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マサチューセッツ工科大学(MIT)のエネルギーイニシアティブ(MITEI)が9月、AIの急拡大で急増するデータセンターの電力需要に対応するため、産学連携の「データセンター・パワー・フォーラム」を設立しました。このフォーラムは、研究者と産業界の専門家を集め、持続可能なデータ駆動型の未来に向けた革新的な電力ソリューションを探求することを目的としています。
AIの利用拡大は、電力インフラに前例のない負荷をかけています。調査機関によれば、世界のデータセンターの電力需要は2030年までに倍以上に増加する見通しです。米国だけでも、全電力消費に占めるデータセンターの割合は2023年の4%から、2030年には9%に達すると予測されており、エネルギー業界にとって喫緊の課題となっています。
この課題に対し、MITEIが設立したフォーラムは、AIの持続可能な成長と電力インフラの強化という二つの目標を追求します。MITEIのディレクターは「AIと送電網のバリューチェーン全体から利害関係者を集め、非商業的かつ協力的な環境で解決策を議論する場を提供する」と述べ、産学連携の重要性を強調しています。
フォーラムの研究対象は多岐にわたります。具体的には、低炭素・ゼロカーボンのエネルギー供給、送電網の負荷運用と管理、電力市場の設計や規制政策などが含まれます。さらに、省電力プロセッサや効率的なアルゴリズム、データセンターの冷却技術といった、エネルギー効率を高めるための技術開発も重要なテーマです。
MITEIはこれまでも、AIを活用した配電の最適化やデータセンターの立地に関する経済性分析など、関連プロジェクトを多数支援してきました。新設されたフォーラムは、これらの既存研究の知見を統合し、より包括的で実用的な解決策を生み出すためのハブとしての役割を担うことが期待されています。
AI技術の発展は、ビジネスの生産性や競争力を飛躍的に高める可能性を秘めています。しかし、その裏側にあるエネルギー問題から目を背けることはできません。今回のMITの取り組みは、技術革新と持続可能性の両立を目指す上で、重要な一歩となるでしょう。