旅行予約OmioがOpenAIで開発工数8割減

対話で旅程を予約

3000社超の交通事業者と接続
47カ国を網羅する移動ネットワーク
ChatGPTで自然言語の経路検索
実在する予約可能な旅程を提示

社内のAIネイティブ化

エンジニアCodexを活用
開発工数を従来比約20%に削減
四半期規模の案件を約1カ月に
意思決定の責任は人が保持

欧州の複合交通予約大手Omioは2026年6月23日、OpenAIと連携し、対話型AIによる旅行体験の構築と社内業務の変革を進めていると明らかにしました。同社は世界3000社超の交通事業者と接続し、47カ国で鉄道・バス・フェリー・航空便を仲介しています。利用者が行き先を伝えるだけで、予約可能な旅程を受け取れる仕組みを目指しています。

対顧客面では、Omioは2023年にChatGPT経由で利用できる早期の旅行体験の一つを公開しました。「ローマからフィレンツェへの最速ルートは」といった自然言語の質問に対し、ChatGPTリアルタイムの運行・価格データに接続して回答します。最近では自社の交通ネットワークと結んだ専用のChatGPT体験へと拡張しています。

社内では、まず全社員にChatGPTを展開し、その後コーディング支援AIのCodexエンジニアリングの工程へ深く組み込みました。CTOのトマス・ボツェトカ氏は「ChatGPTは前哨戦だった。本当の仕事はCodexで進む」と語っています。現在は全エンジニアが調査から計画、コーディング、テスト、レビュー、保守までCodexを使うといいます。

この取り組みは製品開発の速度を大きく変えました。Omioは多くの製品を従来の約20%の時間で構築できると見積もります。ボツェトカ氏は「複数の開発者が四半期かけていた案件を、今は1人が約1カ月でこなせる」と述べ、実験や意思決定の高速化につながったとしています。

一方で同社は責任ある運用を原則に掲げています。「責任と説明責任は人に残る。AIは開発や分析、意思決定を速めるが、主導権を握るのは人だ」と強調します。AIツールへの広いアクセスと統制、人による監督を組み合わせ、人が成果に責任を持つ運用モデルを築いているとしています。

GPT-5 Pro、免疫学者の3年来の難問を解明

未解決実験の再分析

GPT-5 Proが3年来の謎を解明
T細胞とグルコースの関係
IL-2阻害という機構的洞察
Th17細胞化の障壁除去を指摘

予測と専門知の役割

未発表実験の結果を正確に予測
研究者は仮説検証を加速
洞察の評価には専門知が不可欠
生物兵器悪用リスクへの警戒

米ジャクソン研究所とコネチカット大学の免疫学者デリヤ・ウヌトマズ氏は、2025年末に登場したGPT-5 Proを使い、3年間棚上げにしていた実験の謎を解明しました。OpenAIが6月23日に公開した事例で、がんやウイルスと闘う免疫細胞「T細胞」が、糖であるグルコースによってどう分化するかを問うものです。同氏は今やAIなしの研究は「両手や脳の半分を奪われるようなもの」と語ります。

実験は2022年に行われ、研究チームはT細胞を低グルコース環境と、グルコース利用を妨げる「デオキシグルコース」を含む環境に分けて発達させました。両条件はエネルギー不足という点で似た結果になると予想されましたが、デオキシグルコース側では炎症反応に関わる細胞が圧倒的に多く生じ、説明がつかなかったのです。

ウヌトマズ氏は当時のデータをGPT-5 Proに入力して分析を依頼しました。モデルは、デオキシグルコースがIL-2というタンパク質の構築を妨げ、その結果T細胞がTh17と呼ばれる炎症性細胞になる障壁が取り除かれた可能性を指摘しました。同氏は「振り返れば完全に筋が通る洞察」と評価し、自身も研究室の誰も気づけなかった視点だと述べています。

さらに同氏は、まだ未発表だったリンパ腫を標的とするCD8+ T細胞の実験についてGPT-5 Proに予測を求めました。モデルはがん細胞を殺す能力の向上を正しく予測し、インターネット上の情報では知り得ない結果だったため、同氏は「これらのモデルは本当に理解している段階に達した」と確信したといいます。

ウヌトマズ氏は、こうしたモデルが文献調査や仮説の絞り込みを助ける共同研究者のように機能すると説明します。膨大な実験候補のなかから有望なものを見極めることで、数週間から数年分の作業を短縮でき、生物学の研究を大きく加速させると指摘しました。

一方で同氏は、AIが洞察を生んでもその重要性や妥当性を評価するには専門知が依然不可欠だと強調します。能力の高さは悪用リスクとも表裏一体であり、生物・化学兵器への転用を防ぐため、OpenAIは備えの枠組みで安全策を講じていると述べています。

Anthropic、Slack常駐のAI同僚を投入

製品の特徴

Slack常駐のAI同僚
@Claudeで全員が作業委任
チャネル単位の単一Claude
文脈を蓄積し記憶
数時間から数日の非同期作業

企業向け統制

管理者がツール権限を設定
用途別に分離されたID
全操作の監査ログ

Anthropicは2026年6月23日、Slack上に常駐するAIチームメイト「Claude Tag」をベータ提供開始しました。Claude EnterpriseとTeamの顧客が対象で、チャネル内の誰もが@Claudeとタグ付けするだけで作業を委任できます。同社の既存のSlackアプリを置き換える製品です。

最大の特徴はマルチプレイヤー方式である点です。チャネルごとに単一のClaudeが全員と対話し、誰もが進行中の作業を確認して会話を引き継げます。利用者ごとに別インスタンスが立つ従来の連携とは異なります。

Claudeはチャネルの内容を追いながら文脈を蓄積し、許可があれば他チャネルからも情報を集めます。タスクを段階に分解してツールで実行し、結果をスレッドに返答します。基盤モデルは5月に公開されたClaude Opus 4.8です。

能動的に振る舞うモードでは、関連情報を自発的に提示し、止まったスレッドを追跡します。数時間から数日にわたり自律的に作業を進める非同期実行にも対応します。Anthropicは自社製品チームのコードの65%が同種の社内版で生成されていると説明しています。

企業利用に向けて、管理者はツールやデータ、稼働チャネルを指定し、用途別に分離したClaude IDを設定できます。営業用と開発用で記憶やアクセスは共有されず、組織やチャネル単位のトークン上限設定と、全操作の監査ログも備えます。既存アプリからの移行は30日以内の管理者の承認が必要です。

背景には、Slackを舞台とする企業向けAIの主導権争いがあります。SlackbotのSalesforceOpenAIのWorkspace Agents、PerplexityCognitionDevinなどが参入済みです。記憶を蓄えたAIは置き換えが難しく、ベンダー依存や常時監視の統制といった論点を企業は見極める必要があります。

Oracleが2.1万人削減、AI投資に巨額負債

1年で従業員13%減

年間2万1000人削減
従業員14万1000人に縮小
前年比12.9%減
SEC提出書類でAI要因明記

債務でAI基盤拡張

2026年に最大500億ドル調達計画
資金の約半分は負債
総債務1200億ドル超
債券保有者が提訴

米ソフトウェア大手Oracleは、2026年5月期に従業員を1年間で2万1000人削減したと、6月22日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した年次報告書で明らかにしました。従業員数は前年の16万2000人から14万1000人へと、12.9%減となりました。同社は人員削減の要因の一つとして、社内業務へのAI技術の導入を挙げています。

報告書では「事業全体におけるAI技術の採用と展開が人員削減につながっており、今後も続く可能性がある」と記載されました。同社は3月にも大規模な人員削減が報じられており、今回の削減はそれに続くものです。AIの活用が雇用に直接影響している実態が、規制当局への公式文書で示された形です。

一方で、今回の人員削減はデータセンター基盤への巨額の設備投資とも結びついています。同社は2026年の事業再編計画について、クラウド型サービスの開発・販売・提供への注力を実現するための施策が大半だと説明しました。AIワークロードを支えるインフラ構築が、経営の最優先課題となっています。

Oracleは2月、OpenAIxAI、AMD、NvidiaMetaといった顧客向けにクラウド基盤を拡張するため、2026年に450億〜500億ドルを調達する計画を発表しました。このうち約半分を負債で、残りを株式で賄う方針です。同社の総債務はすでに1200億ドルを超えています。

急増する債務には投資家も懸念を示してきました。2月には債券保有者が、AI基盤構築に伴う債務拡大の必要性を同社が隠していたために損失を被ったとして、Oracle提訴しています。AI需要を追う積極投資が、財務リスクと表裏一体である点が改めて浮き彫りになりました。

IBM、エージェント開発簡素化のオープン基盤CUGAを公開

CUGAの狙い

IBM製のオープンソース基盤
プランニングと実行ループを内蔵
開発者はツールと指示文のみ記述
二十数本の単一ファイル実例公開

本番運用への道

6種類のポリシーで行動制御
小型オープンモデルでも安定動作
定義変更なしで主権環境へ再展開

米IBMは6月23日、エンタープライズ向けの自律型AIエージェント基盤「CUGA(Configurable Generalist Agent)」と、その実例集「cuga-apps」を公開しました。エージェント開発で必要となる計画立案、ツール呼び出し、状態管理といった配管作業を基盤側が肩代わりし、開発者エージェントが使えるツールの一覧と指示文を書くだけで済む点が特徴です。

従来のエージェント開発は、フレームワーク選定やツール接続など実装の下準備に時間を取られ、肝心の中身づくりは後回しになりがちでした。CUGAはこの順序を逆転させ、計画・実行・状態管理を内蔵することで、FastAPIのルートが書ければ全行を読めるほど簡潔なコードでアプリを構築できるとしています。

実例集には映画推薦からIBMクラウド構成提案まで、それぞれ単一ファイルで動く二十数本のアプリが含まれます。エージェント本体は4つの引数を持つコンストラクタで定義され、汎用機能は共有のMCPサーバーから取り込み、アプリ固有のツールだけをPython関数として書く構成です。共通のひな形を持つため、一つ読めば全体を理解できる設計になっています。

CUGAは行動の前に計画を立て、実行中に誤りを検知して再計画する反省ステップを備えます。状態管理や変数追跡を基盤が担うことで、小型のオープンウェイトモデルでも長い処理を安定してこなせるとし、ホスト版アプリは大規模な独自APIではなくgpt-oss-120bで動作しています。

本番運用では、6種類のポリシーによる制御をエージェント本体に直接付与できます。要求段階で拒否するIntent Guardや、危険なツール実行前に人間の承認を挟むTool Approvalなどがあり、ガバナンスを後付けの層ではなく基盤に最初から組み込む方針を取っています。

IBMはこの基盤を、データや実行エンジンを同一境界内に閉じ込めるSovereign Coreへと展開しました。ローカルで書いたエージェントを定義変更なしでそのまま隔離環境へ再展開できる点を強みとし、運用環境が読めるオープンなコードであることが主権性の裏付けになると主張しています。

Hugging Face、AIで週次リリースを自動化

リリース頻度の刷新

4〜6週から週次へ短縮
単一のGitHub Actionsで実行
オープン基盤のみで構築
リリースノート作成を自動化

信頼性の担保策

モデル下書き+人間が判断
決定論的検証でPR欠落を防止
ドキュメント差分を文脈に投入
1回あたり約0.25ドル

AI開発企業のHugging Faceは2026年6月23日、Pythonクライアント「huggingface_hub」のリリース作業をAIで自動化し、配信頻度を従来の4〜6週ごとから週1回へ高めたと自社ブログで明らかにしました。単一のGitHub Actionsワークフローで処理し、オープンソースツールとオープンウェイトのモデルだけで構築した点が特徴です。

従来の作業は一部が自動化されていたものの、リリースノートの執筆や告知文の作成は毎回手作業でした。数十件のPRをテーマ別に整理して書く作業に数時間を要し、小規模な更新でも実質半日仕事になっていたといいます。

同社はまず作業を機械的な処理と判断を要する作業に分けました。バージョン更新やコミット、タグ付けなどは自動化し、文章作成や強調点の選定といった「頭を使う部分」の下書きをAIに担わせる設計です。

信頼性の核となるのが「モデルが下書きし、人間が決める」という原則です。リリース対象のPR番号を事前にスクリプトで抽出して正解リストとし、モデルの出力に欠落や混入がないか決定論的に照合します。不一致があれば該当PRだけを修正させる反復処理で、PRの取りこぼしや誤記載を防ぎます。

精度面では、各PRが変更したドキュメントの差分をモデルの文脈に渡すことで、実在しないコード例の生成を抑えています。公開後はAIの初稿のみが下書きとして残り、担当者が15分程度の編集で仕上げてから正式版を配信する流れです。

セキュリティ面ではPyPIのTrusted Publishingを採用し、長期保管するトークンを排除しました。1回のリリースにかかる推論費用は約0.25ドルにとどまります。同社はこの「信頼するが検証する」仕組みを汎用的な手法として公開し、他のPythonライブラリにも展開する考えです。

NVIDIA、企業向け特化型AIエージェント基盤を提供

3つの構成要素

モデル・ツール・実行環境を一体提供
Nemotronで柔軟にカスタマイズ
安全に動作するOpenShell実行環境
外部の連携フレームワークにも対応

業界への広がり

創薬を月単位から日単位へ短縮
医療文書作成や臨床支援を後押し
CrowdStrikeが精度98.5%で警告選別
Cadenceなどがチップ設計を自律化

半導体大手NVIDIAは、企業が自社の業務に合わせて構築できる特化型AIエージェントの基盤「NVIDIA Agent Toolkit」を提供しています。推論を担うモデル、業務とつなぐツールやスキル、安全に動かす実行環境という3要素を一体で備え、企業が制御・カスタマイズできる点を特徴としています。

ツールキットは3つの要素で構成されます。オープンモデルのNVIDIA Nemotronは、各社が用途に応じてエージェントを調整・評価・展開する柔軟性を与えます。NemoClawの設計図がより安全な挙動を促し、OpenShellの実行環境が実際の業務システム内で安全に稼働させます。

企業向けAIの第一波は、新たなモデルへのアクセスと試験的な導入が中心でした。今回示されたのは、推論しツールを使い行動する複数モデルからなる特化型エージェントを、業務を最もよく知る現場の人々が使える形にする段階への移行です。

活用はすでに各業界で始まっています。ライフサイエンスでは、新たなBioNeMo Toolkitにより、従来は数カ月を要した作業を数日で完了できるようになりました。医療分野では臨床文書の作成や意思決定支援、ケアの調整を支えています。

セキュリティや産業領域でも導入が進みます。CrowdStrikeは特化型エージェントで警告を98.5%の精度で選別し、CadenceやSynopsysは半導体設計の自律エージェントを構築中です。Palantir、SAP、ServiceNow、Siemensなども自社基盤にエージェント機能を組み込んでいます。

NVIDIAは、モデルやツール、実行環境、インフラを企業が自社の業務に合わせて組み合わせられるとき、エージェントはより有用になると指摘します。同社はこの組み合わせを可能にする開かれたモジュール型の基盤を提供する方針です。

Krea、画像生成AIを2秒のオープンウェイト公開

公開モデルの概要

学習用のRawと高速版Turbo
2秒での画像生成
120億パラメータの新設計

ライセンス条件

50席超は有償の企業契約
違法画像防止の技術対策を義務化
生成物の著作権は利用者

AI創作ツール新興企業のKreaは6月、新たな画像生成AI「Krea 2」のオープンウェイト版を公開しました。学習向けの「Krea 2 Raw」と高速生成向けの「Krea 2 Turbo」の2種で、いずれもHugging Faceから誰でもダウンロードできます。同社はAI画像が画一的になりがちな課題を踏まえ、表現の多様性と高い指示再現性の両立を掲げます。

技術的な中核は、ゼロから構築した120億パラメータの拡散トランスフォーマーです。Turboは知識蒸留により生成工程を8ステップまで圧縮し、一般的な消費者向けハードでも2K解像度の画像を約2秒で描き出します。一方のRawは事後学習や人間のフィードバックによる調整を施さない素の状態で、独自スタイルの追加学習に向く「白紙のキャンバス」と位置づけられています。

想定される使い方は「Rawで学習し、Turboで生成する」という流れです。Rawは作り込まれた作風の偏りがないため、建築製図や特定ブランドの素材といった独自表現を高い忠実度で吸収できます。学習したLoRAはそのままTurboへ移植でき、高速な試作と反復に活用できる仕組みです。

ライセンスは独自の「Krea 2 コミュニティライセンス契約」を採用しました。個人や小規模事業者は無償で商用利用や成果物の収益化ができ、Kreaは生成物の著作権を主張しないと明記しています。一方で席数が50を超える組織は企業向けの有償契約が必要となり、APIの利用も生成ごとに課金される別建てのサービスです。

従来のMITやApache 2.0と異なり、この契約には下流の行動規範が課されています。モデルを自社運用する事業者は、違法素材や同意なき性的画像、児童性的虐待素材、名誉毀損的な生成物を防ぐための入出力フィルターの実装を義務づけられます。怠れば契約違反となり、Kreaは重みの更新やアクセス停止を行う権利を持ちます。

Kreaは2022年にサンフランシスコで創業し、これまでに計8300万ドルを調達、利用者は191カ国で3000万人を超えると説明しています。複数のAIエンジンを束ねる集約サービスから、自社開発モデルを提供する企業への転換を進めてきました。今回の公開は、閉鎖的なAPIに対し制作者の自由度を重視する選択肢として、オープンウェイト市場での競争を一段と高めるものと位置づけられます。

NVIDIA、世界500傑スパコンの8割支える

TOP500を席巻

TOP500の81%NVIDIA技術
新規システムの約9割を獲得
GPU搭載が過去最多238基
ネットワーク接続376基で最多

電力でも首位

Green500上位8基をGPUが独占
首位はGrace Hopper採用KAIROS
Grace CPU採用は26基に拡大

半導体大手のNVIDIAは6月23日、ドイツ・ハンブルクで開催のスパコン会議ISCで発表された最新ランキングで、世界の高速スパコン上位500システムのうち400超、つまりTOP500全体の81%を同社技術が支えていると明らかにしました。前回から17システム増え、新規参入では約9割がNVIDIA基盤でした。

勢いの背景には、AIと科学計算を同時にこなす設計への明確な選好があります。NVIDIA系システムはTOP500全体で、他の全プラットフォーム合計に対しAI学習で2倍超、推論で約3倍のスループットを実現するとしています。GPU搭載は過去最多の238システムネットワーク接続も最多の376システムに達しました。

同社の存在感はGPUネットワークにとどまらず、CPUにも広がっています。自社CPU「Grace」の採用は前回比8増の26システムとなり、累計出荷は約250万個に上ります。GPUとGrace CPUをメモリ共有する「Grace Hopper Superchip」は、メモリ集約的な現代AIの需要に向けた設計です。

電力性能を測るGreen500でもNVIDIAは上位を独占しました。上位8システムすべてがGPUを搭載し、首位はフランス・トゥールーズ大学のGrace Hopper採用機KAIROSで、1ワットあたり73.3ギガフロップスを記録しました。

欧州では記録的な35基のAI向けHPCスパコンが開発中で、欧州初のエクサスケール機JUPITERは人間の脳や気候、次世代6Gのシミュレーションに活用されています。最新世代のBlackwellアーキテクチャ採用機もアジアや欧米で登場し、日本でも初のGB200システムが稼働を始めました。

NVIDIA、通信網を自律運用するAIエージェント基盤を公開

自律運用への転換

タスク自動化から自律運用
AIエージェントが障害を能動監視
DTW Ignite 2026で実証

安全な実行基盤

合成データで機密保護と学習
NemoClawとOpenShellでガードレール
SoftBankやNTT DATAが採用

シミュレーションで検証

GPUで近リアルタイム検証
RANデジタルツイン自己修復

NVIDIAは2026年6月23日、コペンハーゲンで開催中のTM Forum「DTW Ignite 2026」で、通信事業者向けの自律ネットワーク運用基盤を公開しました。これまで生成AIによる自動化は決められた手順を高速化するタスク単位の支援にとどまっていましたが、AIエージェントが障害を能動的に監視し、ネットワークやIT、業務システムをまたいで変更を調整する自律運用へと軸足を移します。

基盤となるのは通信ドメインに特化した推論モデルです。事業者の54%がデータ関連の課題を最大の障壁に挙げる中、機密性の高い顧客・ネットワークデータをそのまま使えない問題に対し、合成データで対処します。SoftBankNVIDIA NeMo Safe SynthesizerやNeMo Anonymizerを用い、実データの構造を反映したプライバシー保護データを生成し、自社の大規模通信モデルの微調整に活用しています。

長時間稼働するエージェントの安全な運用には、ポリシーに基づく制御が欠かせません。NVIDIAは「NemoClaw」ブループリントと安全な実行環境「OpenShell」を提供し、通信システムへのアクセスをサンドボックス化します。これによりエージェントの挙動を予測可能で監査可能な状態に保ちながら、運用での役割拡大を進められます。

採用企業の事例は多岐にわたります。AdaptKeyは5Gの自己修復運用に、Amdocsはローミング客への先回り対応や移行管理に、NTT DATAはNemotronモデルと組み合わせてネットワーク劣化の検知に活用します。ServiceNowは「Project Arc」を通信向けに展開し、アラートから作業指示までインシデント対応の全工程を自律運用します。TCSも多段階の「AIセンサー」構成で障害発見を高速化しています。

信頼性を担保する鍵がシミュレーションです。GPU上で処理を高速化し、エージェントが提案を実環境に適用する前に検証できる近リアルタイム環境を整えます。Forskは無線伝搬モデルをNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwellで動かし、CPU比200倍の高速化を実現しました。VIAVIもRANシミュレーションGPUに移し、桁違いの処理量向上を示しています。

KDDIとKDDI総合研究所は、NVIDIAやKeysight、Samsung Research Americaと連携し、6G時代に向けた高精度RANデジタルツインを構築します。NVIDIA Aerial Omniverse Digital Twinを用いた環境で、複数の自律エージェントがエリア最適化や将来の無線条件といった「もしも」のシナリオを安全に検証できるようになります。

OpenAIがAI標準策定団体Appia設立を支援

Appia財団の役割

Linux Foundationが運営
国際標準を評価基準へ変換
第三者適合性確認を実現
AIバリューチェーン全体を対象

標準づくりの狙い

国家間の信頼の土台構築
第三者評価の開示項目明示
米英安全機関との検証連携
組織や管轄を越えた相互運用

OpenAIは2026年6月23日、高度なAIの共通標準づくりを担う新団体Appia財団の設立を支援したと発表しました。同財団はLinux Foundationが運営し、国際標準や既存の枠組みを実務的な評価基準へと落とし込むオープンで modular な仕様を策定します。能力の高いモデルは防御力強化や科学の加速に役立つ一方、安全性のリスクも生むため、評価・統治の体制が必要だとしています。

Appiaの主眼は、第三者が標準への適合を確認する「信頼の層」の構築です。モデルやインフラ、アプリケーションが別々の組織によって開発される場合でも、再利用しやすい明確な根拠を示せるようにします。これにより各国・国際機関が互いの作業を信頼できる共通の技術言語が生まれるとしています。

OpenAIはこの取り組みを、より広範な制度・標準づくりの次の一歩と位置づけます。同社が示したフロンティアAIの民主的統治に関する青写真は、米国の枠組み整備や標準機関CAISIの強化を求めるものです。国家の能力と国際協調が互いを補強すべきだと強調しています。

標準は信頼できる評価実務と技術的厳密さに根ざす必要があります。OpenAIは第三者評価の指針として、テスト対象システムやツールの利用範囲、能力を引き出す手法などの開示項目を提示しました。米CAISIや英AISIとの検証連携では、生物学的悪用への安全策などで具体的な改善につながったとしています。

今回の動きは、Preparedness FrameworkやFrontier Governance Frameworkといった同社の安全基盤を補完するものです。Appiaはこれらの実務を組織や管轄、サプライチェーンを越えて相互運用可能にする課題に取り組みます。OpenAIはISO/IECやNIST主導の枠組みなど幅広い標準化活動にも参加しており、フロンティア開発の知見をオープンな実務へ変換することを目指しています。

GitHub、カリフォルニア州AI透明化法の修正を要求

連合での要求

GitHubがOSS連合に参加
Hugging Faceやモジラと共同
AI透明化法の修正要望

争点と代替案

ライセンス取消条項が問題
OSSは永続・取消不可が前提
供給網への不確実性懸念
EUのAI法に整合する案を提示

コード共有基盤のGitHubは6月23日、Black Forest Labs、Hugging Face、モジラと共にオープンソース連合を結成し、米カリフォルニア州のAI透明化法(SB942、修正案SB1000)に対し的を絞った修正を求める書簡を公表しました。規制の趣旨は保ちつつ、オープンソースのライセンス慣行との衝突を解消する狙いです。

争点は法案のライセンス取消条項にあります。オープンソースのライセンスは永続的かつ取消不可を前提に設計されており、開発者が安心してコードを再利用・共有できる仕組みを支えています。しかし法案は、下流の利用者が一定の義務を満たさない場合に開発者へライセンス取消を義務づけており、これが広く使われるライセンスと両立しないと指摘します。

連合はこの要件が法案の目的達成に不要だと主張します。AIシステムを改変・展開する開発者はすでに法の対象であり、執行の仕組みも維持されるためです。代替案として、オープンソースの特性を認め、下流利用者へ最良慣行を文書で通知すれば十分とするEUのAI法透明性行動規範への整合を挙げています。

GitHubは、透明性という法案の目的を保ちながらオープンソース開発との互換性を維持できるとして、これらの修正を支持しています。AIの説明責任と開かれた協調的なイノベーションを両立させるうえで、この均衡をどう取るかが重要だと強調しました。

同社は政策立案者への意見表明も呼びかけています。開発者や市民社会を含む技術的に根拠ある声が、オープンソースの基盤を損なわずに透明性要件を機能させる鍵になるとしています。

Midjourneyの全身スキャナーに専門家が証拠不足を指摘

水槽型スキャナー構想

画像生成AIから医療分野へ転換
水槽に浸し60秒で全身撮影
音波で体内画像を生成
当面はウェルネス機器として展開

専門家の懐疑

MRI同等の主張は裏付けなし
公開画像は低解像度との評価
音波は空気と骨に弱い物理的限界
Theranosになぞらえる厳しい声

画像生成AIで知られる新興企業Midjourneyが2026年6月、医療画像分野への参入を発表しました。利用者を水槽に浸し、約60秒で全身を撮影する超音波スキャナーを示し、CEOのDavid Holz氏は将来的にMRIを上回りうると示唆しています。しかし複数の放射線科医や画像専門家は、主張を裏付ける公開された証拠がほとんどないと指摘しています。

このスキャナーは、利用者が台に立って水中に体を沈めると、リング状の水中センサーが音波を送り、跳ね返る反響から体内画像を生成する仕組みです。同社はこれをイルカの反響定位になぞらえ、通常30分以上かかる超音波検査を60秒に短縮できるとしています。当面は診断用医療機器ではなく、スパに設置する「ウェルネス機器」として位置づけ、米国のFDA認可を回避する方針です。

専門家の評価は厳しいものでした。ミシガン大学のVenkatesh Murthy教授は技術自体を称賛しつつ、解像度に関する主張は明らかに理論上のもので、MRI同等という示唆はまったく裏付けがないと述べました。ミシガン大学のMatthew Davenport教授は、同社の主張をこれまで見た中で最も誇大だと評しています。

音波の物理的な限界も指摘されました。トーマス・ジェファーソン大学のWilliam Morrison教授は、音波は体内深部まで届きにくく、空気や骨に遮られると説明し、水槽方式は過去にほぼ放棄された手法だと述べました。水は気泡や汚れのない純水である必要があり、維持費がかさむうえ、脂肪の多い体では画質が落ちる可能性も挙げています。

懸念の核心は証拠の不在です。専門家は、利用者がこのスキャナーを信頼してマンモグラフィーなどの確立された検査を省くことを危惧しています。Davenport教授は「証明されていない主張で市場参入を急ぐのは倫理的に問題がある」と語り、Morrison教授はTheranosを引き合いに、これは事業転換というより詐欺に近いかもしれないと述べました。

Meta、Ray-Ban外し299ドルのスマートグラス投入

脱Ray-Banの狙い

Ray-Banブランド非採用
開始価格299ドルに値下げ
従来比約80ドル安
製造はEssilorLuxotticaが継続
Kylie Jenner協業モデルも投入

AIとプライバシー

新AIMuse Sparkを全機種搭載
対応言語に日本など14言語追加
顔認識機能報道で批判
近日中にプライバシー対策発表

Metaは6月23日、看板ブランドだったRay-Banを外した新型スマートグラスMeta Glasses」を発表しました。開始価格は299ドルで、従来の「Ray-Ban Meta Gen 2」より約80ドル安く設定されています。同社ウェアラブル担当VPのアレックス・ハイメル氏は、より低価格帯の製品を用意する必要があったとブランド変更の理由を語りました。

ブランド名こそ変わったものの、製造はこれまで通り眼鏡大手EssilorLuxotticaが担い、新モデル「Fury」「Adventurer」、そしてKylie Jennerとの協業モデルの内側には同社名が刻印されています。仕様は3月発売の「Ray-Ban Meta Optics Styles」とほぼ同等で、バッテリー駆動時間がわずかに延びた程度です。鼻パッドやテンプル先端を調整可能にし、-12〜+2.25の幅広い度数に対応するなど、装着性は高められています。

Metaは収益の柱となる用途としてAIへの注力を強めています。新製品にはSuperintelligence Labs発の初モデル「Muse Spark」を搭載し、旧Ray-Ban・Oakley製品にもソフト更新で展開します。AIはアラビア語、日本語、中国語、ヒンディー語、韓国語など14言語に新たに対応し、ディスプレイ非搭載機でも歩行者向けのターンバイターン案内が利用できるようになります。

一方で最大の懸念は、Metaが抱えるプライバシー問題です。New York TimesやWiredは、同社がスマートグラス向けに顔認識機能を開発中だと報じており、悪用への不安が広がっています。実際にフィラデルフィアの裁判所やイリノイ州の運転中利用など、公共空間での着用を禁じる動きも出始めています。

ハイメル氏は不正な改造を行う利用者が増えていると認め、「近いうちに正面から対処する更新を出す」と述べました。ただ具体策は明かさず、各州・各国で異なるAI規制への対応も課題に挙げています。手頃で完成度の高いハードである一方、プライバシー懸念を上回る決定的な使い道を示せるかが、普及の鍵を握りそうです。

F5、本番AIの脆弱なデータ経路を警告

実証では露呈しない欠陥

ストレージ直結の脆弱性
本番トラフィックで障害連鎖
ノード障害でクラスタ全停止
停止がSLA違反に直結

データ配信層の構築

BIG-IPを制御点に配置
可観測性と自動切替
スループット維持を確認

クラウドサービス企業のF5は、AIワークロードを実証実験から本番運用へ移す際、データ配信の経路がシステムの拡張性を左右すると指摘しました。ストレージと計算資源を直接つなぐ構成は、デモ環境では問題なく動く一方、持続的で同時並行的な本番トラフィックの下では破綻しやすいといいます。

問題の核心は、AIワークフローがS3ストレージを中核資源として扱うようになった点にあります。しかしストレージとクラスタ間のネットワークは、GPUを最適稼働させるための高スループットで途切れないデータ移動を前提に設計されていませんでした。同社のPaul Pindell氏は、単一のストレージノードが故障すると全トラフィックが劣化し、場合によってはクラスタ全体が停止すると述べています。

停止の代償は大きいといいます。推論パイプラインが停滞すればSLAと顧客体験の問題になり、RAGシステムが遅延すればモデルが最新の文脈を失い、不正確な応答やハルシネーションを招きます。同時に、高価なGPUが遊休状態となりコストを押し上げます。

F5はこの課題に対し、データ配信をネットワークが「単に動く」前提に頼らない第一級の基盤層として扱う方針を示しました。具体的には可観測性、プログラマビリティ、障害耐性の三つを組み込み、Dell ObjectScale向け構成ではBIG-IPをストレージと計算層の間に制御点として配置します。

この構成は、QoSや接続数制限によってストレージを過負荷から保護します。同社は第三者機関SecureIQLabの検証により、こうした保護がスループットを犠牲にしないことを確認したとしています。ハイブリッドやマルチクラウド環境では、統一的な可観測性とプログラム可能なトラフィック管理を組み合わせ、一貫した制御と回復力を実現する狙いです。

F5のHunter Smit氏は、永続的な実証段階から抜け出す組織は障害を常態と捉える設計規律を共有していると語ります。遅延や輻輳、部分的な障害が起きる前提で、それを吸収できるデータ経路を築くことが、本番運用と試作の分かれ目になるという見方です。

ブラウザのAIモデル重複保存を解消する新API提案

課題

オリジン分離でキャッシュ非共有
同一モデルの重複ダウンロード
Wasm実行環境の二重保存
ディスク容量と通信の浪費

提案するAPI

ハッシュでファイル識別
navigator.crossOriginStorage導入
オリジン横断の単一キャッシュ
書き込み時のハッシュ検証

Hugging Faceは2026年6月23日、ブラウザ向けAIライブラリTransformers.jsで提案中のCross-Origin Storage(COS)APIを試した結果をブログで公開しました。COSは、複数のサイト間でAIモデルやWebAssemblyの実行環境を重複なく共有することを狙う初期段階の仕様提案です。

問題の背景は、ブラウザのキャッシュがオリジンごとに分離されている点にあります。同じモデルでも別ドメインのアプリを開くと再ダウンロードが必要で、記事の例では177MBもの重複ダウンロードと保存が発生します。これはセキュリティプライバシー保護のため、キャッシュをサイト単位で隔離している設計に由来します。

さらに、利用するモデルが異なるアプリ同士でも、土台となるONNX Runtimeの共通Wasmファイルを別々に取得・保存してしまいます。最終的なCDNのURLが同一でも、ネットワーク分離キーが一致しないためキャッシュは再利用されません。

COSは、ファイルをURLやオリジンではなく暗号学的ハッシュで識別する仕組みです。navigator.crossOriginStorageというインターフェースを通じ、ハッシュが一致すれば取得元を問わず同一ファイルとして認識し、一度の保存を全サイトで使い回せます。

公開範囲は開発者が制御できます。AIモデルやWasmのように広く共有したい資源はすべてのオリジンに開放し、社内専用モデルは特定オリジンに限定できます。可視性は拡大はできても縮小はできないため、公開資源を悪意ある第三者が制限し直す攻撃を防ぎます。

加えてCOSは書き込み時にハッシュを検証するため、宣言と異なるデータは保存に失敗します。これによりモデルの重みが正しいバイト列かを自動で整合性確認でき、公式CDNでも有志のミラーでも信頼して利用できる点が利点です。

Google、AI洪水予測を150カ国超に拡大

予測と検知の進化

洪水予測20億人カバー
河川洪水は7日前予報
都市型鉄砲水24時間前通知
WeatherNext 2で高精度気象予測

警報と国際連携

地震・熱波・大気質の警報提供
FireSatで山火事を高頻度検知
ハリケーン上陸を5日前に予測

Googleは6月23日のイベント「AI for the Planet」で、自然災害の予測と検知に関するAI研究の進展を発表しました。洪水・山火事・地震・異常気象を対象に、AIで生成した情報をパートナーや利用者に届け、「誰も自然災害に不意を突かれない世界」を目指す方針を示しました。

中核となるのが洪水予測です。2018年のインド・パトナでの試験運用から始まり、現在は予報基盤「Flood Hub」が150カ国以上、約20億人をカバーします。河川の洪水は最大7日前に、都市部の鉄砲水は最大24時間前に予報できるとし、関連データセットと水文フレームワークをオープンソース化したと説明しました。

異常気象では、サイクロン予測モデル「WeatherNext 2」が全球の時間別予報を数分で生成すると紹介しました。2025年のハリケーンシーズンでは、進路と強度を数日前に高い信頼度で予測できたとしています。山火事では衛星画像によるAI境界追跡を34カ国に拡大し、新たに開発した衛星「FireSat」で20分ごとの高頻度検知を目指します。

リアルタイムの警報も強化しています。検索とマップ上の「SOS Alerts」や、90カ国超で展開する「Public Alerts」を通じて、当局やメディアの情報を集約します。同社によると、昨年は1日平均1000万回以上、危機情報を人々に届けたといいます。Androidの地震速報や熱波・大気質の警報も各国で提供します。

国際機関や政府との連携事例も挙げました。ナイジェリアやバングラデシュでは支援団体がGoogleの洪水予報を活用し、増水前に現金を配る予防的支援を実施。ハリケーン「Melissa」では、米国立ハリケーンセンターが同社モデルを用い、ジャマイカへの上陸を5日前に予測したと述べています。

Google、YouTube向けGemini分析ツールを発表

新ツールの中身

米国のトレンド分析を詳細化
ブランドパルス指標を統合
クリエイター情報のAPI提供
Gemini広告制作を助言

狙いと背景

クリエイターマーケ強化が目的
広告代理店の媒体計画を支援
AI時代の創造性に対応

Googleは6月23日、フランスで開かれた広告祭典「カンヌライオンズ」で、YouTube向けの新たな分析ツール群を発表しました。いずれも同社のAI「Gemini」を活用し、ブランド広告代理店がクリエイターマーケティングの効果を高められるよう支援する狙いです。

中核となるのが、トレンド分析の強化です。広告ツール「Google Ads Insights Finder」では米国向けに、YouTubeで今人気を集めている話題をより細かく把握できるトレンドデータを新たに提供します。さらに、ブランドの有料・自然流入の状況を示すブランドパルスの主要指標も同ツール内に統合されます。

広告代理店向けには、新しい「Content & Creator Insights API」を用意しました。YouTubeクリエイターや視聴者に関する詳細な情報を提供し、より効果的な媒体計画を立てられるようにします。加えて、広告手法「Demand Gen」では、どの映像素材が成果につながるかなど、Geminiが制作面の助言を近く提供する予定です。

Googleは、AIが新しい創造性を生み出す時代において、これらのツールが成果やトレンドの理解を深めると説明しています。特にYouTubeクリエイターが持つ影響力を捉えるうえで有効だとしています。

MIT、LED並み消費電力で3D地図を作る新型チップ

小型ロボット向け

消費電力約6ミリワット
リアルタイム3D地図生成
省メモリ・低電力の専用チップ
狭所のUAVや漏れ検査に好適

ガウシアン地図

立方体ボクセルではなく楕円体
曲面を少ない要素で表現
1パスで地図を生成しメモリ削減

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが2026年6月、わずか約6ミリワット電力で周囲の詳細な3次元地図をリアルタイムに作成できる新型チップを発表しました。消費電力は1個のLED程度にとどまり、バッテリー容量の限られた小型自律ロボットでも、障害物を避ける衝突回避経路を計画できるようになります。

従来、精密な3D地図の生成には大きな電力と大容量メモリを要しました。画像を立方体の画素「ボクセル」として保存し、各画素を何度も処理する必要があったためです。研究チームは効率的なマッピングアルゴリズムと専用ハードウェアを組み合わせる協調設計で、この課題を解決しました。

鍵となるのが、障害物を楕円体の塊「ガウシアン」で表現する手法です。楕円体は大きさや形を滑らかに調整できるため、剛直な立方体よりも曲面を効率的に表せます。さらに深度画像1回の走査で処理して画像を破棄する技術により、チップ画像全体を保持せずに済みます。

「Gleanmer」と名付けられたこのチップは、同研究室が開発したアルゴリズム「GMMap」を採用しています。重なり合うガウシアンを元の画素に戻さず直接統合することで、地図をさらにコンパクトにし、メモリと電力の要求を大幅に抑えました。処理中のガウシアンはチップ内の高速メモリに置かれ、遠くの記憶装置から呼び出す必要がありません。

性能試験では、iPhoneカメラからのライブ映像からも障害物と空間を再現できました。地図構築に要する電力は既存の最良チップの約2.5%にとどまり、経路計画では通常の約20%のエネルギーで安全な軌道を描けたといいます。研究を率いるヴィヴィアン・スゼ教授らはIEEEの学会で成果を発表しました。

応用先はロボットにとどまりません。長時間装着できる軽量の拡張現実(AR)ヘッドセットや、医療シミュレーション、精密な修理・組立作業も視野に入ります。共著者でMITのサータク・カラマン教授は「指でつまめるチップで小型自律システムに必要なリアルタイム3D地図が初めて実現した」と意義を強調しました。

Googleが金融広告の本人確認をEU全域に拡大

対象国の拡大

EU・EEA全加盟国へ拡大
新たに24カ国を追加
既存は世界18カ国で稼働
規制当局の認可を確認

詐欺広告対策

広告主の身元確認で詐欺防止
EU広告の98%超を既にカバー
金融広告は30日以内に確認必須

Googleは2026年6月23日、金融サービス広告主の本人確認プログラムを欧州連合(EU)と欧州経済領域(EEA)の全加盟国へ拡大すると発表しました。新たに24カ国が対象に加わり、すでにEU6カ国や英国を含む世界18カ国で稼働している既存制度を土台に拡張します。銀行やローン、保険の広告を利用者が安心して信頼できるようにする狙いです。

今回の措置は、EU圏で見られる広告の98%超を既にカバーする広告主の身元確認プログラムに上乗せされます。Geminiで構築した防御策と組み合わせ、有害な広告が表示される前に止めると説明しています。同社のシステムは昨年、EU圏で16億件超広告をブロックまたは削除したとしています。

新たな要件では、金融広告主が各国の規制当局から認可を受けていることを確認します。この枠組みは世界全体で、これまでに3億2780万件の無認可の金融サービス広告のブロックや削除につながったとしています。対象国の拡大により、オンライン上の利用者保護と広告への信頼向上を図ります。

広告主は金融広告を出すために、Googleの金融サービス確認プロセスを完了する必要があります。同社は提出された資格情報を、EU・EEA域内の公式登録機関と直接照合して検証します。

新要件は段階的に導入され、事業者には手続き完了まで30日間が与えられます。30日以内に確認が取れない場合、Googleは確認が完了するまで当該広告主の金融サービス広告を制限する方針です。

Google新型99ドル端末でAI健康指導と単純計測を両立

AI機能の使い勝手

Gemini基盤の健康コーチ搭載
毎朝の睡眠と回復度を要約
5〜6時間の初期入力が前提
文脈を忘れる不安定さ
医療記録は本人確認が必要

ハードと料金

価格は99ドルと手頃
基本計測は無料開放
プレミアムは年99ドル

Googleは6月、AI健康コーチを搭載した99ドルのフィットネス端末「Fitbit Air」を市場投入しました。米メディア「The Verge」のレビューによると、同端末はAI機能を使う人にも使わない人にも応える設計が特長で、Fitbit買収以降で最も賢明な製品と評価されています。

中核となるのは、対話型AI「Gemini」を基盤とした健康コーチです。毎朝、睡眠スコアや回復度を要約したうえで、その日に取るべき行動を助言します。出張や体調不良といった状況に応じて、歩数目標を下げた移動中向けの運動メニューを生成することも可能です。ただし診断は行わず、常に医療専門家への相談を促します。

評価者は、的確な助言を引き出すために5〜6時間を費やし、10年分の医療記録や服薬情報、血液検査結果を手入力したと明かしています。これだけ準備しても、AIは過去の会話を忘れて古いデータに戻ることがあり、歩数目標の変更が反映されないなどの不具合も残ると指摘しました。

コーチ機能はAirの専用機能ではなく、Pixel Watchでも利用でき、将来は他社製ウェアラブルへの拡大も視野に入れています。2025年10月以降、約50万人がベータ版を試し、Googleは100万件超のフィードバックを得て先月に改良版を投入しました。情報源として臨床研究などを提示する点も改善されています。

一方で基本的な計測データは有料化されず、心拍数や睡眠、血中酸素などを無料で利用できます。AIコーチや適応型運動プランを使う場合のみ、年99ドルのプレミアム契約が必要です。バッテリー持ちや軽さも高く評価されています。

記者は、AIコーチの最適な用途を通院の合間を補う道具と位置づけています。同じハードで、AIを使う体験と従来型の単純な計測のどちらも選べる点が賢明だとし、AIをめぐる賛否が割れる健康分野で両者に訴求できる稀有な製品だと結論づけました。

AI企業のPACが米下院予備選に2780万ドル投下

対立する巨額資金

NY-12予備選に計2780万ドル流入
AI企業系PACの代理戦争
OpenAI陣営対Anthropic陣営
親Bores派が1940万ドル支出

争点化する安全規制

AI安全法推進のBores氏が標的
本人はAI安全を主軸にせず
労組主体の対抗PACも参戦
勝敗が中間選挙の試金石

米メディアThe Vergeは6月23日、ニューヨーク州第12選挙区(NY-12)の連邦下院予備選を巡り、テック業界が結果に影響を与えるため計2783万ドルを投じたと報じました。AI企業に連なる複数のスーパーPAC(政治活動委員会)が支援・攻撃の両面で資金を競っており、地方選が業界の代理戦争の様相を呈しています。

焦点となっているのは、全米初のAI安全法を共同提案した州議会議員のアレックス・ボレス氏です。同氏には、安全志向のAnthropicに連なる2つのPACと、Ripple共同創業者クリス・ラーセン氏系のPACが支援広告を展開。一方、AI推進派候補を後押しする1億ドル規模のPAC「Leading the Future」は、傘下組織を通じてボレス氏への反対広告に815万ドルを投じています。

親ボレス派のPACが投じた資金は合計1940万ドルに達し、ボレス陣営自身の選挙費用を上回る規模です。法律上、陣営とスーパーPACは広報を調整できず、陣営はAnthropic系PACの動きに言及を避けてきました。皮肉なことに、ボレス氏側はAI安全を選挙の中心に据える計画はなかったといい、対立するPACが同氏に「AI安全」の看板を押し付けた形です。

ここに第4のPACも加わりました。労組や一般のテック労働者を中心とする新興団体Guardrails Allianceは、対立する富豪らへの「対抗軸」を掲げ、選挙前にボレス支援広告へ25万ドルを投じると表明。共同創業者は、規制反対のAI業界が選挙を操作しようとする動きへの懸念を訴えています。

ただし選挙には他の要因も絡みます。対立候補ライシャー氏はニューヨーク市の政治基盤やブルームバーグ氏系PACの支援を持ち、5月21日の世論調査では両者が拮抗していました。地区の有権者は物価やイスラエル問題などにも関心を向けており、AIだけが争点ではありません。

それでも、もしボレス氏が勝てば、AI安全を巡る立場が中間選挙で候補に有利に働く明確な兆候となります。AI企業の政治資金がどこまで選挙を左右するのか、その試金石として注目される一戦です。

感情AIに文脈を加える人間文脈AIが台頭

単純ラベルの限界

感情を一言で分類する限界
笑いや声の高さの多義性
スマートウォッチの誤判定
信号取得は得意でも解釈が苦手

文脈を読む新手法

状況・個人・行動の三文脈統合
端末内処理プライバシー配慮
曖昧時は低い確信度で表現
人間判断を補う支援役に徹する

AIに人の感情を読ませる「感情A」が、従業員のウェルビーイングや採用面接、運転手の見守りなど幅広い場面で急速に広がっています。スペインのニューロマーケティング企業ニューロロジカは、表情や声だけで感情を一つのラベルに当てはめる従来手法の限界を指摘し、状況の文脈まで踏まえて人の状態を解釈する「人間文脈A」という新たな研究領域を提唱しています。

従来の感情AIの多くは、限られた信号から「喜び」か「悲しみ」かといった一つの感情を一度に判定するにとどまります。しかし現実の人間の感情は文脈依存で重なり合い、絶えず変化します。笑いは喜びにも緊張にもなり、声の高まりは熱意にも苛立ちにもなり、反応は文化や属性によっても大きく異なります。

課題は信号を捉える技術ではなく、その解釈にあります。実際、2024年に発表された調査では、スマートウォッチが示すストレス値が利用者の実感とほとんど一致せず、4分の1が正反対の状態を感じていたと報告されました。心拍数の上昇が興奮なのか疲労なのか、機械には区別できないためです。

ニューロロジカが構築したのは、三種類の文脈を融合する論理層です。業績評価や運転といった状況文脈、個人の経歴や基準状態を示す個人文脈、対話中の注意や集中の変化を捉える行動文脈を組み合わせ、機械が扱える情報へ変換します。固定の重み付けはせず、状況に応じて連続的に調整し、信号が曖昧なときは確信度を下げて示します。

プライバシー面では、映像や音声、生体信号を端末内で処理し、必要な情報だけを共有するハイブリッド構成を採用しています。クラウドは学習やモデル改善に使われ、生データを送らずに済む場合も多いといいます。同社はEUのAI法による職場や学校での感情認識規制に準拠する設計だと説明しています。

一方で、この技術には倫理的な懸念も伴います。同社は軍事的な尋問への利用を断り、感情AIが嘘を確実に見抜くことはできないと認めています。採用や解雇の判断を出力だけに委ねるべきではなく、あくまで人間の理解を補い、見落とされがちな兆候を可視化する支援役にとどめる考えです。人間文脈AIはまだ初期段階にあり、用途や影響は今後さらに見えてくる段階です。

AI面接の求人新興企業Fikaが6億円調達

資金調達の概要

プレシード400万ドル調達
Luminar Venturesが主導
Candy Crush創業者も出資
年内の本格立ち上げ準備

動画特化の仕組み

AIエージェント面接を採用
Gemini活用の10分面接
履歴書より人物像重視
求職者は無料、採用時に成功報酬

スウェーデンのストックホルムに拠点を置く新興企業Fika Jobsは2026年6月23日、プレシードラウンドで400万ドルを調達したと発表しました。同社は動画を中心とした採用プラットフォームを開発しており、AI面接エージェントと短尺の動画プロフィールを組み合わせます。調達資金は開発の継続、チームの拡大、年内の本格展開の準備に充てる方針です。

求職者はまずLinkedInのプロフィールを連携させ、FikaのAIが経歴を分析して個別の質問を生成します。候補者はGoogleGeminiモデルを使った約10分間の動画面接を受け、回答は自動で短い動画クリップに変換されプロフィールにまとめられます。役職ごとに応募するのではなく、企業側が発見し再訪できる常設プロフィールを維持する点が特徴です。

創業の着想は、共同創業者で兄弟のJakob Dubois最高経営責任者とAlexander Dubois最高技術責任者が前の事業を進める中で得られました。履歴書が目立たない候補者と話したところ、数分で熱意や意欲が明らかになり採用に至った経験から、書類では捉えにくい資質があると確信したといいます。

競合の多くが企業側の候補者選別の効率化を狙うのに対し、Fikaは候補者が動画プロフィールを保持し、企業がAI評価済みの人材プールを閲覧する仕組みを構築します。コミュニケーション能力や文化的な適合性を選考の早期に見極められ、特にキャリア初期や非伝統的な経歴の人材に有効とみられます。

一方で動画プロフィールには明確なバイアスのリスクも伴います。企業が資質の評価前に候補者の人種、年齢、性別、外見、なまりを見られるため、履歴書ならある程度隠せる差別の余地が生まれる懸念があります。

プラットフォームは今週中に候補者向けの早期アクセスを開始し、秋に一般公開を予定しています。まずスウェーデンに注力し、その後国際展開を図ります。求職者は無料で、企業は採用が成立した場合に候補者の初年度給与の10%を支払う仕組みで、従来の人材紹介の20〜30%より低い水準だとしています。

Sonyの新AI撮影補助、酷評の実態

実機検証の評価

The Vergeが1週間検証
「見た目通り酷い」と結論
保存価値ある写真はごく僅か
Googleの撮影指南とは別物

機能の中身

撮影前にフィルター候補提示
露出や彩度の過剰調整多用
構図助言なし・効果説明なし
動作不安定で過熱誘発

米メディアThe Vergeは2026年6月23日、ソニーのスマートフォン「Xperia 1 VIII」に搭載されたAI Camera Assistantを約1週間検証した結果を公開しました。記者は同機能について「ソニーが見せていた通り酷い」と評し、AIによる撮影補助が実用に耐えないと結論づけています。

この機能はカメラアプリの標準モードに組み込まれ、撮影時に画面へ別設定の写真候補を自動表示します。GooglePixelに搭載された「Camera Coach」が構図や焦点の助言を行うのに対し、ソニーのAIはフィルターを適用するだけで、構図の指導も適用した効果の説明も一切ありません。

記者によると、提案の大半は露出・ホワイトバランス・コントラスト・彩度などの基本調整で、しかも過度に強い変更が多いといいます。写真を暗く沈ませたり、ハイライトを白飛びさせたり、セピア調や黄色寄りの色味を頻繁に勧めるなど、Instagramの古いフィルターを想起させる仕上がりだと指摘しました。

提案の出現も一貫せず、自撮りカメラでは非対応、逆光や白い壁では表示されないなど挙動が不規則です。ソニーはレンズの切り替え提案や「最も写真映えする角度」の案内も可能とうたいますが、記者は1週間の検証で一度も確認できなかったとしています。

性能面の弊害も大きいようです。最新のSnapdragon 8 Elite Gen 5を搭載しながら動作は不安定で、AI機能の利用がアプリの起動遅延やレンズ切り替え時のフリーズ、さらには過熱やクラッシュを招いたといいます。機能を切ると症状が和らいだとも記者は述べています。

一方で記者は、Xperia 1 VIIIのカメラ自体は大型センサーを3眼すべてに備えた優れたハードウェアだと評価します。それだけに、Appleの写真改変機能のような倫理的問題こそ起こさないものの、AI補助が製品の価値を損なっている点を惜しんでいます。

MITフォーラム、AIの労働と民主主義への影響を議論

仕事とAI

AIは雇用を単純に奪わない
問われるは専門性の希少性
新たな仕事の創出が課題
判断者としての人間の役割

民主主義とAI

選挙情報でのバイアス監査
回答は属性で大きく変動
選挙の混乱と暴力の懸念
原則に基づく設計の必要性

マサチューセッツ工科大学(MIT)は5月12日、学内のリンデ音楽棟で「AIと社会フォーラム」を開催し、各分野の専門家が人工知能(AI)の労働や民主主義への影響を議論しました。人文・芸術・社会科学スクール(SHASS)と「コンピューティングの社会的・倫理的責任」(SERC)が共催し、生成AIを用いた音楽演奏も行われました。

開会あいさつでSHASS学部長のアグスティン・ラヨ氏は、AIの影響を理解するには学内全分野の知見が必要だと述べ、分野横断的な議論の意義を強調しました。シュワルツマン・コンピューティング・カレッジのダン・ハッテンロッカー学部長も、AIの長所と短所を見極めることが過信や予期せぬ結果の回避に不可欠だと指摘しました。

労働をめぐる基調講演では、経済学者のデビッド・オーター教授が「AIは仕事を奪う」という通説に異議を唱えました。重要なのは技術が専門性の希少性を高めるか商品化するかであり、AISは新たな専門職を生み出す可能性があるとして、労働者の再訓練や賃金保険などの先回りした政策を求めました。

続くパネル討論では、計算機科学・人工知能研究所(CSAIL)所長のダニエラ・ルス教授が、AIが職場を支援する可能性に期待を示しつつ、意思決定における人間の判断の重要性は変わらないと述べました。航空宇宙学のデビッド・ミンデル教授は、仕事の性質は常に変化してきたとしつつ、安全基準の維持と効率化の両立が課題だと語りました。

2つ目のセッションは民主主義への影響が焦点となりました。MITスローン経営大学院のチャラ・ポディマタ助教は、大規模言語モデル(LLM)の選挙情報におけるバイアスを監査する研究を発表し、2024年米大統領選で12の主要モデルの回答が属性や政治的傾向によって大きく変動したと報告しました。

政治学のチャールズ・スチュワート3世教授は、選挙結果が疑問視されれば暴力につながりかねないとして、AIが選挙に取り返しのつかない混乱をもたらす懸念を示しました。一方でリリー・ツァイ教授は、信念の根拠を問う「ソクラテス式対話チャットボット」が人々の立場を穏健化させた例を挙げ、適切な原則に基づく設計と厳格な評価があればAIが民主主義に好影響を与え得ると述べました。

ドクトロウ氏、AIが生む「逆ケンタウロス」を批判

新著の主張

AI論争への新著刊行
AIを語る不毛さを論じる狙い
誇張と現実の切り分け

逆ケンタウロス論

人間が機械の付属物
配送員を例に説明
業界が量産する構図への懸念

技術ジャーナリストで作家のコリー・ドクトロウ氏が2026年6月、AIを主題とした新著「The Reverse Centaur's Guide to Life After AI」を刊行しました。前著「Enshittification」に続く問題提起の書で、米メディアArs Technicaのインタビューに応じています。同氏はAIについて語ること自体を「無益だと考える理由」を書いたと説明します。

本書の狙いは誇張と物質的な現実を切り分けることにあります。ドクトロウ氏自身は「AIについて語ることにうんざりしていた」と述べつつ、繰り返し意見を求められる状況から本書の執筆に至ったと語ります。

中心概念が「ケンタウロス」と「逆ケンタウロス」です。同氏によると、ケンタウロスは機械学習や自動車運転、入力補完などの技術で能力を拡張された人間を指します。一方、逆ケンタウロスは「機械の頭に人間の体がついた存在」、つまり冷淡な機械の付属物として働く人間だと定義します。

具体例として挙げるのが、AIカメラに運転を監視されるAmazonの配送ドライバーです。ドライバーは事実上、配送車両の周辺機器のように扱われるといいます。ケンタウロスは肯定的に受け止められる一方、逆ケンタウロスを望む人はほとんどいないと指摘します。

それでもAI業界はこうしたツールで逆ケンタウロスを増やそうとしている、というのが同氏の問題意識です。例えば放射線科医のX線画像診断をAIが補助するのは有益ですが、10人中9人を解雇しAIに診断を委ね、残る1人がその確認と責任だけを負う構図は別物だと論じています。

ChromeとGoogleウォレット連携、自動入力を強化

スマホへ機能拡大

iOSAndroid自動入力拡張
航空便詳細の入力対応
車両情報やナンバーも自動入力

ウォレット連携

運転免許情報の自動入力
パスポート情報に対応
初回入力時にウォレット保存
許可制と暗号化で保護

Googleは6月23日、ウェブブラウザー「Chrome」の自動入力機能をiOSAndroidのスマートフォンに拡張すると発表しました。航空便の詳細や、ナンバープレート・車両識別番号(VIN)といった複雑なデータの自動入力に対応します。これまでデスクトップ向けに提供してきた機能を、モバイル利用者にも開放する形です。

同時に、決済サービス「Googleウォレット」との連携もモバイルとデスクトップの双方で深めます。Chromeはウォレットに保存された運転免許証の詳細やパスポート情報、Known Traveler Number(米国の事前確認済み渡航者番号)を使ってフォームを自動入力できるようになります。これらの情報が未保存の場合でも、Chromeで初めて入力した際にウォレットへ保存できます。

Googleプライバシー保護も強調しています。情報の保存や入力は利用者の許可を得た場合のみ行い、機微なデータは従来どおり暗号化されます。データの管理や更新は、Googleウォレットの設定画面、またはChrome設定内の「自動入力とパスワード」ページから可能です。

IDなどの非公開パス情報は、それぞれ専用の管理機能を通じて扱えます。航空券のチェックインや駐車料金の支払いといった日常的なオンライン作業で、入力の手間を一段と省ける狙いです。

Google DeepMindがペレ幻のゴールをAIで再現

プロジェクト概要

フィルムが残らない伝説のゴール
歴史家や遺族と連携し再構築
ペレ・ブランドとの正式提携

技術と公開

Gemini OmniとVeo 3を活用
当時の競技場と用具で撮影
年内にペレ博物館へ展示

Googleは6月23日、傘下のGoogle DeepMindがサッカー界の伝説ペレの幻のゴールをAIで再現したと発表しました。映像が残されていなかった1959年8月2日の「Gol da Rua Javari」を、最先端の生成AIモデルで動く映像へとよみがえらせる試みです。広告祭カンヌライオンズでその舞台裏を公開しました。

再現されたのは、ボールを地面に落とさず3度連続で相手をかわす「ソンブレロ」の妙技です。フィルムに残らなかったこの瞬間を、歴史家やスポーツ記者、サッカー界のレジェンド、そしてペレの家族と協力して復元しました。プロジェクトはペレの肖像権を管理するペレ・ブランドとの完全な提携のもとで進められています。

技術面ではGoogle DeepMindのチームが、最新モデルのGemini OmniVeo 3を用いて歴史的な断片を動く映像へ変換しました。撮影は当時と同じ競技場で行い、本物のユニフォームやビンテージのボールを使うことで、史実への忠実さを追求しています。

この取り組みは教育と文化保存を軸に据えており、完成した映像は年内にペレ博物館へ展示される予定です。Googleは、失われた記憶を再びアクセス可能にすることで、ペレ不在で迎える初のワールドカップにおいて新世代のファンを鼓舞する貢献になるとしています。

経営者やリーダーにとって示唆的なのは、生成AIが単なる業務効率化の道具にとどまらず、文化遺産の保存という新たな価値創出の領域へ広がっている点です。映像が残らない過去の出来事を史実に基づいて復元する手法は、ブランド体験やアーカイブ事業への応用も期待されます。