Sony等音楽大手、Anthropicを著作権侵害で提訴

音楽出版社が新提訴

ソニーなど音楽出版大手が提訴
書籍訴訟の15億ドル和解は不十分と主張
楽曲数千曲の違法利用も指摘

楽曲侵害の具体例

歌詞の逐語的な再現を懸念
他歌手風の新曲生成も問題視
ビートルズ全曲などを保存

経営陣の社内証拠

創業者が違法トレントで個人取得
CEOが承認したと訴状で主張

ソニーやEMI、ワーナー・チャペルなど音楽出版大手各社は8月28日、AI企業「Anthropic」を著作権侵害で新たに提訴しました。Anthropicは今年7月、書籍の無断学習を巡り著者側に15億ドルの和解金支払いで合意したばかりですが、今回の訴状では楽曲についても数千曲規模の無断利用があったと主張しています。

訴状によると、Anthropicが無断で保存し続けているとされる書籍には、ビートルズの全曲集やテイラー・スウィフトの楽曲集、ロック名曲集なども含まれています。音楽出版社側は、AIチャット「Claude」が既存曲の歌詞をほぼそのまま再現したり、他の歌手の作風を模した新曲を生成したりする点を問題視しました。

音楽出版社側は、AI生成楽曲と競合するソングライターたちが実際に不利益を被っていると訴えています。差し止め命令がなければ、Anthropicは学習を続けて権利侵害を拡大させる恐れがあるとも主張しました。

訴状ではさらに、Anthropicの共同創業者ベンジャミン・マン氏が2021年7月、海賊版サイト「Library Genesis」から個人的にBitTorrentを使い数百万冊の書籍を違法に取得していたとされる社内チャットの記録が示されました。共同創業者でCEOのダリオ・アモデイ氏がこの行為を承認したとも主張されており、両氏は個人としても被告に名を連ねています。

EU、ChatGPTを超大規模プラットフォームに指定

指定の経緯

月間利用者4500万人超で対象に
RedditRobloxも同時指定
DSAの超大規模区分に該当

新たな義務

違法コンテンツの削除義務
未成年へのターゲティング広告禁止
推奨アルゴリズムの透明性確保

違反時の対応

違反なら世界売上高6%の制裁金
Grokは既に調査対象

欧州委員会は2026年8月31日、ChatGPTRedditRobloxをEUデジタルサービス法(DSA)上の超大規模オンラインプラットフォームに指定したと発表しました。3サービスとも域内の月間平均利用者数が4500万人を超えたことが指定の根拠です。生成AIサービスがこの枠組みに組み込まれるのは大きな一歩であり、対象各社は2026年12月末までに新たな義務への対応を迫られます。

新たな指定によってChatGPTには、違法なコンテンツの迅速な削除や未成年利用者のプライバシーおよび安全確保が義務付けられます。宗教や民族、性的指向、政治的信条といった機微な情報に基づく広告のターゲティングも禁止されます。加えて、推奨アルゴリズムの仕組みについてより高い透明性を確保することも求められます。

違反した場合には、世界売上高の最大6%にあたる制裁金が科される可能性があります。DSAが生成AIサービスへ適用範囲を広げる動きは今回が初めてではなく、Xの対話型AI「Grok」もすでに同法に基づく調査を受けています。対象各社には2026年12月末までの対応期限が設けられました。

EUで技術主権・安全保障・民主主義を担当するヘンナ・ビルクネン上級副委員長は、「ChatGPTReddit、Robloxは市民や社会への影響の大きさに見合った、より高い水準の監視と説明責任を課されることになる」と述べています。今回の指定は、急速に進化する生成AIサービスに既存のデジタル規制をどう適用するか、欧州が模索を続けている実態を映し出しています。

Vercelのdesign.md、AI生成ページの失敗57%減

3層構造の仕組み

design.mdで指針を明文化
公開スタイルシートで統一
評価ループで継続改善

実証実験で57%減少

失敗57%減を確認
Codex/GPT-5.5で比較検証
200回超で検証実施

自社で構築する手順

直近10件の修正を明文化

Vercelは、コーディングエージェントが自社ブランドに沿ったページを生成できるよう導く公開ファイル「design.md」を発表しました。提案書やレポートなど社外ツールで作られる一回限りのページでも、自社サイトと同じ配色・タイポグラフィ・構成に仕上がるようにする狙いです。検証の結果、design.mdを読み込ませたページは崩れが大きく減ったといいます。

当初、同社は社内リポジトリで使う「product-design」スキルをそのまま公開プロンプト化しようとしました。しかし文章だけでは各モデルの解釈がばらつき、同じ指示でも生成されるページが大きく異なってしまいました。そこで既存資料の転用をやめ、実際の出力を見ながら一から書き直す方針に切り替えました。

完成したdesign.mdは、指針・スタイルシート・評価ループの3層構造で機能します。design.mdが読者像や構成の判断基準を示し、公開スタイルシート「vercel-brand.css」がクラス名とトークンを固定し、評価ループが人手のレビューを次の改善に反映させる仕組みです。

効果を確かめるため、同社はCodexGPT-5.5にレポートなど3種類のページをそれぞれ2回生成させ、既知の失敗パターンの発生回数を数えました。design.mdを読み込ませた場合の失敗は39件にとどまり、読み込ませなかった場合の91件から57%減ったといいます。全体では200回を超える生成テストを重ねて指針を磨き上げました。

公開後も精度を保つため、社内SlackのAIエージェント「@design-agent」を通じた日常利用からフィードバックを集めています。毎週寄せられる指摘を自動で分類し、繰り返し起きる不満を新たなルールやチェックとして反映する運用を続けているといいます。

Vercelはdesign.mdとひな形となるSlackエージェントのテンプレートを一般公開しており、他社も同じ手法で自社版を構築できるとしています。同社自身もv0やCodexClaudeなど複数のツールに日常的にdesign.mdを読み込ませ、ブランドに沿った成果物作りに役立てています。

エンジニアの役割転換、コード執筆からAI境界設計へ

エージェントは熱機関

試行錯誤で局所最適化
文脈蓄積で判断が劣化
テストや契約が指針に

企業システムは三体問題

複数システムが相互干渉
型は通っても意味誤り

新たな使命は境界設計

データ契約で誤りを可視化
決定論的な状態管理が鍵
コード生成より契約設計が本質

データエンジニアリングの専門家であるアナンス・パックキルダーイ氏は2026年8月31日、米メディア「VentureBeat」への寄稿で、ソフトウェアエンジニアの役割がコードを書くことからAIエージェントの境界を設計することへと移りつつあると論じました。CursorClaude Codeなどのエージェントが実装の大半を担うようになった今、開発現場で何が起きているのかを分析しています。

同氏はAIエージェントを熱力学の熱機関にたとえます。エージェントは指示を受けて行動に変換しますが、複雑なリポジトリで動かし続けると、古い前提や矛盾した文脈が蓄積し、次第に判断の精度が落ちていくと指摘します。この現象を「操作エントロピー」と呼び、失敗するテストや明確なデータ契約といった新しい情報こそが、エージェントの迷走を正す鍵になるとしています。

限られた範囲のタスクでは、エージェント試行錯誤ループは驚くほど有効に機能すると同氏は述べます。しかし実際の企業システムは、複数の可変な要素が絡み合う「三体問題」に似ており、ある箇所の変更が離れた場所の挙動を予期せぬ形で変えてしまうと説明します。テストが通っても、意味的には誤った結果が生まれる危険があるといいます。

具体例として、顧客区分フィールドの追加をエージェントに任せたところ、型チェックは通過したものの、本来の定義とは異なる項目を誤って参照してしまうケースを挙げています。この誤りを検知して差し戻したのは、明確なデータ契約だったとし、エンジニアの真の貢献は変換コードそのものではなく、誤りを可視化する境界の設計にあったと結論づけます。

パックキルダーイ氏は、エンジニアの新たな使命を「均衡の設計」と表現します。強固な意味的レイヤーや不変のイベントログ、データ契約、決定論的な状態管理を整備することで、エージェントが一度に処理すべき前提の数を減らせるといいます。コード生成が安価になるほど、こうした契約と境界を設計する力の価値はむしろ高まっていくと同氏は結んでいます。

エヌビディア、メディアテックに35億ドル出資しAIチップ強化

出資の内容

35億ドルの大型出資
NVLink Fusion技術を供与
カスタムAIチップ設計を支援

業界の背景

米大手も自社チップ開発
エヌビディア依存の低減狙う
循環出資でエコシステム維持

今後の展開

DGX Sparkで開発機共同展開
車載AI向け協業も継続

エヌビディアは台湾のMediaTek(メディアテック)に35億ドル(約5000億円)を出資すると発表しました。生成AIの普及でデータセンター向け半導体需要が急拡大する中、MediaTekがエヌビディアの技術を採用し、AI企業やクラウド大手向けのカスタムAIチップを設計しやすくすることが狙いです。両社の提携で、MediaTek製半導体をエヌビディアのデータセンターに直接組み込めるようになります。

今回の提携でMediaTekは、エヌビディアのNVLink Fusion技術を利用できるようになります。NVLinkは自社製以外の半導体同士でも高速通信を可能にする技術で、これによりMediaTekは顧客企業ごとに最適化したチップを、エヌビディアの規格に沿った形で提供できます。エヌビディアの幹部は「我々はAIインフラ企業として、単なる演算チップの枠を超えて事業を広げてきた」と説明しています。

背景にあるのは、AmazonGoogleMicrosoftOpenAIAnthropicなど主要なAI企業やクラウド大手が、エヌビディアへの依存度を下げるため自社製チップの開発を進めている動きです。エヌビディアは今回のような出資や提携を通じて、こうした独自開発の流れに一定の関与を保ちながら、データセンターの基盤技術としての地位を維持しようとしています。先週にはAmazon Web Servicesとも同様の提携を発表したばかりです。

MediaTekはこれまでもASIC(特定用途向け集積回路)事業を段階的に拡大しており、今年の関連事業の売上高は20億ドルに達する見通しを示しています。今回の提携を通じて顧客基盤の拡大を図る考えです。

両社は開発者向け小型AIコンピューター「DGX Spark」や、コンシューマー向けAI PC「RTX Spark」でも協業を続けています。さらに自動運転や車載コックピット向けのプラットフォーム開発でも連携を深めており、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは「AIはあらゆるコンピューティング基盤を変えつつある」とコメントしています。

ChatGPT広告、200日で年換算10億ドル到達

急成長の実績

200日で年換算10億ドル
広告主は数万社規模
CPCと成果報酬型が主流
ECでROAS3倍の実績

世界展開の拡大

自己配信、インド等へ拡大
50超のパートナーと連携
新規顧客比率8割の事例
中東・北アフリカにも展開

OpenAIは2026年8月31日、ChatGPT広告事業「ChatGPT Ads」が開始から200日足らずで年換算売上高10億ドルに到達したと発表しました。すでに数万社の広告主が利用しており、同日からインド欧州、中東・北アフリカでも広告出稿の自己サービス化を開始し、収益基盤を拡大しています。

ChatGPT Adsは今年初めのローンチ以降、急速に規模を拡大してきました。現在は数万社の広告主が利用し、広告費の多くがCPC課金や成果連動型の入札に移行しています。ピクセルタグやコンバージョンAPIの整備も進み、計測や最適化の基盤として定着しつつあります。

5月に導入されたセルフサービス型の「Ads Manager」により、中小企業スタートアップでも広告出稿が可能になりました。同社は8月31日から、インド欧州、中東・北アフリカの広告主にも自己配信を開放し、対応国は40カ国以上に達しています。パートナー企業も50社を超え、代理店主導の体制からより開かれた仕組みへと移行しています。

広告効果も具体的な数値で示されています。あるEC事業者は28日間のキャンペーンで広告費用対効果(ROAS)3倍を達成し、あるテクノロジーパートナーは広告経由のChatGPT流入の8割超が新規顧客だったと報告しました。米国外の広告主による売上比率も高まっており、事業の国際化が進んでいます。

OpenAIは、広告表示を対話の回答内容から明確に分離し、個人の会話内容を広告主に提供しないなど、利用者の信頼保護を最優先する方針を強調しています。今後は対応市場や広告フォーマット、入札方式のさらなる拡充を進める計画で、無料利用者にもChatGPTへのアクセスを維持する狙いがあるとしています。

米国防総省、ChatGPTとGrok軍事版導入

GenAI.milで提供開始

ChatGPT MilGrok追加
300万人の職員が対象
170万人超が既に利用

軍事任務に特化

Starshield AI基盤
物流や市場調査を支援
作戦遂行を迅速化

Claude不在の理由

Anthropicは不参加
供給網リスクと認定

米国防総省は8月31日、OpenAIChatGPTxAIGrokを軍向けに改良した「ChatGPT Mil」と「Grok for Government」を、生成AIポータル「GenAI.mil」上で提供開始したと発表しました。対象は文民・軍人あわせて約300万人の職員で、機密データを消費者向けサービスに流出させずに最先端の生成AIを利用できる環境を整えます。

GenAI.milは昨年立ち上げられた安全な統合ポータルで、当初はGoogleGeminiのみを提供していました。国防総省によると、すでに300万人の職員のうち170万人以上がこのポータルを通じて生成AIを利用しており、利用者は着実に拡大しています。

ChatGPT MilはOpenAIの「OpenAI for Government」プログラムから生まれたツールで、チャットやファイル管理、プロジェクト機能、カスタムGPTなど市販版に近い操作感を提供します。当面は事務作業や物流管理、計画立案、政策検討といった非機密の日常業務を支援する用途に重点を置くとしています。

一方のGrok for Governmentは、より軍事色の強い位置づけです。国防総省は、SpaceXの衛星網技術を活用した「Starshield AI」による同ツールが、調達担当者の市場調査から兵站担当者のサプライチェーン管理まで、幅広い作戦領域で任務遂行の迅速化と精度向上をもたらすと説明しています。

今回のラインアップで目を引くのは、AnthropicClaudeが含まれていない点です。同社は国防総省との対立を経て「サプライチェーン上のリスク」に指定されており、この認定の撤回を求めて係争中です。一方、国防総省はAmazon Web ServicesやMicrosoftNvidia、Reflection AIなど他企業との連携も進めており、AI活用の裾野を広げる戦略を鮮明にしています。

Box CISO、権限管理のみではAI統制困難と指摘

権限管理だけでは不十分

スコープを絞った権限付与
エージェントは全権限を探索
古い設定の露呈リスク

実行レベルでの統制へ

ツール呼び出し単位で許可判断
3段階の承認体制導入
不可逆操作は人が承認

レガシー基盤の限界

旧システムはメタデータ不足
行動ログの可視化が鍵

Box(ボックス)の最高情報セキュリティ責任者(CISO)ヘザー・セイラン氏は、企業がAIエージェントを安全に運用するには権限管理だけでは不十分だと指摘しました。権限はエージェントが到達できる範囲を定めるものの、実際の行動までは制御できないためです。人間よりも高速かつ網羅的に権限を探索するエージェントの特性が、新たな脅威を生んでいます。

同氏によれば、エージェントに標準で広い権限を与えると、一度の暴走が及ぼす被害範囲が拡大します。そのため、Boxではタスクに応じて必要な瞬間だけ権限を絞り込む仕組みを採用しています。あるステップで二つのツールしか使わないなら、権限もその二つに限定するという考え方です。

さらに重要なのは、権限があっても実行すべきでない行動を防ぐことです。セイラン氏は、経理フォルダへのアクセス権を持つ社員が誤って全社の給与データを公開フォルダに書き出す例を挙げ、アクセス権限のチェックを通過しても行動自体が問題になるケースがあると説明しました。プロンプトの指示だけに頼る統制も、指示の改ざんや誘導により破られる恐れがあります。

また、多くの企業システムはAIエージェント向けに設計されておらず、コンテンツのメタデータや分類、詳細なログが不足しています。Boxはこの課題に対応するため、行動を完全自律・監視付き・人による承認が必要な3段階に分類し、ファイルの大量削除など不可逆な操作は必ず人の承認を経る運用としています。

セイラン氏は、エージェントへの信頼は一度きりのアクセス判断ではなく、時間をかけた行動観察によって築かれるべきだと強調します。実験段階のエージェントの行動がログに残らないケースも多く、複数システムにまたがる行動の連鎖を可視化する仕組みづくりが、今後の課題になるとしています。

JuliaHub、AIエージェントでボーイング機体設計

MIT発の起源

2009年、MITで着想
Julia、利用者100万人超

Dyad 3.0始動

Dyad 3.0を4月公開
ボーイングと航空機設計に活用
設計書から機体を自動生成

産業への応用

モデルナのワクチン開発に貢献
Meta音声コーデックにも採用
航空機衝突回避システムにも活用

2009年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らが着想したプログラミング言語Juliaが、利用者100万人を超える世界的な言語に成長しました。開発を担うJuliaHubは現在、AI基盤Dyad 3.0を通じてボーイングなどの企業と提携し、設計図をもとに航空機を自動設計するエージェント技術の実用化を進めています。

開発の出発点は、科学者や研究者向けの計算言語が遅く使いにくいことへの不満でした。数学者のアラン・エーデルマン教授やヴィラル・シャー氏らMITの研究者は2009年にJuliaラボを設立し、2012年にブログでJuliaを発表しました。想定より早く多くの研究者から反響を得たといいます。

Juliaは高速な数値計算に強みを持ち、ブラックホールの撮像やレース車両の解析、半導体設計など幅広い分野で使われています。利用者の増加に伴い、開発チームは2015年にJuliaHubを設立し、MITのデシュパンデ・センターなどの支援を受けて事業化を進めました。

Juliaで構築された創薬モデリング基盤は、モデルナの新型コロナワクチン開発の加速に貢献しました。航空機の衝突回避プログラムは、Python版より約50倍高速化しました。Metaは、WhatsApp音声コーデック開発にもJuliaを採用しています。

JuliaHubは2025年6月にAIエージェント「Dyad」の初版を公開し、2026年4月に最新版Dyad 3.0を発表しました。物理法則を検証する「フィジックスコンパイラー」として機能し、ボーイングなど顧客企業と共に、設計文書から航空機全体を自動設計するエージェントハードウェア設計に取り組んでいます。

シャー氏は、Dyadの活用により製品設計の期間を大幅に短縮できると説明しています。エーデルマン教授の授業でも学生がDyadでロケットエンジンを設計する例が生まれるなど、Juliaを核とした自動設計技術は教育現場にも広がりつつあります。

保険金査定担当者、AI言及の98%が批判的

現場の不満

AIによる誤分類クレームが急増
AI要約幻覚が発生
査定担当者、対応後に離職

業界の構造変化

査定担当者、10年で5%減見込み
直近1年で雇用21%減
AI保険スタートアップ巨額出資

慎重論も

Lemonadeは初期対応96%を自動化
AIは「道具」との声

米求人サイトグラスドア(Glassdoor)の調査で、保険金査定担当者が投稿するAI関連のレビューのうち、実に98%が否定的な内容だったことが分かりました。全米の職種の中で最も批判的な数字だといい、誤分類や誤情報を伴うAIツールの導入が、査定担当者の負担を増やしている実態が浮かび上がりました。

大手保険会社で査定を担当していたアハマド・ジャクソン氏は、勤務先が損害報告の初期対応にAIを導入した際、誤分類されたクレームが急増する事態に直面しました。AIが生成する要約には幻覚と呼ばれる誤情報が含まれることがあり、それに気づかず顧客や弁護士に伝えてしまい、苦情の矢面に立たされたといいます。同氏はその後、別の保険会社へ転職しました。

米労働統計局(BLS)は、査定担当者の数が今後10年間で5%減少すると予測しています。実際、2025年5月から2026年5月にかけての雇用は21%減少し、新人向けの求人は2025年以降で半減しました。背景には、LiberateやPaceといったAI保険スタートアップへの巨額投資や、大手保険会社によるAI活用拡大があります。

保険大手Lemonadeは、独自のチャットボット「AI Jim」が初期報告の96%に対応し、全クレームの約55%を自動処理していると説明しています。一方、State Farmのような従来型の保険会社は、人とデジタル技術を組み合わせた対応を重視する姿勢を示しています。

アラバマ州の査定担当者ジェフリー・コンラッド氏は、25年前に自宅が全焼した経験を踏まえ、写真だけでAIが見積もりを出す仕組みには強い違和感を示しています。同氏は「AIはあくまで道具であり、主導権を握らせるべきではない」と述べ、査定業務には人間の共感や判断が欠かせないと訴えています。

Circleback、無料プラン投入し競合他社に対抗

新無料プランの内容

無制限の会議文字起こし
履歴保存は直近30日間
Apple Watch・Slack連携
有料プランは月15ドル~

競争激化と業績

Wispr・Calendlyも参入
24年に250万ドル調達
1人当たりARR100万ドル超
資金調達は当面予定なし

米新興企業Circlebackは8月31日、AIによる会議メモ作成サービスに新たな無料プランを導入したと発表しました。これまで同社には無料プランがなく、最も安いプランでも月20.83ドルからでした。今回の無料プランでは、会議の文字起こしを無制限に行えるほか、直近30日間の履歴を閲覧できます。急速に競争が激しくなる市場で、より多くのユーザーに製品を試してもらう狙いです。

無料プランでは、会議の録音のほか、スマートフォンアプリやApple Watch向けアプリの利用、AIを使った文字起こし内容への質問、Linear・Slackとの連携が可能です。一方、全ての外部連携や無制限の履歴閲覧、API・MCPへの完全アクセスを求める場合は、年払いで月15ドルからの有料プランへの加入が必要になります。

背景には、AI議事録市場の競争激化があります。ここ数週間だけでも、音声入力アプリのWisprが独自の議事録機能を投入したほか、スケジュール調整アプリのCalendlyも同様のツールを追加しました。Granola、Read AI、Firefliesといった専業スタートアップも巨額の資金調達を重ねており、Circlebackはこうした動きへの対応を迫られていました。

Circlebackは2023年、Ali Haghani氏とKevin Jacyna氏が創業したY Combinator出身の企業です。2024年に250万ドルを調達して以降は黒字を維持しており、従業員8人で年間経常収益(ARR)は1人当たり100万ドル超、総額でおよそ800万ドルに達しています。

Haghani氏は、これまで無料の試用期間が限られていたことで利用者の離脱が大きかったと説明し、今回の無料プラン導入がその解決策になると述べました。同社はGoogle広告Meta広告に費用を投じておらず、今回の無料プランがマーケティング施策の役割を果たすといいます。資金調達については当面予定していないとしつつも、必要になれば前向きに検討する姿勢を示しました。

Debian、生成AI活用のコード提出を容認

新方針の要点

生成AI利用は可否不問
品質基準は従来と同一
AI開示は義務化せず任意

コミュニティの反応

反発の投稿者が離脱表明
Canonicalにも過去に同様摩擦
AI出力は人間レビュー必須

2026年8月、Linuxディストリビューション「Debian」の開発者たちは投票により、生成AIを使ったコード貢献を禁止も推奨もしない新方針を可決しました。プロジェクトはこれまでAI利用への明確な指針を欠き、コミュニティ内で賛否が分かれていました。今回の決定は、責任あるAI活用生産性向上に資するとの認識を示しつつ、既存の品質基準を維持する狙いがあります。

新方針は、生成AIツールの使用がDebian投稿者にとって免罪符にはならないと明記しています。AIを使って作成した内容であっても、品質・正確性・保守性・法令順守について、人間が投稿する場合と同じ基準を満たす必要があります。開発者はAIが出力した内容を理解し、レビューし、テストしたうえで取り込むことが求められます。

Debianは、AIを使って作成したことの開示を推奨するものの、義務化はしていません。無審査でAI生成物をそのまま取り込む行為は、Debianがこれまで培ってきた開発文化にそぐわないと釘を刺しています。

一方で、この決定に反発する声も上がっています。ある投稿者は今回の方針転換を理由に、Debianへの関与を続けないと表明しました。Linuxディストリビューションを巡っては、Ubuntuの開発元であるCanonicalも過去にAI機能を巡って利用者の反発を招いており、AIとオープンソース開発の関係を巡る議論は今後も続きそうです。

Instagram、無申告のAI生成人物に表示制限へ

新ラベルと表示制限

AI生成プロフィールに改称
無申告なら表示制限
申告済みは制限対象外

相次ぐ偽アカウント問題

出会い系アプリでAI男性影響力者横行
健康・美容分野で虚偽の医師・専門家
NYTなど複数メディアが報道

Metaの対応強化

児童向け機能巡り1.8兆円で和解
10代の利用時間を1日2時間に制限

Instagramは8月31日、AIが生成した人物を主体とするプロフィールについて、既存の「AI creator」ラベルを「AI-generated profile」に改称すると発表しました。同社は、自己申告なしにAI生成であることを隠しているアカウントを特定し、Reelsや発見タブでの表示範囲を制限する方針も明らかにしています。背景には、実在の人物と見分けがつかないAIインフルエンサーの増加に対するユーザーの不満があります。

新方針では、AI生成の人物をプロフィールの主体として使用しているにもかかわらずラベルを付けていないアカウントが対象となります。該当すると判定された場合は非フォロワーへのおすすめ表示が制限されますが、誤判定の場合は異議申し立てが可能です。一方、写真の編集やキャプションの作成など、AIツールを補助的に使うだけの投稿にはラベルは不要としています。

今回の対応の背景には、AI生成の人物による問題事例の相次ぐ発覚があります。出会い系アプリ「Goose」では、AI生成とみられる男性インフルエンサーネットワークがユーザーへの勧誘に利用されていたと報じられました。また、米紙ニューヨーク・タイムズは、健康・美容分野でサプリメントなどを宣伝する架空の医師や専門家のアカウントが多数存在すると報じています。

Instagramを巡っては、他人の顔写真を使った画像生成を可能にするAIツールが批判を浴び撤回された経緯もあります。さらに親会社Metaは先週、未成年への影響を巡る訴訟で米国の複数州と約1.8兆円規模の和解に応じており、10代ユーザーの1日利用時間を2時間に制限するなど対策を強化しています。今回のラベル刷新も、こうした一連の信頼回復策の一環と位置付けられます。

NY州知事、データセンター新設に一時停止命令

データセンター抑制策

2026年7月に一時停止命令署名
州内5件申請で原発1基分消費
テキサス州知事も追随

AIで州政府を効率化

全規則をAIで精査、150万時間節約
最初の50件簡素化を発表
データセンターに効率化を要求

雇用不安と監視への配慮

失業の81%は女性が該当と指摘
Flockカメラの乱用是正を明言

ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、動画ポッドキャスト番組「Decoder」のインタビューで、AI(人工知能)普及に伴うデータセンター建設ラッシュについて、2026年7月に署名した一時停止命令の狙いを説明しました。AI自体は容認しつつ、業界には「悪影響をもっと減らす」よう強く求める姿勢を鮮明にしています。

背景には、急増するデータセンター建設申請への危機感があります。同知事によると、州内の一部郡だけで申請中の5件のデータセンターが、原子力発電所1基分に相当する電力を消費する見込みだといいます。同知事はこうした事態を受け、原子力発電の拡大にも乗り出す方針を示しました。

同知事は、地元自治体がテック大手との交渉で不利な立場に置かれている現状も指摘しました。小さな町の担当者が巨大企業と対等に渡り合うのは難しいとして、他州の事例を参考にした「コミュニティ投資の枠組み」を整備する考えを明らかにしています。あわせて、税優遇の見直しにも言及しました。

AI企業各社に対しては、電力・省スペースデータセンター設計を追求するよう強く促しました。垂直型施設や小型モジュール炉の活用など、技術革新による解決を求める一方、業界の「広報姿勢」にも苦言を呈しています。

一方で同知事は、州政府の規制見直しにAIを積極活用してきたことも明かしました。全ての規則をAIで分析させ、1カ月で数千件の改善提案を得たといい、すでに最初の50件を発表、住民や企業の作業時間を150万時間超節約したと説明しています。

その一方、AIによる雇用喪失への不安にも触れ、影響を受けやすい職の81%を女性が占めるとの見方を示しました。監視カメラ「Flock」の運用については、情報の自動転送ではなく人の目による確認を義務付けるべきだとの考えを述べ、行き過ぎた監視への懸念にも配慮する姿勢を見せました。

Meta新アプリPocket、AI作品は持ち出し不可

Pocketとは

対話だけでゲーム制作
Meta米国で提供開始
元Gizmoチームが開発

体験して分かったこと

1週間の試用で夢中に
コード不要で試作品完成
TikTok風に共有可能

残る課題

作品はMeta内に限定
外部への持ち出し手段なし

Meta(メタ)は8月21日、対話するだけでゲームを作れるスマホアプリ「Pocket」を米国で提供開始しました。文字でアイデアを入力すればコードを見ずに試作品が完成し、TikTok風のフィードで共有できます。Ars Technicaの記者が1週間試したところ、完成した作品はMetaの環境内に留まり、外部へ持ち出す手段がないことが分かりました。

Pocketは、Metaが今年3月に閉鎖済みのAI開発アプリ「Gizmo」の開発チームごと人材を買収したことから生まれたプロダクトです。同社はゲーム開発の敷居を、SNSに投稿する感覚まで下げることを狙っています。

記者は画面をタップ&ホールドしてスリングを作り、迫り来る敵の群れへ発射するゲームのアイデアから制作を始めました。チャットでLLMと対話しながら機能を加えるだけで、比較的作り込まれた試作品が短時間で完成したといいます。

一方で、完成したPocketの作品はMetaのアプリ内でしか動作せず、コードを取り出して他へ移植する手段は用意されていません。CLIやIDEを使う従来の“vibe coding”とは対照的な、閉じたエコシステムだと言えます。

AIコーディングツールの普及でソフト開発は大きく変わりつつありますが、専門知識のないユーザーにとってCLIやIDEは依然として敷居が高いままでした。MetaはPocketでその参入障壁を下げる一方、生成物の所有権や可搬性という新たな論点を浮かび上がらせています。

AI動画検索のClipto、2.5億ドル評価に到達

資金調達の詳細

1500万ドルを全株式で調達
評価額2.5億ドルに到達
主要投資家HSG

幅広い利用者層

PC内の動画音声を索引化
利用者3000万人超に拡大
法律家や医師も活用

競合との差別化

AdobeAppleも同様機能
MCP対応でAI連携強化

AIを使って大量の動画音声ファイルを検索できるサービスを手掛ける米サンフランシスコ発のスタートアップCliptoは、既存投資家らから1500万ドルを全株式で調達したと発表しました。今回の調達により評価額は2億5000万ドルに達し、生成AIの普及で急増するコンテンツ管理という課題に商機を見出しています。

Cliptoはユーザーのパソコン内にある動画音声画像・会議録などのファイルを自動で索引化し、フォルダーをたどらなくても自然言語で欲しいファイルを探し出せる仕組みを提供しています。ChatGPTClaudeといったAIツールから直接検索を依頼することも可能で、処理はすべて端末上で完結するため、クラウドを介さずに済む点も特徴です。

創業者ヘンリー・カン氏は、カーネギーメロン大学の博士課程時代からロボットに周囲を記録・記憶させる研究に取り組んでおり、その発想を最初の起業やテンセントに買収された動画編集スタートアップZenvideoにも応用してきました。2023年に前回起業の仲間らとCliptoを設立し、あふれる動画コンテンツを「探して再利用する」需要に着目したといいます。

当初は動画制作者向けに開発された製品でしたが、現在は利用者全体の4分の1から3分の1程度を占めるにとどまり、弁護士や医師、研究者、人事担当者、教員学生など幅広い層に利用が広がっています。累計利用者数は3000万人を超え、有料課金者も数十万人規模に達しているとのことです。

Cliptoは2026年初めに年間経常収益(ARR)1500万ドルを達成し、純利益ベースで黒字化しているといいます。従業員はサンフランシスコ・ベイエリア、香港、シンガポールを合わせて20人強にとどまり、少人数体制での成長を続けています。約2週間前には、AIアプリケーションが外部情報にアクセスするための標準規格「MCP」への対応も追加しました。

AdobeのPremiereやAppleGoogleのフォトアプリもAIによる検索機能を備えていますが、いずれも自社サービス内のファイルが対象です。これに対しCliptoは動画音声画像・文書を横断して検索できる点を強みとし、大手との差別化を図っています。今回調達した資金は、AIモデルや計算基盤の整備、さらに他のAIエージェントとの連携拡充に充てる方針です。

警察官向けAI規定案内のBlue Voice、6億円調達

6億円の資金調達

SignalFire主導で6億円調達
全米225機関が日次利用
元警察副本部長も共同創業

AIの仕組みと特徴

部門規則・州法を学習済み
誤答なく原典法規を提示
緊急時は学校地図も表示

現場での活用実績

誘拐を未然に阻止した実例
1年で顧客数が11倍に増加

米ボストン発のAIスタートアップBlue Voiceは2026年8月31日、SignalFireとLas Olas VCが主導するラウンドで600万ドル(約6億円)を調達したと発表しました。同社は警官が現場で部門の規則や州法を即座に確認できるAIツールを提供しており、弁護士向けのHarveyや医師向けのOpenEvidenceの警察版とも言われています。創業から3年でステルスを脱し、全米25州225の郡警察機関が日常的に利用する規模まで成長しました。

創業のきっかけは、ハーバード大学ロースクールに在籍していたDavid Lawrence氏が学内で起きた警官関与の発砲事件をめぐる論争を目の当たりにしたことでした。多くの警察の過失は、現場で規則にすぐアクセスできないことに起因すると気づいた同氏は、大学を中退してAIによる解決に乗り出しました。元グーグルのエンジニアハーバードMBAを持つAmit Patankar氏、ボストン市警察の元副本部長Michael Gropman氏と共同で創業しています。

従来、警官が細かな手順を思い出せない場合、1万5千ページに及ぶマニュアルをめくるか、深夜に上司を起こすか、GoogleChatGPTのような汎用ツールに頼るしかありませんでした。しかし汎用AIは警察特有の情報を持たないため、最大3割の確率で誤った回答を返していたといいます。Blue Voiceは各部門の規則や地元条例、州法を学習しており、回答の根拠となる原典の条文を必ず提示する点が特徴です。

実際の成果として、新人警官が少女に車へ乗るよう迫る男を目撃した際、Blue Voiceに相談したところ「児童誘引」に該当すると即座に確認でき、その場での介入が可能になった事例があります。また、発砲事件後の警官を復職させる前に第三者機関による精神鑑定が必須である点を、署長に注意喚起した例も報告されています。

Blue Voiceはこの1年で顧客数を11倍に伸ばし、1分に1件のペースで質問に答えているといいます。ナンバープレート監視システムなど警察のAI活用に批判が高まる中、Lawrence氏は、適切に導入されたAIが市民の権利を損なわずに公共の安全に貢献できることを証明したいと述べています。

MIT量子イニシアチブ、博士研究員奨学金を新設

新設の背景

Moore財団の助成金活用
量子科学と他分野の融合を促進
次世代の量子研究リーダー育成

プログラムの詳細

物理・化学・材料科学が対象
量子計算やセンシングなど網羅
AIと量子科学の融合研究も視野

今後の展開

2026年度に第一期フェロー始動
秋に次期コホートの募集開始

マサチューセッツ工科大学(MIT)の量子研究拠点「MIT量子イニシアチブ」(QMIT)は、量子科学分野の学際的研究を加速するための新しい博士研究員向けフェローシップ制度を発表しました。ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団からの助成を受け、若手研究者が物理学や化学、生物学など異分野を横断して量子技術を探求できる環境を整えることが狙いです。

MITのアナンサ・チャンドラカサン・プロボスト(学務担当副学長)は、量子科学が計算やセンシング、材料、通信など幅広い分野で新たな可能性を切り開いていると強調します。こうした制度により、分野を代表する優秀な研究者を引き付けられると述べています。

同拠点は2025年12月に発足した学内横断組織で、量子分野の研究者を結集してきました。化学科教授でQMITの学術ディレクターを務めるダナ・フリードマン氏は、量子の専門性と他分野の視点を組み合わせる研究者から画期的な成果が生まれると指摘しています。

対象となるのは物理学や化学、材料科学に加え、生物学や地球科学の基礎分野で量子研究に取り組む研究者です。量子計算や量子センシング、量子材料、量子シミュレーション、量子ネットワークなど幅広い研究領域にフェローが配置される予定です。人工知能と量子科学を融合させる学際的な研究も視野に入れています。

フェローはMITの電子工学研究所やリンカーン研究所など、学内の主要な量子研究機関と連携しながら活動します。研究担当副学長を務めるイアン・ワイツ氏は、この制度が量子分野の将来を担う優秀な博士研究員への投資になると述べています。第1期フェローは2026年度中に活動を開始し、次のコホートの募集は2026年秋に開始される見通しです。