Microsoftが4800人削減、AI理由の解雇が業界に拡大

最新の削減

Microsoft4800人削減
全社員の2.1%が対象
2026年累計12万人

共通の構図

増収と人員削減の同時進行
AIを成長と削減の両理由に
5月は数年ぶりの高水準

各社の動き

Oracleは1年で2.1万人減
Cloudflareは全社の2割削減

Microsoftは2026年7月6日、全従業員の2.1%にあたる約4800人を削減すると発表しました。同社は削減した職務が「AIに置き換えられるわけではない」としつつ、「AIが仕事の進め方を変えている」と認めています。相次ぐAI関連の人員削減が、テック業界全体に広がっている状況を示す動きです。

業界では記録的な増収と大規模な人員削減が同時に進む構図が目立ちます。企業はAIを成長のエンジンと位置づける一方で、解雇の理由にも挙げています。再就職支援会社Challenger, Gray & Christmasによると、5月のテック業界の解雇は数年ぶりの高水準に達し、最も多く挙げられた理由がAIでした。追跡サイトLayoffs.fyiの集計では、2026年のテック職の削減は累計で約12万人に上ります。

個別企業でも削減が続いています。Oracleは過去12か月で従業員を13%にあたる2万1000人減らし、規制当局への年次報告でAI技術の導入が人員削減につながったと説明しました。GitLabは全社の14%にあたる約350人を削減し、AIインフラ投資の原資に充てています。Metaは約8000人を解雇する一方、約7000人をAI関連の新職務へ配置転換しました。

AIによる効率化を明言する経営者も増えています。Cloudflareは全社の20%にあたる1100人を削減し、CEOのMatthew Prince氏は削減対象の大半が中間管理や財務などの「測定業務」だったと述べました。Coinbaseは14%を削減し、エンジニアがAIで数週間分の作業を数日でこなせるようになったと説明しています。PayPalは今後2〜3年で20%超の削減を計画し、開発以外にも顧客対応やリスク管理へAIを広げる方針です。

一方で、こうした説明には疑問の声も出ています。削減対象の多くはコロナ禍の採用拡大で膨らんだ部門であり、AIを理由とする妥当性を問う指摘があります。増収下での大量解雇が続くなか、企業がAIを理由に挙げる姿勢そのものを見直す必要があるとの見方も広がっています。

Alberta州政府、Claudeで4.6億行を20時間検査

大規模検査

4.6億行を20時間で走査
約50体のエージェント並列実行
従来手法なら約6.5年相当

修正と刷新

脆弱性の自動修正とテスト生成
25年物Javaを4〜5日で再構築
185本を16本へ統合計画

継続体制

赤・青チームエージェントで常時審査
市民1万人超をAI教育

カナダのAlberta州政府は2026年7月6日、AnthropicClaude Codeを使い、州全27省庁のシステムに潜むセキュリティ脆弱性を発見・修正したと明らかにしました。技術革新省の内部チームが4億6600万行のコードを20時間で走査し、従来手法なら約6.5年かかる作業を短時間で完了しました。老朽化した政府システムを大規模に守る先行事例として注目されます。

同省は27省庁のシステムを維持し、約1280のアプリケーションと3400のコードリポジトリを抱えます。その大半は体系的な security 審査を受けておらず、蓄積した技術的負債は数十億ドル規模に達していました。税記録や社会福祉の case file など機微情報を扱うため、2025年に専門チームを設けてClaudeとの協業を始めました。

検査では約50体エージェントOpusSonnetを使い、自律的かつ並列に稼働しました。まずルールエンジンで既知のパターンを検知し、次に各指摘の該当ファイルと行番号を明示して開発者が検証できる二段構えを採りました。従来の自動検査ツールが見逃していた問題も特定したといいます。

発見した脆弱性の多くはClaude Codeが修正案の生成・テスト・ビルドまで担いました。テストが未整備な場合はテストから作成し、古すぎるコードは現代的な言語で作り直しました。25年前に手書きされ当初5カ月を要したJava製の補助金ポータルは、4〜5日で再構築されました。全ての修正は同省の技術者が確認・承認しています。

同州はさらに、外部から攻撃を模擬する赤チームと防御を評価する青チームのエージェントを開発し、開発工程を通じて常時審査を行います。各アプリは約95項目セキュリティ制御で点検され、これらはClaude Agent SDK上に構築されています。今後は185本の老朽アプリを16本へ統合する計画も進めます。

取り組みは自組織にとどまりません。Alberta AI Academyを通じ、数千人の職員と1万人超の市民がAI活用を学びました。同州は技術白書を公開し、7月にはEdmontonで industry day を開催、秋には州政府全体へ手法を展開する予定です。多くの州や国が抱える共通課題への設計図になると期待されます。

Expedia、AIエージェント量産へ運用原則を策定

策定の背景

数十年のML運用知見を体系化
一度動くだけのAIとの決別
自律エージェントで責任要件が拡大

三本柱の原則

成果はビジネス指標で測定
共有基盤で組織横断展開
リスク比例の統治と明確な所有権

実装の仕組み

「アジャイル解放」型関門を導入
開発工程への段階的自動化

旅行予約大手のExpediaは、AIおよび機械学習システムを安全かつ大規模に運用するための社内原則を策定しました。同社の最高AI・データ責任者Xavi Amatriain氏が2026年7月6日に公開したもので、パーソナライズや不正防止から生成AI・エージェントAIまで数十年にわたる実運用の知見を体系化しています。狙いは、一度動くだけのAIではなく持続的に価値を生むシステムの構築です。

同氏は、規律なき開発速度は資産ではなく負債だと指摘します。AIが会話し推論し、旅行者に代わって自律的に意思決定を行う時代には、信頼性や説明責任への期待が根本的に変わるためです。原則は「成果」「設計」「信頼」の三本柱で構成され、測定・設計・統治・運用の各段階を規定します。

「成果」では、技術指標の改善ではなくビジネス成果への貢献を第一の基準とします。開発・運用コストに見合う投資対効果を求め、強力なベースラインに対して複雑さを正当化できる場合のみ高度な手法を採用します。全モデルはオフラインとオンラインの両評価を通過しなければ本番展開できません。

「設計」では、個別チームを超えて価値が波及する仕組みを重視します。共有基盤の上に構築し、データを第一級のプロダクトとして扱い、再現性と追跡可能性を既定とします。手動ルールは最小化し、定期的に見直す方針です。

「信頼」では、各モデルにビジネス・プロダクト・AI・運用の明確な所有者を割り当てます。統治はリスクに比例させ、価格や在庫に影響する高リスク領域では人間による確認を最初から組み込みます。段階的な展開とロールバック、サーキットブレーカーを launch 前に準備し、稼働後も継続監視します。

同社はこれらを実務に落とすため、エージェント機能の公開前チェック群「Agentic Release」関門を導入し、一部を開発工程に自動組み込みし始めています。Amatriain氏は7月14日のVB Transformで、高リスクな取引システム向け自律エージェントの設計を詳しく語る予定です。

Anthropicの秘密追跡発覚、AlibabaがClaude Code禁止

発覚した監視

中国利用者への秘密追跡発覚
反監視の企業姿勢と矛盾
中国AI研究所の利用者特定が狙い

Alibabaの対応

従業員のClaude Code利用を禁止
リスクソフトに指定
違反時の法務・コンプライアンス懸念

信頼の揺らぎ

中国製オープンモデルの台頭
利用者信頼の喪失リスク

AnthropicがChatツールClaude中国の利用者を密かに監視する追跡機能を組み込んでいたことが2026年7月6日までに発覚し、波紋が広がっています。反監視を掲げてきた同社の姿勢と矛盾するとして批判が集まり、中国のAlibabaは先週金曜、従業員によるClaude Codeの業務利用を全面的に禁止しました。米中のAI覇権争いを背景に、企業の信頼性が問われる事態となっています。

Alibabaは社内メモで、Claude Codeバックドアのリスクが新たに発見されたとし、総合評価の結果、セキュリティ上の脆弱性を持つ高リスクソフトの一覧に加えたと説明しました。South China Morning Postが報じたもので、同社はAnthropicのモデルから距離を置く動きを強めています。

Anthropicの追跡は、中国の主要なAI研究所とつながる利用者を検知する狙いがあるとされます。個人利用者は安価な回避技術で位置情報のブロックを容易にすり抜けられる一方、Alibaba のような企業はAnthropicの利用規約違反が発覚すれば法務・コンプライアンス上の重い責任を負いかねないと、関係者はReutersに語りました。

背景には、米中のAIモデルを巡る競争があります。一部の中国オープンソースモデルは無料の米国製を上回る人気を集め、Fortune 500企業の経営者はより安価なAIを求めています。米国中国による自国モデルの蒸留を遮断するのは技術的に難しく、割安な中国製の利用を妨げれば国内でも不評を買う恐れがあります。

こうした状況で、利用者の忠誠心はコストと性能を天秤にかけた損得勘定に左右されます。今回の追跡は「恐ろしい一線」を越えたとの見方もあり、最前線のモデルで中国に先行しようと競うAnthropicにとって、利用者の信頼喪失は事業の重大な痛手となりかねません。

TencentがHy3をApacheで公開、規制地域も解禁

モデル概要

295BのMoEモデル
アクティブ21Bパラメータ
Apache 2.0で公開

性能と用途

コーディングはGLM-5.2優位
幻覚率5.4%に半減

導入コスト

メモリ300GB未満
輸出規制対応GPUで稼働

Tencentは7月6日、Hunyuanチームが開発した大規模言語モデルHy3の正式版を公開しました。総パラメータ2950億、アクティブ210億のMoE構成で、4月のプレビュー時とは一転して制約の緩いApache 2.0ライセンスを採用しました。これによりEU・英国韓国を除外していた従来の中国製モデルの障壁が消え、これらの地域に配信する企業も採用可能になります。

Tencentが打ち出した目玉は、リーダーボードではなくブラインド人間評価です。270人の専門家による312件の比較で、Hy3は4点満点中2.67を記録し、GLM-5.1の2.51を上回りました。ただし6月に登場した新版GLM-5.2はSWE-bench Verifiedで84.2対78.0など、エージェントコーディング全般でHy3を上回っており、コーディング首位の座は維持しています。

Hy3の真価は検索とツール活用エージェント用途にあります。BrowseCompで84.2、DeepSearchQAで91.0を記録し、Claude Opus 4.8やGPT-5.5に匹敵する水準です。ツール連携やロングコンテキスト検索でもオープンモデル最上位を占め、リポジトリ規模のコーディングをGLM-5.2に譲る一方、検索・ツール中心の用途では最有力の選択肢と位置づけられます。

企業向けにTencentが強調したのは信頼性の指標です。実運用シナリオの内部評価で、幻覚率はプレビュー版の12.5%から5.4%へ、常識エラー率は25.4%から12.7%へ低下しました。マルチターンの問題発生率も17.4%から7.9%へ改善し、根拠がある時のみ回答しデータを捏造しないという明示的な振る舞いの徹底が寄与したとしています。

導入コスト面でもHy3は差別化します。約744BのGLM-5.2がFP8で8基のH200ノードを要するのに対し、Hy3のFP8フットプリントは300GB未満で済みます。推奨構成は米国の輸出規制に準拠したNvidia H20-3eを想定しており、規制下の中国企業でも8基で全精度稼働が可能です。この設計は西側のH100・H200・B200でも快適に動く副次効果を生み、ライセンス障壁の消滅と合わせて採用のハードルを大きく下げます。なおTencentは、OpenRouterで2週間無料提供するとしています。

Vercel、モデルとエージェント分離を主張

二つのキラーアプリ

Eveで自然言語の指示・スキル定義
Sandboxでデータ持ち出しを制御

マルチラボ戦略

主要ラボを差し替え可能な部品化
Geminiや新興オープンモデル台頭

クラウド基盤大手Vercelのギレルモ・ラウチCEOは、開発者会議ShipNYC後のTechCrunchのインタビューで、AIのモデルとエージェントを分離すべきだと主張しました。単一のラボにすべてを預けるのではなく、モデルやサンドボックス、ゲートウェイなど各要素を差し替え可能な部品として組み合わせる発想です。同社は1日600万件のデプロイを扱い、その半分をコーディングエージェントが引き起こしています。

ラウチ氏は昨年を「プロトタイピングの年」と位置づけ、社内で数百のエージェントを運用する中で本番運用の課題が見えたと語ります。行き着いた結論が、エージェントの二大キラーアプリはコーディング支援と社内業務の自動化だという点です。後者では、データへの安全なアクセスや操作の監査証跡の確保が最大の壁になると指摘しました。

課題への対応として、同社は自然言語でエージェントの指示やスキルを記述する枠組み「Eve」と、エージェントを隔離する「Vercel Sandbox」を用意しました。サンドボックスの最大の利点はデータ制御で、開発ツールの設定を誤るとコードベース全体が学習用に外部へ流出する危険を防げます。ラウチ氏はエアバス幹部との会話を引き、航空機向けC++資産の流出リスクを例に挙げました。

AIラボとの関係も変化しています。かつては一社を選んで全面採用する企業が多かったものの、いまはモデルやハーネス、データ基盤を組み合わせる方式が主流になりつつあります。本番の価格性能を重視する結果、話題性は低くてもGeminiが伸びDeepSeekやGLM-5.2といったオープンモデルの採用も広がっているといいます。

一方でラウチ氏は、ラボとの競合が避けられない現実も認めます。OpenAIがWebサイトを直接公開できるツールを出すなど、プラットフォーム側が機能を広げるほど既存インフラと衝突するためです。それでも同氏は、自社を「この世代のAWSと位置づけ、開放的なプロトコルを軸に戦う姿勢を強調しました。

英FCA、金融AIに「軍拡競争」と警告

規制当局の警告

FCA幹部の軍拡競争発言
監督権限の拡大要求
AI規制の見直し提言

消費者リスク

成人の5分の1が活用に前向き
規制外で補償なし
超個別化による操作の懸念

報告書の提言

3〜6カ月での実態調査
不透明な価格設定リスク

英国の金融行為監督機構(FCA)幹部シェルドン・ミルズ氏は、金融サービスでのAI利用に対応するため規制当局は「軍拡競争」の状態にあると英紙に警告しました。数百万人がChatGPTClaudeGeminiなどの大規模言語モデルを個人の資産判断に使い始めており、監督にはより大きな権限が必要だと訴えました。

ミルズ氏はFCAの委託で金融分野のAI影響に関する報告書を執筆し、月曜に公表されます。同氏は、技術がもたらす「変化の速さ、ペース、規模」に追いつくには当局自身がAIを取り入れ、リスクの監視・検知・対処に役立てる必要があると述べました。報告書は、こうしたLLMの利用を規制対象とすべきか当局が検証するよう促しています。

報告書はAI拡大の便益とリスクを両面から指摘します。「超個別化は商品と顧客ニーズの適合を高める一方、偏見や不透明な価格設定、個別化された操作を招きうる」と概要は記しています。ミルズ氏は、規制対象企業には比較的厳しいルールがある一方、同等のサービスが規制の枠外に置かれている点を問題視しました。

委託調査では、英国の成人の5分の1が、貯蓄や借り入れなどの金融判断をAIに委ねることに前向きだと分かりました。これらのモデルは規制の対象外で、問題が起きても補償を受ける手段がないのが実情です。報告書は、規制の枠外で金融サービスを提供する企業のリスクや消費者被害を、今後3〜6カ月以内に調査するようFCAに勧告しています。

エヌビディア、国家AI戦略の5要素を提示

主権AIの潮流

各国が国産インフラで自国モデル構築
現地データで言語・文化を反映
「AIファクトリー」が経済の基盤に

戦略の5要素

AIの必要性と人材育成
国産モデル・データの整備
地域エコシステムと計算基盤

各国の実例

仏財務省で文書検索2分に短縮
印サーバムが22公用語対応

エヌビディアは7月6日、各国がAIを戦略的優先課題に活用する動向を解説したブログを公開しました。生成AIやエージェント型AIの台頭を受け、各国が国産インフラと現地データで独自の基盤モデルを構築する主権AIの潮流を強調しています。同社は国家AI戦略に不可欠な5つの要素を提示し、7月7〜10日にジュネーブで開くAI for Goodサミットに合わせて発表しました。

同社は、データが入り知能が出力される次世代データセンターを「AIファクトリー」と定義しました。創業者兼CEOのジェンスン・フアン氏は「AIファクトリーは世界の近代経済の基盤になる」と述べています。各国は国有通信事業者や電力会社と連携してAIクラウドを運用したり、地域のクラウド事業者を支援したりと、多様な方式で国内の計算能力を整備しています。

国家AI戦略の5要素として、経済成長や安全保障に直結するAIの必要性、STEM教育などによる人材育成、現地データで訓練された基盤モデル投資家開発者による地域エコシステム、そして自国が所有・運用するAIファクトリーを挙げました。モデルの現地化により、方言や文化的背景を踏まえた出力が可能になるとしています。

実例も紹介されました。フランス経済・財務省ではAIエージェントが数百万件の文書を処理し、文書検索2日から2分に短縮、1万人の従業員で200万ユーロを節約しました。インドのサーバムは国内インフラ上で22の公用語に対応する多言語モデルを提供し、ブラジルのウィデラブスは司法サービスの近代化を進めています。

エヌビディアは2019年から「AI Nations」構想を通じ、各国のAIエコシステムと人材育成を支援してきました。同社は、国産インフラと現地の人材を社会的価値に変える取り組みが世界各地で広がっていると位置づけ、信頼できるAIの重要性を訴えています。

Google、検索の投稿媒体を初期設定でAI学習に利用

設定変更の中身

画像音声AI学習に転用
検索・地図・翻訳など横断
6月のメール通知で自動的にオプトイン
Lensの写真も保存対象

オプトアウト手順

「メディア保存」を個別解除
保存期間は3〜36カ月で設定
Web・App設定とは別枠に分離

Googleが6月、検索サービスのプライバシー設定を更新し、利用者がアップロードした画像・ファイル・音声動画を初期設定でAIモデルの学習に使えるようにしていたことが分かりました。米メディアTechCrunchが7月6日に報じました。設定は顧客向けメールで通知されたのみで、多くの利用者は気付かないまま同意した状態になっています。

新設された「検索サービス履歴」と「パーソナライズされたおすすめ」は、活動データの使い道と保存期間を制御する体裁を取りつつ、実際にはAI学習への利用を広げるものです。対象はGoogle検索本体にとどまらず、マップ、ショッピング、フライト、ホテル、翻訳、ニュースなど複数サービスに及びます。Lensで撮影した写真やSearch Liveの音声入力、翻訳の発話練習の録音も保存されうると説明されています。

同社はメールで、保存したメディアが「AIモデルや安全対策を含むGoogleサービスの開発・改善に使われる」と明言しました。ヘルプ文書でも、履歴を生成AIの学習などに用い、人間のレビュアーも関与すると記しています。一部の保存は製品動作のための一時的なものですが、同社の記述ではAI学習を目的とした保持も含まれます。

この動きは、ウェブから収集したデータだけに頼らず、利用者が自ら作成・投稿したデータを取り込む業界全体の流れを映しています。TechCrunchはMetaも同様に利用者の画像やAIグラスの記録で学習していると指摘しました。

利用者は「検索サービス履歴」と「検索サービスのパーソナライズ」の設定ページで変更できます。前者では「メディアを保存」の項目を履歴とは別個に解除でき、保存データを3カ月・18カ月・36カ月で自動削除するよう設定することも可能です。

注意点として、従来の「ウェブとアプリのアクティビティ」設定は今回、Web・App用と新しい検索データ用の二つに分割されました。新設の検索データ設定は初期状態でオンのため、従来設定だけを変えても検索サービスの利用は対象から外れず、別途の解除操作が必要です。

小型AIが途上国医療を支える基盤技術に

端末で完結する小型AI

スマホ単体で偽造薬を判定
数十億パラメータで軽量動作
消費電力はわずか3ワット

世界銀行が後押し

最貧国のChatGPT利用0.7%
助成金と政策で普及支援
巨大モデルは高コストで持続困難

普及を促す技術動向

Gemma 4とQwen 3.5が牽引
生成AI対応スマホが過半

電力も通信も乏しい地域で、スマートフォン単体で動く小型AI医療や農業を支える基盤技術として注目を集めています。米誌IEEE Spectrumは7月6日、アフリカで偽造薬を判別する携帯型端末を開発した起業家アデバヨ・アロンゲ氏らの取り組みを紹介し、世界銀行も助成金や政策で普及を後押ししていると報じました。巨大な生成AIが届かない世界の多数派に、実用的なサービスを届ける現実解として位置づけられています。

きっかけは2019年、アロンゲ氏が南アフリカで偽造薬検出システムを実演した際の失敗でした。データセンターが1万4千キロ離れた米国にあり、1回の判定に5分以上かかったのです。同氏はエンジニアに指示し、わずか2時間でAIをスマホ上で単独動作する軽量版に縮小しました。これが、ブロードバンドも安定電力もない場所で薬の真贋を数秒で判定する新型端末を生みました。

小型AIは、数十億以下のパラメータで動く言語モデルを指し、スマホやRaspberry Piで数ワット電力で動きます。大型モデルから不要な部分を削る「プルーニング」や、大型モデルを模倣させる「蒸留」、精度を落とす量子化などで作られます。インドではドローンがカシューナッツの病害を機上で判別し、ブラジルではArduinoで心電図を計測するなど、特定課題に特化した実装が各地で広がっています。

世界銀行は小型AIを「有望な潮流」と評価し、助成金やメンター制度、途上国向けの政策整備で普及を支援しています。総裁のアジェイ・バンガ氏は今年1月のダボス会議で、生成AIには膨大な計算資源と電力、人材が必要で、先進国以外ではインド中国を除きその条件が整わないと指摘しました。最貧国でChatGPTを使ったことのある利用者はわずか0.7%で、先進国の4分の1と大きく開いています。

普及を支えるのは技術の進展です。神経処理ユニットを備えたスマホが増え、2025年には全出荷の3分の1超が生成AIを動作でき、2026年末には45%、2027年末には過半に達する見込みです。オープンウェイトGoogle DeepMindGemma 4」やアリババ「Qwen 3.5」は再学習が容易で、特定業界向けの調整に適します。一方でアロンゲ氏は、小型AIも定期的な更新や安定電力を必要とし、インフラや人材育成への長期投資がなければ持続しないと釘を刺しています。

HuggingFace、カーネル基盤を刷新しエージェント開発に対応

新リポジトリと配布

Hub上にkernel専用リポジトリ新設
対応アクセラレータやOSを明示
モデルとの利用動向を可視化

強化された安全性

信頼できる公開者のみ既定で読み込み
Sigstore cosignでコード署名
外部読み込みは明示的な許可制

対応範囲と自動化

Torch Stable ABIとTVM FFIに対応
エージェント開発の土台を整備

Hugging Faceは7月6日、カスタムGPUカーネルの配布・利用を標準化する「Kernels」プロジェクトの大型アップデートを公開しました。Hub上にkernel専用のリポジトリ種別を新設し、信頼できる公開者による署名やエージェント主導の開発支援を導入しました。カーネルの発見性と安全性を同時に高める狙いです。

新設したkernelリポジトリでは、各カーネルが対応するアクセラレータ、OS、バックエンドのバージョンを一覧で確認できます。これによりユーザーは自分の環境で動くかを事前に把握でき、カーネル・モデル・応用アプリ間の利用動向も見えるようになりました。ecosystem全体の透明性を底上げする更新です。

セキュリティ面では、カーネルがPythonプロセスと同じ権限でネイティブコードを実行する危険性を踏まえ、信頼できる公開者のカーネルのみを既定で読み込む方式に変更しました。それ以外は`trust_remote_code`の明示指定が必要です。さらにSigstoreのcosignを使った一時鍵によるコード署名を追加し、認証情報が漏れても悪用されにくくしています。

対応フレームワークも拡大しました。Torch Stable ABIへの対応で、指定したTorchバージョン以降を約2年にわたり同一カーネルでカバーできます。加えてApache TVM FFIをTorch以外で初めてサポートし、PyTorchやJax、CuPyをまたいで動くカーネルの開発が可能になりました。

自動化への布石も明確です。`kernels`と`kernel-builder`のCLIを役割ごとに分離し、エージェントが足場作りからビルド、ベンチマーク、最適化までを反復できるagentic開発ワークフローを整えました。HF Jobsとの連携で複数ハードウェア上の性能検証も容易になり、生成したカーネルの高速化を客観的に確認できます。

Reddit、LLMでLLM製スパムを検出し防御

対策の成果

1日2300万件のスパム表示を遮断
新規スパム投稿を毎日約2万5千件検出
四半期でスパム接触20%削減

仕組みと課題

LLMで巧妙な協調的偽装を捕捉
AI製コンテンツの高速検出
有効性には人手の併用が不可欠

Redditは7月6日、大規模言語モデル(LLM)を活用したスパム対策ツールを導入したと発表しました。皮肉にも、拡散するスパムの多くはLLMで生成されており、同社は「毒をもって毒を制す」形でAI時代の投稿汚染に対抗します。1日あたり2300万件のスパム表示を遮断し、新たなスパム投稿・コメントを毎日約2万5千件検出しているとしています。

従来もSNS各社は自動スパム対策を構築してきましたが、Redditは更新版ツールがより高い割合でスパムを捕捉すると説明します。同社は「古いシステムが見逃していた、極めて巧妙で協調的な偽装行動や人工的な話題づくりのパターンをLLMで捉える」と述べ、1〜3月のユーザーのスパム接触を直前3カ月比で20%削減したと主張しています。

この動きは業界全体の潮流とも重なります。YouTubeMetaInstagramは表示を条件にAI生成コンテンツの投稿を認め、TikTokは表示量をユーザーが調整できる機能まで用意しています。AI生成物を高速に判別できれば、ヘイトスピーチなど違反コンテンツの早期発見にもつながる可能性があります。

ただし専門家は、AIによる自動モデレーションだけでは不十分だと繰り返し指摘しています。最も効果的な結果を得るには、人間による審査との併用が欠かせません。経営者やプラットフォーム運営者にとって、AIと人手を組み合わせた運用設計が信頼性確保の鍵となります。

Photoroom、画像生成PRXのデータ戦略を公開

データ設計の要点

公開・内部データの混成
VLMによる全画像再キャプション
事前学習は網羅性重視の軽い選別

実装の工夫

構築はLance、学習配信はMDS
テキスト潜在の逐次計算採用
JPEG品質92でPNGと同等
スキップリストで削除せず除外

画像編集サービスのPhotoroomは2026年7月6日、7B規模の画像生成モデルPRXを支えたデータ戦略を技術ブログ「PRX Part 4」で公開しました。同社は公開・内部データセットを混ぜて事前学習用コーパスを構築し、全画像を視覚言語モデル(VLM)で再キャプションしたうえで、学習用フォーマットに変換した過程を詳しく説明しています。地味だが品質を左右した工程だとしています。

中核は長文キャプションの効果です。同社は短い説明文から100〜200語の詳細な説明文に切り替えるだけで生成品質が大きく改善したと述べ、FID・CMMD・DINO-MMDの各指標で優位を確認しました。正確に記述すれば広告やロゴ、文字などの「ノイズ」も制御可能な属性として学習でき、後段の選別を軽く保てると説明しています。事前学習は幅、微調整は質という方針です。

データ基盤には二つの形式を使い分けています。数億〜数十億行を対話的に探索するために列指向のLanceで構築・検索し、分散学習にはMosaicのMDSシャードで配信します。キャプション生成にはQwen3-VL-8Bを採用し、H200あたり毎秒20枚の速度と安定したvLLM対応を評価しました。より高品質なQwen3.5-9Bは速度が遅く不安定な依存関係が必要だったため見送りました。

保存形式や計算の設計も実測に基づいて決めています。テキストエンコーダをQwen3-VLへ切り替えた際、テキスト潜在を事前計算せず学習時に逐次計算する方式に変更し、スループット低下は3〜4%に収めました。画像はPNGではなくJPEG品質92で保存し、再符号化の劣化がほぼ知覚できず、PNGと生成品質が事実上区別できないことを確認しています。

選別と重複排除も低コストな手法で実施しました。キャプションのみを読むQwen3-8Bで画像を「見る/読む/NSFW」に分類し、知覚ハッシュで近似重複を除去しています。いずれも元データを書き換えず、シャードごとのスキップリストで除外する仕組みで、後から見つけた品質問題や学習利用を拒否したユーザーのデータにも柔軟に対応できます。PRXはApache 2.0で公開されています。

NVIDIAのオープンモデル、ICML研究の基盤に

ICMLでの存在感

NVIDIA論文74本採択
GPU引用約2000本
Nemotron引用145本

広がる採用

Sakana AIがFuguをNemotron上に構築
KiloCodeでコスト最大9割減
NAVERが韓国語モデル開発
Merckが創薬にKERMT活用

NVIDIAは7月6日、機械学習の国際会議ICML 2026で自社のオープンモデルとオープン基盤がAI研究の土台になったと発表しました。同社の論文は74本が採択され、採択論文のうち約2000本がNVIDIAGPUを、145本がオープンモデル群Nemotronを研究基盤として引用しました。open weightsと公開データセットの提供が、研究のあり方を変えつつあります。

今年の研究テーマでは、視覚・動画生成やLLM向けの強化学習エージェント訓練、AI推論が引き続き中心となりました。加えてロボットworld modelsが注目を集め、論文「DreamDojo」はNVIDIA Cosmosを基に、訓練外の環境で物体を扱うロボットの挙動を予測します。物理環境での試験コストやリスクを避けつつ、方策評価や行動計画を進められる点が特徴です。

ライフサイエンス分野ではBioNeMoのオープンモデルが研究を後押ししました。タンパク質変異の影響予測を検証する公開ベンチマーク「FLIP2」や、創薬に重要な分子物性を予測する新モデル「KERMT」が発表されました。合成データ生成もNemotronや物理AI向けデータセットとともに関心を集め、人手ラベルに頼らない大規模学習への転換を映しています。

動きはNVIDIA社内にとどまりません。Sakana AIはNemotron 3 Ultraを基にFuguとFugu-Ultraを構築し、AI研究の自動化を進めています。KiloCodeはNemotronをコード処理基盤に組み込み、トークンコストを最大90%削減したと報告しました。NAVERはNemotronのアーキテクチャで韓国語向けモデルを開発し、Together AIは同モデルを自社基盤で提供しています。

産業界の採用も拡大しています。Merckは創薬でKERMTを使い、薬剤候補の有効性や安全性を予測します。LG電子やNEURA Roboticsはヒューマノイド量産にIsaac GR00Tを採用し、Boston DynamicsなどはCosmos world modelsで次世代ロボットの開発と検証を加速しています。オープンな研究基盤が、業界横断で成果創出を支える構図が鮮明になりました。