同社がAIの恐怖を煽りスタートアップを阻害しているとの批判に公式声明で反論しました。米国のAIリーダーシップへの貢献安全なAI開発を強調し、トランプ政権の政策とも方向性が一致していると主張。業界内の政策を巡る対立が浮き彫りになっています。

この声明は、トランプ政権のAI担当顧問らによる批判を受けたものです。彼らはAnthropicがAIの危険性を過度に主張し、自社に有利な規制導入を狙うことでスタートアップを害していると指摘。この「規制による市場独占」戦略への疑念が、今回の反論の引き金となりました。

アモデイ氏は政権との協力を具体例で強調。国防総省との2億ドル規模の契約や政府機関へのAIモデル「Claude」提供など、国家安全保障への貢献をアピール。トランプ大統領のAI行動計画を公に称賛したことにも触れ、連携姿勢を示しました。

AI規制については統一された連邦基準が望ましいとの立場を明確化。議会の対応が遅いため、大手AI企業のみを対象とするカリフォルニア州法案を支持したと説明し、「スタートアップを害する意図は全くない」と強く否定しています。

さらに米国のAIリーダーシップに対する真の脅威は「州の規制ではなく、中国への高性能チップ流出だ」と指摘。Anthropic中国企業へのAIサービス提供を自主的に制限していると述べ、短期的な収益よりも国益を優先する姿勢を打ち出しました。

アモデイ氏は、AIの影響管理は「政治ではなく政策の問題」だと述べました。今後も党派を超えて建設的に関与し、AIの利益を最大化し害を最小化するという目標は政権とも共有できると強調。技術の重要性を鑑み、誠実な姿勢を貫くと締めくくっています。

MIT、AIで食糧支援の栄養効果を最大化へ

食糧支援の新たな課題

世界で深刻化する飢餓と肥満
従来の画一的な補助金の限界
低所得者層の購買データ不足

MITの最適化アプローチ

POSデータで購買習慣を分析
アルゴリズムで潜在需要を予測
補助金設計を動的に最適化

政策応用への展望

データ駆動型の政策立案
大規模展開時のコスト課題

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が、デジタルプラットフォームと最適化アルゴリズムを用い、食糧補助金の栄養面での効果を最大化する新手法を開発しています。インドの小規模食料品店から得た購買データに基づき、個人の嗜好をモデル化。これまでの画一的な支援とは一線を画す、データ駆動型のアプローチで食糧安全保障という世界的課題に挑みます。

世界では6億7千万人以上が飢餓に苦しむ一方、肥満も深刻化しており、食糧支援のあり方が問われています。従来の補助金制度は、長期的な栄養改善への効果測定が難しく、特に低・中所得国ではデータ収集のインフラが未整備なため、低所得者層の真のニーズを把握しきれていないのが実情でした。

この課題に対し、研究チームはインドの小規模店舗にPOSスキャナーを導入して購買データを収集。その取引データを基に、個人の「隠れた好み」を解析する独自のアルゴリズムを開発しました。これにより、各個人の需要動向を予測し、提供する食料品の多様性や量、価格などを調整する最適化モデルを構築します。

この研究の最終目標は、最適化という新たな方法論を食糧支援政策に導入することです。これまで政策は、専門家の知見や政治的判断に大きく依存してきました。ここにデータに基づく厳密なエビデンスを加えることで、より効果的で効率的な政策立案が可能になると期待されています。

実用化には、大規模なデータ収集に伴うコストやインフラの壁といった課題も残ります。研究チームは、今回のパイロット研究で得られた知見を活かし、より費用対効果の高いデータ収集方法を模索する計画です。このアプローチが、食糧支援のあり方を根本から変革する一歩となるか、今後の展開が注目されます。

インテル、最先端18A技術でAI PC向け新CPU発表

次世代CPU「Panther Lake」

AI PC向けの新プラットフォーム
最先端プロセス18Aを初採用
2025年後半に出荷開始予定
アリゾナ州の新工場で生産

サーバー向けも刷新

サーバー用Xeon 6+もプレビュー
こちらも18Aプロセスを採用
2026年前半に投入見込み

新CEO下の重要戦略

経営再建を進める新体制の成果
半導体製造の米国回帰を象徴

半導体大手のインテルは10月9日、最先端の半導体プロセス「18A」を採用した新プロセッサ「Panther Lake」を発表しました。AI PC向けプラットフォームの次世代製品と位置付け、今年後半に出荷を開始します。これは3月に就任したリップブ・タンCEOが進める経営再建と、半導体製造の国内回帰戦略を象徴する重要な一手となります。

「Panther Lake」は、Intel Core Ultraプロセッサファミリーの次世代を担う製品です。インテルの技術ロードマップにおける大きな前進であり、生産は2025年に本格稼働したアリゾナ州チャンドラーの最新鋭工場「Fab 52」で行われます。同社は、これが米国内で製造される最も先進的なチップであると強調しており、技術的リーダーシップの回復を目指す姿勢を鮮明にしました。

インテルはPC向けだけでなく、データセンター市場に向けた製品も同時に発表しました。コードネーム「Clearwater Forest」として知られるサーバー向けプロセッサ「Xeon 6+」も、同じく18Aプロセスを採用します。こちらの市場投入は2026年前半を予定しており、クラウドコンピューティングやAIインフラ市場での競争力強化を図ります。

今回の発表は、3月に就任したリップブ・タン氏がCEOとして指揮を執ってから半年後の大きな動きです。タン氏は就任以来、中核事業への再集中と「技術主導の企業文化」の回復を公言してきました。この新製品群は、その新経営戦略が具体化した初の成果と言えるでしょう。

インテルの動きは、経済安全保障の観点からも注目されます。同社は半導体製造の国内回帰を強力に推進しており、米国政府との連携を強化。8月には政府がインテル株の10%を取得した経緯もあります。最先端プロセスの国内生産は、サプライチェーンの強靭化に貢献するものと期待されています。

AIが生む「生物学的ゼロデイ」、安全保障に新たな穴

AIがもたらす新たな脅威

AIが設計する有害タンパク質
既存の検知システムを回避
Microsoft主導の研究で発覚

現行システムの脆弱性

DNA配列注文時の自動スクリーニング
既知の脅威との配列類似性に依存
未知のAI設計毒素は検知不能の恐れ

Microsoft主導の研究チームは、AI設計のタンパク質が生物兵器の製造を防ぐDNAスクリーニングを回避しうる「生物学的ゼロデイ」脆弱性を発見したと発表しました。これまで認識されていなかったこの安全保障上の脅威は、AIがもたらす新たなバイオセキュリティリスクとして警鐘を鳴らしています。

現在、ウイルスや毒素の元となるDNA配列はオンラインで簡単に発注できます。このリスクに対応するため、政府と業界は協力し、DNA合成企業に注文内容のスクリーニングを義務付けています。これにより、既知の危険なDNA配列がテロリストなどの手に渡るのを防ぐ体制が構築されてきました。

しかし、現行のスクリーニングシステムには限界があります。このシステムは、既知の脅威リストにあるDNA配列との類似性に基づいて危険性を判断します。そのため、配列は異なっていても同様の有害機能を持つ、全く新しいタンパク質を設計された場合、検知網をすり抜けてしまう恐れがありました。

ここにAIが悪用される懸念が生じます。AIモデルは、自然界に存在しないながらも、特定の機能を持つタンパク質をゼロから設計する能力を持ちます。AIが設計した未知の毒性タンパク質は、既存のデータベースに存在しないため、現在のスクリーニングでは「安全」と誤判定される可能性が指摘されています。

研究チームは防御策も検討しており、AI時代の新たな脅威への対応を訴えています。AI技術の恩恵を最大化しつつリスクを管理するには、開発者、企業、政府が連携し、防御技術も常に進化させ続けることが不可欠です。AIを事業に活用するリーダーにとっても、無視できない課題と言えるでしょう。

OpenAIとデジタル庁が協業、公共サービスでAI活用へ

協業で目指す公共DX

OpenAIとデジタル庁の戦略的提携
公共サービスの安全性・有効性の向上
政府職員向けAIツール「Gennai」を提供
革新的な公共セクターでの利用を促進

国際協調と安全保障

広島AIプロセスへの貢献
安全・信頼できるAIの国際的枠組み推進
政府調達基準ISMAP認証の追求
社会への責任あるAI統合を目指す

AI開発大手のOpenAIは10月2日、日本のデジタル庁との戦略的協業を発表しました。この協業は、生成AIを安全かつ効果的に活用し、日本の公共サービスを強化することが目的です。OpenAIの技術を搭載した新AIツール「Gennai」を政府職員に提供し、行政の革新を目指します。

協業の核となるのは、政府職員向けに提供されるAIツール「Gennai」です。このツールはOpenAIの先進的なAI技術を基盤としており、職員の業務効率化を支援します。デジタル庁は「Gennai」の活用を通じて、これまでにない革新的な公共サービスのユースケースが生まれることを期待しています。

今回の提携は国内の行政サービスにとどまりません。OpenAIは、日本政府が主導しG7で合意された「広島AIプロセス」を監視する国際的なパイロット事業にも貢献しています。これは、安全で信頼できるAIの国際的なガバナンス形成に向けた動きであり、OpenAIの積極的な姿勢がうかがえます。

さらに、日本市場での信頼性を確保するため、OpenAIは政府情報システムのためのセキュリティ評価制度「ISMAP」の認証取得を積極的に目指す方針です。これにより、政府機関が安心して同社のAIサービスを導入できる環境整備が進むことになります。日本の規制への準拠は、ビジネス拡大の鍵となるでしょうか。

OpenAIは今後も、安全性、透明性、国際協力を最優先事項として掲げています。今回の協業を足がかりに、日本政府や地方自治体、教育機関、産業界とのパートナーシップを一層深化させる考えです。社会への責任あるAI統合に向け、同社の取り組みから目が離せません。

MIT、米国大学最強のAIスパコンを公開

圧倒的な計算能力

米国大学で最強のAIスパコン
ピーク性能は2 AIエクサフロップス
600基以上のNVIDIAGPU搭載

生成AI研究を加速

生成AIの開発・応用に特化
創薬や新素材設計への応用
気象データ補完や異常検知

幅広い分野への貢献

航空管制や国防分野での実績
ユーザーフレンドリーな設計
エネルギー効率の高い運用も追求

マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所は2025年10月2日、米国の大学で最も強力なAIスーパーコンピュータ「TX-GAIN」を公開したと発表しました。このシステムは、生成AIや物理シミュレーション、データ分析といった最先端分野の研究を加速させ、科学技術におけるブレークスルー創出を目的としています。研究者はこの圧倒的な計算能力を活用し、新たなイノベーションを追求します。

TX-GAINの性能は、ピーク時で2 AIエクサフロップス(毎秒200京回のAI向け演算)に達します。AI処理に特化した600基以上のNVIDIAGPUがこの計算能力を支え、米国の大学でトップ、北東部地域全体でも最強のAIシステムと評価されています。今夏オンライン化されて以来、研究者の注目を集めています。

TX-GAINの名称が示す通り、特に生成AIの開発と応用に力が注がれています。大規模言語モデルだけでなく、レーダー署名の評価、気象データの補完、ネットワークの異常検知、さらには新薬や新素材の設計といった多様な領域で活用が進みます。これまで不可能だった規模のシミュレーションやモデル訓練が可能になります。

リンカーン研究所スーパーコンピューティングセンター(LLSC)は、これまでも国の重要課題解決に貢献してきました。連邦航空局向けの航空機衝突回避システムや、国防総省向けの自律航法モデルの訓練など、社会の安全保障に直結する研究で数々の実績を上げています。TX-GAINはこれらの取り組みをさらに加速させる強力な基盤となります。

LLSCは、専門家でなくてもスパコンを利用できる「インタラクティブ性」を重視し、ラップトップPCのような手軽な操作性を実現。同時に、AIの膨大な電力消費という課題にも向き合い、エネルギー効率の高い運用と省電力化技術の研究にも取り組むなど、持続可能な研究環境の構築を目指しています。

AIが知財戦略を加速、セキュアなイノベーション実現へ

AIによる知財業務の革新

アイデア創出から保護までを一気通貫で支援
AIによる先行技術調査の高速化
定量的な新規性評価による意思決定の迅速化
IEEEの技術文献へのダイレクトアクセス

鉄壁のセキュリティと信頼性

プライベート環境情報漏洩を防止
ITAR準拠による高い安全性
オープンソースAIの脆弱性リスクを回避
説明可能で追跡可能なアウトプットの提供

知財インテリジェンス企業のIP.comが、AIを活用したプラットフォーム「Innovation Power Suite」で、企業の知財戦略とイノベーションを加速させています。グローバルな技術覇権競争が激化する現代において、アイデア創出から先行技術調査、発明保護までをセキュアな環境で一貫して支援し、その価値を高めています。

イノベーションが経済的強靭性に直結する今、知財は重要な戦略資産です。米国特許商標庁(USPTO)もAI活用を推進するなど、安全で信頼できるAIの導入は国家的な課題となっています。このような背景から、効率的で倫理的なAI支援型イノベーション基盤の必要性がかつてなく高まっています。

IP.comが提供する「Innovation Power (IP) Suite®」は、この課題に応えるソリューションです。AIを活用し、アイデア創出、定量的な新規性評価、先行技術分析、発明開示書作成まで、知財ライフサイクル全体を支援。これにより、研究開発チームや知財専門家は、より迅速かつ的確な意思決定を下せます。

最大の特長は、その鉄壁のセキュリティにあります。プラットフォームは完全に独立したプライベート環境で動作し、ITAR(国際武器取引規則)にも準拠。入力情報が外部のAIモデルと共有されることはなく、情報漏洩やIP盗難のリスクを根本から排除し、オープンソースAIとは一線を画す信頼性を誇ります。

さらに、エンジニアにとって価値ある機能がIEEEの学術コンテンツへの直接アクセスです。信頼性の高い査読済み論文や国際会議の議事録をプラットフォーム内で直接検索・分析可能。これにより、コンセプトの検証や重複研究の回避が効率化され、研究開発の質とスピードが飛躍的に向上します。

グローバル競争が激化し、経済安全保障の観点からも知財保護の重要性が増す中、信頼できるAIツールの選択は経営の根幹を左右します。IP.comは、20年以上の実績に裏打ちされた技術力で、企業が自信を持ってイノベーションを創出し、競争力を高めるための強力なパートナーとなるでしょう。

韓国、国策AIで世界に挑む 官民で打倒OpenAI

国策AIプロジェクト始動

政府が5300億ウォン投資
国内大手・新興5社を選抜
半年毎の評価で2社に絞込
海外技術への依存脱却が狙い

各社の独自戦略

LG: 高品質な産業データ活用
SKT: 通信インフラと連携
Naver: 自社サービスにAIを統合
Upstage: 専門分野特化で差別化

韓国政府が、米国OpenAIGoogleなどに対抗するため、自国製AI開発に本格的に乗り出しました。科学技術情報通信省は先月、国内企業5社に総額5300億ウォン(約580億円)を投じる国家AIプロジェクトを発表。外国技術への依存を減らし、データ主権と国家安全保障を確保するのが狙いです。官民一体で独自のAIエコシステム構築を目指します。

プロジェクトに選ばれたのは、LG AI Research、SK Telecom、Naver Cloud、NC AI、そしてスタートアップのUpstageの5社です。政府は半年ごとに各社の進捗を評価し、成果の低い企業を脱落させる一方、有望な企業への支援を継続します。最終的には2社に絞り込み、国家を代表するAI開発を牽引させるという厳しい競争原理を導入しました。

中でも注目されるのが、韓国最大のインターネット企業Naverです。同社は自社開発のLLM「HyperCLOVA X」を、検索、ショッピング、地図といった国民的サービスに統合しています。モデル開発からデータセンタークラウド、アプリまで一気通貫で手がける「AIフルスタック」を強みに、生活への浸透を図ります。

財閥系も独自の強みで対抗します。LG AI Researchは、製造業やバイオといったBtoB領域の高品質な専門データを活用し、汎用モデルとの差別化を狙います。通信最大手のSK Telecomは、膨大な顧客基盤と通信インフラを活かし、個人向けAIエージェント「A.」の普及を加速させています。

唯一のスタートアップとして選ばれたUpstageは、コスト効率と特定分野への特化で勝負します。同社の「Solar Pro 2」は、パラメータ数を抑えつつも韓国語性能でグローバルモデルを凌駕。金融や法律といった専門分野に特化したモデルを開発し、ビジネスでの実用性を追求しています。

韓国企業の共通点は、巨大資本を持つ米国勢との単純な規模の競争を避け、韓国語と文化への深い理解、そして質の高いデータを武器にしている点です。この官民一体の「選択と集中」戦略が、世界のAI覇権争いに一石を投じることができるか。その動向が注目されます。

技術の未来が集うDisrupt、割引チケット本日締切

豪華登壇陣と最先端技術

Sequoia, a16zなど著名VC登壇
250名超の業界リーダーが集結
AI・GTM戦略など200超セッション
100社以上の未来志向テック展示

人脈形成と事業成長の好機

1万人超のリーダーとの人脈構築
ユニコーン候補のピッチコンペ
創業者投資家向け限定パス
最大668ドル割引は本日締切

米TechCrunchは、10月27日から29日にサンフランシスコで開催する世界最大級のテックカンファレンス「Disrupt 2025」のチケット割引販売を、本日9月26日午後11時59分(太平洋時間)に終了します。最大668ドル割引となるこの最終機会は、AIや製品戦略に関する最先端の知見を得て、世界のトップリーダーや投資家との人脈を築きたいビジネスパーソンにとって見逃せないものです。

今年のDisruptには、Sequoia Capital、a16z、Netflix、Google Cloud、Hugging Faceなど、テクノロジー業界を牽引する250名以上のリーダーが登壇します。彼らの講演からは、製品開発、AI、セキュリティ、GTM戦略、組織拡大など、すぐに実践可能なフレームワークや将来の洞察を得ることができるでしょう。

カンファレンスでは、5つの業界別ステージで200以上のセッションが予定されています。AIが恋愛に与える影響、国家安全保障におけるAI防衛の未来、スタートアップ向けのGTM戦略、VCが2026年にどこに投資するのか、といった具体的で刺激的なテーマが目白押しです。理論だけでなく、実践的な学びが得られます。

Disruptの真価は、ネットワーキングにもあります。1万人以上が参加し、専用アプリによる2,000以上のマッチングが設定されます。「Startup Battlefield 200」では、未来のユニコーン候補企業が凌ぎを削る姿を目の当たりにでき、投資家にとっては次の投資先、創業者にとっては提携先を見つける絶好の機会となります。

これは、単なるカンファレンスではありません。業界を前進させるアイデアと人脈の震源地です。創業者向けにはVCとのマッチング、投資家向けには有望スタートアップへのアクセスを強化した特別パスも用意されています。割引価格での参加は本日が最終日です。この機会を活かし、事業成長の糧としてはいかがでしょうか。

ベトナム、NVIDIAと連携し「国家AI」戦略を加速

NVIDIAは9月23日、ベトナムのホーチミン市で「AI Day」を開催しました。イベントには800人以上が参加し、ベトナム政府は「国家AI(Sovereign AI)」を経済戦略の中心に据え、国を挙げて推進する姿勢を強調しました。NVIDIAはAIエコシステムの構築や地域に特化したデータ・モデルの重要性を指摘。ベトナムは2030年までに東南アジアのAI先進国トップ4入りを目指します。 「国家AI」を成功させる鍵は何でしょうか。NVIDIA幹部は5つの重要要素を挙げました。具体的には、①AIの必要性に対する国家的な認識、②開発者や企業から成るエコシステム、③AI人材の育成、④言語や文化に合わせたAIモデルとデータ、⑤国内で管理・運営される「AIファクトリー」です。これらが成功の基盤となります。 ベトナムは野心的な目標を掲げています。2030年までに東南アジアにおけるAI先進国トップ4に入り、3つの国家データセンターを建設する計画です。FPTソフトウェアのCEOは「技術における主権は、国家安全保障や国民のプライバシー保護にも繋がる」と述べ、国家AIの重要性を強調しました。 ベトナムのAIエコシステムは着実に成長しています。国内には100社以上のAI関連スタートアップが存在し、約10万人のAI人材が活躍しています。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOも、ベトナムの若者の数学や科学技術分野での優秀さを高く評価しており、将来の技術開発における強固な基盤になると期待を寄せています。 現地のパートナー企業も具体的な動きを見せています。IT大手FPTは、NVIDIAGPUを活用した国内AIファクトリーの構築を進めています。また、GreenNodeやZaloといった企業は、ベトナム特有の言語や文化に合わせた大規模言語モデル(LLM)の開発に取り組んでおり、国産AI技術の確立を目指しています。

TechCrunch Disrupt、AIの未来示す豪華布陣が登壇

米TechCrunchは、年次技術カンファレンス「Disrupt 2025」を10月27日から29日にサンフランシスコで開催します。世界中から1万人以上の創業者投資家が集結する本イベントでは、250人以上の専門家が登壇し、200を超えるセッションを通じてテクノロジーの未来を議論します。 今年の最大の目玉は、AIの未来を多角的に掘り下げる「AIステージ」です。Character.AI、Hugging Face、Runwayといった業界を牽引する企業のリーダーが一堂に会します。生成AIの最前線から自動運転、クリエイティブ分野、さらには国防技術への応用まで、AIがもたらす変革の全貌が明らかになるでしょう。 ベンチャーキャピタルはAIスタートアップに何を求めているのでしょうか。Cowboy Venturesの創業者らが登壇し、投資家の視点からAIの事業機会とリスクを語ります。また、Hugging Faceの共同創業者は、AI開発の基盤となるモデルやプラットフォームの未来について解説。Google CloudのCTOも登壇し、AIを大規模に展開する実践的な戦略を共有します。 AIの応用範囲は物理世界にも急速に広がっています。自動運転技術を開発するWayveやWaabiのCEOが、現実世界におけるAIの進歩と課題を議論。さらに、国防高等研究計画局(DARPA)の責任者やスタートアップCEOが、国家安全保障におけるAIの役割とビジネスチャンスについて語ります。 Diggの創業者で著名な投資家でもあるケビン・ローズ氏の登壇も決定しました。彼は自身の起業や、Uber、OpenAIへの初期投資の経験を基に、逆境を乗り越えて事業を成長させる秘訣や、有望なスタートアップを見極める方法について、実践的な知見を共有する予定です。経営者投資家にとって見逃せないセッションとなるでしょう。 本イベントは、世界的なピッチコンテスト「Startup Battlefield 200」の舞台でもあります。過去にDropboxやCloudflareを輩出したこのコンテストでは、次世代のユニコーン企業が生まれる瞬間を目撃できるかもしれません。トップレベルの専門家投資家と直接交流できるネットワーキングの機会も豊富に用意されています。

Anthropic、AI監視利用制限で米政権の不満招く

対立の核心

AnthropicClaude利用規約に基づく制限。
国内監視目的での利用を明確に禁止。
FBIやシークレットサービスが利用時に直面。

米政府当局の懸念

政策の政治的選択適用への疑念。
規約内のあいまいな用語が広範な解釈を許容。

機密情報対応の課題

Claudeトップシークレット案件で唯一承認される場合も。
連邦政府機関向けに名目的な1ドルでサービス提供。
OpenAIChatGPTで競合サービスを提供開始。

AI開発企業Anthropicが、モデル「Claude」の国内監視目的での利用を制限していることに対し、米政権内で不満が高まっています。FBIやシークレットサービスに協力する連邦政府の請負業者が、監視タスクにClaudeを利用しようとして、規約の壁に直面していることが明らかになりました。

この摩擦は、Anthropicが定める厳格な利用規定に端を発しています。同社は、機密文書分析といった用途で国家安全保障に貢献する一方、国内における法執行機関による監視活動へのAI適用を明確に禁止する方針を貫いています。

問題は、これらの制限が連邦政府と協働する民間の請負業者の作業を妨げている点です。関係者によると、AnthropicClaudeAmazon Web ServicesのGovCloud経由で、トップシークレットレベルの安全保障案件に承認されている唯一のAIシステムとなる場合があり、代替が困難です。

ホワイトハウス高官は、Anthropicが政策を政治的背景に基づき選択的に適用しているのではないかとの懸念を示しています。また、利用規約の用語が曖昧であり、広範囲な解釈を可能にしている点も、当局の不満を増幅させています。

Anthropicは、連邦政府機関に対して名目的な1ドルでサービスを提供するなど、政府部門との連携を深める戦略を取っています。一方で、国防総省との取引においても兵器開発への利用は禁止するなど、利用範囲の線引きを厳格化する姿勢を崩していません。

米巨大テック、英国AIインフラに巨額投資合戦

投資競争の主役たち

MSは300億ドル(4.5兆円)を4年間で投資
Google68億ドル(1兆円)を今後2年間で
NVIDIAは最大150億ドル規模のR&D;投資
MSが23,000基超GPU英国最大スパコン構築

英国の「主権AI」戦略

OpenAI/NVIDIA/NscaleによるStargate UK
専門用途向けに国内処理能力を確保
公共サービスや国家安全保障での利用を想定
ノースイーストにAI成長ゾーンを指定

米国巨大テック企業群が、英国のAIインフラ構築に向け、同時期に巨額の投資計画を発表しました。特にマイクロソフトは300億ドル(約4.5兆円)という過去最大規模の投資を公表し、AI競争の主導権を握る構えです。これは英国のAI競争力強化、経済成長を目的としており、グーグルやOpenAI/NVIDIAもこれに追随する形で大規模なデータセンタースーパーコンピューター構築を進めます。

マイクロソフトは2025年から2028年にかけ、総額300億ドルを投じます。このうち約半分を投じて、パートナー企業Nscaleと共同で23,000基超のGPUを搭載した英国最大のスーパーコンピューターを建設する計画です。同日にグーグル(アルファベット)も2年間で68億ドル(約1兆円)の投資と新データセンター開設を発表しましたが、マイクロソフトはこれを大きく上回る規模を強調しています。

一方、OpenAINVIDIA、Nscaleと提携し、「Stargate UK」と呼ばれるAIインフラパートナーシップを発表しました。これは英国の「主権コンピューティング能力」の強化を目的としています。OpenAIの最先端AIモデルを、公共サービスや金融、国家安全保障といった機密性の高い専門的なユースケースに利用するため、国内のローカルなコンピューティング能力で実行可能にします。

これらの投資は、ドナルド・トランプ大統領の訪英に合わせて発表され、米英両国間の強力な技術提携を象徴しています。英国政府は、AI分野で世界的なリーダーシップを確立することを目指しており、今回の巨額投資英国経済への強力な信任投票」と評価しています。計画には、北東部地域にAI成長ゾーンを指定する施策も含まれています。

AIインフラ構築に加え、各社は英国の労働力強化にも貢献します。OpenAIは、AI教育プログラムである「OpenAI Academy」を導入し、2030年までに750万人の労働者のスキルアップを目指す政府の目標を支援します。また、これらの投資は、データセンター関連事業を中心に、数千人規模の新規雇用創出につながる見込みです。

しかし、データセンターの乱立に対する懸念も高まっています。大規模なハイパースケールデータセンター膨大な電力と水を消費するため、環境団体や市民団体は、気候目標達成の妨げや電力価格の高騰につながると強く批判しています。英国政府に対し、電力・水利用に関する戦略の見直しを求める声が上がっています。

Salesforce、国家安全保障特化のAI部門「Missionforce」設立

AI導入に特化

新ビジネスユニット「Missionforce」発足
国家安全保障分野に重点を置く
政府・軍隊のワークフローをAIで近代化
運用をよりスマートかつ迅速に

注力する三領域

人事、ロジスティクス、意思決定へのAI統合
CEOはGovernment CloudのKendall Collins氏

テック企業の動向

OpenAIAnthropicGoogleも政府向けサービスを強化
$1/年など破格でAI提供する動きが顕著

CRM(顧客関係管理)の巨大企業であるセールスフォースは、国家安全保障に特化した新事業部門「Missionforce」の設立を発表しました。これは、AI、クラウド、プラットフォーム技術を国防分野のワークフローに統合し、政府機関や軍の業務効率を劇的に向上させることを目的としています。

新部門は、特に米国防総省や連邦政府機関を対象に、AIを活用した近代化を推進します。Missionforceを率いるのは、Government CloudのCEOを務めるケンドール・コリンズ氏であり、「奉仕する人々を支援する上で、今ほど重要な時はない」と、この分野へのコミットメントを強調しています。

Missionforceが注力する核心領域は三つです。具体的には、人員管理(Personnel)、ロジスティクス(Logistics)、および意思決定(Decision-making)へのAI導入を通じて、戦闘員や支援組織がよりスマートかつ迅速に、効率的に活動できるよう支援します。

セールスフォースはこれまでも米陸軍、海軍、空軍を含む連邦政府機関と長年にわたり契約を結んできました。今回の新部門設立は、既存の強固な政府向け事業基盤を活かし、AIブームの中で新たな収益源を確保するための戦略的な一歩と見られます。

国家安全保障向けAI市場は競争が激化しています。OpenAIAnthropicGoogleといった主要テック企業も、政府機関専用のAIサービスを相次いで展開中です。特にOpenAIは、政府機関向けにエンタープライズ版ChatGPTを年間わずか1ドルで提供するなど、シェア獲得に向けた動きが顕著です。